境界線上のホライゾン 理不尽壊しのリインカーネイション 作:橆諳髃
15時00分颯也の住む部屋
後悔通りには1つポツンと小さなお墓がある……それは10年前の出来事だ。
当時、武蔵の改修が決まった事もあり、武蔵で改修式典が催される予定だった。それに出席するために、三河君主であった松平元信は馬車でその式典に向かっている最中だった。そして馬車を通ろうとする脇には、元信を歓迎する人達が通りに沿って元信が乗った馬車を見送っていた。
そんな歓迎ムードの中……悲劇は起きたのである。
人混みの中から少女と少年が2人飛び出したのである。それもまだ初等部で言ったら1年生くらいの年齢の子らが……。少女は後ろを振り返り、悲しい顔をしながら少年から逃げようとしていた。少年は、悲しい顔で自分から離れようとする少女を引き止めようと追った。だが運が悪い事に、式典に向かう途中だった元信の馬車の前に躍り出てしまったのである。
そしてもう1人……飛び出した少年がいた。その少年は、不意に道の真ん中に出てしまった少女と少年とは違い、明確な意思を持って馬車と少年少女の間に躍り出たのだ。
そこにあったのはたった1つ……
大切なものを守るためならば……もう1度もらったこの命を使ってでも守ると……
だがその意思は……半分しか守れない程未だ弱かった。
ー●◯●ー
「さて、下ごしらえはこれで終わりだな。俺としては物足りないが……」
浅間達と別れ颯也は1人下ごしらえを終わらせていた。それも別れてそんなに時間は経っていないというのに……
「この下ごしらえしたやつはこの空間に収納して……」
ここで変な発言を颯也がした事を……皆さんはお分かりだろうか?
下ごしらえをするまでは至って普通だった。しかし、その後の発言が問題だ。『下ごしらえしたやつをこの空間に収納』……どういう事だろうか?
実際に見てみた。
なんと颯也は空間を歪ませて別の空間を作っていた。そしてそこに下ごしらえをしたものを持って入る。そして出てくると、颯也は何も持っていなかった。そして空間も颯也が出ると消えてしまった。
某有名アニメに出てくるピンク色のドアや、現実から忘れ去られた存在やものが行き着くとされる世界の管理者的妖怪の能力が思い出される。
「後は……トーリの背中を押しに行くかな」
そして颯也さんは自分の部屋から出て行きました。しかし……その部屋がどこにあるのかは、梅組の皆はおろか武蔵の住民ですら知りません。
15時2分後悔通り
私、本多正純は今窮地に追いやられていた。酒井学長を武蔵の関所まで送り届けた後、後悔通りに赴いていた。しかしまだ武蔵に来て1年……後悔通りには隣接している休憩所を取っては来たが、少々道に迷ってようやく通りに出た所をある人に捕まったのだ。
それが私の父である。父は馬車に乗ってどこかに向かう途中だった。しかし私をここで見かけてわざわざ立ち止まってくれたようだった。そして父からここで何をしているのかを問われ、咄嗟に出たのが後悔通りの調査という言葉だった。調査は調査で間違いないが、後悔通り全体を調べるために来たわけではない。10年前ここで何があったのか……それを知るために来たのだ。
だが父から、私が通ってきた休憩所の場所はどんな所なのか分かったかと問われた。父には普通に、私が後悔通りを調査している風に捉えられたようで……私は分からなかったと素直に答えたが、まだまだだなと落胆されたようだった。
「それにしてもご子息、その手に持っているもの、中々に良いものですなぁ……」
そこで突然父とは違う声が聞こえた。その声の持ち主は、父の向かい側に座っている人物のようで……見たところ商人みたいだった。
「私は色々な商品を取り扱ってはいますが、そのような物も取り扱っているのですよ。良ければ譲ってほしいものですが……」
「ほぅ、私にはよく分からんが正純、そちらの物を渡して差し上げなさい」
「えっ? えぇっと……これは……」
本当はこれ私のじゃないんだけどなぁ〜……
ここに来る途中、配達中のマルゴットに会った。それで生徒会宛の荷物という事で渡されたが、品の名称を見てみるとどうやらエロゲの様で……どうやら頼んだのは葵らしい。
そんな訳で葵に会ったら渡してと頼まれた。
(私も一刻も早く手放したいんだけどなぁ〜……)
そうはいってもこれは他人が頼んだ物だ。例え父が世話になっている人に譲ってと頼まれても、渡すわけにはいかない……しかし
「どうした? 早く渡しなさい」
(ち、父からの圧が……)
そして渡すほうに気持ちが傾いた時……
「うわぁ〜〜〜‼︎」
そんな叫び声が聞こえた。その声がする方向を見ると、葵がとても疲れた様子で立っていた。
「トーリ、大丈夫か? って、大丈夫そうじゃないな……」
そして葵の後ろからは、颯也が普通に歩きながら来ていた。
「はぁ、はぁ……おっ……」
「あっ……」
ここで私と葵の目が合った。
「おぉ! セージュン奇遇だなこんな所で‼︎」
私を見つけた瞬間、葵は顔を真っ青にしながらいつのまにか私の目の前まで来て肩を掴んでいた。
「あ、葵⁉︎ 大丈夫かその顔?」
「あっ? おぉ、大丈夫大丈夫! それよりもこれ、届けに来てくれたんだろ⁉︎ ナイトの奴が中々届けてくれなくてよ」
そして私が持っていた荷物を取っていった。
「やぁ副会長。こんな所で奇遇だね」
そして颯也も私の方に近付いてきた。
「そ、颯也もどうしたんだ?」
「トーリの付き添いだよ。トーリが心配でね」
颯也はニコッと擬音が出るくらいの笑みでそう言った。
15時1分 教導院前
「やぁ喜美さん、それにオリオトライ先生」
「あら颯也じゃない。こんな所でどうしたの? 浅間達と一緒に買い出ししてたんじゃないの?」
「あぁ、それならもう終わったよ。半分は浅間さんがやると言ったから半分は任せて、後の半分はさっき終わらせてね。後は……トーリがあれから動いてないようだったから後押ししようと思ってね」
「よく分かったわね? うちの愚弟があれから動いてないって」
「風がそう教えてくれたから……」
「ホントに颯也って普通の人と違って特殊よね? 私の攻撃とかもそうやって躱されるし……というか毎回体育の時私の動き読まれてるわよね?」
「まぁ先生の風は正直ですから……」
「風ねぇ……それって毎回どうやって読み取ってるの?」
「それは企業秘密です」
「えぇっ! ケチッ」
「ケチと言われましてもね……」
「うふっ、そう言われても当然よね? だってアンタは秘密が多過ぎるもの。別に1つくらい教えてくれてもいいでしょう?」
「き、喜美さんまで……」
「ねっ? 喜美だって知りたがってるんだし、1つくらいいいでしょう?」
「……仕方ないですね。あっ、その前に先生、後ろの髪はねてますよ?」
「えっ? あっ、ホントだ……」
「先生、手櫛ではダメです。俺が直してあげますから少しじっとしてて下さいね?」
「えっ? そ、颯也が直してくれるの⁉︎」
「お、俺じゃダメですか?」
「い、いいえ違うのよ⁉︎ ただここは同じ女性の喜美がやると思ってたから……でもここは颯也にお願いしようかしら?」
「畏まりました。では……」
そしていつのまにか颯也の手には櫛が持たれていた。それから颯也は、オリオトライの髪に自然な形で触れ、はねている髪を直しにかかった。その間オリオトライはというと……
「ふにゃ〜……」
物凄く気持ちよさそうにしていた。そして……
「……」
喜美は少し不機嫌そうにしていた。程なくして……
「はい、これで直りました」
「ふにゅ〜……って、えっ? もう終わり⁉︎」
「えぇ、終わりましたよ」
「そ、そう……もっとやって欲しかったな……」
「えっ? 今なんて?」
「ううん、何でもないわ」
「さぁ颯也! 次は私の番よ‼︎」
「えっ? でも喜美さんはいつも髪は整っていると思うんだけど……」
「あらやだ⁉︎ 風が急に強く吹いて折角セットした髪が少し乱れてしまったわ! だから颯也? 私もお願いね?」
と、喜美はセットしていた髪をわざと乱し、自分も颯也に髪を直させようとする。颯也としては……今の一瞬で強い風など吹いてない事は分かっている。そして喜美が自分で自分の髪を乱している事も目の前で見ていたから知っている。
だが何故だろう? そんな風に男性に甘えようとするその女性の仕草は、颯也にとってはとても可愛らしいものに見えた。否、見えてしまった。
「ふぅ……仕方がない人ですね。分かりました」
そう言って颯也は喜美の髪にまずは自分の手を触れさせ、手櫛で少しとかす。そして髪が乱雑に絡まらない状態にしてから、本命の櫛で喜美の長く栗色の美しい髪をとかした。
「んっ⁉︎ んんっ……♡ んあっ……」
(す、凄く気持ちよさそう……)
喜美さんは颯也さんに髪を櫛でとかれている間物凄く気持ちよさそうな表情をしており、それを隣で見ていたオリオトライさんは先程髪を直してもらったにも関わらず喜美さんの方を羨ましそうに見ていました……
「はい、これで直りましたよ」
「はぁ……はぁ……もぅ、終わりかしら? もう少しされていたかったのだけど……」
「ど、どうしたんですか喜美さん? そんなに息を切らして……」
「もぅ……分からない? 貴方が私をこうさせたのよ?」
「た、ただ喜美さんの髪を直していただけなんですが……」
「……本当に無自覚というのは恐ろしいわ。でも……そんな所も私は好きよ♡」
「っ⁉︎/// じゃ、じゃあ俺はトーリの所に行ってくるんで!」
颯也は自分が照れた所を誤魔化すようにして喜美達の前から去って行った。
「うふふっ、可愛いんだから♡」
「ホントにそうねぇ。それに初心だし」
「そこがまた可愛いのよ! しかもあの初心さは昔から変わらないし……というか年をとるにつれて拍車がかかった感じよね? だからこそ颯也の事が好きなのだけど」
「はぁ〜……ライバルが多いわねぇ」
「あら先生? 本気で狙ってるの?」
「そんなの当たり前じゃない? あんなにカッコよくて、それに優しくて可愛い。前だって結構酔っ払った私を優しく介抱してくれたし……」
「でもキスされた事ないわよね? なら今の所私が颯也の事を好きでいる女の中で1番優位だと思うわっ‼︎」
「それはどうかしらねぇ? まぁ私達以外にも颯也の事を好きな子は大勢いるってことよね〜」
「なのに当の本人は全く自覚が無いんだから……焦れったいにもほどがあるわね」
「確かにそれは言えるわね〜……あっ」
「どうしたの先生?」
「颯也の秘密……何も聞けてないわよね?」
「……あっ」
喜美さん達は颯也さんの秘密を聞きそびれた事に今更気付きました……
15時3分後悔通り
喜美さん達と別れた俺は、通りの前で立ち往生していたトーリを何とか励ましつつ一緒に歩いていた。トーリはとても怖かったようで、だから手を差し伸べて一緒に歩こうと言った。その時のトーリは、俺のその言葉が意外だったのかポカンとしてはいたが、でも昔と変わらない笑い顔で俺の手を取って後悔通りを歩いて行った。
だがやはり怖いらしく、中盤辺りまで行くと脇目も振らず叫びながら俺の手を離して走って行った。それに俺も付いて行った。
その付いて行った先で、武蔵アリアダスト教導院生徒会の役員で副会長の本多正純さんに会った。
「やぁ、副会長。こんな所で奇遇だね」
そう挨拶した。でもおかしな点に気付くかな? 俺は大体、誰かの名前を呼ぶ時は名前にさん付け、もしくは名前を呼び捨てで言ってる。でも本多さんだけは副会長と呼んでいる。これには訳があって、俺が彼女の事を普通に男として見なしていると、彼女が思い込んでいるからだ。本当はそんなことはないんだけど……まぁそれもいずれは崩れる。それがいつくるかは分からないけど、末世よりも先に来るんだろうなと……そう感じている。
そうして挨拶したら、どうしてトーリと一緒にいるのか聞かれたから、トーリが心配だからと返した。
それで俺の目の前には、本多さん以外に馬車が1台止まっていた。多分乗っているのは本多さんのお父さんと……
(この風は商人か……だから本多さんも困っていたんだな)
そのやり取りは遠目から見えていた。見ているに、今トーリに持っている……物を商人が欲しがったからだろう。まぁ渡してしまったらいっそのこと楽だったんだろうが……そこは真面目な本多さんだ。人の物……自分には相入れない物でも勝手に他人には渡さなかった。
(ここでトーリを連れて立ち去るのも良いが、挨拶ぐらいはしておこうかな)
そう思って俺は車輌に近付き
「副会長のお父様と……確か商人の小西様でしたかね? こんにちは。副会長にはいつもお世話になっております」
「う、うむ」
「わ、私の名前をご存知で⁉︎」
「えぇ、武蔵では他では取り扱っていない商品も幅広く扱っていると耳にしたことがありますから……先程の副会長とのやり取りも
「な、なんと⁉︎」
「まぁそんな訳で、あなたの事も存じ上げていましたよ。さて、私達はそろそろ時間なのでここでお暇させて頂きます。それと副会長、今日の夜にトーリの告白前夜祭をやるんだけど来る?」
「えっ? あ、あぁ……それはちょっと難しいな。武蔵野に行くには村山の関所を通らないといけないし、何より門限とも被りそうだ。そこまで父上には迷惑をかけれないから……それに多分花火を見に行くだろうし」
「そうか……まぁそれは仕方ないよね。それじゃあ花火を楽しんできてよ。トーリ、そろそろ行こうか」
「あ、あぁ! 行こうぜ! じゃあなセージュン‼︎」
そして俺とトーリは本多さん達から離れた。
ー●◯●ー
「それにしてもこんな所で後悔通りの主人に会うとは思いもしませんでしたわ」
「後悔通りの主人?」
「あぁ、正純はまだここに来て1年目だから知らない事だったな。正純、あの石碑は見えるな?」
「石碑? あの小さく立っている物の事ですよね?」
「そうだ。その石碑は、10年前ここで亡くなった少女の石碑なのだ」
そして父は語ってくれた。ここで10年前、何が起きたのかを……。
まとめるとこうだ。10年前の武蔵改修の際、式典に参加するため元信公が馬車で向かっていた。そして後悔通りの中間辺りで悲劇が起きた。誤って馬車の前に少年と少女が飛び出したのだ。少女は少年から逃げるように、逆に少年は少女を追いかけるように……
それに馬車を操作していた業者は気づき、馬を止めようとしたが間に合わず、馬は少年と少女をひこうとした。だがその時、少年少女と馬車の間に割って入った1人の少年がいたのだ。その少年は、まるで少年少女を守るかのように手を大きく広げて馬車の前に立ったのだ。
だがそれでも結局は3人とも馬車に轢かれてしまった。そして3人とも三河にある医者の元に連れられたが、帰って来たのは少年2人だけだった。それも身体に一生残る傷跡を残してだ。その事故の後、その少女の冥福を祈って立てられたのが後悔通りにある小さな石碑……そこに彫られてあった名は、ホライゾン・アリアダストという少女の名だった。
それを聞いた私は……悲しみと同時に深い疑問に囚われた。それは、目の前で大切な人を亡くしたにも関わらず……
「それなのに……何故あの2人は未だに笑顔を浮かべて前に向かって進んで行くのでしょうか」
「それは私達にも計り知れない事だ。当の本人達にしかな……そろそろ時間だ。ではな、正純。出してくれ」
そして正純の父、正信はその場を後にした。その場に残されたのは……疑問を投げかけた正純だけだった。
ー●◯●ー
トーリを喜美さんの所まで送った後、俺は酒井学長に今から行きますと通神で送った。それからすぐに返信が帰って来た。場所は三河にあるお食事処で、一応地図も添付されていた。だから……
「お待たせしました、酒井学長」
すぐさま本人の目の前に来たのだが……何故か本人は目を丸くしてポカンとしている。それは酒井学長だけでなく、一緒の席に着いていた人達も同じ様に……
「お、オメェナニモンだ?」
最初に声をかけてくれたのは、白髪で一度見ただけで歴戦の猛者と思わせる様なおじさんだった。年は……まぁ酒井学長と一緒にいる時点で酒井学長と同い年だろう。
それで酒井学長の隣に座っている人は、所謂文系ですよってアピールしている格好をした眼鏡をかけたおじさんで、これまた酒井学長と同い年だろう。
そしてさっき言った歴戦の猛者おじさんの隣には、若い……俺と同い年くらいの女の子が正座していた。長い髪はポニーテールにしていて、瞳は若輩ながらもとても強そうな気配を帯びていた。そして着ているのは……多分三河にある教導院の制服だろう。
そして個室の入り口付近に立っている人も女性だ。この人は……気配から察するに自動人形なんだろう。そして風が教えてくれるんだが、歴戦の勇者おじさんの妻らしい。
おっと、長らくこの場の状況を長考してしまいそうになってしまってたな。ともかく驚かせたのは申し訳ないとして、歴戦の勇者おじさんが言った様に少し自己紹介をさせてもらおう。
「いきなり驚かせてしまって申し訳ありません。私は武蔵アリアダスト教導院から参りました。愛護颯也と申します。この度は酒井学長からのお誘いで馳せ参じさせていただきました」
とまぁ、とりあえず失礼にならない様にお辞儀をしながら自己紹介をした。そしたら……
「愛護颯也って……あのか⁉︎」
「おぉ! 彼がそうなのですね酒井くん!」
と、2人のおじさんは俺の自己紹介に興奮気味だった。
「あの……どういう事で?」
「なぁにとぼけてんだ? お前の事は三河にも届いているぞ、武蔵の特務師団長」
「何でも数年前に不届きを行なった鬼族を簡単にあしらったとか! まさかこんな所で会えるとは‼︎」
不届きを行なった鬼族をあしらった……あぁ、多分あれか? 確か中等部に上がる前……各地を襲撃して回る鬼族が現れた。襲撃された村は金品を巻き上げられたりして、当然の事ながら生活に困る人も現れたくらいだ。それには各国も腰を上げて鬼族の対策を立てたが……それの全てはことごとく失敗に終わってしまった。
何故なら、その鬼族の連中は妙に頭がきれて、各国の対応にも何故か先読みをさらる始末で……だから簡単には捕まらなかった。
だがここでとある少年が現れた。それも中等部にあがりたてか、もしくはギリギリ初等部の年齢の……。まぁそれが俺だったわけで……
ある日、その鬼族が武蔵に乗り込んできた。まぁなんで分かったかと言ったら……風が教えてくれたからで、それですぐその場に行ったら……
「て、テメェどこから湧いてきやがった⁉︎」
と、数名の鬼族達が武蔵に侵入していたので……
「その台詞は俺のだと思うんだけどね?」
と鬼族達の背後に移動してそう言った。
「なっ⁉︎ いつの間に……」
「答えろ……2度目はない」
そう殺気を出しながら問いつめた。
「こ、このガキィーッ‼︎」
殺気に少したじろいだものの、数名の鬼が俺に向かってきた。なので……
「そうか……それが貴様らの答えだな?」
えぇ、普通にのしましたとも。えっ? どうやったか? 素手で1発だけど?
まぁその後、何故かその場にいたハイディさんに写真を撮られたり、その翌日には武蔵の通信にも載ったくらいで……それも数日でほとぼりは冷めた。
俺としてはそれで助かる。何日もずっと注目されっぱなしというのは……なんかいたたまれないし。だからそれで正直助かった。
だが……まさか今この場で当時の話になるなんて……
「そ、それは誠に御座るか⁉︎」
と、ここまで話に加わらなかったポニーテールの子が、俺に興味を持ってますというぐらい目を輝かせながら俺を見ていた。
「あぁそうだぞ! 昔各国が手を焼いていた鬼族どもを1人で血祭りにあげた男だ‼︎」
「血祭りにはしてません‼︎ ただ普通に再起不能にしただけです‼︎」
「それも中々に凄いと思いますけど……」
「と、ともかくお主は強いので御座るな‼︎」
「あぁ強いぞぉ! 下手すりゃワシよりもな‼︎」
「勝手に答えないで下さい‼︎」
「そ、そうで御座るか! なら今からしばし手合わせ願いたいので御座るが‼︎」
「君も真面目に受け取らないで‼︎」
「まぁまぁそう言わずにさぁ〜……手合わせしてやってよ」
「さ、酒井学長まで……」
周りを見ると……何故か俺とポニーテールの子が戦う事が決定している雰囲気になっていた。
(これは……観念するしかないかな〜)
「……分かりました。どうやら一戦しないと帰れなさそうですから」
「か、かたじけのう御座る! では早速‼︎」
という事で……俺とその子で戦うことになった。戦う場所は店の前にある通りでする事に……
「それじゃあ一本勝負で相手に有効打を与えた方が勝ちな? それじゃあ両者構え!」
それで対面にいるポニーテールの子は腰に差してあった刀を抜いた。あっ……そういえば名前を聞いてなかったな〜。
「そう言えば君の名前はなんっていうの?」
「拙者で御座るか? 拙者は本多・二代に御座る」
「本多……まぁそれは後でもいいか」
「所でお主は構えないので御座るか?」
「ん? 構えるとは?」
「武器を持っていないように御座るが……」
「武器かぁ……ごめんね。俺は……俺にとっての大切な誰かを傷つけられそうになる時以外では武器を使わないって決めてるから……」
「そうで御座るか。それは高尚なものと思うで御座るが……拙者としては少々舐められたと思わずにはいられないで御座るな」
「そんな事は無いんだけど……」
二代さん……あれは間違いなく怒ってるよね……。そんなつもりはなかったけど……でもそうだな……二代さんを舐めている訳ではないという事を証明するために、自分で作ったルールを今ここで少し破る事にした。
「……分かりました。俺はあなたを舐めている訳ではないという事を証明するために……俺は自分で作ったルールを今少しだけ破ります」
「おぉ! お主の武器を見せてくれるので御座るか‼︎」
「へぇ〜……今まで頑なに見せなかったのに珍しいね」
「そ、そうなのですか?」
「あぁ、俺も実は見た事なかったんだよ。だからどんなものか少し楽しみなんだよなぁ……」
「おいおい、そんな呑気な事言ってる場合か? あの小僧……武器を使うって言った手前から雰囲気がガラリと変わったんだが……」
会話をしていた酒井たちがその声で颯也の方を向くと、確かに雰囲気は変わっていた。それも、そういう前までは確かに真剣だったが、宣言した後はそれ以上の目つきになっていた。そして颯也は虚空に手を伸ばした。
「来い……」
颯也がポツリそう呟くと、さっきまで何も無かった颯也の左手に一振りの刀が鞘に入れられた状態であった。
「さぁ……始めようか……」
side 二代
(ふ、雰囲気が変わったで御座る……)
拙者の目の前に立つ男……愛護颯也という名前で御座ったか? ともかく武器を使うと宣言してから雰囲気が変わったで御座る。
(それもなんと静かでありながら気迫に満ちた闘気に御座ろう‼︎)
この者……戦慣れしてるで御座るか? しかし……
(それでも拙者には関係御座らん! 全力で当たるのみに御座る‼︎)
「よし、両者構えたな! ……始め!」
父の合図により、手合わせが始まったで御座る。
「いざ! 参る‼︎」
拙者は術式、『翔翼』を使い颯也殿に迫る。対して颯也殿は構えたまま動く様子はない。様子見をしているので御座ろうか? それとも……この速度が見え申しているのか……
(ならば相手の背後に回る!)
さらに『翔翼』を使って速さをあげ、相手の後方に回った。相手は拙者の動きが見えておらぬのか、前を向いたままで御座った。
背後に完全に回り込んで、手に持っていた刀で背中を斬りつけるように振るう。勿論寸止めで御座るが……
しかしながらその考えが甘かったと思い知らされたで御座る。
ガッ‼︎
まず先に手に衝撃を受けた後、その様な音が聞こえ申した。颯也殿が反応したので御座ろう。だが目に見えるのは、未だに拙者を背を向けたままの颯也殿だった。
そこで拙者もようやく気付いたので御座る。何故その音が聞こえたのかを……
(刀と刀同士であるならば、そんな音は聞こえないはず……一体何が……っ⁉︎)
ようやく手首の方を見た。すると、拙者の刀の鍔の部分に颯也殿の持っていた刀の鞘先が当たっていたので御座る。それによって先ほどの音が聞こえたので御座るか……
(しかも背後を振り返らずにこの芸当で御座るか……)
「どうしたのですか? もう攻撃はおわりですか? 見た所それが全力ではないでしょう? 本気で来ないのなら……」
こちらから行かせていただきますよ?
(っ⁉︎ こ、これはっ⁉︎)
拙者はその殺気を受け、全力で相手から遠ざかった。それでようやく颯也殿もこちらを振り向いた。
その目を見ると……拙者を完全に討ち取るといった目をしているように見えた。
(……拙者の方が颯也殿を舐めていたので御座るな)
拙者自身その考えは持っては御座らんかったが……無意識でそう思っていたところもあるので御座ろう。その結果が今の拙者で御座るな……
「あい申し訳なかった。拙者、颯也殿をどこかで下にみていたのかもしれぬで御座る。だからここからは……拙者の全力を見せるで御座る‼︎」
『翔翼』を何重にも展開し先程よりも更に早く……
(いや! もっと速く‼︎)
拙者はその速さのまま颯也殿に幾重にも斬り付けを行なったので御座る。
side out
(さっきよりも速くなったな……)
二代さんを見てそんな感想しか出なかった。まぁ速さのせいで通常の人ならば二代さんが分身している様に見えるだろう。だが俺からすればその様には見えず、たださっきよりも幾分か速くなっただけで……
そして振られる刀も、鞘で受け流す。それも俺は刀身を抜かずに、鞘の中間部分を持って、鞘先で受け流す。それも刀の刃の部分にはぶつけず、刀身の脇部分に鞘先を当てて起動を晒しているだけに過ぎない。
(ただこれが槍であったならば状況は違っただろうな)
まぁとりあえず今は受け流す事だけをしていた。そして……
「ハァ……ハァ……」
二代さんは呼吸を乱していた。まぁ確かにあの速さのまま数十分も動きながら刀を払ったら、そうなってしまうのも無理はない。それに単調なものだけでなくフェイントもかけてきたから、相手の疲労は想像を優に超えると思う。
まぁ、これだったら普通に他教導院の役職持ち、戦闘系の人達に遅れは取らないと思う。それにまだまだ伸び代あるし……
(って、いつのまに上から目線してんだよ俺は……取り敢えずは相手も疲れている様だし、サクッと終わらせてしまおうか)
「それじゃあ今度は俺の番だね。といっても一太刀しか払うつもりは無いから……よく見ておいてね?」
そうして俺は初めて刀の持ち手を握り、鞘から静かに刀身を抜き始めた。
徐々に露わになる刀身からは、眩いばかり光が発せられていた。その光は、対面にいる二代も見惚れるほどのものだった。だがそれも束の間……
(っ⁉︎)
颯也の姿が消えた……
否‼︎
シュルシュルシュル……カチンッ
二代の後ろでそんな音が聞こえた。聞こえたと同時に、二代の持っていた刀が粉々に砕け散った。
「な、……なんと」
「ふぅ……それじゃあこの勝負、俺の勝ちで良いよね?」
ここに、愛護颯也と本多・二代の勝負は決着となった。
いやぁ……読者の皆様お久しぶりです!
「ホントだぞ。何やってた?」
引越しの準備とか色々とですね。今年から新社会人ですから……
「なら書くペースも今より物凄く遅くなるな……」
そうですね……とても残念な事なんですが……。でも、取り敢えずアニメ一期は終わらせたいです!
「……それ他の所でも言ってなかったか?」
ギクッ……ま、まぁそれはさておきとして……「逃げたな」今回はちょこっとだけ出た武装の説明をさせて頂きます!
解説
武装名:???
登場作品:機動戦士ガンダムSEED MSV
特徴:日本刀の形をしていて全体的な色合いは白と赤
この作品やガンダムが好きな人は大体分かる武装です! 特に演出もGジェネレーションに出ているものを起用してますので、これをやった事がある人も分かるかもしれませんね。
という事で本日はここまでとさせていただきます! 次回お会いしましょう!