境界線上のホライゾン 理不尽壊しのリインカーネイション   作:橆諳髃

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「作者よ……今回は書くまで結構かかっていたが……どうした?」

え、それはですね……

「なんだ? 言いにくいのか? いつもの様にアプリのイベントか? それにしてはf○oのイベントは陽炎の塔を踏破してなかったようだが? それにば○ドリも中途半端だったよな?」

……

「はっきり言ったらどうだ?」

仕方ないじゃ無いですか‼︎ だってモンハンが発売されてからハマってしまったんですから! いつのまにか昼の2時から深夜2時までぶっ通しでやってましたよ‼︎ 俺もビックリですよ!

「……そうか。まぁハマるのは仕方がないが、健康には気をつけるよ? という事で5話はじまります‼︎」


5話 愛護颯也くんファンクラブは結構盛況です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前10時48分 武蔵墓所

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(こ、根拠はないがとてもおいしい場面を逃した気がする……⁉︎)

 

「どうかされましたか? 正純さま」

 

「あ、あぁ……何でもないんだ」

 

「そうですか。しかしながら、正純さまが何かを感じ取られたのでしたら奇遇ですねと思ったので……」

 

「奇遇? それは?」

 

「 jud。それは……何かおいしい瞬間を見逃してしまったような……そんな感覚に陥ったものですから、もしかしたら正純さまもp01sと同じ様な感覚があったのではと」

 

(な、なかなか勘が鋭い……)

 

正純がそう思っている中、静かな墓所にピロリンッ……といったような、この場には似つかわしくない音が響いた。

 

「ん? なんださっきの音は?」

 

「おや、どうやらお知らせが届いたようです」

 

「お知らせ?」

 

「 jud。p01sが興味を持った分野に対して、新しいお知らせが入った時は先ほどの様に音で知らせる機能を使っています」

 

「へぇ〜、p01sにも興味がある対象があるのか?」

 

「 jud。p01sは本を読む事が好きなので、新しい本が出た場合や最近になって人気になり始めた本が出た時などのためにこの機能を使っています。さて、今回は何が出たのでしょうか?」

 

そう言いながらp01sは通信枠を開く。今は墓所の手入れをしている最中だったが、p01sにとってはそれが優先事項だった様だ。それにしても正純は思った。魂から生まれる自動人形は、特に何かに対して興味を持つ事はほとんどない。自動人形にとって最善の行動を普段から取るまでで、やる事といったら掃除がほとんどだ。それが好きか嫌いかは別として……という認識だった。

 

しかし目の前にいるp01sはどうやら自分の思い浮かべていた認識とはどこか違うようで、本を読む事が好きな様だ。

 

(自動人形にも色々いるんだな……)

 

ふと正純がそう思った時だ。

 

「こ、これはっ……‼︎」

 

「な、なんだ⁉︎」

 

p01sが驚愕した様な声を上げた。正純としては、目の前の相手が急に声をあげた事に驚いた。しかしそれ以外にも驚いた事があった。それは……いつもほぼ無表情の顔のp01sが、本当に驚いている表情を浮かべていたからだ。正純はp01sが、いや自動人形が驚いた表情を浮かべているところを初めて見たのだ。

 

「悠長にはしていられません。早速予約をしましょう」

 

そしてp01sは通信枠の中にあるであるだろう表示を押した。

 

「そ、そんなに良い本が出たのか? できれば私にも見せて欲しいんだが……」

 

正純は、p01sが驚くほどのお知らせを見たくてたまらなかった。興味をそそられた。それが先ほどのp01sとの会話でもあった様に、本に対してだったらますます自分にも有益な事だ。確かに今自分が持っているお金は少ないが……それでもp01sが驚愕するほどの物だ。できれば生活費を削ってでも手に入れたいところ……だが

 

「いえ、残念ながら本についてのお知らせではありませんでした。ですがp01sにとってはとても有益なのです」

 

(ほ、本じゃない? ならp01sは何に対して驚いたんだ? ……気になる)

 

「わ、私もp01sが何に対して驚いたのか気になるんだ……だから出来れば教えて欲しい」

 

「jud。ではこれをご覧下さい」

 

p01sが正純に対して見せたお知らせ……それは

 

『遂に彼の体が明らかに⁉︎ 撮影次第愛護颯也の上半身裸写真を公開! ただし購入者限定。そして抽選で1,000名様には愛護颯也直筆サイン入り‼︎ 次報を待て!』

 

というものだった。

 

「な……なぁっ⁉︎」

 

「おや、正純さまも驚かれましたか。これは流石にp01sも驚きを隠しえません。というより赤面してしまう始末です」

 

それは『愛護颯也ファンクラブ』に関したお知らせだった。それに対して正純は……

 

(じ、自動人形であるp01sが他人を……しかも愛護に興味を持っているだと⁉︎ それになんだこれは⁉︎)

 

正純自身もこのファンクラブの存在を初めて知った。また、p01sが愛護颯也の事に対して興味を抱いている事も……

 

そして正純がp01sを見た時、驚いた。何故なら、目の前で自動人形であるはずのp01sが、本人が言った様に赤面しながら片方の手を自分の頰に当て若干モジモジしていたからだ。

 

(じ、自動人形が赤面しているだと⁉︎)

 

本日何度目の驚愕だろうか……。最初は朝起きた所から始まり、そして今では愛護颯也に関してのファンクラブの存在を知って驚き、また目の前の自動人形であるはずのp01sが赤面している……という事実を突きつけられた。

 

(ほ、本当にp01sは自動人形なのか? 私から見れば普通の人に見えるぞ⁉︎)

 

「そ、それで……そのファンクラブにはどうやって入れば良いんだ?」

 

正純さんも興味津々の様子でした……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても正純さまはよくここに来られていますね?」

 

「あぁ、これは母の墓なんだ。といっても遺骨はないから、思い出の品を遺骨の代わりとして埋葬しているが……それでp01sはいつもの様に掃除だよな?」

 

「jud。その通りです」

 

〈バレテナイ? バレテナイ?〉

 

「バレておりません。颯也さまが貸してくれた様な書物の中にもありました通り、私達の活動は完璧な隠密と言ってもいいです」

 

「いやバレてたぞ⁉︎ しかもさっきのファンクラブの下から!」

 

「な、なんと⁉︎ 完璧な隠密がバレバレだったとは⁉︎」

 

〈バレバレー バレバレー〉

 

「って、愛護から本を借りるのか?」

 

「jud。愛護さまはこの武蔵にあるかないかの書物を持っておられます」

 

「あるかないか?」

 

「jud。特にp01sが驚いたものは、それぞれ固有の能力を持った方々が多く存在する世界で、何も能力を持たないと診断されたいつも不幸人間の方が事あるごとに事件に巻き込まれてしまい、それでも諦めず熱血に生きていく……という物語です」

 

「な、何も能力も持たないのに事件に巻き込まれてしまうのか⁉︎ く、苦労人だな……」

 

「p01sもそう思います。ですがその方には、他の方には真似できない事があります」

 

「そ、それは?」

 

「どこまでも真っ直ぐで熱血なところと、他人の能力を右手で無効化できるという事です」

 

「ちゃんと能力あるじゃねぇか‼︎ しかもなんだその最強能力⁉︎」

 

「は、は、は……そうですね。ところで話は戻しますが、正純さまがよくここに来るあたりお母様の事が好きなのですね?」

 

「急にシリアスが入った⁉︎ ま、まぁいいや。そうだな……私と母は、去年まで三河で過ごしていたんだ」

 

そして正純は今まで誰にも語らなかった事を語った。父の襲名が失敗に終わり、代わりに自分がその父の襲名しようとした人物である息子の正純を襲名するために、胸を削り男として生きる手術を受けようとした事。だがその手前で今の三河の君主である松平元信公が家臣の出払いを命じ、それに該当した家臣の役割は全て自動人形が引き継いだ事による苦い経験。家族は離れ離れになり、母とは暮らしていたものの、その母も公主隠しという神隠しに遭って今現在に至る事。語るうちに正純の目からは涙が出ていた。

 

「すまない……格好悪いよな? 人前で出す涙なんて……」

 

「いいえ、特にp01sはそう思いません。特に颯也さまに至っては……『人前で泣く事の何が悪い? 悲しいから泣く。嬉しいから泣く。人には感情があるからこそ泣けるんだ。だからどこだろうと、泣きたい時は泣けば良い。それが人とし真っ当な生き方だと思うから』と、以前p01sがとある物語での出来事を質問した際に言ってました」

 

「……とても颯也らしい回答だな」

 

「jud。p01sもそう感じました。そして今p01sの中で疑問に思っていた事が解決されました」

 

「jud。それは?」

 

「正純さまは趣味で男装をしているわけでは無かったのですね?」

 

〈ヅカ? ヅカ?〉

 

(いやちょっと待て⁉︎)

 

シリアスな雰囲気がp01sさんのその一言で彼方へと吹き飛びました。それと同時に武蔵のステルス航行が解除され、本物の景色が見える様になりました。

 

因みにステルス航行とは……武蔵が地上に住んでいる方々が驚かない為に、武蔵を透明化しながら空を移動する術式の事です。これは午前10時の時点で発動されていました。そして三河が十分近くに来たので現時点でその術式は解かれました。また、この記述がここに来て初めて出たのは作者が忘れていたからではないという事をご理解下さい……

 

「いや作者‼︎ その事絶対忘れていただろ⁉︎」

 

「どうしたのですか正純さま? 急に空に向かってのツッコミは……」

 

「なんか訂正しときたい事があったから、訂正したまでだ。ん? あれは元信公の船か?」

 

そんな場面があった矢先、武蔵の上を一隻の小さな輸送艦が出迎えた。それは、三河現君主である松平元信に所属する船だった。

 

『やぁみんな! 元気にしていたかな?』

 

急に武蔵の住民の前に通信枠が開かれ、通信を開いたとされる人物が語りかけて来る。特徴は、普通の眼鏡をかけた壮年、アメリカの大学で卒業生がかぶる様な学生帽を被った人物だった。その声から発せられるのは、どこぞのダンディなおじさまの口調を元気そうな感じで発していた。

 

『今日は武蔵のみんなに素敵な花火を用意しておいたよ。今日の8時頃を予定している。とりあえず本日の授業はこれまで!」

 

かっこ良く元信がポーズをとりながらそう告げた途端、通信は閉じられた。そして武蔵の上を飛んでいた輸送艦は、武蔵と並走するのをやめて進み出した。

 

「全くあの方は……ってp01s?」

 

正純は元信のいつもの様な感じに呆れを滲み出す。しかし隣のp01sは、進みさる輸送艦に手を振っていた。

 

「観光客がやる様なことを……」

 

「船の下……あそこから私に向かって手を振って来るお方がおりましたので……」

 

「そ、そうか……」

 

それから正純は、p01sと一緒に自分の母の墓を綺麗にすると、午後から酒井を三河の関所までに送るため、そこでp01sと別れた。そして現在午後12時48分……三河関所に通じる峠道

 

「あ、あの……正純?」

 

「……jud」

 

「ど、どうしたんだい? そんなにショボくれて?」

 

「……落選したんです?」

 

「落選?」

 

正純の隣を歩く酒井は、落選という言葉を聞いて思った。何らかの正純が出した作品か何かが落選したのだと。それが政治関係のものだったならかなりショックだろうなぁ〜……と思っていた。

 

「それで……何に落選したんだい? おじさんじゃそんなに力になれないかもしれないけど、気分は晴れるかもしれないよ?」

 

と、いつもでは出さない様な先生風を吹かせて言った。だが実際の問題は……

 

「颯也の限定写真……落選したんです」

 

「……えっ?」

 

酒井にとっては予想外な回答だった。

 

「その……今日p01sから愛護颯也に関するファンクラブの存在を教えてもらって……それで今日丁度抽選会があったんで私も抽選したんですが、結果は残念で……」

 

(あぁ……あれかぁ〜)

 

それで酒井も合点がいった。というか颯也が知らない事を酒井が知っているのはどういう事なのだろうか?

 

(確か武蔵さんが言ってたやつだよなぁ〜。確か『愛護颯也くんファンクラブ』って名前の。俺が出る前に武蔵さんがやたらと興奮してたのがまさにそれってわけか〜)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酒井回想中……

 

 

 

 

 

 

 

「皆さま、準備はよろしいでしょうか? これは誰が当たろうが外れようが文句無しです! ーー以上」

 

『『『jud! ーー以上』』』

 

「おや武蔵さんがそんなに気合を入れてるなんて珍しいね?」

 

「誰かと思えば……酒井学長でしたか。今は集中しています。少し静かに願います……ーー以上」

 

(うわぁ〜……あれは真剣な目だ〜……)

 

自動人形である武蔵は、いつも無表情故分かりにくいかもしれないが……いつになく真剣な目をしていた。

 

「それでは……参ります‼︎ ーー以上」

 

そして武蔵さんは真剣な目のまま、今出ている通信枠を押しました。すると通信枠の画面が変わり、抽選中の文字が出ていたといいます。

 

「それなに?」

 

「なに? とは? ーー以上」

 

「いやさ、武蔵さんがさっき操作してたの……」

 

「まさか……酒井学長ともあろう方がご存知無いのですか? ーー以上」

 

「えっ? 俺知ってて当然のやつなの?」

 

「はぁ〜……やっぱりダメ学長ですね。ーー以上」

 

「な、なんでそこまで言われなくちゃならないんだよ⁉︎」

 

「ともかく、先ほどの回答のヒントに対しては颯也さまに関係ある事と答えます」

 

「颯也に関係ある事?」

 

「……すぐに出ないところを判断すると、やはりダメ学長でしたね。ーー以上」

 

「なんか解せないなぁ……」

 

「そんな事はどうでも良いとして、私どもがやっていたのはこれです。ーー以上」

 

「どれどれ……えぇーっと、『愛護颯也くんファンクラブ』? へぇ〜、こんなのあったんだ」

 

「jud。数年前からあります。確か颯也さまが中等部に進学されたあたりからありますね。ーー以上」

 

「そんな時からか〜。すごいね」

 

「颯也さまの姉として、とても鼻が高いです。エッヘン‼︎ ーー以上」

 

「あぁ〜……」

 

酒井さんはそれ以上は何も言えませんでした……

 

 

 

 

 

 

 

 

そして武蔵さんの抽選の結果はというと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……した」

 

「武蔵さま……どうでしたか? ーー以上」

 

「私たちは残念ながら結果及ばず……ーー以上」

 

航空艦武蔵は、よくいえば8つの船が繋がっている。右舷は前から順に品川、多摩、高尾。左舷は浅草、村山、青梅。そして中央が武蔵野と奥多摩であり、それぞれの船には武蔵同様艦長たる自動人形達が指揮している。与えられた名前も任されている船の名前だ。その8つの船を統括で指揮する存在が武蔵なのである。

 

そして全ての自動人形は、武蔵同様『愛護颯也くんファンクラブ』の会員となっており、今日行われた抽選会にも全員が参加していた。先の会話の様に、武蔵野から青梅まで全員が抽選から外れてしまった。後は統括の武蔵の結果のみだ。してその結果が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やった! やりました‼︎ 当選しました‼︎ーー以上」

 

「「「おめでとうございます‼︎ ーー以上」」」

 

「これも皆様のおかげです! 早速共有しましょう‼︎ ーー以上」

 

「「「わーい‼︎ ーー以上」」」

 

因みに彼女達は、いつどこで何が起きたか、またそれに対する素早い対処を行うためにそれぞれの状況を共有できる。それは何から何まで様々なのだが……ともかく今は愛護颯也の上半身ヌード+サイン入りの写真が全艦に共有されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酒井回想終わり……

 

(もし当たってたら喜ぶんだろうなぁ〜……それも見た事ない表情で)

 

「酒井学長? どうかしましたか?」

 

「ん? いや何でもないよ。でもさ、そのサイン入りじゃなくても颯也の写真は手に入るんだろ?」

 

「はい。1枚あたり銅貨100枚の価値だったので、私としては少し痛かったんですけどね……」

 

「確かに結構するね。まぁそれだけ颯也が人気って事なんだろうなぁ」

 

「そうですね。私も今日入ったんですけど、会員番号というのがありまして、私は6桁でした」

 

「高々の学生のファンクラブにそんなにいるんだねぇ〜。大したもんだ。それはそうと今日は何だか様子が変だなぁ〜」

 

「確かに、三河からの荷物ばっかりですね。逆に武蔵から三河にかけての荷が無い……なんか三河が形見分けをしてる様な感じがします」

 

「おいおい、そんな物騒な事言わないでくれよ……」

 

酒井が正純のその台詞に、冗談やめてよ〜、みたいなノリで答えた。それに正純も、まぁそんな事は無いでしょうと答える。そう答えたところで三河の関所の前にたどり着いた。

 

「はい、ここまでありがとうね。後は自由にしていいよ」

 

「jud。ありがとうございます。それと学長、この後武蔵に帰り着いたら後悔通りについて調べてみようと思います」

 

「後悔通り……ねぇ。なるほど、正純も一歩踏み込んでみるか」

 

「踏み込む?」

 

「jud。そうしたら……知らなかった事が見えてくると思うよ」

 

そう言いながら酒井は正純と別れた。

 

(後悔通り……私の知らない事……)

 

そして正純はのちに知るだろう……後悔通りで起こった事を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

14時22分多摩商店街

 

「にしても少し効いたな……」

 

「颯也くん、大丈夫ですか? まだ痛みますか?」

 

「いや、痛くは無いよ。ただなんだろうね……無意識にくらったからか、起きた時は少し痛みがあった程度だよ」

 

(あれで少し痛む程度ですか……)

 

「それにしても驚きましたよ! 颯也さんがまさか無意識で殴られかかった総長を庇うなんて」

 

「ホントさね。どんな芸当だいって思ったよ」

 

「全くですよ! 颯也くんがネイトに殴られた時は、今度こそなんらかの障害が残るって思ったんですから‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回想……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う〜ん……ん? いつのまに俺は寝ていたんだ?」

 

「そ、颯也⁉︎ 大丈夫ですの⁉︎」

 

「ネイトさん? どうしたの? そんな泣きそうな顔して」

 

「そ、その……誤まって颯也に裏拳をしてしまって……」

 

そこで颯也は理解した。先程少しだけ頬が痛むのはそれが原因なのだと……

 

「それにしても良かったですわ……私……自分でしてしまった事ですけど心配で」

 

「なるほど……この頬の痛みはそういう事か」

 

「ご、ごめんなさい‼︎ 本当にごめんなさい‼︎ 私、罪を償えと言うのでしたらなんでmっ⁉︎」

 

ネイトは最後まで言えなかった。何故なら言葉を紡ごうとしたネイトの唇に颯也の人差し指が優しく添えられていたからだ。

 

「女の子が男に対して、そう簡単に何でもしますなんていう言葉を言っちゃいけないよ? その言葉を最後まで言ってしまったら、君の高貴さが損なわれるじゃあないか。俺はそう思う。それにこれは多分、俺が君の胸を揉んでしまったトーリを庇ったからでしょう? ならネイトさんが謝る事なんて無いよ。逆に俺が謝るべきだ。心配かけてごめんね」

 

「そ、そんな……なんで颯也が謝るんですの⁉︎ 謝るべきは私で……」

 

「トーリが誰かに殴られるべき事をしでかした。それを分かっていながらも、無意識下であったとはいえ庇って……それで心配かけてしまったからさ。だから俺が謝るべきでネイトさんは謝らなくてもいいんだよ。はい、これで終わりね?」

 

「うぅ〜……相変わらず頑固ですわね……」

 

「ははは、ごめんね」

 

「ですが……それが颯也らしいですわ。ですが私も貰いっぱなしは性に合いませんの。ですから貴方がこの事を忘れかけた時にこのお詫びは致しますわ」

 

「そういうネイトさんだって頑固な所あるじゃないか」

 

「ふふっ……おあいこでしてよ?」

 

そう言いながらネイトは颯也に微笑み、自然な形で颯也の頭を優しく撫でていたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回想終了

 

「ははは……心配かけてごめんね」

 

「そう思うなら颯也くんが持ってる荷物を少し持たせて下さい」

 

「いや、それは出来ない相談です」

 

「そう言うと思いましたよ……もぅ、少しは頼って下さい」

 

「そうですよ! 私達そんなに力が無いって訳では無いんですから!」

 

「少しぐ、らい、頼られたいな」

 

「やめときな。コイツは何言ったって聞きやしないんだから。頑固にも程があるってもんさね」

 

「ま、まぁなんって言うか……よく言うでしょ? 女性の荷物は男が持つもんだって。だからここまで重い物を女の子に持たせるのは忍びないなって……」

 

「はぁ〜……本当に頑固なんですから」

 

浅間は呆れた顔になりながらため息をついた。颯也と一緒に歩いていた皆も同様な顔になっていた。

 

「それにしてもあれから10年ですか……何だか今考えると早いですよね」

 

「ホライゾンがいなくなって……ですね。あの時は皆気持ちが沈んでいましたよね」

 

「トーリとホライゾン、それに颯也が巻き込まれて、それで戻ってきたのが傷を負ったトーリと颯也だけ……当時は皆沈んださね」

 

10年前に起こった事件の話を皮切りに……颯也を除く皆が少し沈んだ気持ちになる。だがそんな中鈴は……腰についてある複数の鈴を片手で鳴らした。

 

「こ、これ……合図。最初にやってくれたのホライゾン、なの。私、目が見えない、から私が驚かないようにって」

 

「あぁ……確かに昔からアタシらも真似てやってたかね〜」

 

「でも、ホライゾン、がいなくなっても、この合図を変わらずにやって、くれた人がいたの。それが、トーリくんと、颯也くん、なの。2人が、1番辛かった、はずなのに、変わらずにやって、くれたの」

 

「……その話を聞くと懐かしいな」

 

「颯也くん?」

 

「思い出す度に……あの時の俺は何もできなかった事を思い知らされる。でも、あの時があったからこそ、あの時以上に強くなろうと決めた。あの時があったから、今の俺がいるんだって、そう思えるよ」

 

「辛くは……無かったですか?」

 

「勿論辛かったよ。目の前にいたのに……大切な人がいなくなるなんて、手から零れ落ちる事以上に辛い事なんて無かったさ。でも、だからこそ前を向こうと思った。これ以上、俺の手から大切なものが零れ落ちないようにってさ」

 

颯也はその言葉を、悲嘆に満ちたような表情ではなく逆に笑みを浮かべて言った。これまでの話を振り返ればそんな顔など出来ないはずなのに……特に当事者であるのなら、そんな顔は出来ないはずだ。

 

だが颯也は笑う。もう悲しまなくて良いと。沈んだ気持ちにならなくても良いと。

 

「それよりも今は、明日トーリの告白が成就できるように今日は楽しもう。そのために今準備してるんだからさ」

 

「そう、ですね。うん! 湿っぽいのはここまでにして、今できる事をしましょうか!」

 

「そうさね。それと颯也、1つ荷物をよこしな!」

 

「うぉ⁉︎ 直政さん急には危ないよ⁉︎」

 

「そうしないとアンタは荷物を他人に持たしゃしないからさ。アタシはアタシでやらせてもらうさね」

 

「強欲だよ直政さん……」

 

「アンタほど強欲じゃあないさね?」

 

「えっ? 俺って強欲かな?」

 

「自分で気付いてないあたり、ハイディが言った通り自分には無頓着さね」

 

「ホントですよ」

 

「そうかな〜?」

 

「そう、だよ?」

 

「向井さんまで⁉︎」

 

「ふふっ、鈴さんにまで言われてますよ? 颯也くん」

 

「あ、浅間さんはどう思う?」

 

「さぁ? どうでしょうねぇ〜?」

 

「そ、そこ答えないの⁉︎」

 

商店街の中を、男1人と女4人がそんな会話をしながら歩いていく。先ほどの沈んだ話がまるで無かったかのように、5人の顔は明るかった。

 

そうして歩いていると、見知った顔に会った。点蔵、ウルキアガ、それに守銭奴コンビのシロジロとハイディだった。

 

「アンタらこんな所で何やってんのさ? それにその荷物……」

 

「あぁこれで御座るか? これは今日の前夜祭で使う食材に御座る」

 

「アンタらもかい……皆どんだけ前夜祭盛り上がる気さね?」

 

「まぁそれだけ皆トーリくんの事が気になってるって事ですね。そういえばトーリくん、今どうしてるでしょうか?」

 

「確か明日の告白のために後悔通りを歩くって言ってましたよ?」

 

「アイツあの日から1回もあの場所を歩いた事がないだろう? 大丈夫さね?」

 

「確か喜美が見守ってるはずですけど……」

 

「……あれから後悔通りの前を行ったり来たりしてるな」

 

「ど、どうして分かったで御座るか⁉︎」

 

「風がそう教えてくれるからな」

 

「風……で御座るか?」

 

「あぁ。さて、それで点蔵達もそれで買い物は終わりか?」

 

「うん! このお店の魚を買ったら後は前夜祭に備えるだけだよ〜」

 

点蔵の代わりにハイディが言った。ハイディがそう言うと同時に、シロジロが料金を払い終えて商品を受け取った。

 

「jud。ならその荷物も後は俺に任せてくれないか? 下ごしらえを先に済ませておくからさ」

 

そう言って颯也は、いつのまにか直政が持っていたはずの荷物も持ち、そして点蔵達がもっている荷物までも受け取ろうとする。だがここで待ったをかけた人物がいた。

 

「颯也くん1人だけに任せてはおけません‼︎ 私も手伝いますからね‼︎ 最低でも半分はやらせて下さい‼︎」

 

「浅間さん……」

 

「嫌と言っても無理矢理手伝いますからね‼︎」

 

「……分かったよ。なら半分は任せても良いかな?」

 

「っ! はい‼︎」

 

「じゃあこの半分は任せたよ。こっちはこっちで先にやっとくから」

 

「えっ? 一緒にやらないんですか?」

 

「ま、まぁこっちにもやる事あるし……それじゃあまたね」

 

そして颯也は半分荷物を抱えてそこから颯爽と姿を消した。

 

「ちょっ……行っちゃいました」

 

半分下ごしらえを任せてもらえる事には成功したものの、それは浅間さんが予想しないものでした。ここからは浅間さんの妄想です……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『颯也くんって、手際が良いですよね?』

 

『あぁ……これは昔からやってるからね。そう言う浅間さんもとても手際良く見えるよ』

 

『わ、私も昔から家事全般はやってますし……』

 

(そ、颯也くんにいつか私の料理を食べて欲しいからなんて口が裂けても言えません‼︎)

 

『ん? どうしたの浅間さん? そんなにぼぉっとして。ひょっとして調子悪い?』

 

『えっ? い、いえ! そんな事はないですよぅ〜?』

 

『そう? でも顔が若干赤くなってるし……ちょっとごめんね』

 

『えっ? えっ⁉︎ ちょっ、颯也くん⁉︎』

 

颯也さんはその時、浅間さんの前髪を片手で抑えておでこが見える状態にすると、自分のおでこと浅間さんのおでこを密着させました。

 

『〜〜〜〜っ⁉︎///』

 

『う〜ん……熱はないようだけど……でも顔赤いし……』

 

そう颯也さんがつぶやきながら考えている中、浅間さんはと言うと……

 

(す、凄く恥ずかしいですけど……でもこれはこれで物凄く得した気分! というよりもずっとこうされていたいです‼︎ それで抱きしめて貰えればなおのこと良いです‼︎)

 

そんな妄想をしていました。そうしていた事もあり……

 

『あ、あの……浅間さん?』

 

『は、はい? なんですか颯也くん?』

 

『な、なんで俺って抱きしめられてるのかな?』

 

『えっ? えぇっ⁉︎』

 

そこで浅間さんも初めて気が付きました……最初は驚いていたものの、これはチャンスだと思い

 

『えっと……これはですね? さっき私を心配してくれた御礼ですよ』

 

『お、御礼?』

 

『はい、御礼です。颯也くんはどうせ御礼なんていらないって言うと思いますから、そう言われる前に……です』

 

そう言いながら浅間さんは颯也さんの背中をナデナデ、そして頭もナデナデしていました……

 

『っ⁉︎///』

 

『ふふっ、照れてますね? 凄く……凄く可愛いですよ♡』

 

『か、からかわないで下さい……』

 

『からかってません。本音、ですから』

 

『〜〜〜〜っ⁉︎///』

 

(ふふっ、本当に……あまり照れた顔が見れないから、私としてはとても嬉しいです♡ 叶うならずっと一緒に……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まち……聞こえてるかいアサマチ‼︎」

 

「ひゃい⁉︎」

 

「どうしたんさね? そんな変な声出して」

 

「い、いえ! 急に声をかけられたので……」

 

「さっきから呼びかけてたさね」

 

「颯也さんが去ってからずっと上の空でしたよ?」

 

「えっ……えぇっ⁉︎」

 

そこで浅間さんはさっきまで妄想していたのだと自覚しました。

 

「ふむふむ……ははぁ〜ん、さてはアサマチ颯くんで妄想してたでしょう? それに一緒に前夜祭の下ごしらえの場面を」

 

「っ⁉︎ そ、そんな事は無いですよぅ〜? ただ、颯也くんと一緒に出来なくて残念だと思っただけですよぅ〜?」

 

「浅間、さん、それほぼ認めて、るんじゃ……」

 

「……あっ」

 

その後、浅間さんはとても顔を真っ赤にし、頭からは湯気も出ていたと言います……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回こんなサブタイトルにしましたけど、あれほぼ前半だけにしか関係ないんですよねぇ〜。でもどうしようかな迷った挙句で……という事です。

次回はもう少しマシなサブタイトルつけようと思います‼︎

それではまた!
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