「……」
「何、須賀君……?」
おお……これが生宮永咲か。
確かに凄まじいものを感じる。
今の時点だと暫く麻雀をやってなかった筈だと言うのに軽く探っただけでこれだ。
プロ連中にもほとんどいなかったレベル。
外見は大人しい文学少女にしか見えないのになぁ。
まさにラスボスの風格…ゴッ倒すとか魔王とかネタにされる訳だ。
プロになったら絶対魔王様コース間違いなし。
内心で主人公に会ってテンションの上がる俺。
気付けば目の前の魔王(仮)が怪訝な表情を超えて怯えている文学少女に。
探るのと回想に集中しているお陰でデカい男に絡まれている様相になってしまっていた。
(やっちまったぜ)
「ぅ、ぅぅぅ……」
教室で女子に話し掛けるとか無理だし…と校内の無人スポットで本を読んでいる所に突撃したから周りに人はいない。
宮永さんもあまり意識高い系女子ではないようで痴漢よー!と叫んでくれていない。
とても有難いことだ。
だがしかし、泣かせ始めてしまっている女子を慰めるとかムズすぎるだろ…!
どうやって乗りきろう。
(取り敢えず目線を合わせて…)
「ひっ」
何気に傷付くな…。
ちょっと動くだけでこれだよ。
わずかに、本当に僅かにだけど涙流れちゃってるんだけど。
人に見られたらガチでやばい気がする!
(慰める……俺一人っ子だから分かんねーわ…)
「も、もう行っていいかな……」
やばい。
このままだと変な奴でやばい奴だと宮永に勘違いされてしまう!
逃げ方が完全に不良とかうざい奴に絡まれてる大人しい奴のあれだ。
見た目はそっちよりだけど中身は宮永と同類なのに!
「えっと」
「っ」
逃がさないように、謝る機会を作ろうと手を握って捕まえてみる。
宮永さんの手ちっちぇえ…。
あと結構汗かいてる。
ごめんね、多分汗は俺のせいだと思うから頭の中で謝っとくわ。
「………」
「………」
(なんだこれ)
(なんだろうこれ)
一触即発(間違い)だった空気がみるみる変な感じになっていくのが分かる。
怯えてた宮永さんもいつの間にか泣き止んでて困惑してるし。
ひとまずガチ泣きでコミュも取れない事態になるのは回避出来たな。
さて、ここからどうすべきか……。
まだ完全に安心するのは早いだろう。
何かしらの下手があればまた文学少女を泣かせてしまう。
デカい男はこういう所が弱いな。
リラックスさせながら謝るのがいいかな…。
「なんか、ごめん」
「!?」
「ほら……あれ、知らなかった?」
「分かるけど……」
「じゃもっかい」
「うん……」
「なんか、ごめん……」
(それももう1回言うんだ…)
「脅かす…泣かすつもりはなくて」
「!?」
「いや、大丈夫。ちょっと涙が流れてただけだから」
「〜〜〜っ」
「あ。今の嘘、泣いてない泣いてない」
「気を遣ってくれるの遅いよぉ…」
互いの手をてちてちと合わせながらなんとか会話を重ねる。
てちてちじゃ分かりにくいな…あれ、あれだ。
せっせっせーのよいよいよいってやつ。
お寺のおーしょうさんがー…て、手遊び?
あれをやりながら話す。
良かった、知らなかったらまた気まずくなってわ。
時折中断しては手を握って最初っからやり直す。
「中学生にもなって人に泣かされるの恥ずいもんな」
「だったら何で言っちゃうの…傷口に塩刷り込んじゃうし」
「悪い悪い」
おお、普通に会話できてないか?
「で話戻すんだけど」
「うん」
「泣かせる気はなくてだな」
「……うん」
どう言おうか。
まさかマンガの主人公を見に来たとは言えないしな。
折角解けた変な奴疑惑がまた降り掛かってしまう。
「……宮永さんが」
「うん」
「気になった、から…とか」
「…!?」
「だから」
「え、え…」
「友達になりに来ました」
ミッションコンプリートだな。
何とか無事に和解出来たし。
友達になろうぜ!とか変な友達のなり方だけど。
電話番号の交換も出来たし。
「さーてと、宮永さんこれからどうする?」
「……もう帰ろっかな」
「そっかー」
「じゃ、さよなら…須賀くん」
「また明日なー」
後は普通に話したりして、高校で麻雀部に誘えばおっけーだな。
和とバチバチやったりして姉がインハイに出るのを知って…みたいなのだった筈だし。
中学に入りたてすぐに、ってのがちょっと気が早かったかもだけど。
まーいいか。
帰宅中の宮永さん
(変な人だったなぁ…)