ヒナタの姉はやべーやつ   作:闇と帽子と何かの旅人

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Tea party


メイとお茶会

 俺はヒナタと共に音の里に帰ってきた。だが、けっして忘れてはいけない事を忘れてしまっていたのだという事に今更気付いた。

 生けるサンドバッグになった大蛇丸を見て思い出したのだ。ああ、説明するのを忘れていたなと。

 思わず『官房長おおおおお!』と叫んでしまったのは不可抗力だ。大蛇丸を回転寿司にでも連れて行ってあげるべきだった。

 

 ヒナタと共に帰って来たら地雷屋さんとやらが大蛇丸と対談してたんだよ。

 

 声を聞いて地雷屋とかいう大蛇丸と同じ三忍の一人が、すごくダークカイザーだなって思ったね。その内ゾイドコアか炭素指数軽減の為にヒルコと憑依合体しつつアメリカンなホームコメディを展開してくれると信じている。

 俺達は登り始める、長い長いゼネバス帝国を復活させる道を。そのうち彼は『這いずり回れ、下等な輩よ』って言うだろう。

 

 終始和やかなムードで話し合っていたのだが。俺を見つつ大蛇丸に『お前にも春が来たんだな』とか言うのがいけない。

 これにはヒナタも三日月嗤い。まるで団長に次を乞うように『姉さん。次は誰を潰せばいい?』なんてイイ笑顔で言うものだから困惑した。

 

 そんな風にヒナタの地雷原を踏みまくる自来也もとい地雷屋だったが『お前も良い方向に変われたんだな』と、大蛇丸を見ては満足顔で満足を探す旅に出ると言いどっか行った。お前はどこぞの京介君か。

 だが、去り際に『ナルサス……』と呟いて俺の地雷も踏み抜いた。奴とは相容れないと確信した。次会ったらお前を官房長する。

 

 「ヒナタステイ。モウシンデル」

 「ネエサンドイテソイツコロセナイ」

 

 夢を見ていた。赤く血で染まる大蛇丸。部屋に響くのは妹の嗤い声。『これは私の夢です』と39歳厨二病真盛りな作曲家が恐らく黒幕。ポルカ姉ちゃんと鏡天花は無事咲く模様。

 どこぞの伝説の電波かよ。俺は10番道路で幸子に崖から落とされる白昼夢を見ているのだろうか。幸子に一方的に腹パンするより腹パンし合いたい。

 

 「勝手に殺さないでちょうだい」

 「案外元気だね」

 「姉さんとめないで」

 「いや、この人悪い人じゃないから、ね」

 

 だが、中々言う事を聞いてくれないヒナタ。大蛇丸はうんざりした表情でどこかに逃げ出す。結局俺がヒナタを説得するのに24時間必要だった。

 俺はコンビニじゃねーんだぞ。いや、24時間フルで影分身をあちこちに放って偵察させてるからコンビニか。歩くコンビニとは俺のことだったのか。

 

 そんなこんなで音の里に帰って来た俺。水晶で色々な場所に居る俺をチェックしましょうね。ヒナタに抱きしめられながら、各地の映像を水晶で覗く俺はピティ・フレデリカな気分。髪の毛しゃぶる性癖は無いけど。逆に妹に髪しゃぶられてるわ。ヒナタがフレデリカだったのか……

 さて、まずはどこを観ようか。月を天眼に変えようとしたのだが、失敗した故の労力。中々思うように行かないのが人生である。

 

 

 

 

 遺ェェ影。現在水影の照美メイちゃんとお話中である。おそらく本体もこの様子を覗いている事だろう。それはあの髪の毛うめぇの人のように。

 スク水うめぇも居るからな、あの世界の魔法少女は。やはり颯太くんが一番まともなんやなって。

 

 「モミジちゃんも大変ね。むさ苦しいジジイに妙な言いがかりを付けられて」

 「そうなんだよ。聞いてよ」

 

 なんて言いながら俺はメイちゃんにお呼ばれして、霧隠れの里のメイちゃんのお部屋でお茶会の真っ最中なのだ。道中綱手姫を薬漬けにして、手篭めにしていたシズネちゃんも誘って一緒にお茶会デース。

 とりあえずお茶会に煩い俺は、かつてペチカちゃんに教わったスイーツ作りを疲労しながら披露しつつ、どこかの暇な部署の警部みたいに紅茶を入れていた。

 

 「私ここに居ていいんでしょうか……」

 「わたしが誘ったんだから、良いにきまってるじゃない」

 「シズネちゃんも私やモミジちゃんと友達になりましょう」

 

 シズネちゃんは綱手を手篭めにしていた姿からは想像付かないが、とても奥ゆかしい。可愛らしい女性である。色々とぐっしょり濡れている綱手は、部屋に上げると濡れるので中庭で放置されている。

 

 「綱手様ったら酷いんですよ」

 「ほうほう」

 

 それでそれでと相槌を打ちつつ、無敵になる為の行動をしている俺。だっていくら強くとも、周りが敵だらけだと負ける。それは戦国時代のトップアイドル信長さんも実証済みである。

 大胆な味方作りは女の子の特権。コレは経験則に則った行動である。宇宙一天災の鷲羽ちゃんに昔太鼓判押されたしなこのやり方。けっしてサボリではない。あー……紅茶うめぇ。

 

 「あら、クッキーが無くなったわね」

 「ちょっと待っててね、補充するから」

 

 そう言いながら俺専用の亜空間に手を突っ込み、作っておいたお菓子を彼女達の目の前に出す。気分はメガネのガキにねだられる青い狸だ。

 

 「すごく便利よねぇソレ」

 「……」

 「いいでしょ。教えよっか?」

 

 もう二回目なのでメイちゃんは驚かないが、シズネちゃんは初めて見るであろう俺の謎の術に驚いている。実はこれ口寄せが元なんだけどな。というか仙界かどっかに繋がって生き物入れられるんだから、食い物もいけるやろの精神で術を弄ったら四次元ポッケみたいになった。

 

 「タダでは教えてくれなさそうねー」

 「お友達だからタダでもいいよ」

 「お友達だからこそ、タダじゃ貰えないわ」

 

 中々にメイちゃんは強かだ。タダで貰うと言う行為がどういう事を招くかわかっている。

 

 「よし、じゃあ……私限定で音じゃなくモミジちゃんと同盟関係を結ぶわ」

 「うん? どういうこと」

 「お友達の危機には、無条件で駆けつけるってことよ」

 「わーい」

 

 こうして俺はここでの仕事を終えたのだ。どこかの着替えに長時間かかる、お友達にはポテチとコーラしか出さない無敵さんとは違うのだ。

 やっぱり私場違いなんじゃと言いつつ、俺が作ったお菓子をもぐもぐとハムスターばりに頬張っているシズネちゃん。君の食べっぷりには俺も感激だ。トントンにも俺が作ったペットフードを進呈しよう。

 

 「あのオオノキの爺がさー、私になんて言ったと思う? 婚期を逃しそうとか言い出すのよ。殺そうかと思ったわ」

 「こんな可愛い美少女に向かって酷い事を言う爺も居るもんなんだね」

 「でしょー? 失礼しちゃうわ」

 「メイさんはとっても優しくて美しい女性だと思います」

 「トントンもそう思います」

 

 話はまた愚痴へと変わっていく。こんなに可愛い笑顔を浮かべる子が婚期を逃す訳が無いじゃないか。見る目がないなオオノキ。

 

 『む? ここはどこだ』

 「あっ、綱手様が起きちゃったみたいなんでちょっと行ってきます」

 

 そう言いながら、ようやく起きた綱手にピンク色の薬が入った注射器片手に突貫していくシズネちゃん。寝起きの師匠にお薬処方とか、師匠想いの素晴らしい女の子じゃないか。

 

 「いい弟子を持ったわね綱手様は」

 「いい子だよねぇ」

 

 『やめろシズネ! それは人に打つ薬ではない!』と言いながらもシズネちゃんとのプレイを満喫している綱手は幸せ者だ。

 

 「私も弟子を取ろうかしら」

 「今はまだいいんじゃない。もう少し遊びたくない?」

 「確かにね。まだまだ遊びたいわ」

 

 メイちゃんはまだまだ若い。遊びたい盛りのお年頃だぜ。俺も年甲斐も無く、可愛い子がいたら遊びたくなっちゃうからね。恋に歳は関係ねぇ。気持ちが大事なんだ。

 メイちゃんは恐らくまた男漁りのツアーに参加する事だろう。果たして運命の王子様はメイちゃんに微笑むのか。乞うご期待。

 

 

 

 

 俺は雑事を終え、同化している魂を持つ俺にしか認識する事のできない心の中の場所で、魔術でロックされている秘密の階段を下りていく。もう一人の自分へと会う為に。

 心層の地下深くに彼女は存在した。様々なコードを身に付け、夥しい数の水晶を観てはつまらなさそうにしていた。

 

 「ちゃおー、わたし」

 

 その正体は本物の日向紅葉。二つの心に一つの身体。本来一つだった魂に魔術や色々な技術によりどっかから突っ込まれて融合したのが俺、日向モミジ。まるで合わせ鏡。魔導書から生み出されたコピー、創造主の偽魂体のようだとあの時は思った。

 普段彼女が出てくることは無い。俺の負担になるからだ。故に俺が動き俺が全てやる。いつも水晶から俺の行動を覗くだけの生活。そもそも表に出る事すら億劫になってるからな"私"は。

 どこぞの飴だけで歌って踊ってくれる天使かよ。やっぱり紅葉ちゃんはアイドルなんやなって。容姿同じだから自画自賛ですな。ワハハ。

 

 「ちゃおー……あのさ、あの二代目は無いんじゃない。どこの時空から引っ張ってきたの」

 

 あの二代目は彼女と共に魔術で穢土転生を弄り、どこかの時空から引っ張り出して来た二代目(仮)だ。まともに戦えば350時間メンテナンスで、更に緊急メンテナンスされる場合があるので戦う気はない。

 

 「貴方の知識からの引用よ、わたしは悪くない」

 「わたしの影響かぁ……」

 

 彼女はけして俺以外を信じない。故に間違えている俺の知識ですらそのまま使う。

 

 「鏡を見て話してるみたいだから、わたしの前ではその一人称も話し方もやめてって言ってるでしょ。わたし達しか居ないんだから普通に話してよ」

 「ああ、うん。でも長年やってるから難しいかな。ごめんね」 

 

 幾千もの時を経ても、凡人である俺だけなら魔術なんて覚えられなかっただろうし、こうして勝手きままに行動する事もなかっただろう。

 このやりとりも、何度目だろう。彼女には申し訳ないと思うが切り替えが中々できない。染み付いてると言っていいだろう。

 

 まるで人柱力の精神部屋。誰も知らない。そんな場所で俺は過去を振り返る。

 

 木の葉の里を俺が影分身を用いて大掛かりな魔術により、常識を変え、己の都合が良いよう傀儡にする事もあった。

 それはかつて見たスワスチカのように。大規模な幻術に近いそれは、彼らを能天気な世界へと誘った。木の葉の里から滝隠れ、砂隠れと様々な里を魔術により常識を変化させる。

 元々木の葉の里がおかしかったのは気のせいだろう。と、思いたい。初代が何かすごかったらしいというのは昔聞いたが……まさかな。

 

 木の葉の戦力の底上げした輩の召喚も、彼女には何か狙っている意図があるのだろう。俺が信じなければ誰が彼女を信じるというのか。そう言い聞かせる。 

 

 「飛段だっけ、アレには驚いたわ。何せ、魔術のまの字も無いような世界で黒魔術を行使している輩なんだもの」

 「確かに。けどアレは俺達の役に立つよ」

 「そうだったらいいね」  

 

 彼女はあきらめかけている。俺が同化して間もない頃よりも悪い状況かもしれない。

 

 「貴方はいい気なものよね、半身であるわたしをほったらかしにして……他の女の子とお茶会を楽しんでるんだもの」 

 「……」

 

 俺があんにゅいな気分に襲われるのは、彼女と共に過ごした記憶によるものだ。だって初っ端からレ○プされた挙句、出産ショーと言いつつ達磨にされて、その後好事家の玩具だぜ。その辺りの凡人の俺には耐えられなかった。そんな泣き叫び狂う俺を笑いながら彼女は見てタネ。

 

 そもそも、何事も無くても胃が激痛、胃と肺から血ドバーなのでクソッタレな繰り返しにも耐えなければならなかった。

 そしてまた別の世界で悲惨かどうかわからないが、そう言う類の人生が普通と言えるくらいにまで、俺は繰り返した。100回以上そういった生を送れば、嫌でも強くならなければならなかったのである。

 

 そして、そんな彼女の考えは……同化している俺には、わかりたくなくてもわかる。

 

 「遊んでいるわけじゃないよ。これも計画の為……俺は君を助けてみせる」

 「できたらいいね」

 

 彼女は拗ねていた。同化して間もない頃ですら、他者と仲良くしていると拗ねる傾向があった。長い月日を共に過ごした今は尚の事。そんな彼女を宥めるのも大事な俺の役目である。

  

 「そう拗ねないでくれるかなー」

 「拗ねてないよ、少し意地悪したくなっただけ」

 

 そう言いつつ、ツンとした態度で俺に接すると言う事は拗ねているという事。こればっかりは俺が悪いなのかもしれない。だが、必要な事だったのだ。堪忍して。

 

 「ほら紅茶にケーキ。一緒に食べよう?」

 「パチンコ打ちたいなー連れてって?」

 「えぇ……」

 

 彼女のご機嫌をとるのには時間がかかりそうだ。パチンコ屋なんてこの世界あったっけ。長い長い人生だが、今回はまだ足掻ける。故に俺は、わたし達は歩き続ける。




※感想評価ありがとうございます禿げみになります 1章これで終の空 2章120kbくらい溜まったら登校しmっす

登場地雷系

地雷屋さん 他人の地雷を踏み抜き満足するBL作家だよ

モミジちゃん 歩くお茶会だよ(。>﹏<。) 

メイちゃん 可愛い美少女だよ(๑´0`๑)♡

シズネちゃん お薬を盛るのが得意だよ(。☌ᴗ☌。)

トントンもそう思います

日向紅葉 尾獣みたいなものだよ

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