吸血鬼少女   作:フリッカ・ウィスタリア

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露里家での生活にも慣れてきた為、ルナはFXや料理など、様々な事を毎日していた
そんな日常にも事件や事故は起こりうるわけで…


日常

FXの話をした数日後、梱が通帳を使えるように手続きをして帰って来てくれた為、今私はFXの最中である

ルナ「……今だ!よし!」

何度か失敗を重ねて最近少しずつFXのやり方や引き際の感覚がつかめてきた

ルナ「今は変換してる金額が少ないから誤差レベルでしか得にならないけど、そのうち大きい金額を稼げるようになるといいな…」

まだFXを始めて3か月なので、幾ら引き際を覚えたと言っても収入は月5~10万円程度だった

ルナ「でも、家の中でじっとレートを睨んで外貨を交換するだけでお金貰えるって言うのは私にピッタリね」

他のFXをしている人に怒られそうなセリフを吐く私だったが、実際交換する値段によっては十分生活が成り立つ方法な為、正直助かっている

ルナ「さてと…今日はもうこれ位にしようかな?…ん?」

ふと、玄関の方で物音がしている事に気が付いた

ルナ「梱は…まだ帰って来るような時間じゃないわね」

今はまだ午後2時のため、定時で帰って来るとしても早すぎる時間である

ルナ「ということは、宅配便か何かかな?」

廊下に出てみると、先程よりはっきりと玄関からの物音が聞こえてきたが、どうやら宅配便ではなさそうだ

ルナ「なんか玄関をガチャガチャしてる音がするんだけど…まさか泥棒?」

一応の為二階へ続く階段の途中で身を隠し、様子を窺った

すると、少しの間があった後、玄関の鍵が開き、背の高い男とガタイの良い男の二人が入ってきた

男1「よし、さっそく仕事すんぞ」

男2「ああ、金目の物は何処にあんのかねぇ…」

階段の影から様子を見ていると、その男達は部屋の方へ消えて行った

ルナ「(十中八九あの二人は泥棒よね…どうしようかな…)」

別に私はこのまま隠れているか否かを迷っている訳ではない

ルナ「(後ろから忍び寄って一瞬で締め上げるか、人がいる事を示して逃がすか…とりあえずは穏便な方で行こうかな)」

考えが纏まり、私はそっと階段を下り二人を追った

 

リビング

男1「おい、そっちになんかあったか?」

男2「いいや、なーんも無い」

男1「チッ、この家はハズレだったか…」

ルナ「おじさん達、何してるの?」

私が話しかけると二人は慌てた様子でこちらを振り向いた

男2「な、なんだよ、びっくりした…」

男1「驚かすんじゃねぇ!このガキ!」

なんで怒鳴られなきゃならないのよ…

ルナ「あっ、分かった!おじさん達、泥棒で」

私が全て言い切る前に背の高い方の男に手で口を塞がれてしまった

男2「ちょっと大人しくしててもらうよ!」

すると、ガタイの良い方の男がキッチンにあったタフロープで私の事を縛った

ルナ「おじさん達、私怒ると怖いのよ?早く出て行った方がいいわ」

男1「へっ!そんな威勢張ったってなんも怖かねぇよ!」

まあ、こんな身なりで言われたって説得力無いだろう

ルナ「…警告したからね?」

私はそう言ってからタフロープを引きちぎった

男2「え?…」

目の前で起こった事が処理しきれなかったのだろう、二人は固まっていた

ルナ「(あまり派手にやったら家が壊れかねないし、やり過ぎないようにしなきゃ…)」

床を踏み抜かないように気を付けながら高速でガタイの良い方の男の後ろへ回り込み、男に飛びつき首を締めあげた

男1「グェッ!」

すると、少しの間は抵抗していた男だったが、すぐに大人しくなった

ルナ「まだやる?」

私がにっこりしながらそう言うと、もう一人の男は腰を抜かしてしまったのか四つ這いのまま逃げようとしていた

ルナ「あっ、帰るのはいいけど、この人も連れて行ってよ」

さっきの男を目の前に転がしてやると、やっとのことで立ち上がった男は相方の男を引きずって慌てて逃げて行った

ルナ「フフフ、よりにもよって私が住んでるこの家を選んじゃうなんて運のない人達ね…」

本当にこういう時に吸血鬼の膂力というのは便利だ

ルナ「とにかく、この散らかっちゃった部屋を片付けなきゃね…」

体を動かすという意味では良い暇潰しだが、片付けの手間がかかるという意味では面倒な事この上ないと気がついたが、今更遅い

思いのほか部屋を荒らされていた為、私が片づけを終わらせる頃には夕方になってしまった

ルナ「フゥ…やっと終わった…でも、あんまりゆっくりも出来ないわね」

早く夕飯の用意をしないと梱が帰ってきてしまう

 

1時間後

梱「ただいまー」

ルナ「おかえり梱」

梱「あれ?家具の位置が少し変わってるね。気分転換?」

ルナ「あー、えっと…」

梱「ん?どうしたの?」

ルナ「昼くらいに泥棒に入られて荒らされちゃってね。一応何も取られないうちに追い返したんだけど…」

梱「えぇ⁉ルナちゃん怪我とかしなかった⁉」

ルナ「え?う、うん」

梱「良かったぁ…」

試した事が無いから確証はないが、私の再生能力から察するにかなりの事しないと私は死なないと思うんだけどなぁ…

梱「うちに盗って得をするような高価な物は置いてないから、今度からは危ない事に首を突っ込んじゃだめだよ?」

それはそれでどうなのだろう

ルナ「それで、ちょっと前まで掃除とか片付けとかしてたから、まだ夕飯できてないのよ。もう少し待ってね」

梱「そんなに気を使わなくたって、外食でもいいんだよ?」

ルナ「うーん、あと15分くらいでできるから、外食はまた今度ね」

梱「分かったよ。別に急がなくてもいいからね」

梱はそう言ったものの、私は少し急ぎ気味で夕飯の支度をし、二人で夕飯を食べた(私は血を吸ってるだけだが)

 

数日後

ルナ「最近外貨の値段が安定しないわね…」

2、3日前にアメリカでテロが発生した関係であちこちの外貨の値段が大変動しているため、全く値段の上がり下がりが予測できないのだ

ルナ「…今日はもう諦めておこうかしら」

あまりにも変動が激しすぎて目が回りそうだ

ルナ「気分転換に散歩でもしようかな…」

思い立ったが吉日、日傘を取り出し近所の場所でまだ行った事の無い所へ行こうと歩き出した

 

数分後

ルナ「フゥ、いい天気ね…私としては最悪の天気だけど…」

露里家から数分の所にある公園に来たルナだったが、正直言ってやることが無い

ルナ「ずっと日傘持って歩くのもなんだし、木陰にでも行って座ってようかな」

どこか良い所はないか周りを見渡してみると、丁度良さそうな木が向こうの方へ見えた

ルナ「あっ、あそこならちょっと長い間居ても日陰からはみ出さないわね」

早速木陰まで行き、草が豊富な所に座った

ルナ「あぁ、9月でも木陰は涼しいわね…」

このまま休んでいたら心地良過ぎて寝てしまいそうだ

ルナ「子供は元気ねぇ…どこにあんな体力隠し持っているんだか…」

純粋な体力だけならルナの方が圧倒的にあるのが、子供というものはどうしてあんなに元気なのだろう

ルナ「ん?なんか音が聞こえる…」

頭上から何やら音が聞こえてきた為見上げてみると、枝の上にリスがいた

リスの方もこちらに気が付いたのかこちらを凝視している

ルナ「えっと、何かリスの食べるものは…あっ、ドングリが落ちてるわ」

近くに落ちていたドングリを何個か拾い集めリスに見せると、リスが木から降りてきた

ルナ「よしよし…」

そのままゆっくりとドングリを地面に置き、自分の手の届く範囲内にリスを誘導した

ルナ「(この距離なら…撫でれるかな?)」

そっと手を近づけていくと、ドングリに気を取られているのかリスは逃げようとはしなかった

ルナ「(この感じなら撫でれそうね…)」

力を入れ過ぎないように気を付けながら私はリスを撫でた

流石に触られたらリスも気が付いたようで私から少し距離を取った

ルナ「あぁ…」

もう少し触っていたいという感情に突き動かされ私はリスを追いかけた

幾らむこうが小動物だと言っても、こちらは人外のスピードを出せる吸血鬼だ。捕まえるのなど造作もない事だった

ルナ「よし!捕まえた!」

程無くして私はリスを捕まえた

ルナ「さてと、思う存分撫でさせて痛っ⁉」

撫でようと近づけた指を噛まれてしまい、リスを掴んでいた手を離してしまった

噛まれた場所を見てみると少し血が出ていた

ルナ「可愛いとはいえ自己防衛が激しいあたり、やっぱり野生動物ね…」

撫でるのは諦めようと思ったその時、先程のリスの様子がおかしい事に気が付いた

私から解放されたというのに逃げないなと思った次の瞬間、パタッとリスが倒れたのだ

ルナ「えっ…まさか私リスを握りつぶしちゃってた?…」

力加減を誤ってしまったのだろうかと少し後悔していたが、どうやらそうではなさそうだ

ルナ「…あれ?リスが起き上がったわ。良かった…死んだ訳じゃなかったのね…」

安堵したのも束の間、起き上がったリスが私に襲い掛かってきたのだ

ルナ「うわっ!?」

咄嗟の事で力の加減も出来ずリスを手で叩き落としてしまい、地面に叩きつけられたリスから嫌な音が聞こえた

ルナ「や、殺っちゃった…」

ピクピク動いているのが逆に生々しかった

ルナ「うわぁ…嫌な感じだなぁ…」

とにかく周りに見られていないかを確認してみたが、運良く周りには誰もおらず、私のやった事を見た人は誰も居ないようだ

ルナ「せめて埋めてあげるだけでも…えっ…」

リスを埋葬しようと再び視線をリスに戻した私は戦慄した

ルナ「死体が…復活していく…」

なんと、潰れたリスの死体が元あった形へ再生してきたのだ

ルナ「リスにこんな再生能力ある筈が…!まさか…」

私は先程リスに指を噛まれた事を思い出した

ルナ「(吸血鬼になるのは吸血鬼に血を吸われた動物じゃなくて、吸血鬼の血を『吸った』動物だったって事?)」

今はそんな事を考えている暇ではない。可哀そうだが、一か八か日光を当ててみようと思い、私はリスの体を掴み日向へ放り出した

すると、リスの体は火で焼かれたかの様に皮膚が爛れ、しばらくのたうち回った後、今度こそ動かなくなった

ルナ「(日で爛れる体…やっぱりあのリスも吸血鬼の体になってたって事よね…)」

思わぬ所で新しい発見をしちゃったなぁ…なんか複雑…

なんとなく木陰でまったりする気分じゃなくなったので、露里家に帰る事にした

 

露里家

ルナ「私の血を吸ったリスがああなったって事は、鉱員として働いてた時にさしてきた蚊も同じことになってたんでしょうね…まあ、洞窟から出た瞬間燃え尽きちゃうでしょうけど」

私は吸血鬼になってから今までの記憶をたどって、確かに今まで一度も自分の血を誰かに分けるという事はしていなかった

ルナ「そうだ、いい機会だしパソコンで吸血鬼の伝承についてちょっと調べてみようっと」

もしかしたら私の知っている吸血鬼の伝承はもう古い物なのかもしれない

 

数十分後

ルナ「なるほど...今の吸血鬼はこういう伝承がポピュラーなんだ」

ネットで検索をかけて、いくつかのサイトを見ていくと、多少の差異はあるものの同じような事が書かれていた

ルナ「太陽、流水、十字架、鏡に映らない、住人に招かれないと家に入れない…確証のある弱点が1つか…」

思い返してみればこの20年間、持ち主がいない廃墟かこの家しか住んでいなかった為、家に入れないという事態が発生していなかったのだ

ルナ「あっ、でも十字架は何となく嫌悪感あるから弱点かも…」

嫌悪感だけで弱点といえるのか微妙だが、十字架に対して強いかどうかと言われたら弱いので弱点なのだろう

ルナ「流水は…悪を清めるから弱点って言われてるのか…なるほど、私みたいに清い心を持ってる吸血鬼は弱点になりえないわけね!」

殺人1件、傷害2件の犯人が何を言っているのやら…自分で言っていて空しくなった

しかし実際問題、私は湯浴みも水泳も何ら問題なく出来る。つまり、この伝承は間違いなのだろう

ルナ「…そろそろ夕飯の準備しようかな」

調べ事をしているうちに、なかなかいい時間になってきた為、夕飯の準備に取り掛かかった

 

数時間後

梱「ただいまー」

ルナ「あっ、おかえり。夕飯できてるわよ」

梱「いつもありがとうねルナちゃん」

ルナ「どうしたの急に?何か良い事あったの?」

梱「うーん、良い事なら確かにあったね」

ルナ「何があったの?もしかして昇進でも決まったの?」

梱「ハハハ、そこまで良い事じゃないけど、今日部長に褒められたんだよ」

本当に嬉しそうだ

梱「最近顔色もいいし、仕事をしてる姿に活気があるってさ」

ルナ「あら、良かったじゃない」

梱「ここ最近はルナちゃんが家事全般をしてくれてるから、僕の負担が減って心に余裕ができたからかな」

ルナ「役に立ててる様で嬉しいわ」

お母さんは私がどれだけ頑張っても今以上を求めてくる人だったから、感謝されるというのは素直に嬉しい

ルナ「(お母さんが一度でも感謝をしてくれたら、私もこうはならなかったのかな…)」

20年前のあの日、私の人生が変わってしまったあの日にお母さんが私に感謝してくれていたら、私がもう少し精神が強かったら、そもそもお父さんが外に女を作らなかったら、私は壮絶な生活を送らずに済んだ。しかし、同時に梱との出会いもなかっただろう

梱「ルナちゃんどうしたの?」

過去を思い返しているうちに暗い顔になっていたのか、梱が心配そうな顔でこちらを見ていた

ルナ「…ううん、何でもないわ」

上手く笑顔が作れているか不安だが、梱はとりあえずといった具合に引き下がってくれた

ルナ「さぁ、もう喉がカラカラよ。私に血を飲ませて頂戴」

 

To Be Continued




これからも露里家での生活は長く続いていく事だろう
しかし、生者必滅の理があるように、出会いの数だけ別れもある。それは数分後かもしれないし、数十年後かもしれない…
次回『最期の言葉』
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