「――ってことや」
場所は会場から離れたとある喫茶店。
時に頷き、時に質問をして得たことは。
上重さんは特に強くもない自分が強豪校に行くのはどうか、といった相談だった。
何でも中学入りたての頃から、なんなら姫松高校の存在を知った時から胸の内にあったそうだ。
弱くはないが、特別強くもない。
普通なりに強くなろうと我武者羅にもなれてないと、俺が大会巡業をしているのを見て強く考えたそうだ。
そんな自分が強豪校に入って3年間を麻雀に捧げて正解なのか。
全く関係の無い普通の高校に入って趣味にするか、姫松に入ってレギュラーを目指すか。
そんなことを聞いた。
(咲-Saki-のことを知っている俺からすれば姫松に入れば大丈夫なのは分かってるけど)
その内レギュラー抜擢されるから姫松に入っても大丈夫ですなんて言った日には頭のおかしい奴認定されてしまうだろう。
だから未来の情報は当然使わずに返事をしないといけない。
結局姫松に行った方がいいと言うことには変わりないけど。
だって今まで俺が上重さんに見せた姿から相談しようと考えた辺りで内心どういう返事を期待してるかは何となく予想できる。
割と我儘放題な俺に相談して保守的に普通の高校がいいと思いますよ、なんて想像はしないだろうし。
でもオカルト持ちな俺に雑魚すぎるから止めとけと見て貰うという可能性もなくはないのか、まぁ弱くはないから言わないけど。
「………行けばいいんじゃないですか、姫松」
色々と考えたあげく取り敢えず言ってみた。
「軽いなぁ…」
「そうは言いますけど」
「や、うん。言わんとすることは分かるけどや」
「そうそう、中学生でふらふら麻雀旅してる俺に説得力とか求めてどうするんですか」
「やからこそ、実は確りしとるんちゃうかと思ってみたりしとった」
ああ。
使ってるのは親のスネだけど、見方を変えればなりふり構わず使えるものを使って将来に備えてる風にも見えるのか。
「買い被りですねぇ」
「買い被りかぁ」
俺には分かるぞ。
相談するのが間違っていたのかなぁと思われてる。
あまり雰囲気とか気にしたくない俺でも分かる。
落胆されるには別にどうでもいいが、相談してくれた分位は何か為になりたい気がする。
「……ほら、入る入らないを決めるのも入学する位までは引き伸ばせますし」
「せやなぁ」
「もし他校に行った後でどうしても入りたくなったら、転校して入部っていう漫画キャラみたいなことをしないといけないですし」
「転校…無理やな」
「でしょ?」
転校って普通に入学するよりも遥かに難しいってマンガで読んだことある。
「姫松以外なら、姫松への転入から入部の意識高い系認定まっしぐらなコース」
「……」
「姫松に取り敢えず入っとけば、グダグダ考える時間も出来るし入るのは思い立ったら入部届を書けばいい」
「ふむ」
「入らないにしてもそのまま高校生活を続行すればいい、お得!」
「ほんまやな!」
説得完了、やったぜ。
「今なら俺のメアドも付いて相談にも乗ります!」
「DCの生アドレスや!」
「上重さんが泣きそうになったら新幹線に飛び乗って慰めに来ちゃいます!」
「慰めにって何してくれるんや?!」
「なでなでしてぎゅーっとしますよ!」
「なんやて、このおっとこまえ!」
やったぜ。
お話後の上重さん。
(年下、か……)