境界線上のホライゾン 理不尽壊しのリインカーネイション 作:橆諳髃
それで解説云々はまた後で書き足します‼︎
それでは長らくお待たせしました‼︎ ご覧下さい!
19時30分 三河関所付近の番屋
トレスエスパニアの学生が、付近で何か怪しい動きはないかと意識を張り巡らせていた。ここは三河の地、そして松平元信がおさめる国だ。大罪武装を制作した本人であり、トレスエスパニアにも2つ献上してもらってはいるものの、敵国に変わりはない。
そもそも大昔の重層統合騒乱を引き起こした極東側の人間だ。油断することは1ミリたりともできはしない。
そんな中目に付いたのは、少し離れた位置で監視をしている仲間だ。夜とはいえ、自分達は暗闇の中でも相手が今何をしているのかが細かくではないが分かる。
現に今、離れた所で監視している仲間が伏せた状態ではなく立っているのが見えていた。
「おい、今警戒中だぞ。立っていたら目立つだろ?」
『えっ? 俺立っては……ザザー……』
「おい! 応答しろ‼︎ 何があったんだ?」
学生の目には、監視している仲間が以前立っている姿が見えていた。さっきまで通信感度も良好……特に問題はなかったはずだが……
「結べ……蜻蛉切」
そんな声が自分の背後から聞こえた気がしたのだが……気がした時にはすでに意識は刈り取られていた。
side 酒井
酒井は今走っていた。それはつい先程……榊原という友人の侍女人形が持ってきた束に連ねられた用紙を見たのが最初
(これは……白紙じゃないか?)
「貰ったのはこれだけか?」
「jud。榊原様がこの束の紙を持って行くようにと仰せつかりました」
そこで疑問が生じた。榊原は昔から頭の回る奴だ。そんな奴がこんな無意味な事をするか?
(……っ‼︎)
そう思ってコンマ数秒には既に駆け出していた。榊原の屋敷へと……
そして数分でたどり着き、榊原のいる部屋へと入った。
「榊原っ‼︎」
だがそこには誰も存在しなかった。部屋の中は整頓されており、机の上にはこれまた白紙の束があるだけだった。酒井が榊原の部屋に入ってすぐ、後ろから別の侍女人形が現れた。
「榊原様は作業は終了したと言っていました。ですので部屋を片付けに来たのですが……」
「なにっ⁉︎」
そこで酒井は改めて部屋を見渡した。すると……
「これは……⁉︎ 二経文⁉︎」
二経文……それは、今巷で噂をされている怪異の事だ。二経文と呼ばれる印がそこにあれば、そこにいた人物は必ず姿を消すのだ。それも髪の毛1本も残さずに……
(榊原……)
榊原は二経文の犠牲になったのだと酒井は認識し、机の上にあった白紙の束を確認した。
「……っ⁉︎」
そこには、目を凝らさなければ見えないほどの文字でこの様に書かれてあった……
「二経文を追え……」
薄っすらと表されていた言葉を、酒井は目に焼き付けていた。
「こんなに早く来るとはね……流石は松平四天王の1人という事か」
「っ⁉︎ 誰だ‼︎」
酒井の背後からゆっくりと近づいて来る人物がいた。その者は、パチ、パチ、パチと3回ほど手拍子をしながらゆっくりと歩いて来る。
近づいて来るにつれてその者の姿が月光によって明らかになっていく。上から下までビッシリと着こなした黒いスーツに、顔のところは仮面を被っていて素顔は分からない。主に金色の仮面で、それが鼻先まで覆い隠していた。またその仮面についているであろう白い長髪は、その者の肩辺りまで伸びていた。
「いきなりで失礼したね。私の名前はモンターク。しがない商会を経営していてね」
「……それで、そんなしがない商会を経営しているお前さんがどうしてこんなところにいるんだい?」
「フフッ、そんなに警戒はしないでもらいたい。私はあなたの敵ではないのだから」
「ついでに味方でも無いんだろう?」
「さぁ……それはどうだろうね。ところでさっきこの部屋で「貴様、まさかこの部屋にいたのか⁉︎」あぁ、確か……ここにいた初老の、確か榊原といったかな」
「榊原に何かしたのか……?」
「何も? わたしがこの場に着いたのが、榊原という男が怪異に遭っている最中だったからね?」
「なん、だと?」
「おや? まさか怪異が起きているところを見たことが無いのかい? まぁそれは当然の話だね。怪異というものは本来、人の目が触れないようなところで発生するのだから」
酒井は目の前の男、モンタークに威圧をかけながらそう問い詰める。だがモンタークはそれを意にも介さずさっきの口調でそう言った。
「だがお前さんは怪異を見た。それも……榊原が遭っている最中に」
「あぁ、あれは本当におぞましいものだ。まさしく、人の目に触れてはいけないものだと、見て思ったさ」
「……そうか」
「それで、君は悠長にこんな所にいてもいいのかな?」
「何だと?」
「今しがた……番屋で爆発があってね。私の予想だと……三河と武蔵は今日この日を境に戦乱の渦へと巻き込まれるだろう」
「な、何を根拠にっ⁉︎」
「そう思いたくなければ、そう思ってくれても構わない。だが私は一応言った。心の片隅に留めておいてくれればそれで良い」
「……そうかい。まぁお前さんの言葉は一応片隅にでも留めておく」
そう言い、酒井は榊原邸を後にした。そして酒井が去った後……
「こちらモンタークだ。酒井学長とやらは去って行った。そっちの状況はどうだ?」
『ヴィダールだ。俺の方は予定位置に着いた』
『ヴァンデッタです。こちらも所定位置に着きました』
「よし、私もここでの用は済んだ。これから所定位置に向かう」
そこでモンタークは通神を切ると、またどこかへと繋いだ。
「白騎士、モンタークだ。榊原殿は怪異に巻き込まれる前に助け出しておいた。それで今三河番屋で火の手が上がっているのが見えるか?」
『……』
「了解した。ならばそこで落ち合おう。通信を切る」
そこでようやく通神をオフにした。
「さぁ……停滞していた世界が動き出す。末世を覆す……“颯也”が幸ある生を送れる様に……」
side out
ー●○●ー
19時時45分 武蔵アリアダスト教導院前
「ヨシナオ教頭? 何故先生であるあなたが、この教導院で真面目に学業を行なっているいち生徒、鈴さんを泣かせている?」
「い、イヤ……余はそんなつもりは……」
「言い訳は言わなくていい」
「……はい」
何故この様な状況になっているのだろうか? それは5分前にまで遡る……
回想
「なんだこの騒ぎはぁ‼︎」
梅組が生徒総会の一環として幽霊払いを行なっており、それが終わりに近づいた頃だった。騒ぎを聞きつけたヨシナオ教頭は、その場に駆けつけその様を見たと同時に怒りを露わにした。そして
「おいそこの君! これは一体何事かね‼︎」
怒っていたために口調もそんな風になっていたのだ。まぁ怒っていれば誰だってその様になるだろう。だが聞く相手が悪かった。何故なら……
「ひっ……」
「むっ? どうかしたのかね?」
「うわぁぁぁぁぁん‼︎」
「ちょっ⁉︎ ど、どうして泣き出すのかね⁉︎」
聞いた相手が鈴だったからである。その鳴き声が響いた直後……
「鈴さん、大丈夫かい?」
「ひっぐ……そ、颯也、くん?」
「よしよし、もう大丈夫だよ。もう何も怖くないよ」
颯也が颯爽と鈴の前に現れ、抱き締めながら頭を優しく撫でていた。
一方その頃……
(また……私の特権が奪われたわね)
成実さんはその様に思っていた。どれほど颯也さんを独占したいと言うのだろうか……
「ちょっとそこ? 聞こえているわよ? 颯也を独占しようとして何が悪いの?」
文章も感じ取る様になっていました。というか文章にまで介入しないで欲しいです。
「あなたがおかしなことを言わなければ良いだけよ」
……
「あら、沈黙したわね」
最早この場は黙り込むしか無いのである……
そして話は颯也がヨシナオ教頭を尋問……問い質している場面に戻ります。
「で? まだ彼女への謝罪を聞いていなかったのだが……?」
「っ⁉︎ む、向井くん! 今回の事は余が悪かったのである‼︎ どうかこの通り許して欲しい……」
「そ、そんな、わた、しはもうだいじょ、うぶです」
「さて……ヨシナオ教頭? 今回は鈴さんが許してくれたから良かったものの、今度こんな事があった時は……こんなものではすみませんので」
「う、うむ……分かったのである」
「はい、それじゃあ今回はこれで良いとして……」
そこから先の言葉が出るかと思ったら、颯也は急に三河の方に顔を向けた。
「俺は用事が出来たので、お先に失礼しますね」
「およ? 颯也どっか行くのか?」
「あぁ、少し用事が出来た。と言っても場合によっては明日にならないと帰れないかもしれないけどね?」
「う〜ん……そっか。じゃあ気をつけてな?」
「ありがとう、トーリ。それじゃあ皆、気を付けて帰ってね」
その言葉を残すと、颯也は最初からその場にいなかったかのように去っていた。
「相変わらず颯也殿は速いでござるなぁ〜」
「颯也の着ている服を脱いだ、もしくは術式を解除したのならどれくらいの速さになるのだろうな?」
「そんなの僕たちじゃ想像しきれないよ。そもそもあの速さの時点で僕だったら気分が悪くなるだろうね」
とまぁ残った梅組の面々は思い思いの事を言っていた。
あと数分でこの日常が崩れ去るとは知らずに……
19時48分 三河番屋並びに新名古屋城分かれ道へと続く道
side 酒井
(一体この三河で何が起ころうとしているんだ?)
酒井は己のうちから出る胸騒ぎを感じていた。榊原の件もそうだし、榊原邸にいたあの男の事もそうだが、それ以外に何か、途轍もなく大きなものが起きようとしている……彼はそう感じていた。
そう思いながら走っていた時だ。
「うぉっ⁉︎」
酒井は何かにつまずき体勢を乱した。その時に見えたのは、槍の石突部分だった。
「テメェも大分老いたな……さっきのをかわせないようじゃ」
「っ⁉︎ ダッちゃん⁉︎ 何でこんな所に⁉︎」
「なんでって……そりゃあ殿からの命を受けているからなぁ」
「殿から? それは……っ⁉︎」
そこで酒井が感じ取ったのは、足元……地面から伝わる振動だった。まるで地の下を巨大な大蛇が地響きをあげながら進んでいるかのようだった。
「こいつは……地脈からか⁉︎ にしてもこれは……暴走していないか⁉︎」
「暴走している、じゃない。“意図的に起こしてる”んだよ」
「っ⁉︎ 何でそんな事を⁉︎ 最悪三河が消失するぞ⁉︎」
「それが殿の命ならば、副長である我は従うまでだ」
「っ……ダッちゃん‼︎」
「おぉ? 久方ぶりにやるか?」
酒井は腰に刺してある短刀を抜いて構え、それを見た忠勝も槍を構えた。
「と言いたいところだが、生憎こっちにも時間がなくてな……てな訳でお前は武蔵に戻れ! お前はとっくの昔に三河から追放されてんだから」
「ダッちゃん……」
side out
20時00分 新名古屋城
side 松平元信
「さて、これで準備は整った」
彼は後ろに多数の侍女人形を侍らせながら怪しげに笑う。
「この三河消失をキッカケに、今の世界情勢がどう変わって行くのか。末世がどうなるのか……うん。すごく楽しみだね。そして……」
元信は歩き出す。この出来事を一番良い特等席で見るために……
「転生者……彼はこの世界でどう動くのかな? 楽しみだよ……愛護颯也くん」
そんな言葉を言い残して……
20時丁度……新名古屋城から暴走した地脈が空に向け、1本の巨大な柱を創り上げた。
side out
20時5分 side トレスエスパニア
『新名古屋城にて高圧の流体反応を確認‼︎ 武神部隊は現地に赴け‼︎』
空から監視の命を受けていた4機の武神隊は、作戦本部からの通神で現地に向かっていた。そして新名古屋城に近付こうとした瞬間、流体の壁に阻まれた。
『くそっ! これじゃあ近づけない‼︎』
『作戦本部から武神隊へ、武神隊には地上部隊と合流して新名古屋城に突入せよと』
『空中装備しか携えていないぞ⁉︎ 地上用の装備への換装は可能か⁉︎』
『地上装備への換装は時間がないため行えませんが、追加装備の用意があります』
『tes! A2は俺と一緒に地上から突入する。A3は空からの監視を続行、A4は後続で待機だ! 作戦開始‼︎』
そこから作戦は開始される。空に張られた流体の結界はそのままだが、それは地上にまでは及んでいない。トレスエスパニアは、地上部隊と武神隊で陸路から新名古屋城へと向かう。その直ぐ後ろにはトレスエスパニアの艦が2隻、これも新名古屋城へと向かっていた。
だが不意に、その内の1隻に衝撃が走り高度がみるみると落ちていった。
『おい3番艦、高度が落ちているぞ‼︎』
『こ、こちら3番艦! 地上からの攻撃を受けた
『
『tes!いきなり地上側から砲撃を受けました! ただ損害箇所はどこにもなく……衝撃があった途端に出力機関がほぼ停止状態です‼︎』
『なにっ⁉︎』
3番艦は最初、自艦が攻撃を受けたにもかかわらず何が起きたのか分からずそう言うしか無かった。ただ衝撃が来る前に見えたのは……地上側から自艦に向かって何かが撃ち出されたという事だけだった。
そして自艦を攻撃したのは……
『また、自艦を攻撃したのは……三河本多家に所属している自動人形、鹿角です‼︎』
side out
side 鹿角
(先程の砲撃……完全に敵艦を撃墜する威力で放ったのですが……)
一方先に攻撃を仕掛けた鹿角は疑問に思っていた。何故なら先程放った攻撃が、完全に敵艦を沈める一撃だったからだ。
だが結果は違った。攻撃は直撃し、敵艦はそれによってか高度は下がっているものの撃墜はおろか大破もしていなかったからだ。付け加えれば火の手も上がっていない……
(……先程見えた術式)
そこで鹿角は思った。自分が放った攻撃が敵艦に当たる前、一瞬だが何かの術式が放った砲撃に付与されたのが見えた。
それは、砲撃が敵艦に当たる直前……それも弾の前に展開されたのだ。別の物に何らかの効果を付与する術式は確かに存在する。だがその効果範囲は精々1〜2mまでだ。そして敵艦や弾の周囲に術者の様な存在は確認していない。
(まさか……この戦場にあの方がいらっしゃるのでしょうか?)
そこで鹿角はある可能性を思い付く。そして滅多に笑わない鹿角が一瞬だけだが綺麗な笑みを浮かべたのだ。自動人形は感情をほぼ露わにしない。そして鹿角もそれに該当する。だが、それにも関わらず鹿角は笑みを浮かべたのだ。
(全く……あの人らしい)
そして鹿角は笑みを無くすと、目の前に迫っている武神と戦うためにかけて行った。
「道路素材を使い構築します」
鹿角が重力制御で創り出したのは、2振りの大きな剣だった。それは武神の大きさくらいある。
それに対して武神も腰に刺していた剣を取り、鹿角と対峙した。人間サイズの鹿角と人間の何倍もの大きさがある武神……誰がどう見ても力の差は歴然で、武神が優位に立ち回ると思うだろう。だが結果は……
『ぐっ⁉︎ 手強い……』
なんとほぼ互角であったのだ。鹿角の重力制御で作った剣は武神を近付けさせない。だが武神も負けじと応戦し、鹿角の剣を2振りとも折ったのだ。これで少しは勝機が見えてきた、と感じた所で
「再構築致します」
今度は折られた剣を鹿角は4本に増やしたのだ。
『ぐっ……手数が』
逆に武神は4本の剣に押され始めたのだ。
『このっ!』
武神は近距離戦から一旦身を引き、持っていた銃で鹿角を撃つ。それに対して鹿角は大部分の銃撃を道路で作り上げた盾で防いだ。だが所詮は道路で作り上げたもの……最後の1発は貫通してしまった。
『よしっ!』
ここで武神は、最後の貫通した弾が鹿角に当たったと思い無意識に叫んだ。だがすぐに状況は一変した。何故なら、目の前で盾の役割をしていたものが崩れ去ると、そこには傷1つ付いていない鹿角がいたからだ。
さらに鹿角の手を見てみると、重力操作で浮いている自分の弾が止まった状態であった。
「敵の撃ってきた弾も有効活用します」
そして次に重力操作で作ったのは、1台の大砲だった。そこに重力操作で止めていた弾を込めた。
「目の前の敵を穿ちなさい」
大砲の発射口から自分が撃ったはずの弾が迫ってくる。回避しようとしたが、そう行動しようとした時には遅く……
『ぐぁぁっ⁉︎』
武神の右脇腹を弾が貫通した。
『おいっ⁉︎ 大丈夫か⁉︎』
そこでようやく武神のA1が到着した。
『うっ……撃て……』
そこでA2は自分の持っていた銃を託してきた。今の鹿角は丸腰の状態、勝機はあると感じたのだ。
『よし……』
すぐ様A1は銃を構え、引き金を引いた。
だがその瞬間は起きた。A1とA2、それに鹿角も気づいてはいなかったが、A1が引き金を引いたのと同時に、銃の銃身が綺麗に別れていたのである。
「結べ! 蜻蛉切‼︎」
その声が聞こえたのと同時に、武神2機に搭乗していたもの達の意識は刈り取られていた。
「忠勝様、随分遅いご到着ですね? 何を道草をしていたのですか?」
「オメェこそまだこんな所にいるたぁな」
「それは当然です。なにせ武神を相手にしていたのですよ? 時間がかかっていてもおかしくないと思われますが? それに1機戦闘不能間際まで追いやったのです。そこは良くやったと賞賛するべきでは?」
「そんな事、うちの自動人形なら当然だ。だから賞賛も褒める事もせんぞ?」
「そうですか……でしたら、会う機会があれば愛護様にでも褒めてもらいます」
「ん? 何か言ったか?」
「いえ何も? それに聞こえていたとしても褒める事すらろくにしてくれない……いえ、する事が出来ない大人気ない忠勝様には関係ない事です」
「大人気ないとか酷くね? ただ褒めないだけでそこまで言われるの?」
「それはさておき、後続が来ますよ? 後は忠勝様がやって下さい」
「えっ? あれ全部我がやるの? めんどいなぁ〜」
「いやぁ、これは絶景だなぁ。ハッハッハッ」
「いやお前、笑ってないで手伝えよ……ってお前誰だ⁉︎」
「あぁ、これはお初にお目にかかるね。私はモンタークという、しがない商会を経営しているものさ」
「そ、そんな奴が戦場に何の用だ?」
「なぁに、ただの高みの見物さ」
「清々しく言うな! 全く……手伝わないのなら邪魔だ。去れ!」
「う〜む……」
「な、なんだ? まだ何かあるのか?」
「いや、条件次第では手伝ってあげても良いよ?」
「お前には何も得な事は無いと思うが?」
「あるさ。末世を覆す……その布石としてね?」
「っ⁉︎ ほぅ……この戦がこの世界を動かすのか?」
「さぁね? ただ私は、彼に従うだけさ」
「彼?」
「さて、そんな事よりも目の前まで敵が迫って来ている。ここは私が先行していくらか数を減らそう。後は……忠勝殿に任せるとしよう。では……」
そしてモンタークは、どこからか取り出した金色の剣を右手に持って迫り来る敵に突撃した。そしてぶつかり合った瞬間、トレスエスパニアの兵士達が吹き飛ばされた。
「あのモンタークという男……なかなかやりますね」
「そ、そうだな……」
(って、我はいつあいつに名前を教えた?)
目の前ではモンタークが無双していた。
side out
side トレスエスパニア
『A4! A1とA2がやられた。A4は現地に向かえ‼︎』
トレスエスパニアの作戦本部は、A4に対してその様に指示していた。だがなかなか返事が返ってこなかった。
『A4! 応答せよ‼︎』
『こちらA4! 緊急事態発生‼︎』
やっとA4が応答したかと思いきや、逆にA4がエマージェンシーを出していた。
『未確認の武神と交戦中! 特徴は〈ガシッ〉い、いつのまn〈ゴッシャーン〉ぐぁぁっ⁉︎ ーーーザザーッ』
『A4⁉︎ どうした⁉︎ 応答せよ‼︎』
そこでA4との通神が途切れたのである。
side out
side 本多・忠勝
「結構早めに片付いたな」
「忠勝様はほぼ何もやっていなかったように思いますが?」
「ハハッ、本当だねぇ。ほとんど私がやっていたようなものだね」
「うっ、うるせぃやい! 鹿角、殿の元へと向かうぞ」
「分かりました。はぁ……愛護様に会えそうに無いですね」
「ん? 何か言ったか?」
「いえ何も? ただ、忠勝様が功労者を褒めない大人気ない人だと再認識したまでです」
「まだ引きずってるの⁉︎ もう忘れない?」
「それはできません……っ‼︎」
そこで鹿角は何かに反応して、トレスエスパニアが攻めて来た方向を見る。それにモンタークもそちらの方を向いていた。
「おや、これは大きな波が来るね」
モンタークがそう言った瞬間、鹿角の目の前に黒い、小さな玉のような物が飛んで来た。それも一瞬だった為、鹿角は反応に遅れながらもなんとか左手を出し、飛んできた玉を重力制御で逸らそうとした。
だがその瞬間……
ガギュインッ‼︎
何か棒みたいな物が飛んできてその黒い玉を弾いたのだ。そして目の前から来るのは……黒く大きな搔きむしりだった。だがその搔きむしりは、玉の弾かれた方向へと進路を変更した。
「先程の攻撃は……」
「あれは正しく悲嘆の怠惰による搔きむしり……だね。という事は……」
「先程の攻撃……新名古屋城を捉えたはずですが、何故逸れたのでしょうか?」
そこに現れたのは、トレスエスパニアに所属する第1特務、立花・宗茂だった。
「逸れた? 我は何もしてはいないが?」
「同じく、私も重力操作で先程の玉を逸らすつもりではありましたが、私がする前には逸れていましたが?」
「私も何もしていないさ。正しく高みの見物の如くね?」
「では一体誰が……」
「それは……多分俺の事だろうな」
「っ⁉︎ あなたは……」
もう1人……この戦場に現れたのは、全体的に水色の服を纏い、どこかの将官みたく立派なコートを上から着ていた。そして顔はフルフェイスで隠していた。
「俺か? 俺の名はヴィダールという。まぁしがない……復讐者だ」
「復讐者……ですか?」
「その通り、一度コイツに殺されていてな」
「それを言うなら、私も君に殺されているのだが?」
「先にやったのはお前の方だろ?」
「後も先も関係ないと思うが?」
「そうか……ならば今この場でどちらが上かという決着を付けるか?」
「……いや、一旦冷静になろうか。ここでそんな事をして……いや、そもそもこんな会話が少しでもされたと知られたら後が怖い」
「……そだな。うん、やめとこう」
(はっ? 先程までの恨みがましい会話がいとも簡単に終わりましたが……)
宗茂は正直話の流れ自体そこまで把握していなかったにも関わらず、その会話の内容もすぐに打ち切られた事についていけてなかった。
「それで……妙な格好のあなた方は私達の敵ですか? それとも……味方ですか?」
「その問いに、今などあるのかい? 現に私はトレスエスパニアの敵を倒しているのだが?」
「同じく……俺はお前の攻撃を逸らした。その行為だけで今の段階でどちら側かと言うのは……分かるだろ?」
「くっ……ならあなた方は! この三河が消滅しても良いと言うのですか⁉︎ それに消失したのならばあなた方も生き残る確率はゼロです‼︎」
「おやおや、私がいつ
「なっ……それはどういう意味で……」
「普通にそのままの意味だろ?」
「ならオメェらは何でこんな所にいんだよ?」
そこでさっきまで静かだった忠勝が口を開いた。
「ハッハッハッ……君は物忘れが激しいと思える。私は君にあった時こう言ったはずだよ?
「その彼って誰だよ⁉︎」
『それに関しては先生が答えよう‼︎』
どこからともなく声が聞こえたと思ったら、今の三河の光景を見ている全世界に対して中継が繋がった。そこに映っていた人物は……現三河当主の松平元信公であった。
side out
side 松平元信
「全国の皆さーーん! こんばんはーーーっ‼︎ 先生は今ここ、地脈炉がいい感じで暴走している三河に来ていまーーーす‼︎」
松平元信は悪びれないような感じで……良い感じに例えるならまるで無邪気な子供のようにノリノリで片手にマイクを持って話していた。
「元信公! 何故三河当主であるあなたが! 三河を消滅させる様な真似をするのですか⁉︎」
「おや、そこにいるのは立花・宗茂くんだね。うんうん、それに良い質問だ。それじゃあそんな良い質問をする君に対して先生も問いをさせてもらうよ……
危機って、面白いよね?」
side out
side 本多・正純
(なんなんだこれは……)
私はどうして良いか分からない状況だった。8時から花火をすると元信公は言っていたものの、彼は中継でこう言ったのだ。
「正純様、これが花火というやつですか?」
「えっ……いや、これは花火なんかじゃない」
私はそれを言うだけで精一杯になっていたのかもしれない。それにしても元信公は一体何を考えているんだ? 危機が……面白い? それってなんの事だ?
『そして、それ以上に大きな危機が目の前で起こり得るのって、もっと面白いよね?』
(なんだ? 一体何を言っているんだ?)
『元信公‼︎ さっきからあなたは何を言っているんですか⁉︎ それに危機とは⁉︎』
『君には考える能力が無いのかい? それなら試しに……そこの副長、答えなさい』
『我は全然わっかりませーん‼︎』
『君はそのまま人形の様に、身動き1つせず立っていなさい』
『それ酷くね⁉︎』
『それじゃあ次……宗茂くんは分かるかな?』
『いえ、分かりません……』
『そうか、それは少し残念だな。それじゃあつg『えっ⁉︎ なんか我との扱い差がありすぎない⁉︎』君は大人しくしていなさい。全くいつまで経っても子供だな』
『何で最近我はディスられたばかりなの⁉︎』
『んんっ! それは良いとして……次にモンタークくん、君は分かるかな? 先生が言う大きな危機というやつが』
『そんなもの簡単な事さ。それも世界全員が理解している事だよ……それは末世さ』
『そう‼︎ 正解だモンタークくん! それとここで聞くのもあれだけど、君が所属している教導院はどこだい?』
『教導院? フフッ、今の私はどこにも所属してはいないさ。今の私は、ただ彼のためだけに動いているに過ぎないのだから』
『彼……とても興味深い存在だね。そうだな……君が言う彼という存在を、今から先生が当てて見せようか? それもその存在は、末世にも深く関わるだろう存在だからね』
(あの仮面を被っている者が言う彼とは一体……それも元信公が末世にも深く関わるという存在? ダメだ……全然整理が付かない)
『まぁここですぐに正解を言うのは面白くは無い。だから少し昔話と、私に纏わる噂話をしようか。私には秘密裏に出来た子供がいるという噂がある様だが、それは本当の事だよ』
それを元信公が言った時、私もそうだが、いくらかの人達もそう思っただろう。
『そして私はその子を武蔵に預けた。それから数年後、ある式典に参加する為に私は武蔵に行った。そして偶然にもその子に再会した……いや、これでは語弊があるね。武蔵の住人の殆どが知っているかもしれない話だけど、私の乗っていた馬車と、そして3人の子供がぶつかってしまったんだ』
(まさか……まさか⁉︎)
『そう、多分これで皆も分かったかもしれないけど、私は実の子を事故に遭わせてしまった。そしてその事故で亡くなったのも私の娘だ』
「ホライゾン……アリアダストの事か」
『そしてもう1つここで噂話をしよう。現時点で8つある大罪武装についてなんだけど……あれには人の感情を素材として使っていると噂されているね。それは……
まさしく本当の事だよ。そしてその材料に私の娘を使っている事も』
(な……なんだって……じゃあ大罪武装は……ホライゾン・アリアダストの感情そのもの⁉︎)
『そしてさっき大罪武装は8つあると行ったけれども、正確には違う。本来大罪武装は9つあるんだよ』
『そしてそれを……1年前に武蔵に送ったんだ。自動人形としてね?』
「っ⁉︎ ま、まさか……p-01s……」
「私がどうかしたのでしょうか? 正純様」
『名前はp-01s……その子こそが最後の大罪武装〔焦がれの全域〕……嫉妬を司る大罪武装だよ』
『なぜ……なぜ今頃になって言うのですか⁉︎ その話と末世と、どの様な関係があると言うのですか‼︎』
『そんなもの簡単だろ? 大罪武装全て集めた者が、末世を左右する……そんなところだろう?』
『簡潔にまとめられていて素晴らしい! その通りだよヴィダールくん』
『ふんっ、お前に褒められたところで嬉しくとも何ともない。むしろ俺は……お前のそのやり方に嫌気を覚えているところだ』
『まぁそうだろうね。それで……だ。昔の事故の話に戻るけど、3人の子供を事故に遭わせたと言ったね? 本来だったら
『ど、どういう事ですかそれは⁉︎ それではまるで……』
『そう、その事をまるで……2人が事故に遭う事を知っているかの様だったよ。自らの体を犠牲にしてでも、2人を守りたかったんだろうね? 結局それは1人しか救えなかったけれども。その最後の1人を仮定で言うなら……転生者と呼ぶとしよう』
「転生……者」
転生者……生まれ変わりと言う事だろうか? だけどもしそれが本当の事なら……葵、もしくは愛護のどちらかが転生者と言うことになる。
(だが当時の状況を鑑みるに……愛護が転生者?)
元信の言うことがパズルの様に正純の頭の中で組み合わさっていく……
side out
side トーリ
トーリも当然元信の放送を聞いていた。そして自分が明日告白しようとしていた自動人形が……かつて自分のせいで死に追いやってしまったホライゾンであるという事も……
「ホライゾンっ‼︎」
トーリはかけて行った。今度こそ守る為に……
side out
side ???
『そして先程モンタークくんが言っていた彼というのは……私の考えが間違えでなければ転生者の事を指すだろう。そして彼も……この末世に対抗できる手段を持っている』
「まさか大罪武装が9つだった事は驚きだが、それともう1つ……末世に対しての手段があったとは。それも転生者……こいつは滑稽だな!」
「元生徒、それでどうするかね?」
その部屋では2人の男が話し合っていた。1人は鬼族で、体格は寸胴で皮膚の色は赤かった。そして身なりは所属している教導院の男服を着用し、頭にはアメリカの大学の卒業式で被るような学生帽を被っていた。そして名をガリレオといった。
そしてもう1人は普通に人ではあったものの、どこかの教皇の様な格好をして椅子に踏ん反り返っていた。この人物こそは、K.P.A.イタリアの現総長であるインノケンティウスである。
「そんな物は簡単だ……どちらも我々のものにするまでだ」
そういう風にキメ顔で言っていた。だが彼らはこの時点で知る由もなかった……
転生者が自分達の手に負える様な存在ではないという事を……
side out
「そして今この場に来ているだろうね。転生者であり……そして今の武蔵では特務師団長の肩書きを持つ愛護颯也くん?」
「「「なっ⁉︎」」」
元信のその発言を近くで聞いていた忠勝、鹿角、そして宗茂は驚いていた。まさか彼がここに……地脈炉が暴走しているこの地に来ているのかと……
「それは一体誰のことだい?」
その元信の台詞に反応するかの様に、その場で声が聞こえた。先の3人は辺りを見回すが、物陰に誰かが潜む様な感じはしない。では一体どこから……
「流石は転生者である愛護颯也くん……かな? まさか術式を展開せずに
そして上を見上げれば、新名古屋城の外壁天辺と同じくらいの高さに彼はいた。黒き衣を纏っており、顔はモンタークと同じく上半分が隠れた仮面を着けていた。そして仮面についてあるであろうカツラの色は金色だった。
因みにその仮面……どこぞの音楽家サーヴァントが再臨した時に着ける仮面に似ていた。
「私は愛護颯也という存在でも、ましてやあなたが言う転生者と言う存在でもない」
「ほぅ、なら君は一体何者かな?」
「別に答えなくても良いんだろうが、ここであえて名を名乗るなら……白騎士だ」
白騎士と名乗る男がそういった途端、彼は空から姿を消して一瞬で鹿角の前に姿を現した。
「それにしてもモンタークとヴィダール……さっきの会話は聞こえていた。後で覚えておく様に……」
「「あっ……はい……」」
そう言われた2人は、見るからに落ち込んだ。
「……あなたは私達の敵ですか? それとも味方ですか?」
今度そう問うたのは鹿角だった。
「私ですか? そうですね……強いて言うならば……」
そこで白騎士は鹿角に向き直り……
「あなたの味方であることは間違いありません」
白騎士さんはハニカミながらそう答えた。
side その他
『ま、まさかあの方々は‼︎』
『えぇ! 間違い無いわ‼︎』
『あの方々こそ……』
『『『アンフェア・ブレーカーズよー‼︎』』』
とある掲示板でそのような事が口コミでどんどん書かれていた。そしてその掲示板とは『アンフェア・ブレーカーズ』と呼ばれる、数年前に突如として現れた音楽グループのファンサイトだった。そしてこのサイトも規模がでかく、主に各国の若い女性達から人気があった。
『それにしてもヴァンデッタ様とカタクリ様はどこにいるのかしら?』
『確かに……ヴァンデッタ様はともかくとして、カタクリ様はあまり見ないわよね?』
『お二方とも何か別の事をしていると思うわよ?』
『確かにそうよね。ところであの方々の中なら誰推しなんでしょうか?』
『今からアンケートを取りましょう!』
『『『えぇっ! そうしましょう‼︎』』』
こちらのサイトでは三河消失とは関係なく盛り上がっていました……
side out
「私の?」
「えぇ。さっきの戦いもこっそり見ていました。本当は介入したかったですが、そんな事をしてしまえば事は上手く運ばなかったと思うので……」
「事?」
「いえ、こちらの話です。それはともかくとして……」
そう言いながら白騎士は宗茂の方へと振り向く……
強大な怒気を滲ませながら……
(こ、これは⁉︎)
「それにしてもそこの君……確か立花・宗茂だったかな? トレスエスパニアの第1特務並びに八大龍王の1人の」
「そ、それが何か……」
「君……女性に対して大罪武装を振るうとは……君には誇りというものが無いのかい?」
「……はっ?」
「誇りがないのかいと聞いている。地脈炉を止めるためならばいざ知らず、巻き込むのを承知で女性も射線上に入れるとは……恥を知れ」
「わ、私はそんなつもりは……」
「だがそれが事実だ。そして……彼女に対しての謝罪がないんだが?」
「しゃ、謝罪……ですか?」
「謝らないのか? 謝らないというのなら……」
私は君を一生戦えない身体にすることだってできる……
「っ⁉︎ も、申し訳ありませんでした」
宗茂は……直接言われたわけではないがそう感じた。自身の命が危ないと悟ったのである。
「いやぁ……白騎士くんって案外怖いよね?」
「それほどでもありませんが?」
「説得力がまるでないね……それで宗茂くんはここに何しに来たのかな?」
「はっ……そうです! 私は三河消失を止めに来ました‼︎」
「そうだね。じゃあそこの副長、彼を止めなさい」
「おう! 止めるぜ学級崩壊‼︎」
「いや、そこは私に任せてもらおうか」
そこで白騎士から声が上がった。宗茂の相手を自身がすると……
「な、何故ですか! 何故あなたも三河消失に手を「誰がそんな事を言った?」なっ⁉︎」
「私も……三河消失を止めに来た。だがそれは君のやり方とは違う方法でだ。何も壊さず、何も失わせない……それが私のやり方だ」
「なら何故私達に協力をしてくれないのですか⁉︎」
「そんなものは簡単だ……私が今の君達を気に食わないと思っているからさ。さて、議論なんて時間の無駄だよ……今の状況ならまさにね?」
「くっ……戦うしかないというのですか……」
宗茂は大罪武装である悲嘆の怠惰を、対する白騎士は両手に計8本の暗剣を指の間に握っていた。
「さぁ、行こうか?」
最初に動いたのは白騎士で、腕をクロスしてバッテンに斬りつけれるようにしていた。
(時間がない……こんな所では使いたくはありませんが)
「結べ! 悲嘆の怠惰‼︎」
それはまさしく蜻蛉切と同じ能力だった。刃に移した対象を活断する能力「そんな物を凌ぐのは簡単だ」……なんだが
「術式展開、扇」
白騎士がそう言うと暗剣が大きくなり、2つの巨大な扇のような物が出来た。その時に白騎士はクロスしていた腕を解いており、暗剣8本を前に突き出していた。
(これでは……)
政宗の思った通り白騎士は活断されず、逆に暗剣8本が活断された。そして活断された8本の暗剣の奥から1本の暗剣が投擲されていた。
「くっ⁉︎」
それを宗茂は弾くが……
「遅い……」
既に白騎士は宗茂の後ろにおり、再度展開していた暗剣で斬りつけようとしていた。それにも反応して宗茂は弾く。
(は、速い! ならばこちらも!)
「10倍加速‼︎」
宗茂は速度向上の術式を展開して先程よりも速く動いた。そして先程の白騎士と同じように、彼の後ろに回ったのだ。
(いただきます!)
「遅い」
「なっ⁉︎」
先程よりも早くなったというのに、白騎士は意にも介さずといった形で後ろを見る事なく宗茂の攻撃を暗剣で軽々と受け止めた。
(この武装だけでも8kgもあるはずなのに⁉︎ 何故こう軽々と⁉︎)
それを持って自由にふるえている宗茂も普通に凄いのだが、だが白騎士はその攻撃を暗剣……それも1kgにも満たない細い刀身で受け止めていたのだ。
「その程度か?」
白騎士は振り向きながら宗茂を弾いた。
「ぐっ! まだまだ‼︎ 30倍加速‼︎」
宗茂はまた速度を上げた。それも尋常ではない速さで……だが
「その速さも動けなければ意味がない。影縫い」
「なっ⁉︎」
白騎士は地面へと暗剣を投げた。それは宗茂には当たらなかった。当たらなかったが宗茂の
(何ですかこの術式は⁉︎ こんなもの聞いたことが……)
「何でも自分が持っている知識だけにとらわれない事だ」
「くっ……」
そして白騎士からの攻撃が苛烈を極める。宗茂はその場からは動けなくとも、それはその場から動けないだけで身体は動く。そのため白騎士の攻撃にも対応できだ。
(手数が多い……弾くだけで精一杯です‼︎)
しかし白騎士の手数は多く、宗茂はほぼ防御に徹するしかなかった。
(動くことが出来れば……っ!)
そこで宗茂は思い付いた。自分の影に刺さる暗剣を壊せばいいのではと……
「ぐっ! うぉぉぉっ‼︎」
白騎士の攻撃を一度食らってしまうが、その反動を利用して暗剣を悲嘆の怠惰で壊した。そうする事で宗茂はそこから動くことが出来た。
「はぁ……はぁ……」
「見事です。ですが……かなり消耗してますね」
白騎士は宗茂を称賛した。だが、それをいう本人はまだまだ余裕そうだった。
「そこで私からの提案ですが……どちらとも最後の1発で決めませんか?」
「な、何を?」
「私も時間が惜しい……という事です。あなたが破綻の怠惰を撃ち、私を負かしたならばあなたの勝ち。そしてそれを凌げば私の勝ち……どうですか?」
正直宗茂は迷っている時間などなかった。三河消失まで後何分もつか……そして目の前と戦ってわかったことは……今の自分では何回戦っても勝てない事……そのために
「……わかりました。ですが……こちらとて加減はできません!」
宗茂は悲嘆の怠惰を撃つ体制に入った。悲嘆の怠惰の仮装砲塔が出来上がる前に先程の丸い玉が白騎士の顔めがけて放たれる。だがそれを白騎士は顔を左に傾げるだけで避けた。
「来い……ローレライ」
そして白騎士は右手を上に伸ばし、掌を広げた。すると掌の上で何かが青白く光り、その光はだんだん強くなりながら形を形成していった。そして出来上がったものは……独特な形をした剣だった。色は全体的に黒と灰色で、鍔はYの様な形、そして刃は普通の剣に比べて厚く、それで何が斬れるのかと問いたいところだ。
だが彼白騎士は、そのローレライと呼ばれる剣を強く握った。それに反応するかの様に、ローレライの中心部に埋め込まれた赤色の宝石が強く輝いた。
一方その頃……
その放送は全世界に向けてされていた。なのでその通神枠が成実のところでも開かれている。
「颯也……また貴方は自ら危険な道を行くのね……あの時と同じ様に」
成実はそう呟きながら左腕をさすった。しかし、何故ここで颯也の名が出るのか?
「そんなもの決まっているでしょう? 白騎士が颯也だからよ」
……ネタバレはやめて下さい。
「ならあなたの方も静かにしてなさい」
……
「黙ったわね。それにしても……『アンフェア・ブレーカーズ』の掲示板では面白い事になっているわね」
そこには『アンフェア・ブレーカーズ』の公式サイトが映っており、その掲示板では今、どのメンバーが好きかをアンケートを取っていた。それを成実は眺めていた。
「まぁこのアンケートを作ったのも私なんだけど」
そうさらっと口にした。
「それで途中結果は……ふふっ、白騎士が1番ね。次がモンタークで、次がヴィダール……後はヴァンデッタとカタクリは同率ね。まぁこの結果は当然よね」
そして成実が開いている通神枠の1番上にはこう書かれてあった。
『アンフェア・ブレーカーズ会員ナンバー01 アンフェア・ブレーカーズ応援隊長並びに白騎士応援隊長』と……
まさになぁにこれぇ〜……と言いたい……
「あぁ……颯也♡ 早く……貴方に会いたい♡」
紅く染まった頰に片手を添えながら呟いた。
ー●○●ー
「な、なんなんですかその剣は⁉︎」
「さっきも言ったが……ローレライという。そしてこの剣で、君の一撃を鎮めよう」
「そんな事、出来るはずがありません‼︎」
「やってみなければ分からないだろう?」
「くっ……恨み言は無しです! 悲嘆の怠惰、超過駆動‼︎」
そして悲歎の怠惰から強大な搔きむしりが津波の様に白騎士に迫り来る。対する白騎士は……
「集え……この世すべてを支える深奥の理」
白騎士がそう唱えると、ローレライが白い光を放ちながら巨剣を生成した。それはまるで巨大な翼の様……
「目の前の虚無を打ち砕け! 天翔! 光翼剣‼︎」
その大きな翼の一撃を……白騎士は片手で振り下げ悲歎の怠惰の一撃と対抗した。両攻撃は両者の中間点で交わった。威力はお互い互角……
そう見えたのは一瞬だった。
(なっ……悲歎の怠惰が押されてる⁉︎)
宗茂はそう感じた。そしてその感覚はすぐに証明された。まず踏ん張っていたはずの宗茂は、後ろに滑る様に徐々に後退していった。地面には踏ん張った跡が深々とある。次に悲歎の怠惰が押され始めた。搔きむしりはいまだ健在だが、それでも押されている事は目に見えていた。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎」
「ぐっ……うぁぁっ⁉︎」
白騎士が最後の一押しで一気に力を解放……悲歎の怠惰の搔きむしりは消え去り、大きな翼の一撃は宗茂を飲み込んだのだった。