吸血鬼少女   作:フリッカ・ウィスタリア

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夜になるまで身を隠していたルナは、まず腹を満たそうと考えたようだ。しかし、そう易々と獲物が捕まるわけはなく…


吸血鬼の力

あれから時間が経ち、再び夜になった

ルナ「よし、もう日は出てない…」

日が沈み、自由に行動できるようになった事を確認したルナは、手始めに食事をとろうと考えた

ルナ「(とはいっても、お金はないし、野生の動物捕まえて食べるしかないのよね…)」

生前、狩りというものをした事がないルナはそう簡単に野生動物が捕まってくれるのかと疑問に思っていた

ルナ「まあ、お腹の減りと喉の渇きが最高潮に達しそうだし、せざるを得ないんだけどね…」

 

数分後

ルナ「(居た!あれは…兎かな?)」

木の根元に小さな影を見つけ目を凝らすと、どうやら兎のようだ

私は足音が出ないように、慎重に兎に近付いて行った

ルナ「(そっと…そっと…あっ!)」カサッ

あと少しという所で草を足で蹴飛ばしてしまい、兎に逃げられてしまった

ルナ「あぁ…逃げられちゃった…」

しかし、こんな事で挫けてられないので、次の獲物を探す事にした

ルナ「(何か獲物は…ん?)」

辺りを見渡したルナは、右前方10m程の所に少し大きい影を見つけた

ルナ「なんだろ、あの動物…猪?」

猪といえば野生動物の中では熊には遠く及ばないものの、それなりに凶暴な部類に入る動物である

ルナ「んー…一か八かやってみようかな…」

ダメそうならすぐ逃げればいいという軽い気持ちでルナは猪狩りをする事にした

ルナ「(とりあえず、初手は後ろからの方がいいよね)」

面と向かってでは勝ち目がないのはなんとなく分かっているので、後ろからの奇襲をかけることにした

先程の二の舞にならないように、足元の草にも気を付けながら猪に近付いていき、あと2mという所まで近寄る事が出来た

猪の方はキノコでも食べているのか、鼻が利くにも関わらずこちらが近づいていることに全く気付いていない様子だ

ルナ「(よし、あとは飛び掛かるだけ…)」

呼吸を整え、飛び掛かった後の手順を反芻してから猪の上に飛び乗った

猪「フンゴォォォ!!!」

ルナ「ちょっ、暴れないで!」

思いのほか猪が暴れ、ルナは振り落とされそうになった

ルナ「大人しくして!」ゴスッ!

ルナは早く決着をつけようと思い猪の頭を力任せに殴った

すると、猪の頭が凹んだ。比喩でも何でもなく、本当に物理的に頭が凹んだのだ

ルナ「えっ…」

急に抵抗が止み、ルナは猪の上から転がり落ちた

転がり落ちた事で隙ができた為、咄嗟に突進に備え防御姿勢をとった私だったが、衝撃が来ないためゆっくりと猪を見てみると、猪は頭蓋骨を陥没させて死んでいた

ルナ「あ、あんな簡単に頭が…」

たかが10歳の女児の腕力で猪の頭蓋骨が陥没した事に驚きを隠せなかった

ルナ「これが吸血鬼の力…?頼もしい反面、恐ろしいわね…」

力が強くなったのは喜ぶべき事なのだが、あまりに強すぎて持て余しそうな程だった

ルナ「(勢い余って誰かを傷つけないようにしなきゃ…)」

力の加減を間違えたら関係のない動物まで殺してしまいかねないと嫌な考えが浮かんだ

ルナ「と、とにかく、血をもらおう…」

当初の目的を果たすため、ルナは猪の首元を石で少し切り、そこから吸血した

ルナ「ふぅ、思ったよりもたくさん飲んだわね。でもやっぱりまだ少し血が残ってるなぁ…」

猪の血の大半を飲み干したものの、猪の体内にはまだ血液が残っていた

ルナ「このまま放置するのは流石にダメだし…そうだ」

あることを思いつき、一先ず猪の死体を放置し、森の近くにある街へと走った

 

十数分後

ルナ「まだ使えそうなのがあってよかった…」

ルナは近くの街まで行き、ごみ捨て場にペットボトルが捨てられてないかを探しに行っていたのだ

そして、そこで見つけたペットボトルに猪の血を入るだけ入れ蓋をし、次のペットボトルへと血を貯めていった

ルナ「こうすれば多少保存が利くし、血が固まったとしても水に溶かせば飲めるもんね」

我ながら良いアイデアだと自画自賛し一人で盛り上がった

ルナ「こっちのペットボトルは…底に切れ目が入っちゃってたか…まあ、500mlのペットボトル3本分も血があったら充分かな?」

合計1.5Lもの血をペットボトルに貯め、同じくゴミ捨て場から拾ってきたリュックに詰めた

ルナ「それにしても、まだ使える物を捨ててる人多かったなぁ…まあ、そのおかげでリュックは手に入れられたんだけどさ」

ゴミ捨て場にはリュックの他に、刃が少し欠けた小型のナイフ、少しほつれているもののまだ着れる服、ライター(これに至っては新品)など、まだ使おうと思えば使える物がたくさん捨てられていた

ルナ「この猪の死体どうしようかな…さすがにこれは持ち運びできないし…」

ルナは少し考えた後、先程ゴミを漁りに行った時に見かけた店の事を思い出した

ルナ「確かあの店、動物の肉を加工する店だったよね?」

もしかしたら猪の肉を買い取ってくれるかもしれないと思いルナは猪を背負って、来た道を戻っていった

 

精肉店

俺が夜の仕事をこなしていると、戸を叩く音が聞こえた

男「ん?なんだこんな時間に…」

不思議に思い戸を開けると、うちの息子と同じか少し小さい位の子供がいた

男「なんだ?家に何か用かい?」

ルナ「猪のお肉買ってくれない?」

そう言ってその子供は背負ってる物を地面に下ろし俺に見せてきた

それは成体になる手前程の猪だった

男「は?何で猪なんか背負ってんだ?」

俺がそう尋ねると、子供は不思議そうな顔をした

ルナ「え?…森でやっつけたんだけど、ずっと持ち運ぶわけにもいかないから、お金にしようと思って…買ってくれないの?」

男「嬢ちゃんが…やっつけた?ハハハ!馬鹿言うんじゃないぜ。猪なんざ成人男性でもなかなか素手じゃ仕留められねえぜ?…まあ、猪の肉はなかなか手に入らないしな。買わせてもらおう」

ルナ「ありがとう!(まあ、私が仕留めたなんて信じれるわけないよね…)」

男「値段はそうだな…ちょっとあそこの秤に乗せてみてくれないか?」

ルナ「分かった」

子供は返事をすると、猪を再び背負って秤の前まで持って行った

男「(まあ、あんな子供で持って来れる位だ。飢餓寸前だったとかで大した重さじゃなかったんだろうな)」

1㎏あたり8独マルク(約1000円)として換算しても20㎏で160独マルク(約2万円)程だ。ちょっとした小遣い程度にしかならないと、たかを括っていた

男「どれどれ…え?」

しかし、秤の数値は予想を遥かに超えた50㎏だった

男「(この子は自分の体重より重い猪を担いで来たっていうのか!?)」

その重量に当の本人も驚いたのか、気まずそうな顔をしている

男「ほ、他の秤に乗せてみようか…やっぱり…」

他の秤に乗せてみたが、やはり50㎏を指していた

男「じょ、嬢ちゃん、何か格闘技でも習ってたのかい?」

ルナ「え?…あっ、うん!そうなの!私こう見えて力持ちなの!」

なんだか取って付けたような雰囲気だが、まあどうやって持ってきたかなど知ったところで何の得になる訳でもない。放っておくことにしよう

ルナ「それで、いくらで買ってくれるの?」

男「50㎏だからなぁ…400独マルク(約5万円)でどうだい?」

ルナ「分かった!(あの猪、思ったよりも重たかったのね…)」

奥から金を持ってきて子供に渡すと、金額に間違いがないかを確認するなり、さっさと出て行ってしまった

男「ちょっと待てよ?まさか猪の腹の中に石でも詰めて重さを嵩増ししてるとかないよな?」

少し不安になったのですぐに猪の腹を開き中を見たが、特にそのような物は入っておらず、純粋な肉が詰まってるだけだった

男「あれ?この猪、既に血抜きがされてる…あの嬢ちゃん料理人かなんかの弟子か?というか、よく考えたら店の中でも持ち上げてたんだから筋力があるのは確実なのか…」

根本的な常識を捨てた考えだが、意味のない事だと割り切り、俺は考えるのをやめた

 

ルナ「あっぶなぁ…力が強くなってるから普通に持って来れたけど、そういえば猪って結構重たいんだった…」

つい一昨日まで人間だった者とは思えない発言だが、事実ルナは子供が犬や猫を抱え上げるように猪を担げる位、力が強くなっていた

ルナ「なんか、血を飲む度に力が強くなってる気がする…」

少なくとも、意識が戻った時は地面を這って進むぐらい非力だった。しかし、母親の血を飲んだら普通に歩けるようになったし、膂力もあり得ないほどついてきている

ルナ「本格的に力の制御が必要になってきたわね…」

自分の力の強さに危機感を覚え、ルナは森の木を実験台に夜通し力の制御に努めた

 

ルナ「よし、これ位の力なら多分普通の人を殺さずに済みそう…」

一晩かけて力を制御できるように頑張った結果、10%の力なら普通の女子ぐらいの力だと分かった

ルナ「それにしても、本当にこの体は丈夫ね…」

木をずっと殴り、木の方は少し凹んでいる場所があるというのに、私の手は全く傷を負っていなかった

というより、傷ができた端から治っていくのだろう。吸血鬼の治癒能力恐るべし…

ルナ「とりあえず、今日は必要な物を買わなきゃ…」

昨日手に入れた400独マルクを握りしめ、私は手芸店を探しに森を出た

 

数分後

ルナ「あった、たぶんあそこが手芸店だよね。…やっぱり靴下がないから足が何か所も焼けちゃってるなぁ…」

途中何回か日向を避けれない場所があり、激痛を我慢してルナはここまでやっとたどり着いた。ただ買い物をするだけで命がけである

ルナ「(早く店の中に入ろう…ここに居たらまた日に焼かれそう…)」

そう思い、ルナはさっさと店の中に入って行った

店員「いらっしゃ…迷子?」

ルナ「いや、普通に買い物に来たんだけど…」

店員「あら、ごめんなさいね。何を探してるの?」

店員さんは私に目線を合わせてしゃべってきた。私そこまで小さくないんだけどなぁ…

ルナ「お裁縫の道具はある?」

店員「お裁縫?お母さんにお使い頼まれたの?」

ルナ「ううん、自分でお裁縫するの。手縫いだけど」

店員「そう、えらいわねぇ。裁縫道具ならこっちよ」

店員さんについていくと、何種類も裁縫道具が置いてあった

店員「それじゃ、ごゆっくり」

他の仕事があるのか店員さんは私を案内をすると、どこかへ行ってしまった

ルナ「さてと…どれにしようかな…」

お母さんが裁縫をしているところは何回か見た事があったが、針や糸の種類がこんなにもあるとは知らず、迷ってしまった。とりあえず裁縫セットと書かれた棚に並んでいる商品を手に取り、中を見てみると、裁縫用の糸や針等が3種類ずつ入っており、なかなか豪勢だった

ルナ「(でも、こういうのって高いんだろうなぁ…)」

そんな事を思いながら値段を見てみると、20独マルク(約2500円)だった

ルナ「え?意外と安かった…」

子供の裁縫用具という事もあって値段は思いのほか安く売られていた

ルナ「入れ物のパッケージとかあるけど…まあ、なんだっていいか」

何のキャラかも知らない為、ルナはパッケージにこだわる事なく裁縫セットを買った

ルナ「次は傘を買わなきゃ」

ルナは手芸店に来る道中、何度も傘をさしている人を見かけ、あれがあれば日中でも動きやすくなるかもと思い買いに行こうと考えたのだ

そんな調子でルナは次々と買い物を済ましていき、時間は過ぎていった

そして日が暮れ、またあの森へ帰ろうとしている途中で警官2人とすれ違った

ルナ「(!…顔隠さなきゃ)」

すると、相手はルナに気が付かなかったのか声をかけてくることもなかった

しかし、すれ違いざまに二人の会話が聞こえてきた

警官1「それにしても、遺体が消えるなんて奇妙な事件だな」

警官2「ノエルちゃんだっけ?ここまで色んな所で探して見つからないんだ。もうどっかに持って行かれちまったか、遺体が生き返って逃げちまったかだろうよ」

警官1「へっ、そりゃ傑作だ。まあ、あと1週間探して見つからなきゃ捜索は打ち切るらしいし、気楽に探すとしましょうかねー」

ルナ「(私はあの夜死んだ事になってたのか…まあ、吸血鬼になってる時点でそうに決まってたか…でも、あと1週間逃げれば…)」

しかし、この周辺にも警察の目が広がってることが今の会話からも分かったので、ここにずっといればそう遠くないうちに捕まってしまうだろう

ルナ「(また、場所を変えるしかないわね…)」

この夜のうちにでも住処を移動した方がよさそうだと思い、進路を森からまだ見ぬ地へと向けた

 

数時間後

あの街からかなり離れ、今は山の中の獣道を突き進んでいる

その途中、私は後ろでガサガサという音が鳴ったのに気が付き振り向くと、それは蝙蝠だった

ルナ「なんだ蝙蝠か…あれ?そういえば私って吸血鬼だけど空飛べるのかな?というより、翼あるのかな?」

目で見える範囲には翼は見えない。しかし、手で背中を探ってみると肩甲骨のあたりに何かあるのが分かった

ルナ「もしかしてこれが翼?もしそうなら、かなり小さいんだけど…」

大きさだけで言うなら私の背中と同じくらいか、それ以下の大きさしかない。この大きさじゃ到底空を飛ぶなど無理だろう

ルナ「まあいいや。この辺なら多分安全だよね?」

山の開けた場所に出た為そこで布に全身包まった状態で寝転がり、すぐに眠りについた

 

To Be Continued




再び住処を変えたルナだが、新しい住処は無事見つかるのだろうか?
次回『天翔ける漆黒の翼』
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