「何故急にコートを作ろうと思ったのかしら」
「風が冷たいし、天使も居ないからねー」
「意味がわからないわ……交わす言葉も私達には不要とか言いそうね貴女……」
俺は最近マンネリ気味だ。夫婦で言う倦怠期。何事にも鮮度が大事と言われるが、そもそも動かなければ新しい発見は産まれない。いわゆる研究行き詰まり。
大蛇丸にエスコートされて、俺の研究のついでに音の里の発展に尽力したはいいがピースが足りない。
「暁のお揃いコートを見て、ふと音の里にもお揃いのコートが必要だと感じただけだよー」
「お揃いじゃないと嫌とか言いそうね……わかったわよ、お揃いを着てあげるからそんな目で見ないでちょうだい」
最近は大蛇丸も折れたような素振りを見せる。最近は反発してくれないので折檻はしていない。ただジト目で見るだけだ。出会った当初のツンツン具合が楽しかったのに、コイツ俺の事好きになってもたんちゃうか。
わかるけどね。自分の不死に関する研究が急速にカタチになって、目処も立って実行するだけになったんだから。いいよな君は目処が立って。
暁というのは最近噂の戦闘傭兵達で、なんかかっこいいコートをお揃いで着てた。フレンチクルーラーがものすごく食べたくなったのは秘密だ。あのコートに触発されて俺は音にもコートが必要だと試作品を作って君麻呂に大量生産させている。
最近よく授業を見る元気な4人組の子供達には、お揃いのコートを着せて戦場のカルテットって名付けて音楽界を震撼させようと思います。多由也は喜ぶだろう。
よくよく考えると俺は音楽という文化に救われている部分がある。音楽が無ければ今の俺もなかっただろう。音の里に来たのも必然だったのかもしれない。
かつてはピオーヴァ音楽学院理事長を務めていた俺だ。音楽なら任せろ。クリス君、いい雨だね……
「そう言えば話は変わるけれど、ダンゾウが最近情報くれなくなったらしいね。大蛇丸君何か嫌われるような事した?」
「……単に寝込んでるだけよ彼。主に貴女と猿飛先生のせいで……ね」
「わたし何かしたっけ……というか三代目?」
「水晶で録画してたそうよ……貴女の影分身のアレ」
「あーね」
俺にいじわるばっかりしてくるダンゾウに嫌気がさして、お返しをしたんだっけか。ヤられたらヤりかえす。バイ返しだ! あんまり覚えてないけど。
「これは別の筋からの情報だけど、近い内にうちは一族が粛清されるそうよ」
「ふーん」
「興味なさそうね、イタチとは仲が良かったんでしょう?」
「んー? もしかして焼いてるの? わたしは大蛇丸君一筋だよー」
そう言って抱きしめると、大蛇丸は『はぁ』とため息を付く。なんや倦怠期か。わたしの身体に飽きたのね! 一度も抱かれた事無いけど。
「貴女に普通の感性を求める私が間違ってたわ……ごめんなさい、忘れてちょうだい」
人を下劣畜生みたいに言いやがってとジト目で見ればすぐ謝る大蛇丸。ちょっと太古の記憶が蘇って殺気もれてたかも、すまんな。
「それにしてもうちは一族かぁ……なんで粛清されるんだろ、一族からクレイジーサイコホモでも出た?」
最近思い出したのだが、うちは一族にはクレイジーサイコホモが居るはずなのだ。多分クレイジーサイコレズな静留ちゃん並にやべーやつで確かフルフルニィする人。
「誰よそれ……違うわよ、何でもクーデターを起こしそうなんですって。悪い子達よね。自分達が籠の中でのうのうと平和を享受している身にも関わらず贅沢を言う愚かな子達。うちの子達が聞いたら怒りそうね」
「……」
俺はその言葉に咄嗟に返さなかった。返せなかった。こういう所がずるいと思う。悪い子ぶってるいい子と言えばいいのだろうか。大蛇丸の根底にあるのは悪意で隠してある善意だ。
大蛇丸は戦災孤児等を引き取っている。そりゃ実験体にしたり、色々非人道的だとか周りは言うかもしれないが。俺の感性からしてみれば天使のような行いだ。
――だから俺はコイツを好きになってしまっていたのだろうか。まあ人間としてだけど。
よく考えてみろ。普通の孤児の行く末を。俺はソドムで暮らしていた事もあるからわかる。もっと悲惨で糞みたいな結末を大抵迎える。あの頃の俺は荒んでたなあ。頭に語りかける虫ケラ共のせいだが。クリミナルパーティするぞ糞が。
よし、いい事を思いついた。実験体の数も増やせるし一石二鳥だ。様々な点で保険にもなる。やるべきだ。大蛇丸も反対しないだろう。
「ねぇ、遊びにいきたいんだけど」
「っ!? 貴女まさか……」
数少ない言葉でも通じ合えるとか夫婦かよ。ほんと使えるね大蛇丸は。忍者にするのはもったいない。やはり魔術師に向いている。
「悪い子達はうちの良い子達に説教してもらおっか。お前らは恵まれてるんだぞー! って」
「貴女はいつも唐突……本当嫌になるわ」
「んふふ。悪い子はしまっちゃおうね。大蛇丸君、まだ里に開拓して間もない場所あるでしょ。
そこに悪い子達を閉じ込めちゃうのってどう?」
「里長は貴女よ、私は貴女に従うわ」
そう。現在音の里長は俺である。日向紅葉さんは音影になったのだ……
そもそも音の里自体俺と大蛇丸が孤児やらはぐれ者を拾ってきて作られた里なのだ。当初の運営資金はモミジチャンマネーと大蛇丸マネー。ついでにパパマネーとサムライマネー。
ようやく軌道に乗り始めて支援される必要もなくなり俺達の里はは自立した里となったのだ。
だからだろうか俺が里長に就任した時も誰も反対しなかった。皆ジークハイル連呼してたけど。総統になったつもりはないんだけどなあ。大総統には一度なった事あるよアメストリスで。
「じゃあ来週辺りに木の葉行くから留守番お願いね」
「私も行くわよ」
「そんなに一緒に居たいの? じゃあ一緒にいこっか」
「貴女一人だと無茶な事しそうだから付いていくだけよ……わかるかしら、貴女のしでかした事の後処理を一人でする辛さが」
「そんな事言ってわたしと居ないと寂しいんでしょー。このっこのっ」
はいはいそうねとおざなりに肯定する大蛇丸。呆れる事すらしなくなった君は本当に倦怠期夫婦だね。
……俺の研究と野望の為にうちはになってもらうぞ、犠牲一族よ。
▼
そしてやってきました木の葉の里。相変わらず平和である。ラブアンドピース! 争いなんてくだらないね! ラブアンドピースを壊そうとする悪い奴らを仕舞いに来た俺は悪の味方モミジチャン。
実は予め三代目と大蛇丸との間で話は付いているので何も問題ないのだが。下っ端のうちは一族には知らされていないけどね。
ほんとよく出来た嫁である。嫁でいいのだろうか、俺的に大蛇丸は嫁なのだが身体的には俺が嫁なのだろうか。心は女だが身体が男? の大蛇丸と心は男だが身体は美少女の俺。BLなのかGLなのか今の俺には理解できない。
そんなしょうもない事を考えつつクーデターを起こそうとした悪い子は仕舞っちゃおうね。彼らに認識できない速度でポイポイと俺の魔術により彼らは消えていく。
少々抵抗があったものの。俺の魔術で亜空間に移動させて保管した。犠牲一族は音の里で開拓民になるのだ……
そう、俺の本業は忍者ではなく魔術師だ。起源であり、呪いの原因でもある。そろそろ宇宙の悪意に打ち勝ちたいね。結構気に入ったしこの世界。
「それは口寄せを弄ってるのかしら」
「うん。基本は口寄せの契約だけど魔術ミックスで弄くりまくってる。相手は拒否できないし強制で亜空間にポイー。帰ったら教えよっか?」
「お願いするわ」
大蛇丸からは相変わらず出鱈目ねとお褒めの言葉を頂く。そりゃ馬鹿みたいな数生きては死にを繰り返してるからな俺は。これくらい余裕だ。ああ……昔を思い出してはいけない。イライラして殺意と憎しみと切なさの塊のようなものが出てしまう。
横に居た大蛇丸がぎょっとした表情で『ごめんなさい。気に障ったかしら?』なんてしおらしい事を言うものだから、抱きしめて鯖折したくなったがやめといた。
なんでもないと、ぶっきらぼうに言ってしまったが伝わっただろう。お前に殺意を抱いてる訳ではない。それくらいわかるだろ。
というより君も大概だろうに。俺から魔術を習得した大蛇丸はまるで仙術ねという感想を言いつつ、魔術師として恥ずかしくないレベルで魔術を習得している。
確かに自然エネルギーを利用する所は変わりない。そもそも身体に定着させる必要性も無いからな。相性というのもあるのだろうが、大蛇丸にはこっちのほうが才能があった訳だ。
具体的には病気で死掛けだったリゼットちゃんレベルの才能だ。懐かしいなぁ。虚無(クリフォト)の魔石を使った実験も中々に興味深い研究だったよ、俺には意味が無かったが。
正直俺以外には負けんのちゃうか。仙術は修め切れなかったらしいが、魔術のような仙術もどきは俺の教えたモノを全てモノにしている。
魔術師として幾千もの時を生きてきた俺より才能があるかもしれない。まぁ1000年経てば俺を越えるかもしれんね。そうなった大蛇丸を見る事無く、俺がこの世界から消えている方が確率は高いが。
「とりあえずこれで全員かな。犯行声明もばっちり各家に置いてきたし」
「あの頭の悪そうな手紙を置いてくる必要性はあったのかしら……」
【悪い子はしまっちゃおうね。 BY日向モミジ】ときちんと犯行声明を律儀に各家に置いてきた俺はとても礼儀正しく、素晴らしい人格者だなと思う。木の葉の里のワルガキも見習え!
ちなみにフガクやミコトの宗家だけは手付かずだ。人柱力を監視する暗部も居るしめんどくさい。
一族ごっそり居なくなればクーデターは起こせん。人的資源確保ォ! 森久保ォ! 後は音の里でうちは一族使って人体実験しましょうねー。という具合だ。
「何か居るわよ」
「ああ、あの二人かー。ちょっと待っててね」
悪い子を全員しまって木の葉の里から出たはいいんだが、見覚えのある奴らが二人森の前で立っていた。シスイとイタチである。しょうがないので俺が先行して二人に接触だ。大蛇丸だと八つ当たりで殺しかねない。
「ちゃおー。イタチにシスイおひさー」
「モミジ……お前は何時も無茶をする……」
「この奇天烈馬鹿娘は~!」
「会っていきなり何で殴りかかるかなシスイは」
「無茶ばっかりしやがって、少しは俺達を頼れ! 仲間だろ!」
無駄に瞬身を使いつつ俺の頭を叩こうとする悪い奴だな。イタチを見習え、いつも落ち着いてるぜ。しかしコイツはまだ俺を仲間と言うか。俺の所業を何一つ知らないまま、フレンドリーな対応をする様は失笑ものだぜ。そう考えるとシスイ君は良い子だね。そのまま何も知らずに、綺麗な記憶の中で生きていけ。俺は何も言えないわ。
多分三代目からの差し金だろうな。どういう説明をしたのやら……いらんお節介だわー。
「連れ去るのはいいが、その後どうするつもりだったんだ?」
「んー。薬と幻術と暗示で優しい世界?」
「だと思った。本来俺達の仕事なんだけどな……」
呆れながらもやるせない表情のシスイに頭を痛そうに抱えるイタチ。
「俺達が説得するから俺達も連れて行け。その方が早い」
「三代目の命でもある」
「えー……」
「えーじゃない馬鹿。何時もお前はそうだ。一人で突っ走る。あの頃からまるで成長してないな」
馬鹿馬鹿言いながら俺の頭を小突くシスイは俺の父親気取りかな? 父親ちゃんとおるぞ。甘やかされまくって修行以外で殴られた事ないけど。
すると先ほどまで離れた所から無言でこちらを見詰めていただけだった大蛇丸が俺のそばまでやってくる。
「およ?」
無言で俺を持ち上げ、抱きかかえてきた。人肌恋しくなったのかな。
「それ以上茶番を続けるなら殺すわよ」
「っ!?」
「大蛇丸……」
キレながらお姫様抱っことはコイツやりおる。急にどうしたんだろうか。昔の仲間とイチャイチャしてるわけではないが浮気してるとでも思ったのだろうか。
ただのスキンシップなのでセーフ! というより結婚もしてねえし浮気も糞もねえよ。気分は同窓会に浮かれている若奥様である。
「落ち着いてよ、君そんなの柄じゃないでしょ」
「目の前でくだらない茶番を見せ付けられたら、温厚な私でも腹が立つわよ……覚悟は出来ているかしら、うちはシスイ」
「えっ……」
大蛇丸がビンビンに怒っていらっしゃる誰か咥えてさしあげろ。帰ったら俺が咥えてやるか。多分嫌がるだろうが。というより大蛇丸は俺の奥さんごっこでもしてるのだろうか。キれる要素どこ? ここ?
真っ青になったシスイが平謝りでイタチは無言で頭を下げて大蛇丸に挨拶している。
「これが青春だ! リー!」
「はい! ガイ先生!」
そして何故か居るガイとリー。木の葉では日常茶飯事なので全員スルー。
大蛇丸は今日イライラしやすい男の子の日だったのだろう。運が無いなシスイ。
殺気駄々漏れの威圧しまくりの大蛇丸にどうどう言いながら、俺は大蛇丸にお姫様抱っこされつつ二名お客様を連れながら音の里へ帰るのであった。
登場人物系みたいなー
君麻呂 コート職人 愛読書はコデックス・セラフィニア○ス
大蛇丸 不屍転生の術に魔術のような仙術を取り入れてまったく別物の術を完成させるくらい魔術の才能アリ
大蛇丸の夫 しまっちゃうお姉さん 弟子が数人世界を破壊している実績あり
ガイ&リー 青春の妖精 青春っぽい所にどこにでもわく
うちはシスイ 同窓会で既婚者の同級生にちょっかいかけて殺されかけた男
うちはイタチ 仕事をモミジに奪われ無職になった