「大蛇丸がのぅ……」
日向ヒアシの報告を受け。日向モミジが大蛇丸に誘拐された事がわかった。
だがモミジが置いていったとされる手紙を読むと、誘拐と言うより駆け落ちが近いのではないだろうか。
納得して出て行ったような節もありそうである。元弟子とモミジの結婚式にいつ呼ばれるのだろうか。それとも本当に誘拐なのだろうか。
平和ボケした3代目火影は悩む。
「モミジは俺より強い。恐らく誘拐ではなく奴も納得した上での里抜けかと」
モミジを良く知るうちはイタチはそう言い切った。
「誰しもが死にたくは無い。戦場ならまだしも病なら尚の事。手紙の通りならモミジを責めるに責められんな……」
「仮に追い忍を向けても、追い忍が誰も行きたがらないでしょう……」
「うむ……」
日向モミジ。イタチと同い年。忍者学校に入る前に白眼を開眼。イタチと共に忍者学校を首席で卒業。9歳で中忍。10歳で特別上忍になったイタチ世代のエースオブエース。
ただし性格は快楽的で破滅的。大蛇丸が優しいと思えるほど残忍な所も見られる。任務に同行して生き残っている者は口を揃えて言う。ちいさいおんなのここわい。と。
「嫁の貰い手が出来てよかったと喜ぶべきなのかと思ってしまうわい」
「3代目……それはヒアシ様には言わないほうが良いかと」
「わかっとる」
流石に冗談である。だが、モミジが里抜けしたのは結構な問題である。里の戦力の大幅な低下だ。病で休暇をとっていたモミジ。一応長期休暇とだけ里の者には言ってあるのだが。
その休暇中他の特別上忍に休みは無かった。それくらいの量の仕事を彼女に任せていたのである。
人材不足が否めない。4代目と共に幾多のツワモノが散ってしまったが故の、やるせない事情である。
うちはイタチはかつての同僚で、己の壁として見ていた者が居なくなってしまった事へ、僅かながらに寂しさを覚えた。
今生の別れでは無いにしても、恐らくもう会う事はほぼないだろうと。
ナルト君やサスケ、ヒナタちゃんを交えて会う事はもう無いのだろうかと、イタチはやはり寂しさを覚えるのであった。
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「んふふ。わたしを捕まえてごらん?」
「ねえさんおいてかないでー」
「モミジ姉ちゃんすげえってばよ!」
「流石モミジさん! ぱねぇ! おいナルト俺達は修行だ!」
「おう!」
忍法・超越神力とのたまいながら座禅を組んで空を浮遊しながら逃げる日向モミジ。ソレを必死の形相で追いかける妹のヒナタ。眼を輝かせながらすげえってばよを連呼するナルトにサスケ。
ナルトを監視していた暗部も口を開けてなにあれ……こわい……。と言うくらい非常識な忍術なのだが、子供達は流石モミジと賞賛しては楽しそうに追いかけっこするのみである。
「何をやってるんだモミジは……」
飽きれて頭を抱えるのは中忍になりたてのうちはイタチである。イタチも天才と言われていたが、日向紅葉と言う天災には勝てなかった。
アカデミーの頃からそうだった。モミジに常識は通用しなかった。影分身を出す授業があれば多重影分身を使い、変化の術の授業ならば教室に居る生徒全てを変化させて全てモミジにする始末。
中でも酷かったのは幻術の授業で、幻術を里中にかけて住民全員を夢の世界へ誘い笑っているのである。猿でもできる優しい世界の作り方と彼女は笑いながら言っていた。
それに激怒したダンゾウにモミジがまたしてもしでかす。三代目の女装した変化入り影分身を100体ダンゾウに迫らせるという、大蛇丸も真っ青の返しをする日向モミジにはダンゾウも涙目になりながら逃げた。
それを水晶の術で見ていた三代目は爆笑していたそうだが。ソレが毎日毎日延々と続くのだ。10日続いた時には流石に三代目もかわいそうと思うようになり、20日経った頃にはダンゾウはノイローゼになっていた。
ダンゾウにとっては悪夢でしかなかっただろう。
手加減と言うモノを彼女は知らない。いつだって全力で遊んでいる。そう遊んでいるのだ。何をしても十全どころか百を越えて何処か遠くへ行ってしまうのがモミジ。
そんな彼女と腐れ縁のように関わるようになった切欠はナルトやサスケとヒナタが遊ぶようになってからだ。
下忍になりたての頃はただの厄介なチームメンバー。任務も淡々とこなす。気難しいが才気溢れる才女だと思っていた。だが今でははっきり言える。彼女は木の葉のやべーやつだと。
「あ、兄さん!」
「お、イタチ兄ちゃんだってばよ!」
「サスケにナルト君。モミジの真似はするなよ」
イタチは見よう見真似でモミジの術をやろうとしている二人に一応釘を刺しておく。サスケが隠れて忍法・超越神力の修行をしていた時は冷や汗をかいた。
里中が浮遊している忍者だらけになる未来を夢で魘されながら見てからと言うものの。イタチは拒絶反応とまではいかないが、どうにかできないかと日々考えるようになった。
「えー! すっごくかっこいいじゃん。俺もやりてぇよ兄さん」
「俺も俺も! 空飛びたいってばよ!」
「……モミジは簡単に発動させているが高等忍術だからなアレは……習うにしても、もう少し大きくなってからだ」
ブイブイブーイングを言う子供達を優しく諭すイタチ。そもそも大きくなってもあの術が使えるようになるかと言えば微妙だ。
似ている術ですら影クラスの技術とチャクラが無ければ、発動はおろか術の原理すらわからないだろう。かくいうイタチですら謎の術という認識だ。
今の土影。オオノキが似たような術を使うらしいが。ソレとはまったくの別系統なのは間違いないだろう。そもそも"チャクラ"を使っていないのだから。
「ね゛え゛さ゛ん゛ま゛っ゛て゛え゛え゛」
「あーららー。ヒナタは泣き虫さんだねー。よーしよし。いい子いい子」
「ふぇぇ……もうおいていかない?」
「それは約束できないなー」
「ふえぇぇぇえん」
いつまでたっても追いつけない鬼ごっこにヒナタが泣いてしまった。しょうがないから捕まってあげると地面に降りてきてヒナタを泣き止ませるように抱きしめるモミジ。
これもいつもの光景だ。最初から普通に鬼ごっこしていれば泣かせないだろうにと、幾度と無くモミジにイタチは突っ込んではいるものの直る気配は皆無だ。
「まーたモミジ姉ちゃんがヒナタを泣かせてるってばよ」
「ヒナタは泣き虫だししゃーないだろナルト。それより俺達も飛ぼうぜ! 兄さん教えてくれよあの術!」
「いや、あのなサスケ……」
頭を抱えてどうしてこうなったと嘆くイタチ。忍としては一目どころか目標にすらしているが、ああはなって欲しくないとも思う。
駄々をこねるサスケとナルトに苦笑いを浮かべながら、別の比較的安全な高等忍術を教える事によって謎の術を教えろコールから逃げる日々。
そろそろ教えられる術も無くなってきたなと、新たに術をまた取得しなければならなくなったが、己自身の修行にもなるからなんとも言えない……やるせない気持ちになってしまうイタチを責められる人物は居ないだろう。
在りし日の、穏やかな日々。
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「大蛇丸とモミジが組んだだと!?」
それはダンゾウにとって最悪の知らせ。天使が終末のラッパを吹きながらツァーリボンバーとリトルボーイとリトルガールを空一面に降らせるような。
ダンゾウにとって大蛇丸はやべーやつだが道理がわかる分、比較的取引しやすい人物。だが、モミジは道理も通じないし常識なんて無いやべーやつだ。
「木の葉はおしまいだぁ……」
「どちらかと言えばダンゾウ様がおしまいですね」
「うぅ……もう三代目に迫られるのは嫌だ……」
「……ダンゾウ様のトラウマが発動した。しばらく根も休暇だね」
淡々とダンゾウの様子を見ては発言する根の者達と阿鼻叫喚で発狂しているダンゾウ。それも仕方が無いだろう。モミジに変化の術で弄られまくった後三代目の顔を見ることすらできなくなったのだから。
三代目と顔を合せれば『ヒルゼンやめてくれ! そこは入れる穴ではない! 開発しないでくれぇえええ』とトラウマが発動し叫ぶ始末だ。
ただの変化の術の影分身と侮るなかれ。100体の1体1体が三代目と同レベルのチャクラ保有に同レベルの身体さばき。ダンゾウは1体も倒す事が出来なかったどころか100体に毎晩ヤられる日々を一月近く送ったのだ。
根の者も最初は助けようとはしたのだが、全員泣き叫ぶダンゾウを見て興奮して以来ほっておいた。命まで取られるわけではないのだからと放置する方針に切り替えたのである。
『腐れ者どもめー!』と泣き叫ぶダンゾウに満面の笑みで見守る根の者達。そんな日々がまたやってくるのかと思うと、根の者達は隠し切れないほど興奮した。
そう、木の葉の根は腐っていた。ダンゾウに救いは無い。
「おお! 二代目様……助けてくだされ……」
「幻覚見始めましたねダンゾウ様」
「ダンゾウ様も歳だしね……二代目×ダンゾウこれが次の流行か」
「イイネ」
「俺それで本描くわ」
「出来たら言えよ、言い値で買うわ」
「これも……青春だぞ! リー!」
「はい! ガイ先生!」
いつのまにか紛れ込んでいるガイとリーだが普段通りなので根の者達もスルー。どうしてこうなったのだろう。ダンゾウは悪くない。悪いのはこの世界だ。
和気藹々と和やかなムードで日々が続いてる根の者達にとって、木の葉の里はモミジが居ようが居まいが比較的平和だった。ただダンゾウだけは地獄だった。
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「ねえさん……どうして私をおいていったの……」
ヒナタにとって姉とは掛け替えの無い存在だった。物心付いた時からずっと傍に居る存在。ヒナタがあれこれモミジの物を欲しがっても嫌がらずにくれる。
厳しい父と違い。わがままを聞いてくれる存在。甘えてもいい存在だった。
余りにも修行が厳し過ぎて、泣いてしまった事もあった。だが姉に甘えられると思えばそんな修行も苦ではなかった。
姉がどれほど優しいかを知ったのは分家の自分達以外の兄弟や姉妹の様子を見たり、護衛のネジに普通の兄弟とはと話を聞いてからだった。
それからは我慢を覚えた。甘え過ぎていたと。大好きな姉に万が一でも嫌われないようにと。だが、モミジは甘やかす。わたしの前では我慢しなくていいんだよと。
任務があるのに傍に居てという願いも、任務に影分身を行かせ一日中傍に居てあげるほどにヒナタの甘い願いは叶えられる。
今にして思えば異常なほどヒナタに対して優しかった。いじわるはたまにされるが、それもスキンシップの範疇だ。
どれだけ姉が非常識な存在と周りから思われていようと、ヒナタにとっては優しい姉でしかなかった。
そんな姉がヒナタの前から消えてしまった。
思えば思い当たる節はあったのだ。何時ものように姉が自室で一人で居る時の様子をこっそり襖の少し開いた所から覗いていた時だ。
姉は自室で何をするでもなく。ただ遠くを見ているような眼をして、ぼーっとしている時が多い。
だが、この日は違った。何かを思い出したかのように、悲しそうな表情を浮かべながら『呪われてる』とぽつりと呟いていた。
何処か遠くへ行ってしまいそうな姉を見て、道場から逃げ出した事すら忘れ姉の胸に飛び込んでしまう。
抱きしめれば優しく抱きしめ返してくれる。何時もの姉に戻ったと思ったヒナタは喜んだ。
だが、それは間違いだった。姉は遠くへ行ってしまった。
姉が色々な所を連れまわしてくれたおかげでナルトやサスケと言った同年代の友達も居るが、姉が居ない。大好きな姉が。
それからというものの、ヒナタは暗くなってしまった。思えば姉という守りが無くなり周りが怖くなってしまったのだ。
どれだけ姉に守られてきたのだろうか。まだ物心付いて居ない時、誘拐されそうになった時も身体を張って守ってくれたのがモミジという姉だった。
「ねえさん。お姉ちゃん。モミジおねえちゃん。う……うぅ……」
部屋の主が居なくなった部屋で一人ヒナタは泣いている。だが抱きしめてくれるあの人はもう居ない。
父であるヒアシも暗くなってしまった。俺がしっかりしていれば。俺に医療技術があればと一人嘆くようになった。
「モミジ様にとって……日向家は……取るに足らないモノだったのか……」
日向家にとってもモミジの存在はでか過ぎた。ネジにとっては目標でありヒナタと同様守るべき存在だったモノが唐突に消えたのだ。荒れに荒れた。
大蛇丸に誘拐されたと言うが、そんなモノ信じられるか。ネジにとってモミジは歴代最高の忍の力を持っているモノ。
そんなモミジが大蛇丸に誘拐されるような玉か。ありえない。何か目的があって付いていったに違いないと確信している。
何が彼女をそうさせたのか。力の無い自身のせいか、甘えるだけの妹のせいなのか。ぐちゃぐちゃになった感情は他者に牙を向ける。
ネジがヒナタに当たるようになったのはこの頃からだ。行き場の無い感情故、子供だから仕方が無いのだが。
ヒナタにとって、ネジにとって、日向家にっとってモミジという存在は甘い毒だったのかもしれない。
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うちは家にとってもモミジという存在は小さくなかった。失ってから気付く、その存在によって多く助けられていたと。
ナルトとサスケも普段通りに遊んではいるが少し元気が無くなった。ナルトは『モミジ姉ちゃんみたいに飛ぶんだってばよ』と言わなくなった。
だが、空を飛ぶ事だけは諦めていない。飛べたらモミジ姉ちゃんが帰ってくると思っているからだ。
サスケはモミジの真似をしなくなった。否、できなくなった。しても悲しいからだ。遊んでくれるモミジが居ないからだ。
二人にとってモミジはイタチと共に見守ってくれている優しい姉というような存在だ。
そもそも何故ナルトがサスケと一緒に暮らしているかと言えばモミジのせいである。
イタチやサスケの母うちはミコトの前にナルトを連れて行って、ナルト君はなんとクシナさんの子なのですと暴露したせいだ。
モミジにかかればトップシークレット何ソレ食えるのである。禁書を読む傍ら発見した書物による"単なる暇つぶし"による行動だった。
ブランコに一人乗っていたナルトを確保してうちはミコトに突貫バトルである。人柱力も里の均衡もへったくれもない。
ナルトの母の友達だったミコトは一言了承と言ってそのままうちは家に居候する形で収まった。
最初はサスケと反発するものの、すぐ仲良くなっていき。互いをライバル兼同居人のような半分家族のような。そんな関係になっていった。
本当に荒らすだけ荒らしては知らん振りだなとイタチは思う。手を差し伸べたなら最後まで責任を持てと思わなくはない。
思えば班で行動していた時もおかしかった。医療忍者のくせに常に最前線。ビンゴブックの首ゲットだぜと元上忍の抜け忍を軽く捌く下忍は大概おかしかった。
担当上忍はもうモミジだけでいいんじゃないかなと灰になりながら崩れる始末。
破天荒すぎる。だが己の行動に責任は持たない。飽きればポイと捨てるような、子供らしい感性と言えばいいのだろうか。そんな冷酷な所もある。
例えば、護衛任務で護衛対象を送り届けた後は、何があろうが任務外だから知らないと参加する事は無かった。
例え送った矢先に護衛対象が襲撃されようとも、彼女は眉一つ動かさず団子を食べて休憩していた。
当時は可哀想だとは思わないのかと、任務が終われば知らん振りは人道に反しているんじゃないかと。同じ班だったシスイは怒っていた。
イタチはふと、今思えばモミジは道理に反してなどいなかったなと。むしろ契約と言う理を重視していたかのようにも思えた。
何故なら契約は道中のみで送り届けた後の事など契約内容に含まれていなかったからだ。
結局あの少女は何を主軸に考え行動していたのだろうかと、イタチは考える。考えるが己にはとうてい理解できまいと考える事を放棄した。
搭乗人物
三代目 闇の火影 ダンゾウが己を模した影分身に犯されるシーンを水晶に保存しては毎晩観ている
ダンゾウ 犠牲
ガイ&リー 何処にでも偏在している青春妖精
下忍の時点でやべーやつ 木の葉戦闘航空団11飛行隊付き教官 元大統領 TACネームはモミジ
考えを放棄した奴の弟 脳内にアララトがリフレインする 将来の夢はグリペンになる事 TACネームはサスケ
将来の夢は空飛ぶ火影のガキ 木の葉戦闘航空団11飛行隊付き人柱力 TACネームはナルト
うちはミコト 秋子さんレベルの了承ガール
根の方々 腐ってやがる……