ヒナタの姉はやべーやつ   作:闇と帽子と何かの旅人

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自己勝手なエゴの暴力


醒めゆく夢
Panorama luminary


 とある地中の奥深く。うちはマダラは現状に辟易していた。カカシと角都は訳の分からない眉毛の濃い奴らと交戦し敗北。角都は死亡し、カカシは捕虜として木の葉の里へと拉致られた後行方知れず。長門と小南は雨隠れの里に帰郷後、何故か新婚旅行へと旅立った。

 干柿鬼鮫はうちはイタチと共に木の葉の里に寝返り、デイダラとサソリは芸術を磨く旅に出ると言い暁を脱退。飛段は大蛇丸に音の里へスカウトされそのまま組織には帰ってこず。ついでに橘やぐらを拉致。

 裏切りが常の忍世界だが、同時にここまでの数の人間が裏切るとは流石のマダラでも予想できなかった。 

 

 木の葉の里の連中だけならまだわかる。だが、他里の者達まで理解不能な行動をし始めるのはマダラの既知の外だ。おかしいのだ。彼らはそれぞれ何かしら憎しみを抱いて里を抜けた者達。この世の不条理を恨んでいたのではなかったのか。

 

 「解せんな……」

 

 何処からおかしくなった。いつ歯車が外れ始めた。何が原因だ。マダラの疑問はうず高く、山のようになっていく。

 そんなマダラの所へ食虫植物のようなヒトガタが地面から生えた。

 

 「マダラ。ヤッパリオカシイ。月ガ七ツナイ」

 「……何を言っている」

 「千年毎ニ文明ガ破壊ト再生ヲ繰リ返シテイル事ハ知ッテイルナ? 創造主ノ意志カハ、ワカララナイガ」

 「だからお前は何を言っている」

 

 唐突に現れたかと思えば意味不明な事を喋る黒ゼツ。彼はマダラに残された数少なくなった手駒の一つ。その手駒すらおかしくなっていた。

 

 「オ前の意志ハ、俺ノ意志ダ。ツマリ俺ガ、マダラノアポトーシスダッタノダ」

 「……」

 

 黒ゼツは各地の情報を収集するのに最低限必要な駒なのだ。このような状態ではまともな情報など入手する事は不可能だろう。マダラは幻術にでもかかっているのかと、黒ゼツにかけられている何かに対して干渉する。

 

 「グッ……オオオオオオオオ!?」

 

 やはり幻術か。マダラの読みは当たったのだろうか。

 

 「オレハショウキニモドッタ」

 「妙だな、チャクラは感じなかったが……」

 「マダラ。日向モミジニ気ヲツケロ。奴ノ細剣ニ触レルナ」

 「小娘がどうした。それに細剣? 知っている情報を吐け」

 「奴ハ俺ガ思ッテイル以上ニ危険ナ存在ダッタ。コノママダト母サンガ……」

 「おい」

 

 幻術から解き放たれ、正気に戻ったかに思えた黒ゼツだがマダラの言葉に返事をする事はなく、まるで自我を保てる内に喋っているように焦っていた。 

 

 「グッ……オオオオオカアアアサアアアアンンンンン!?」 

 「おい」

 「ヤッパリカグヤガナンバーワン。カアサンノ温モリニ包マレテ眠リタイ」

 「チッ。もう一度正気に戻すか」

 

 ただの幻術にしてはおかしいほどにしつこい術だ。普通なら解けているはず。うちは一族の眼による幻術ですら、ここまでしつこいのはイザナミか月読くらいである。

 

 「グッ……マルデ将棋ダナ。俺ノチャクラヲ利用シテイルノカ。アノ女……フザケタ存在ダ」

 「まだ正気に戻ってないのか」

 「マダラ、今ナラマダ間ニ合ウ。動ケ」

 

 再び正気に戻したはずの黒ゼツだが、やはり焦っていてマダラなど眼中にないかのように指図する始末。

 

 「動きたくとも駒が足りん。知っているだろう」

 「ソウダッタ……詰ンダナ……マルデ詰ミ将棋ダナ」

 「あの小娘の情報を吐け。何をされた?」

 「奴ノ口寄セスル武器ニハ絶対ニ触レルナ。斬ラレルナ……モウ遅イガナ。俺モオ前モ詰ンデイル。アノ女ノセイデ全テパーダヨ」

 「それはわかった。だが、何が詰んでいる。まだ計画に必要な人柱力も存在している。奪われた人柱力も奪い返せばいい。駒も増やせば良いだけだ。地下に大量にある白ゼツも使えばどうとでもなるだろう。何を焦って何をあきらめている?」

 「グゥゥウウウウ……奴ハ世界ノ敵ダ。滅尽滅相、誰モ生カシテオク気ナド毛頭ナイ。アノ女ノ……イヤ、アノ男ノ根底ニアルノハタダソレダケダ。コレダケハハッキリト真実ヲ伝エタカッタ」

 「おい……チッ。また元に戻ったか。何の術だコレは」  

 

 黒ゼツは日向モミジに何かしらの術を受けてこうなったのだろう。だが、奴はうちは一族ではない。日向一族の眼にそんな効力は無い。瞳術の類では無いのは確かだ。

 なるほど、ここまで強力な洗脳紛いの幻術を使えるのであれば、暁の者達が次々に不可解な行動をし始めるのにも納得できる。だが、いつ彼らに接触したのかすらわからない。もしくは細剣自体に効力があり大蛇丸が原因なのだろうか。

 思えば日向モミジが接触してきた時点でこちらは詰んでいたのかもしれないと、ふとうちはマダラは過去を振り返る。あの時ああしていればとIFを思い描くが、結局敗者の思考でしかないとその思考を捨てる。

 

 「ハッハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

 敗北するのは何年振りだろうかと、愉快げに笑う。柱間に匹敵するとは言い難いが敵と認識して全力で戦いたいとマダラは思った。

 

 「小娘……いや、日向モミジ。俺の敵として認識してやろう。次に会う日が貴様の命日だ」

 「カアサン……カアサン……」

 「……幼児退行でもする幻術なのかコレは」

 

 久しぶりに全力で戦いたい相手とマダラに認識された日向モミジだが、彼女が果たしてまともに戦うという選択肢をとるかと言えば取らないかもしれない。

 なにせ得体の知れない幻術を要所にかけてくる輩なのだ。情報封鎖からはじめる相手。真正面から馬鹿みたいに戦いを挑む輩の方が何倍も相手にしやすい。

 

 「ママァーーーーー!?」

 「耳元で叫ぶなうっとおしい」

 

 それよりも黒ゼツをどうにかして元に戻さなければと、思考を切り替えるマダラであった。

 

 

 

 

 「最近の貴女……異常よ」

 「……まさか君に異常者扱いされるなんて、光栄に思うべきなのかな。君が異常状態にかかっているのを疑った方がいいのかな」

 

 音の里、とある研究施設で大蛇丸と日向モミジは研究の傍ら話し合っていた。

 

 「私の事はいいわ、貴女最近らしくないじゃない。安定していない人柱力で実験するなんて、何を焦ってるのかしら」

 「……焦ってなんてないよ。ただ必要だっただけ。それに君は正邪に興味なんてなかったんじゃなかったっけ。あるのは底抜けの探究心、ただそれだけでしょ? そこにどれほどの屍が築かれても見向きもしないそんな下劣畜生じゃなかったっけ。ほら君の方がらしくない」

 「……」

 

 日向モミジの指示通りに、暁のアジトから橘やぐらを奪って来た大蛇丸は、相方と言っていい彼女の本心がわからず困惑する。彼女はもっと優しいジンブツだったはず。そんな"植えつけられた常識"と知っていて尚大蛇丸は嘆いている。

 

 「ねぇ……貴女が私の常識を弄った事くらいわかってるのよ。そこまで信用できないのかしら、自分以外の人間が」

 「……へぇ。君の精神構造がどういうモノなのか知らないけど、ずいぶんと強固なんだね。まさかアレを受けて自我を保っていられるなんて……いや、元々対個人用の洗脳だしこんなもんか」

 「私は貴女を裏切らないわよ。信じて頂戴」

 

 日向モミジは無理矢理笑いを抑えているような表情で大蛇丸を見やる。

 

 「……要は五大国を狂わす。ソレが計画の要。それは知ってるよね」

 「ええ。そして何時でも私達の都合が良いように動かせるよう手配し、そしてそれを使う時は非常時の破れかぶれの策」

 「うん、本命の補助みたいなモノだね。本命は痛みからの解放。飛段の研究も、その他の実験体も全てはわたしがこの痛みから解放される為だけのモノ。知ってるでしょ」

 「……でも貴女の、いいえ。"貴方"の望むモノはそうじゃない」

 「ふぅん? 何が言いたいの」

 「貴方の目指すモノのはソレだけではないでしょう? 私は知ってしまった。理解してしまった」

 「へぇ。何を知ったのかな?」

 「一度だけよ? 貴方の記憶を見たのよ……」

 「……」

 

 モミジは黙る。まるで敵を見ているかのような眼つきで大蛇丸を見る。大蛇丸が指摘しているように焦ってはいないが、それでも普段のモミジより活発に行動している。

 大蛇丸はそんなモミジを純粋に心配しているだけなのだ。とあるモノを見てしまった大蛇丸は心配せずにはいられないほどの。あるモノを。

 

 「貴方に私の願いを叶えてもらった後、少し貴方が焦っていた時期があったでしょう? まだ余裕があるはずのに、何が原因で焦ってるのか私もわからなかった。気になって貴方の記憶が無性に見たくなったのよ」

 「あぁ、あの日か。教室で授業のあった時、薬を処方されてイライラした後、研究室で不貞寝した時くらいだよね……わたしに何か出来たのは」

 「ええ……あの日。常に警戒している貴方らしくなく、無防備を晒した日にね。純粋に好奇心も疼いちゃって……」

 

 なるほどと納得するモミジに大蛇丸は続ける。

 

 「貴方の記憶は他者のソレとは違い、まるで迷路だったわ。扉が至る所にあって、道も大量で理解不能なオブジェクトでびっしり。狂人の記憶かと思えばファンシーな可愛らしい生き物も居るし、見た目どおりの少女のような記憶なのか困惑したわ……」

 「そんな風に見えるんだ。わたしの記憶って」

 「……続けるわよ。とりあえず一つ一つ扉を開けては貴方がかつて経験したであろう記憶を見ていったわ。

  かつて貴方が師事した師匠達ってすごいわよね、今の私ですら瞬殺されそうなおぞましい人達。ニコニコと笑いながら人を斬る事しか頭にない女、撫でるだけで生き物を懐かせてしまう老人、筋肉モリモリの房中術に夢中な邪仙にパンツを脱がせる事しか頭に無い教授……」

 「懐かしいね。そんな人達に師事した事もあった」

 

 懐かしげにモミジは、寂しそうな表情で頷いている。

 

 「他の扉もそんなおぞましい人達で一杯だったわ……中でも異質だった扉を開けた時、恐らく貴方がまだ貴女じゃなかった頃の師匠ね。水晶で自在に他者を取り出したり、自身すら水晶に映している場所へ移動できる女。アレが一番貴方の師で異質な記憶だったわ」

 「……えらく古い記憶だね」

 

 苦々しい表情でモミジは大蛇丸を見る。あまり聞きたくない類の記憶なのだろうか。

 

 「その扉を開けてからが問題だったわ。思えばプロテクトみたいなモノだったのかもしれない。ソレからは貴方の記憶の世界は豹変した。ファンシーな生物は鳴りを潜め、代わりによくわからない機械染みた円形の浮遊物が闊歩する世界になった」

 「……」

 「上には七つの月が輝き、扉は無機質な井戸になり、ドレもコレも蓋が強固にされていた。知らない事の連続で私も興奮していて迂闊だったわ。パンドラの箱でも開けてしまったのかと……元々貴方の痛みを根本から治すきっかけにでもなればと思って潜ったのよ? その殺気はやめて頂戴」

 

 無遠慮に記憶を覗かれたせいなのか、モミジは口を繊月のように歪めながら嗤っている。怒りか、焦燥か、殺意剥き出しの笑顔で大蛇丸を見ている。

 

 「どの井戸も厳重な魔術によるプロテクトが施されていて開けられなかったわ。でも1個だけ私でも開けられそうな井戸があったの、ソレを少しだけ解除して隙間から恐る恐る私は見た、見てしまった」 

 「君ハ何ヲ見タノカナ?」

 「……貴方が人柱力並みのチャクラを持つに至った理由、貴方風に言うならマナ、魔力の源をよ」

 「……ああ、アレだけか。度々開けるから緩くなってたのかなあそこ」

 「痛みからの解放もそうだけれど……貴方は解放されたいのでしょう。アレに」

 

 心底安堵したような表情に変わった日向モミジ。表情がコロコロ変わるモミジを見つつも続ける大蛇丸。

 

 「私の推察は間違っていたかしら……」

 

 モミジが焦ってらしくない行動をしていると思ったのは、勘違いだったのだろうか。失敗は許されない。己のプライドに賭けても、日向モミジを救おうと、そう思ったが故の行動。

 

 「100点満点で言えば40点しかあげられないかな。そしてソレだけじゃないんだなーわたしの目的は」

 「……でも、教えてくれないのでしょう貴方は」

 「教えたら君もわたしの中の彼女も、誰も彼もが敵になるから教えてあげない……なーんちゃって。たいした事じゃないし気にしないでいいよ」

 「陳腐な言葉だけれど、私は貴方以外を敵にしても構わないと思ってるわよ? それでも駄目かしら」

 「君のエゴで"わたし"のエゴを攻撃するの? それとも君のエゴをくれるの? エゴを融合させたら強くなれる世界じゃないよここは」

 

 一転しておどけたようなモミジに懇願するような目で見る大蛇丸。かつてモミジが元々居た世界ならば問答無用で戦いの火蓋が切って落とされていたかもしれない。モミジは口寄せで細剣を召喚する。

 

 「待って頂戴! 私は貴方を……」

 「まだ早い。早いんだよ大蛇丸」

 「必ず貴方を救って……あら、私なんでここに居るのかしら」

 

 何かを言っている大蛇丸へと無慈悲にも細剣を振るうモミジ。振るった途端にまるで夢から醒めたように、再び夢の中へと再び叩き込まれた大蛇丸。不死になっている為、傷は瞬間的に癒えてしまって痕すら無い。

 

 「飛段細胞で実験してる最中だよ。忘れるなんて酷い。もしかして健忘症?」

 「……そうだったかしら。何か大切な事を忘れているような」

 「わたしの為の研究が大切じゃないみたいな言い方だなー」

 「貴方の計画以上に大切な事なんて今は無いわね。ごめんなさい」

 「わかればよろしいー」

 

 そして何事も無かったかのように振舞うモミジに、何も疑問を抱いていないように大蛇丸は返事を返す。こうして、日常は回っていく。誰も彼もぬるま湯のような判断基準で動いていく。

 




トウジョウジンブツ

黒ゼツ マザコンだよ

うちはマダラ 唯一まともに見えるよ

日向モミジ 細剣で斬り付けた相手を夢の世界に招待するよ

大蛇丸 彼氏が浮気なんてしてないと思いつつ好奇心でスマホ覗く女みたいなものだよ
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