境界線上のホライゾン 理不尽壊しのリインカーネイション 作:橆諳髃
「あと少しで入れれるような気がするが……取り敢えず物語を見て欲しい」
午前10時 青雷亭
コップの中に入った水を飲み干す。冷たい感触が乾いた体の中を駆け巡る。
(生き返った〜!)
「うん! もう大丈夫みたいだね」
「す、すみません……毎回助けてもらって……。このご恩は、ちゃんと良い政治家となって恩返しをさせていただきます!」
「あらあら、そんな事は別に構わないさ! それより正純さん、少し良い職を見つけてちゃんと食べた方が良いんじゃない?」
「た、確かにその通りなんですが……」
しかしうちには門限とかあるし、父上も今のバイトならと許してくれたのだ。だからバイトは変えようが無いし、増やす事も言語道断で許してはくれないだろう。
「にしても正純さん、将来政治家を目指すのに副会長だろう? どうして生徒会長にならなかったんだい?」
「……私はまだ武蔵に来て1年目という事もありましたし、生徒会長には葵が立候補していましたから。1年目の私よりもずっと武蔵にいる葵の方が武蔵の事は分かっているだろうと思って」
「いやいやそんな事ないさ! あいつは昔から馬鹿だしね。それで今日はこれからどうするんだい?」
「jud。午後からは酒井学長を関所まで送り届けます。その前に母の御墓参りに行こうかと」
「へぇ〜。やっぱり役職持ちの子達は大変だね〜。あっ、それとはいこれ。昔トーリがよく食べていた奴だよ」
「えっ? 良いんですか?」
「勿論さ。私としては正純さんにはちゃんとご飯は食べて欲しいしね!」
「ほ、本当にありがとうございます!」
「良いって事さ。そういえば正純さんってトーリ達とはどうなんだい?」
「えっ? そうですね……私としては、まだまだ距離が開いている感じがして」
「そうかい。まぁ1年前に来たばかりじゃねぇ……そういえばトーリも1年前からまたここに通いだしたね〜」
「トーリが、ですか?」
「うん。10年前はよく来てたんだけど、ある事がきっかけでパッタリとこなくなってね〜。でも1年前、武蔵の戸籍は持ってるけど迷子の自動人形を預かり始めてからまた来る様になったんだよ」
「p01s……の事ですよね?」
「そうさ。案外トーリの奴もp01sの事が気になっているのかもしれないね〜」
「トーリが……p01sを⁈ まーたマニアックな……」
「ふ〜ん? その反応を見ると、トーリの事はそこまで嫌いじゃなさそうだね?」
「えっ? えぇ、まぁそうですね。あいつ元気だけは良くて、それで授業中も騒いだりして……それを毎回颯也が止めたりして」
「あっはっはっ……全く昔と変わらないねぇ!」
「えっ? 昔もそんな感じだったんですか?」
「あぁそうだよ。トーリが何かやらかせば颯也が止めて、そして後始末も颯也がやる……幼馴染でもあったからそれがいつしか当たり前の光景になっていたねぇ」
「そ、そうなんですか……昔から颯也は大変だったんだな」
「本人からしてみれば全く大した事じゃなかったさ。そして今も昔とは変わらず、武蔵や皆の為に働いたりしてね。それで毎朝必ずうちに寄るんだよ。10年前と変わらずね」
「そ、颯也もここに寄っているんですか⁉︎」
「あぁそうさ。にしても正純さん、何だか私が思うに颯也の事を気にしているね? もしかして好きなのかい?」
「えっ……な、なぁっ⁉︎」
「あははははは! 分かりやすいねその反応は!」
「い、いえ違うんです! これはその……いつも颯也は私の事を助けてくれますし、それ以外にも彼は武蔵で働いてる姿や誰かを助ける姿を見かけるので……だからその……ありがたいんです。でも心配というか……」
「なるほどね……。ねぇ正純さん、トーリや颯也、それに皆ともっと仲良くしたいと思わないかい?」
「えっ? そ、それはまぁ……」
「なら後悔通りを調べてみると良いよ。そうすれば、彼らに一歩踏み込めるから……」
「は、はぁ……」
(後悔通りか……確かになんであんな名前が付いているのか私はまだ知らない。酒井学長を三河に送り届けたら行ってみようかな)
正純さんの中で今日の予定がまた1つ増えました。
ー●◯●ー
午後12時時32分 教導院前
教導院前の階段でほとんどの梅組の生徒が座りこんだりして何らかの会議をしていた。
「これから総長連合会議、総長の告白を成功させるぞ! 会議を始めます。それじゃあまずトーリくん」
生徒会の書記であるネシンバラが通神枠を開いて司会をし始める。そして振られたトーリは……
「う〜ん……なぁ点蔵、お前告る事だけは数こなしてるだろう? なんかアドバイスくれよ」
「ああれぇ〜⁉︎ なんか自分色々と否定されてござらんかぁ⁉︎」
「まぁまぁそんな事は良いからはよ」
「そ、そんな事……ま、まぁ今は良いで御座る。それでアドバイスで御座るな? そうで御座るな……やはりここは手紙作戦に御座る」
点蔵はいつのまにか取り出した紙冊子とペンを取り出し、トーリに渡した。
「ん? 紙とペンで何を?」
「相手の好きな長所を書き連ねるので御座るよ。そして手紙にして渡す。そうすれば万が一告った時でも手紙を渡せば自分の真意は伝わるという算段に御座る。それに告る時の心情は、ほとんどの者が緊張するもので御座ろう。大事な場面で噛んだとあっては、雰囲気は一気にただ下がりでおじゃるから……」
「噛んだ……」
「噛みましたね……」
「か、噛んでないで御座るぞー⁉︎」
「ん? それならさっきの点蔵の語尾は新しく作ったものなのか? それならこれからの格好は忍者の格好じゃなくて平安貴族の正装のような格好をしないとキャラがブレるんじゃないか?」
(て、天然の返しが来たで御座る……)
颯也さんはそれに対して真面目に答えていたといいます……。そんな颯也さんが今何をしているかというと……
「にしてもサイン1000枚か……」
先程教室で撮影された自分の写真にサインをしていました……
「ごめんね颯也くん。でも見てこれ! 『愛護颯也くんファンクラブ』でさっき撮った写真の予約を受け付けたらこんなに応募が来たの‼︎ 皆の為、そして私とシロくんのために力を貸して欲しいの!」
「ま、まぁサインするのは構わないけど……今度から相談してほしいな」
「うん! でもその代わりと言ってはなんだけど……私に出来る事なら出来る範囲で颯也くんのお願い聞くよ?」
「いやいや⁉︎ 俺は別に見返りは求めてないんだけど……」
「もぅ……またそんな事を言ってぇ〜。それだったら私が嫌なの!」
「と言われてもな……なら、ハイディさん。君が俺に対して臨む事を叶えるというのは? まぁ俺の出来る範囲でだけど」
「あれ? それじゃあなんか逆になってない?」
「別に良いさ。俺は元々見返りを求めるなんてしないし……でもハイディさんがそれじゃ嫌だと言うのなら、貴女が俺に求める事をした方が早いかなってさ」
「颯也くんって〜……結構頑固だよね?」
「そう……かな?」
「そうだよ? でもそうね〜……颯也くんがそう言ってくれるなら、今度私と1日一緒に過ごしてくれるかな〜、なんて」
そのハイディさんが放った、まるで冗談のように言った一言が梅組の、特に女性陣の耳を一斉に傾かせてしまいました。
(じょ、冗談ですよね?)
(うふふ、ハイディったら守銭奴だけじゃなくて颯也にまで手をつけようとして……いけない子だわ)
(でもさっきの会計補佐の発言、最後になんてって付けてますから私としては冗談で言ったと思うんですが?)
(颯くんと1日……)
(颯也と一緒にいたら……何年分でもネームがきれるわ‼︎)
ハイディさんのその発言が冗談だと思う人もいれば、喜美さんに至っては少し嫉妬していたようです。しかしながら……
「俺の都合のつく日で良いなら、構わないよ」
(((……えっ?)))
「……えっ? 良いの? 私としては、おはようからおやすみまで一緒に過ごして欲しいって意味で言ったんだよ? それでも良いの?」
「良いよ。それがハイディさんの求めるという事なら」
「あぁ〜……うん。それじゃあ都合のつく日が分かったら連絡してね?」
「jud。分かったよ」
(冗談のつもりで言ったんだけどなぁ……)
正直ハイディは、さっきの発言の最後に、なんてを付けたように冗談のつもりで言ったのだ。だがしかし……この男には冗談なんて通じてはいない。それどころか本気で捉えて真面目に捉えている始末……
(でも、颯也くんと一緒に1日過ごせるのは、私もとても嬉しいんだよねぇ〜。彼の嬉しそうな顔とか恥ずかしそうな顔とか、いつもよりいっぱい見れそうだし)
「ふふっ、嬉しいなぁ〜」
「ん? 何か言った?」
「いいやなにもぉ〜? ところでそろそろサインを書いて欲しいんだけど……」
「あぁ、そうだったね」
「おぉっ? 颯也も何か書くのかよ?」
「ん? まぁちょっとね」
「ならよ、俺が相手の好きな所を書き連ねるのと颯也の書くやつ、どっちが早く終わるか勝負しようぜ?」
と、トーリは颯也にいきなり早書き競争を挑んでくる。だがトーリは知らない。自分は高々数文字数行で終わるのに、颯也は漢字4文字だけだがそれを1000枚に渡って書かなければならないという事を……
「それで負けた方は勝った方の言う事を何でも聞くって事で!」
しかも無茶振りまで提示して……
「なら今から行くぜ! よーいスタート‼︎ う〜ん……何から書こうかなぁ〜」
しかも相手の承諾を得ず勝手にやり始める始末……
「そ、颯也殿! 自分達も何が何やらで御座るが、このままではトーリ殿の方が先に書き終わってしまうで御座る‼︎」
確かに点蔵の言う通りだ。俺としては承諾もしてないのに……
(まぁ今更なんだよなこんな事……)
そう、これは昔から変わらない。だから諦めていつのまにか始まった競争に付き合うしかない。
「まぁ付き合うなら付き合うで本気でいかせてもらおう……」
まずは両手をパーの状態で前に突き出し……
「1、2、3、4……」
指を右手の小指から順に次の指へ次の指へと左方向に畳んでいく。
「7、8、9、10……よし、準備運動終わり」
そしていつのまにか右手に万年筆を取り、目の前の通信枠に映る自分の写真に物凄いスピードでサインを書き込んで行く。
「は、はやっ⁉︎」
颯也の事を心配していた点蔵もその早さには驚きを隠せず……
「う〜ん……よし、まず1つ目は、顔のパーツがかなり好みで上手く言葉にできn「書き終わったよハイディさん」……ほへ?」
数秒でその競争に片がついた。
「え、えぇっと……か、確認するから少し待ってね?」
ハイディは、隣で数秒のうちに1000枚の写真にサインを書き終えた颯也に対して戦慄を覚えた。そして驚きも勿論した。その驚いた感情のままハイディは颯也から送られた通神に目を通して行く。結論……
「ぜ、全部……1000枚全部に颯也くんのサインがある⁉︎ しかも微妙に違うやつがあったり横とか縦とか斜めとか違う書き方があったり……な、何か術式を使ったの⁉︎」
ハイディさんの疑問も勿論のことでした。何せそのサインは本人が隣で書いていたのだから……しかし
「術式? いいや、術式などは使わずに自分の手だけで書いたよ」
颯也さんは笑みを浮かべながらその一言を述べたといいます……
「た、確かに術式を使えば何らかの効果が書かれた術式枠が出てもおかしくない……それに限定的な部分に限れば間違いなく出てくるはず。私もずっと隣で見てたから見落としなんて無いし……」
ハイディは頭の中で考えた。考えてはみたが……
「まっ、いっか! 私とシロくんが儲けることができれば」
この少女も結構な腹黒度合いだった……
「それで颯也くんにもう1つ頼みたいんだけど……ここ押してくれる?」
「ん? これは?」
「さっき颯也くんに書いてもらったサイン入り写真なんだけどね。抽選で1000名の人に当たるようにしてるの。それで颯也くんにはこのボタンを押して抽選して欲しいんだ。1回押すだけ良いから」
「ま、まぁそれくらいなら……」
颯也はハイディの通信枠で『抽選』と書かれている所を押した。すると枠の中の画面が動き出し、次々と抽選に当たった人達の情報が横読みで上から順に表示されていく。中には武蔵の教導院や住民だけでなく、他国の教導院や住民の所属まで掲載されていった。
「な、なんか武蔵以外に住む人達の情報まで上がってるんだけど?」
「それは勿論だよ! だって颯也くんとても人気だもの‼︎」
「人気って……そんな誰とも知らない馬の骨を……」
「ふふふ、颯也くんはねぇ〜……ちょっと、いや大分自分の事をおざなりにし過ぎだと思うのよね〜?」
「えっ? そうかな?」
「うん! だって、他の人のためだったら何の見返りもなく助けているけど、自分の事は犠牲にしてるし、何より他人優先だよね〜?」
「た、確かに俺は他の人より自分の事は後回しにしてるけど……」
「確かに美徳ではあるんだけど〜……それは嫌だって思う人も多くいるんだよ? 特にこのファンクラブに入ってる人はね? もっと自分の事を大事にして欲しいって思っている人達も多くいるはずなんだよ〜? 私もその内の1人だけどね?」
「……でも俺は、この生き方に慣れちゃったからな。あの日から……」
「それでも皆、貴方に無理してほしくないと思ってると思う。それにね……」
ハイディは颯也の髪に手を伸ばす。そして髪の先……片方のルンに優しく触れた。
「私も、颯也くんに無理してほしくないんだよ?」
少し赤面しながら、ハイディは颯也のルンを撫でた。
「っ⁉︎///」
「ふふっ、照れてる照れてる。可愛い♡」
カシャッ……と、颯也の顔を撮影した。
「ま、全く……からかわないでもらいたい……」
「からかってないよぉ〜? さっきのは私の本音だもん!」
(それにこの写真は誰にもあげないもの)
目をスッと細めた笑顔でそう思った。
「そ、そんな事を率直に言われたら……照れてしまうではないですか……ん? んんっ⁉︎」
照れた顔が見えないようにハイディから抽選途中の通信枠に顔を向けた。その時、見知った情報が目に入った。
(だ、伊達教導院……不退転……って、な、成実さんもまさかファンクラブに入ってたのかよ⁉︎)
一方……
「あっ、新しい着信が来てるわ……ふふっ、当選するのは当然よね。なんって言っても、私が1番のファンだもの」
成実の通信枠の1番上の方……『愛護颯也ファンクラブ』の会員番号が載ってある。そして彼女の会員番号は……No.1。そして愛護颯也応援会長の役職に就いている。
(身近な人もいつ出来たか分からない俺のファンクラブに入ってた……)
「そ颯也くん? どうかしたの?」
「えっ? 嫌なんでもないよ」
「おいおい! さっきまでの真剣な競争の雰囲気はどこ行ったんだよ〜⁉︎ それに俺まだ全部書けてないんだぞ〜‼︎」
(((まだ書けてなかったのか……)))
「それにいつのまにかイチャイチャした雰囲気出しやがってぇ〜!」
「そんな事を言われてもな……」
「ともかく続けるぞ! 顔のパーツがかなり好みでよく言葉にできない。しゃがむとエプロンの裾からインナーがパンツみたいに覗けて上手く言葉にできない。ウェストからお尻にかけてのラインが好みで、上手く言葉にできない。う〜ん……中々難しいなぁ〜」
「む、難しいと言っておきながらスラスラ書いているで御座るよ⁉︎」
「それに殆どがセクハラまがいじゃないか……」
「待て待てぇい! その箇条書き……トーリにしては大事な事が抜け落ちているぞ?」
そこでウルキアガが口を挟んだ。
「お主オッパイ県民のくせに、肝心のオッパイの事について書いてないぞ?」
「「「あぁっ‼︎」」」
その発言に皆が確かにと同調した。
(でも結局はそれもセクハラ……)
颯也だけは手で顔を覆っていた。
「確かにオッパイソムリエのトーリくんがそれに言及しないなんて……」
「いつも誰彼構わず言ってるのに、好きな人に対してはヘタレ?」
「う〜ん……あっ」
そこでトーリは何かを思いつき、再び紙にペンを走らせる。
「
「うふふっ、素晴らしいわ愚弟‼︎ オパーイに関してはいい加減はできないのね‼︎」
「おう! 俺こう見えても真面目だからな! 適当な事は言わないぜ‼︎」
「それって真面目なのか? それとも変に悩んでる俺がおかしいのか?」
「そ、颯也くんは真面目に受け止めなくても良いんですよぅ〜?」
颯也は……もはやこの議論を真面目に考え過ぎ、悩んでいた。最終的には、悩んでる自分が変なのでは? 皆と同調できてない自分が変なのでは? と思い始めていた。
「にしても愚弟? 視覚情報だけじゃあ好きな相手の胸が良いかなんて分からないと思わない?」
「確かに……でも他の方法あるかな?」
「そんなの簡単よ……実際に相手の胸を揉んでみれば良いのよ‼︎」
「おぉっ‼︎ それだったら確かに相手の胸が良いのかどうか確かめられるな‼︎ 姉ちゃん頭いいけどやっぱバカだろ⁉︎」
「……俺はどうすれば良いんだ」
颯也さんは、心の中ではノックアウト寸前でした。
「それで愚弟、好きな人の胸を揉む前に近似してる胸を揉んでみるのが良いわぁ〜。ほら、噂をすれば……」
教導院の方から酒井学長と、酒井学長の付き添いで隣を歩いていたネイト・ミトツダイラが梅組の集会に近づいて来た。
「おぉ、こんな所でどうしたんだい?」
「学長先生。いやな、明日告ろうと思ってよ!」
「ほぅ? 明日告るのかぁ〜。それで? 告るというその危険な行為に及ぶ相手は誰なんだい?」
「ホライゾンだよ!」
トーリの告げた相手の名前に、皆は黙った。ただ颯也だけは、変わらないなぁ〜というような感じの顔になっていた。
「へぇ〜……お前さんもそう思うかい?」
「あぁ。明日で10年目なんだ。明日ホライゾンがいなくなって10年目って考えると、自然とそう思ったんだ! 別にホライゾンとは別人だとしても、俺は別に構わねぇ‼︎」
「ハハッ、そうかい。そんじゃ俺は、三河の昔馴染みに呼ばれてるから行ってくるが、正純に何か伝言はあるか?」
「それじゃあさ! 今日の夜8時にここで告白前夜祭やるんだけど、これるかどうか聞いてみてくれねぇ?」
「jud jud。あぁ、それと颯也」
「何ですか学長先生?」
「昔馴染みにさ、できれば颯也も呼んで欲しいって言われてたんだけどさ。来るか?」
「そうですね……前夜祭の諸々の準備が済んでから合流しても良いですか?」
「えっ? そんな事できるの?」
「まぁ大分遅くなるかもしれませんし、場合によっては来れないかもしれませんけど、どちらになっても連絡はします」
「ju、jud。分かったよ。そんじゃ俺は行くからな」
酒井学長は梅組に背を向けて歩き出した。そして後ろに向いたまま片腕を上げて梅組にバイバイと手を振った。
「そういえば愚弟? さっきの大切な件だけど……」
喜美が嫌らしい目線でネイトを見る。それにもトーリは気づき……
「あぁっ‼︎」
そして喜美は行動に移した。
「ねぇミトツダイラ。少し相談があるの。これは愚弟が明日告るのに必要な事なのよ」
「総長が明日告るのに必要な事……ですか?」
「えぇそうよ! でも武蔵の騎士たるミトツダイラには平民の恋心なんて分からないでしょうけどねぇ⁉︎」
「そ、そんな事ありませんわ‼︎」
「よしっ!」
ネイトが乗り気になった所で、喜美は後ろを向いて小さくガッツをした。
「武蔵の騎士たるもの、平民が困っているのならば迷わずに手を差し出しますわ!」
という事で結論……
「このネイト・ミトツダイラ! 総長の告白が成功するためこの胸を貸しますわ‼︎」
「「「おぉっ‼︎」」」
「……なんか嫌な予感しかしない」
「ほ、本当に良いんだな? ネイト」
「? えぇ。総長の告白が成功するように、武蔵の騎士たるこの私が! 総長に胸をお貸ししますわ‼︎ でもどうすれば良いんですの?」
「……そのままじっとしていてくれ」
「えっ? えぇ」
そしてトーリの指使いが怪しくなり始めた。
「ね、ネイトさん! トーリからにg「あら颯也ぁ〜? 愚弟の邪魔をしちゃ、ダ・メ・よ?」ふぐっ⁉︎」
トーリがこれからやる事がわかった颯也は、すかさず止めに入ろうとしたが、そこを喜美に遮られ、そして自分の顔は喜美の豊満な胸に埋もれた。
「うぅっ⁉︎ ふぐぅ!」
「あん♡ もぅ颯也ったら……くすぐったいわよ?」
「んんっ! むぅ〜っ⁉︎」
「ちょっと喜美⁉︎ 颯也くんになんって事をしてるんですか⁉︎」
「むぐっ⁉︎ うぅっ〜⁉︎」
「んあっ♡ 珍しく激しいわねぇ〜。まさか私の胸を吸いたいの? 颯也ならいつでもウェルカムよ♡」
「はははははしたないですよ喜美ーッ‼︎ これ以上颯也くんを穢さないで下さいーっ‼︎」
「んふっ、もう少し正直になっても良いのよ淫乱巫女? 颯也をこんな風に、自分の大きなオッパイで包みたいって……」
「だ、誰が……」
(でも……颯也くんが私の胸に……)
※ここからは浅間さんの妄想モードに突入します……
『あ、浅間さん……本当に良いのかな?』
『えぇ、颯也くんなら……私の胸に顔を埋めても良いですよ?』
『だ、だがやはりというか……恥ずかしいな……』
『ふふっ♡ その様ですね? なら……私の方から行っちゃいますよ?』
浅間さんは颯也さんの頭を自分の胸に引き寄せる様に抱き締めました。
『っ⁉︎///』
『ふふっ……あぁ、颯也くんの髪はとても綺麗ですね。少し妬いてしまいます』
『そ、それだったら……浅間さんの髪の方がよっぽど綺麗だよ?』
『そ、そうですか? でもそう言われてとても悪い気はしませんね。むしろとても嬉しいです。そう言ってくれた颯也くんにご褒美をあげますね? ヨシヨシ』
『っ⁉︎/// そ、そんな事されたら……』
『眠いですか? 良いですよ? このまま私の胸の中で眠っても……』
『……なら』
そして颯也さんは浅間さんの胸の中で眠りに落ちました。
(とても良いですねぇ♡)
目を細め、頰に掌を当てながらそんな妄想に耽っている浅間さんがいました。顔は赤面し、そして微妙にクネクネしていました……
「んふっ、やっぱり淫乱巫女ねぇ?」
「はっ! ちちち、違いますよぅ〜? 淫乱じゃないですよぅ〜? って喜美⁉︎ 颯也くんが⁉︎」
「えっ?」
浅間に言われ喜美は、自分が抱き締めている颯也を見た。すると……
「……」
手足をダラーンとさせた颯也が、喜美に抱きしめられながら
「あらあら……よっぽど疲れていたのね? 今だけこの賢姉の胸は……颯也の枕になってあげる♡」
そう言いながら喜美さんは颯也さんの頭を撫でていました。
そしてトーリさんは、ネイトさんの胸をモミモミしてました……
「はわっ⁉︎ はわわわっ……」
「静かにしていてくれネイト……う〜ん」
ネイトは顔が沸騰したかの様に赤くなり、それを知ってか知らずかトーリはネイトの胸をモミモミと揉む。
「んふっ、愚弟?」
「ど、どうで御座るか⁉︎」
トーリはネイトの胸を揉むのを止めて振り向き……
「おう! ノーブラだったぜ‼︎」
トーリは自信満々に言った。
「ありがとなネイト! これで俺明日の告白上手くできそうな気がするぜ‼︎」
「……の」
「へっ?」
「このバカァっ‼︎」
ネイトは誰から見ても怒った形相だった。そして胸を触ったトーリに対して裏拳をお見舞いしようとする。誰もが、トーリはそうされて当然と思う人もいたが、ネイトの裏拳があまりにも早かったのでほぼその場の全員が対応できなかった。しかし……その中に1人だけ対応ができる者がいた。
「うぐぅっ……」
それは、喜美の胸によって意識を無くしていた颯也だ。颯也はいつのまにか喜美から離れ、トーリを庇っていた。だが庇った颯也はその時も意識はなかった。
「そ、颯也っ⁉︎」
裏拳をかましてしまったネイトも、殴った後に我に帰ったがその時には遅く……殴られた颯也は教導院の階段を回転しながら登り……教導院の屋上あたりの壁にのめり込んだ。
その一方では……
「私だけの特権が勝手に奪われた感じがするわ……」
「成実? どうしたんだ? なんか怖いぞ?」
成実さんがいつもの顔ですが……内心は自分の特権が勝手に奪われた気がしてカンカンに怒っていた様です……