ヒナタの姉はやべーやつ   作:闇と帽子と何かの旅人

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再臨、鬼と呼ばれた女神 神話級


tsukihana-月華-

 夜が明け、再び戦いが再開される。

 再び闘う三忍とうちはマダラ。連合軍と穢土転生体達。奇跡的に死者が今まで0人という、第四次忍界大戦。

 歴史上もっとも死者が少ない忍界大戦になるかもしれない。そんな思いが五影達の脳裏によぎる。

 

 普通に考えて、そんな都合の良い結果になるわけがない。事前に考えていた彼らの戦況推移よりも良過ぎる経過。

 

 人柱力も何名かは温存されて、戦場にすら出ていない。

 そもそも人柱力が必須ならば、うちはマダラはもっと苛烈に人柱力奪取に力を入れていたはずだ。

 あのマダラらしくなく杜撰な人柱力の扱い。まるでついでと言わんばかりの。

 

 そしてまた夜が来る。満月。時は満ちた。

 

 「篭っていれば安全だと、あのジャリ共は思っているのだろうな。せいぜい鳥籠の中に篭っているといい」

 

 うちはマダラ自身は人柱力――尾獣のチャクラを必要としていない。

 彼が真に求めているモノはたった一つ。この世に最早存在しないある人物でも無ければ、この世界の覇権でもないし、復讐でもない。 

 突如彼の姿が変わる。かつて六道仙人と呼ばれた存在に似た容姿へと。

 

 「はじめるか。せいぜい優しい時の中で過ごせ」

 

 樹のようになった十尾に語りかけるように。マダラは優しげな表情で月を見ながら術を発動した。

 

 この世界各地を樹の根が覆う。建物を突き破り老若男女問わず樹の根に覆われていく。

 それはあの水中の施設も例外ではない。

 悲鳴を上げる間もなく、施設を突き破り根が覆う。圧壊せず、水没しないのは技術力の賜物か。

 だがそんな技術力も役には立たず、中に居る人々を覆っていく。

 それはまるであるべきものを元の場所へ還すかのように。

 恐ろしい速度でソレは近付いてくる。印を結ぶ暇すら与えられず、忍達は捕らえられていく。

 

 「そんな……」

 

 司令官である照美メイは、そんな呟きを残しながらなすすべなく、あっという間に自分達を覆っていく樹の根のようなモノに包まれる。 

 

 そして世界は樹によって覆われた。

 

 

 

 

 「神樹と呼べばいいのか、はじまりの樹と言えばいいのか。大蛇丸まで取り込まれちゃってまぁ……」

 

 そんな世界の様子を日向モミジはいつもとは違い無表情に近いソレで見守っていた。

 

 「何故、貴様は取り込まれていない」

 

 いつまで経っても取り込まれない日向モミジ。

 うちはマダラは日向モミジに問う。何故コイツは取り込まれていないのかと。

 

 「こんな時は、世の中の関節は外れてしまったって言えばいいのかな」

 「オイ」

 

 呼びかけるうちはマダラに興味が無いのか、日向モミジは樹を懐かしげに眼を細めながらずっと見ている。

 樹の根は何故か日向モミジを避けるように世界を覆う。その様子を見ていたマダラは少々苛立ちながらモミジに詰問する。

 

 「質問に答えろ小娘」

 

 どうでもよさそうに日向モミジはうちはマダラへと向き合う。そこに感情の発露は無く、ただ作業的に機械的に振り向く。

 

 「……何故取り込まれないかって質問だったね」

 「……そうだ。何故樹は貴様を避ける」

 「君が今、六道仙人のような姿になれているのは、何の力を使っているからかな? それが答えだよ」

 「どういう意味だ。まさか貴様神樹そのものか? いや、そもそも神樹ならチャクラが同調して……」

 「陰があれば陽もある。わたしが陽なら陰はそっちが使っているチカラ、そもそも元は一つの怨念の集合体なんだよソレ」

 「……神樹の人格かと思ったが、そういう訳でもなさそうだな」

 「樹になった覚えは無いかな。そして君たちはチャクラなんて呼んでるけど、違う」

 

 チカラは統合す。集いしチカラは引き合う(カタカムナ)

 

 「彼女は夢と現の境界が薄れるこの時を待っていた」

 「なに?」

 

 胡乱な目つきでモミジを見やるマダラ。対するモミジはずっと表情が無い。

 

 「……約束を果たす時、か。大筒木カグヤ」

 「何を……」

 

 言っている。その言葉は最後まで続かなかった。突如マダラ様子が豹変する。

 苦しそうに、何かに耐えるように。 

 そしてマダラの腹を突き破るかのように一人の女が現れた。

 それはまるで産まれてくる胎児の如く。

 

 ――胎児(カグヤ)胎児(カグヤ)よ。嗚呼、胎児(カグヤ)よ、(悪夢)の中で産まれた愛し子よ。

 

 両目に白眼、額に輪廻眼と写輪眼の力を扱う事が可能な第三の眼を持つ女。大筒木カグヤが再びこの世界に顕現する。

 

 「馬鹿……な……」

 

 傷をおさえながら苦しそうにマダラは呟く。

 ゼツ共に憑依させたのは本体ではなく多重木遁分身体で、彼らの付け入る隙は無かったはず。

 そもそもゼツ共も外道魔像に吸い取らせ、十尾となり、今は樹になっているはずだ。

 狂った鳥達は母の元へと、鳥籠の中へと還っていったはずなのだ。

 そう、鳥籠の中の悪意と同化したのだ。そのチカラの奔流と共に。ソレらを利用しこの世界の六道のチカラを使っているマダラにとってソレは毒になる。

 警戒していたマダラだったが、チカラそのものに意志があるとは盲点だったようだ。

 その毒はマダラを通して世界に流れていく。その流れは止まる事は無い。誰も止める事はできない。人ではソレを止められない。

 その正体はとある世界。その片割れ。日向モミジがまだ人であった頃融合してしまったモノの陰陽で言う陰の塊。そのセカイそのもの。

 

 チカラの根源は別のセカイそのものであった。

 

 うちはマダラがいくら警戒しようが、ソレに気付く事は不可能だ。

 普段誰もが当たり前のように使っているチャクラ。否、チカラというべきソレを警戒する事などほぼ不可能に近い。

 マダラはそのチカラを知らず知らずの内に内包してしまっていたのだ。それも直接。

 直接取り込んでしまったソレは他者のように、柱間の残滓で鬩ぎあっていた純粋なチャクラというべきソレとは違い、人格が歪むほどに狂うチカラ。

 この世界の柱間はソレにいち早く気付き、対策を練った。だが、根本的な解決にはならなかった。

 故に後に続く者達へと託す他無かったのだ。この世界の柱間は忍の神と呼ばれてはいたものの、ただの人間だったがために。

 

 「……そういう事か」

 「なりふり構わずだよね。ゼツだっけ? 無事お母さんの元に還ったね」 

 「まだだ……まだ俺は……」

 

 最早気力だけで立っているだけのうちはマダラ。マダラは日向モミジを見ているようで、見ていない。

 この世界に最早存在しない誰かを見続けている。その残滓を彼は見続けている。その意思を、火の意志をずっと宝物のように。

 再び世界に産まれた大筒木カグヤと言えば、まるで憎悪の塊のような、全てを憎んでいるとでも言わんばかりの表情で、世界を見渡し、日向モミジを見つけ、モミジを睨みつけながら呟く。

 

 「何故ワラワがもう一人居る」

 

 それにモミジは応えない。代わりに別の声色が応える。

 

 「こちら(、、、)のワラワは不憫よな」

 

 これにようやく合点がいったのか、うちはマダラはなるほどと呟く。 

 憎悪に狂うカグヤと対照的に、憐憫の眼差しをカグヤ(鬼の女神)に向けるカグヤ(兎の女神)

 それは一つ間違えれば自身が辿ったかもしれない可能性。

 支配欲、独占欲、憎悪。様々な感情を内包し、殺意と共に睨みつけてくるカグヤに対し、日向モミジの身体に纏わり付いている何かはそう呟く。

 

 別の次元の、似たような世界での記憶。それはこの纏わり付いているカグヤによる記憶の流入。彼が、日向モミジが知らなかった記憶の正体。

 その纏わり付く彼女の願いは世界を、己が法で包む事。

 この目の前の憎悪に狂う邪魔な存在を、目の前の女を討ち果たし、己が世界を覆う事。

 鬼と呼ばれた存在を、目の前の怒り狂うカグヤに当て嵌めるならば、こちらのカグヤは兎の女神と人々に呼ばれていた存在と言うべきか。

 

 ならばリーやガイを送り込んだ存在。あの千手柱間という存在はどういった存在だったのか。

 彼は彼で、本当の意味で神となった存在だった。それはこの日向モミジに纏わり付いているカグヤが居る世界の。

 だが、その世界はとある勢力により滅びを辿り、神であった柱間も奮闘はしたものの残滓しか残らなかった。

 その世界で自発的に月に封じられていたカグヤ(兎の女神)の楔が綻んだのはその時である。

 柱間がリーを送り込んだように、カグヤもカグヤ自身をその隣り合った別の次元の世界へ送り込んだのだ。

 リーやガイは己の肉体へ送り込まれたのだが、カグヤには肉体が無かった。仮にあったとしても、別世界の己が彼女を受け入れたかと言えば否であろう。

 そこで入り込む余地のある、日向一族のとある娘へと入り込んだのが事の始まりだった。

 その娘は病弱であったが、産んだ子もまた病弱であった。己が入り込んだせいでこうなったのだろうか、そんな思いと責を考え、死んでしまう母親の代わりに見守ろうと日向モミジに取り憑くのは自然の流れのようだった。

 

 だがその取り憑いた先は膨大な魂を内包する人の形をした何かであった。

 

 それは一つの世界と言っていいほどの、魂を内包したソレは狂っていた。

 このままではカグヤが世界間移動してきた意味も無く、ソレに巻き込まれて消滅してしまう。

 故にソレの人格を奪おうとはせず、守護霊のごとく取り憑くだけにとどまる。

 

 「シャーマンファイトでもするの? カグヤちゃん」

 「ワラワはソナタが言っている事の半分も理解できない。ワラワにわかる言葉で喋って欲しい」

 

 この狂う人の形をしたセカイは、思考の大半が狂っている。

 それを隠すようにそのヒトガタは自身の経験した世界の中でサブカル的な事柄で思考を埋め尽くす。

 そうしなければ自身を保てないかのように、彼は彼で戦っている。戦い続けていた。

 それは内包する魂の一つ。とある少女の為という欺瞞でもあった。

 そもそも彼自身は彼だけで満たされている。と、思っているようなどうしようもない魂だったのだ。

 そこに想像を絶する数の魂との融合を経て、彼は希薄になりつつある自我を守る為に、欺瞞を続ける。他者の願いを叶えるというプロセスを経て、自我を守る。絶対に失ってたまるものかと。

 そして一番の問題はカグヤによって解決され、彼を縛っていた一番太い鎖は無くなった。

 

 「……アレと融合でもして封印されたいの?」

 「……ソレでもよい」

 

 つまらなさそうな表情でカグヤを見やるモミジ。そんな結末認めない。認める訳が無いとでも言わんばかりの表情だ。

 そんなやり取りを警戒した様子で見ている、かつて鬼と呼ばれた方のカグヤ。

 

 うちはマダラはそんな様子をこのまま見続けるだけで良いのかと、自問自答する。

 かつて交わした柱間との想い、残滓。受け継いだ遺志。彼の中での柱間とはこの世界の柱間と別の世界からやってきた柱間の残滓。ソレも指す。

 彼の中にあるその意志を、残滓でしかなかったソレと共に彼は再起する。

 託された想いを、ただそれだけを秘めて、彼は再び立ち上がるのだ。

 例え、ソレが柱間という意志に伝わる事が無かったとしても、彼は止まらない。

 この目の前の鬼と呼ばれざるを得なかった女や、兎の女神と呼ばれる存在のよりしろになっている日向の小娘だろうが、平和への想いは誰にも負けないと自負している。

 

 傷? そんなもの気合でどうとでもなる。

 チカラが足りない? 想いの力で打ち砕け。

 

 「ふざけるなよ女共。オレはあきらめんぞ。ぽっと出の女神か忍の始祖かは知らんが、そんなモノに俺は負けん」

 

 思わぬ負傷により六道形態が解けたマダラだったが、己のチカラだけで再び須佐能乎を呼び出し戦闘態勢を整え、彼は吼える。

 柱間細胞がマダラに呼応するかのように、傷を驚異的な速度で癒してゆく。彼が折れぬ限り何度でも再び立ち上がれるのだ。

 

 「すごいね……解脱してる」

 「ワラワにもわかるように語れ」

 

 モミジが言うには、彼はこの世界の理から外れ、真の意味で一人の人間として存在を確定させたらしい。

 それは強靭な精神のみが到達できる一つの到達点。何者にも穢されぬ意志。

 

 「輪廻の果て、ついにはソレに至れなかった。そんなわたしとは違い、本当の意味で人間になれた他者をはじめて見たよ」

 「小娘。いや、よりしろ(兎の女神)。邪魔をするならまずは貴様からだ」

 「ワラワがさせると思っているのか」

 

 こうなると、物理的に倒しきるのは不可能に近いとモミジは考える。

 なにせ、理から外れるとは文字通り世界から外れているという事なのだから。本来、生物に適応される物理法則は通用しない。

 そんな風に戦い始めたモミジとその背後に居る兎の女神、カグヤ。うちはマダラ。そこに割り込む鬼と呼ばれたカグヤ。

 はじめから理から外れている鬼、ただ一つの思いだけで理から外れたマダラ、そして――。

 

 三者は闘う。それぞれの意志と願いを胸に。

 

 大地が歪もうが、辺りの被害等考えない戦いを繰り広げる。

 ふざけた火力で須佐能乎の腕を振るうマダラ、振るう度に空気は震え、その余波で山を容易く割っていく。

 

 「愉しさとは無縁だが、これはこれで血が滾るというものだ。貴様らには感謝せねばならんのかもしれんな」

 「ッ!」

 

 一方日向モミジはと言えば転移をし続け回避するだけである。当たり前だ、あんなモノをモロに喰らえば流石に不死の肉体と言えど、その中にある人格、あるいは魂は消滅を免れない。

 そうなれば全てが無に帰す。彼の意識、人格が消滅し中にあるセカイは制御を離れ全てを喰らうまで暴れ続けるだろう。

 それはモミジにとって数万、数億……あるいは那由他の果てにたどり着いた、精神の安定をぶち壊す結末である。認められない。

 だが、マダラにばかり気をとられていては鬼の攻撃は避けられない。

 

 ――『共殺しの灰骨』

 

 殺すという鬼の言葉と共にマダラとモミジへ絶対なる破壊が迫る。

 マダラは樹海を降誕させ、その迫り来る破壊の概念を凌ぐ。

 モミジはまた空間転移する。だが、三者にとって距離という概念は最早意味を成さない。

 樹海のはるか上空へと転移したモミジのすぐ近くへと、須佐能乎を纏った物理法則を完全無視するマダラがやって来る。

 そしてモミジは応戦せざるを得なくなり、空間から一振りの剣を取り出した。

 

 「ほう……その剣は……草薙の剣か。ソレにも洗脳の呪いの概念が付けられているのだろう。だが、今のオレ(、、、)には効かんぞ」

 「……残念ながら、そんなこすい剣じゃないよコレは」

 「な……に!?」

 

 ただ振るう。近付いてくる須佐能乎の腕が草を薙いだように斬られた。

 草那芸之大刀(くさなぎのたち)と言われる神威をのせる剣。

 その斬撃、例え使い手が真なる達人には敵わない技量だったとしても、その神威は理から外れたマダラの須佐能乎くらいなら斬れるのだ。

 

 「ワラワは一人だけでよい!」

 「次から次へと……」

 「逝ね。女共」

 

 マダラをどうにかしたと思えば、背後からまるで空間を裂いて来たかのように鬼が出現する。

 そして共殺しの灰骨という破壊の概念を飛ばしてくるのだ。モミジはマダラの須佐能乎を斬った直後に、その飛んできた概念を草を薙ぐ概念ののった神威で斬り、進行方向を変えさせる。

 その隙をマダラが再び再生した須佐能乎の腕で攻撃してくるのだ。

 

 埒が明かない。だがそのモミジの行動は回避に専念されていて、とても相手を消滅させようという気概で闘ってはいない。

 まるで時間稼ぎをしているような、何かを狙っているような。

 

 そして再びモミジは距離にして10万km以上離れた場所へと空間転移するのだ。

 

 こうして三竦みの状態で拮抗する時間は流れていく。

 モミジや兎の女神が鬼と呼ばれるカグヤを攻撃しようとすれば、マダラがその両方を攻撃しようとする。マダラにとって彼女達は両方異物でしかない。

 

 敵の敵は味方ではなく敵でしかない。

 だが、そんな時日向モミジが回避行動をとりながら、よくわからない謎の印を結ぶ。

 魔方陣が、巨大な魔方陣が起動し始める。カグヤはソレが何かわからないが、本能的に転移に関するモノだと察知する。

 

 「モミジよ、何をしておる。すぐ転移した方が良いぞ」

 

 モミジの突然の行動に兎の女神は困惑する。

 

 「ようやくだ……今ならできる。わたしの月を呼べる」

 「まさか……」

 

 意思疎通が難しいモミジに困惑していた兎の女神。だが、やろうとしている事は伝わってきた。

 

 「女共、息絶えろ」

 「ワラワ以外消え失せよ」

 

 輪廻写輪眼の能力や共殺しの灰骨を使いながら迫りくる鬼、須佐能乎で両方を圧殺しようと振るうマダラ。

 鬼の骨とマダラの須佐能乎により、ついには赤い華を咲かせたモミジ。

 二人の攻撃を受けて、最早不死すら関係なく消滅しかけ、絶体絶命かと思われたが。

 

 「……なんだここは」

 「月を呼んだか……いや、ワラワはこんな月は知らぬ。ここは……」

 

 突如景色が変わる。それはマダラにとっても、鬼と呼ばれたカグヤにとっても未知の星。

 その誰も知らぬ月。それはモミジの原初。人であった頃に住んでいた、今は誰も住んでいない誰も居ない月。

 そこへ接触してきた鬼とマダラを己と共に置換したのだ。

 

 「モミジよここは……」

 「……」

 

 兎の女神の問いに彼は答えない。ただ崩れかけた肉体で歪んだ笑みを返すのみ。

 かつてあっただろう文明の傷跡。荒れ果てた大地。栄華を極めていたであろうその名残。

 何者かによって滅ぼされたのであろう、その文明の名残は哀愁漂う。

 

 「兎の女神の権能か」

 

 マダラは一人納得する。だが、正確に言えばソレは違う。これは日向モミジ自身の能力であり、兎の女神はその補助を担っただけに過ぎない。

 彼は他者を惑わせる事と移動させる事に関しては他の追従を許さない。

 夢と現の境が緩くなった事で得をしたのは兎の女神や鬼だけではなかったのだ。日向モミジもまた、その恩恵を受けているのだ。

 夢か現実か、その境界が曖昧な彼にとって世界は幻のようなモノなのだから。

 境界が緩くなった事により、現での能力行使が可能となる。

 そしてとうとう境界が、夢現が、夢幻に変わったその瞬間、術が発動したのだ。

 

 小さくただいまと呟くモミジ。彼の故郷、その月はとある種により滅ぼされた。

 二度と帰ることは無いと思われたその月を、彼は兎の女神の助力により、忍世界のある次元に召喚する事に成功する。

 

 彼はここで決着をつける気なのだ。それは誰も理解できない想いと、執念の果て。

 

 「何がしたいのか知らんが、やる事は変わらん。貴様らを潰す」

 

 例え土俵が変わろうがマダラには関係ない。邪魔者を潰す。それだけだ。

 一方とあるチカラと融合している鬼と呼ばれているカグヤの方は気が気ではない。

 彼の意図に気付いてしまったが為に。何をやろうとしているのかわかってしまったが為に。

 

 「ワラワはこんな所で終わるわけにはいかぬのだ……」

 

 焦りを隠せない鬼。ただ一つの願いの為に気力だけで動き続けるマダラ。そして――。

 

 「終わりではなく。始まるんだよ。ようこそわたしの故郷へ」

 

 歪んだ笑みから一転、可愛らしい笑顔で言葉を発するモミジはとある魔術を行使する。そして月に光が満ちた――。




▽ようてん▽貴重なマダラの出産シーン→カグヤとモミジは津名魅with砂沙美みたいなもんだった

三鼎(26話構成)まで続いたりしない
次話『向こう側の月』で終わリー
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