吸血鬼少女   作:フリッカ・ウィスタリア

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1989年11月10日、日本に吸血鬼が降り立った…
しかし、この吸血鬼、日本語を話せず、字も読めなかった
本当にこの吸血鬼は生活していけるのだろうか…


吸血鬼来日

ルナ「ん…そろそろ日本に着いたかな?」

暗室のため外の状況はさっぱり分からないが、エンジンの音が小さくなってきているので、私はそろそろ目的地に着くとなんとなくの感覚でわかった

ルナ「あっ、そういえば…」

この部屋に入る時はこっそり入ればよかったが、出る時はどうしても作業員に見つかってしまう事をすっかり忘れていた

ルナ「どうしよう……そうだ!誰かの荷物の中に入ってやり過ごせば…」

そう思ったルナだったが、どの荷物もしっかりと施錠がされており、無理に開ければ下ろす段階で怪しまれてしまうだろう

必死に探し回っているうちに飛行機は止まってしまい、ベルトコンベアーが近づいてくる音が聞こえた

ルナ「(やばいやばいやばい!!)」

焦りまくっていると、一つだけ鍵が付いていないスーツケースがあった

ルナ「(急がないと見つかっちゃう!)」

急いでスーツケースを開け、中に自分の体を押し込み、できるだけファスナーを閉めた

作業員A「ほら、さっさと荷物下ろしちまおうぜ」

作業員B「なんだこの荷物、大きさの割にえらく重くないか?」

さらっと失礼なことを言われたルナだったが、日本語など分かる訳もなくただ息を潜める事だけに集中していた

ルナ「(揺れてる?…という事は運ばれてるって事かな?)」

直後、一瞬の浮遊感の後、背後からガラガラという音が聞こえてきた

ルナ「(バレませんように…)」

繰り返しそう祈っていると、周りが静かになった

ルナ「(あれ?静かになった?)」

そっと内側からファスナーを開けると、どうやらここは荷物を客の前まで運ぶベルトコンベアーのようだ

ルナ「(このまま乗ってたらこの荷物の持ち主に見つかっちゃうし、今のうちに出て逃げなきゃ)」

この空間は全自動なのか、周りに人は全くおらず、スーツケースから出ても気づかれないだろう

ルナ「(出口は…あそこか)」

周りを見渡してみると、作業員用の出入り口らしきものがあった

出入り口に近付き、向こう側の音を聞いてみたが、音は聞こえなかった

ルナ「(向こうには…誰もいなさそうね)」

一応のため慎重にドアを開けてみると、やはり向こうには誰もいなかった

そのまま道なりに進んで一般客用の通路に出ようと試みたが、壁の案内が読めないルナはあちこちを歩き回り、時には来た道を引き返し迷いに迷っていた

空港員「どうしたんだい?どこから入ったの?」

なんと、迷っている途中に空港員に見つかってしまった

~ここから実際の発言は言語フィルター無しでお送りします~

ルナ「(やば…見つかっちゃった…)Ich bin nicht verdächtige Person.『私は怪しい者じゃないです』」

空港員「あぁ…外国人の子供かぁ…どうしよう、僕は外国語分からないんだよなぁ…」

私が必死に弁明していると、目の前の男性は少し困ったような顔をした

ルナ「(どうしよう…逃げるのは簡単だけど、道が分からないからまたどこで見つかっちゃうか分からない…)」

私はこの状況をどうにか打開できないか考えていた。すると、私の考えが纏まる前に男性の方の考えが纏まったようだ

空港員「たぶん迷子だよね…おいで、廊下まで連れて行ってあげるから」

何やら男性が言っているが私はさっぱり分からなかったが、男性は私の方へ手を伸ばしてきた

私は考え事をしていたため反応が遅れ腕を掴まれてしまった

ルナ「(とりあえず大人しくしておいた方がよさそうね…ここで問題起こして日本でも指名手配されちゃったら最悪だし)」

私は相手のスキをついて逃げようと考え、とりあえずは大人しく付いて行く事にした

すると、連れてこられたのは少し広い廊下で、旅行客と思しき人達も何人か見当たった

空港員「君のママがどの人か分からないから、ここからは自分で探してね。もう勝手に関係者通路に入っちゃダメだよ?」

男性は何か私に注意のような事を言った後扉の向こうへ消えた

ルナ「(えっと…今の人はただ私をここまで連れて行こうとしてくれただけ?ちょっと申し訳なかったなぁ…)」

男性が何を言っていたのかは終始さっぱり分からなかったが、私を助けてくれた事だけは私でも理解できた

ルナ「(とにかく、日本に入国は出来た…あとは私の持ってるお金を日本のお金に換えてもらわないと)」

ルナは以前地図を見ている時に日本の場所に書いてある通貨が自分の持っている通貨と違う事を知っていた。そのため、入国してすぐに外貨両替をする事にした

ルナ「Ist, wo Fremdwährungs Büro ist?…『外貨為替交換所は何処かな?…』」

通路にある空港内案内図を見てみるが、文字が読めない為いまいち分からない

ルナ「(この赤い点は何だろう…あれ?このマークって…お金?)」

運よく両替所のマークがメダルのマークだったため、ルナにもお金関連の何かがあるという事は読み取れた

 

外貨為替交換所

ルナ「(多分、あれがそうよね?みんなお金を渡して違うお金みたいなのもらってるし…)」

その店へと続く列へ私も並んでいると、思いのほか早く私の番が来た

ルナ「Bitte ersetzen Sie das Geld.『お金を交換してください』」

交換員「えっと…どこの国の子かな?」

何を言っているのか分からない為、とりあえず交換して欲しいだけの通貨を出してみた

交換員「これは…独マルク?という事はドイツ人なのかな?えっと……かなりあるなぁ…これを日本円に換算すると…」

何やら通貨を見ながらブツブツ言っている女性を見て、まさか偽札だったりしないだろうかと少し肝を冷やしたが少し待ってみると日本のお金と思しきお札を持ってきてくれた

交換員「全部で5000マルクだったので、35万円(※当時のレートは約1㍆/70円)と交換になります。それではよい旅を」

ルナ「Danke『ありがとうございます』(なんか、えらく分厚くなって返ってきたわね…)」

実を言うと鞄の中にまだ各紙幣が1枚ずつあるのだが、なんとなく記念に取っておきたかったのであえて交換せず残しておくことにした

今のところ、お金を使う予定もないのでお金を鞄に片付け空港の外に出た

ルナ「(さてと、これから住む所を探すのも大事だけど、この1、2時間で言語能力の大切さを実感したわね…どこかのゴミ捨て場とかに捨てられてる本とかで日本語を勉強しないと…)」

流石に日本語をほとんど話せないまま日本で暮らしていくのは難しいだろうと考えつつ、昼間から空を飛ぶわけにもいかず、徒歩で住処を探すことにした

 

数時間後

ルナは関空から十数㎞歩き、とある場所に来ていた

ルナ「(あの本のマークって、本が置いてる場所って事だよね?)」

関空に置いてあった周辺地図には本のマークが描いてあった

つまりこの場所に図書館かそれに準ずる建物があるという事だろう

事実、その場所に行ってみると、それなりに大きな建物があり、窓越しにもたくさんの本棚が並んでいることが分かった

 

泉佐野市立図書館中央図書館

ルナ「Unermesslichkeit…『広いわね…』」

思ったよりも建物の中が広くて絶句してしまった

ルナ「(カウンターは何処だろう…)」

少し探してみると、雰囲気から察してカウンターと思しき場所にたどり着いた

館員A「何か本を探してるの?」

ルナ「(何を探してるのか聞いてるのかな?)Deutach-japanisch…Übersetzung(※訳 ドイツ語から日本語の翻訳ができる本を教えてください)」

館員A「ん~?ちょっと待ってね」

急にドイツ語をしゃべられて戸惑ったのか、館員さんは苦笑いをしながら裏に消えて行った

すると数分も経たぬうちに、もう一人官員さんを連れて戻ってきた

館員A「この子がしゃべってる言葉がよく分からないんですけど、英語なんですかね?」

館員B「ちょっと待ってくださいね」

そう言うと連れてこられた官員さんは私の方へ向いた

館員B「Where is your country of origin?『貴女は何処の国出身ですか?』」

ルナ「Bedeutung Ich weiß nicht.『言っている意味が分かりません』(というか、これ何語なんだろう?)」

館員B「ん?この言葉の訛り、英語じゃないですよドイツ語です」

館員A「そうだったんですか。それで、江藤さんはドイツ語は喋れるんですか?」

館員B「少し…ですけど、一応頑張ってみます」

なにやら二人で話しているようだったが、またこちらへ向き直った

館員B「Sind Sie ein in Deutschland geborener?『貴女はドイツ生まれですか?』」

ふと目の前の女性が聞きなれた言語を話した

ルナ「Das ist richtig!「はい、そうです!」」

館員B「(この反応、ドイツ出身ぽいわね)」

ルナ「Deutsch-Japanisch-Wörterbuch『独和辞典を貸してください』」

館員B「deutachは…ドイツ語、japanischは日本語だから…独和辞典?わかったわ、ついてきて」

館員さんが手招きをしながら本棚の方へ歩いて行った。ついて来いという事だろう

そのままついて行くと、分厚い本がたくさんある本棚の前で立ち止まり、一つの本を出してきた

受け取ると、題名は読めないが、中を見てみると独和辞典だった

ルナ「Danke!『ありがとうございます!』」

館員B「Gern geschehen『どういたしまして』」

そう言うと館員さんはカウンターに帰って行った

ルナ「(とりあえずこの辞書の特徴をメモして、どっかの本屋で買わなきゃ。ここのはいつまでも借りられないだろうし…)」

辞書の名前などを以前拾ったメモ用紙に書き写し、辞書を元あった場所に戻してから図書館から出て行った

 

数時間後

メモを見せた事で無事本屋で独和及び和独の辞書を買うことに成功した私は、今度は自分の住む家を探していた

とは言っても、家を買うほどの財力があるわけがない為、空き家や今は使われていない廃屋を勝手に使わせてもらうつもりである

ルナ「(私的には野宿でも良いんだけど、誰かに見つかったら行き倒れてると思われて保護されかねないしね…)」

できるだけ人目につかず、それでいてあまり辺境でもない所を私は考えて探し続けていると、日が落ち夜になった頃に運の良く一件だけピッタリな場所が山の中で見つかった

ルナ「Ein für den Zustand geeigneter Platz wurde gefunden!『条件にピッタリの家が見つかったわ!』」

目の前の建物がいつから放置されているのか詳しく調べる術を私は持ち合わせてはいないが、壁に繁殖した蔓で10年以上は放置されている事がわかった

ルナ「Uh…es ist ein großes Haus.『それにしても…大きな家ね』」

 

【挿絵表示】

 

外から見ただけでもかなり大きな館だが、中に入ってみるとその予想よりさらに館は大きいようだった

まず、建物自体が2階建てなのは一般家庭と同じなのだが、館の中にリビングが無かったり、同じような構造の部屋が幾つもあったりした

まあ、ルナが気付いていないだけでこの館は廃校になった小学校なので同じような部屋があるのは当たり前だ

ルナ「(この感じ、どこかで見た気がするんだけど、気のせいかな?)」

ドイツと日本では学校の雰囲気が全く違ったうえ、10年近く学校というものに通っていなかった為ルナは自分が住もうとしている場所が小学校だと気が付いていなかった

ルナ「Wo befindet Sich das Bett?『ベッドは何処だろう…』」

一つ一つ部屋を探し、何と読むのかは分からないが《保健室》という表札が付いている部屋にベッドを見つけた

早速そのベッドに寝転がり昼間に買った二つの辞書とにらめっこしながら日本語の勉強をした

 

数日後

ルナ「わタし、ナまエ、ルナ。ドイツうマれ」

あれから昼は寝るか辞書を読みながら日本語の練習、夜は野生動物を捕まえ血を集める事で一日中忙しい日々を送っていた

その成果もあり、少しずつではあるが簡単な日本語なら話せるようになってきた

ルナ「(対人で話してないからいまいち確証はないけど、たぶん日本人に伝わる位にはちゃんと日本語喋れてるよね?)」

人目を避けるためにずっと山に篭っていた為、私はここ数日誰とも喋っていない

ルナ「(実践も兼ねて山の麓にあるショッピングモ-ルに行こうかな)」

自分の語学力がどれほどまで成長したのかを知るために私は人の集まるショッピングモールに行く事にした

 

 

ショッピングモール

ルナ「(人多っ!)」

ボンに初めて訪れた時も人の多さに驚かされたが、ここはそれをも上回りそうな人の多さだった

ルナ「(っと、そんな事より、今日ここに来た用事を終わらせなきゃ)」

もちろんここに来た理由の第一は他人と喋る事だが、その過程で所持品の中で足りなくなってきている物を補充しようと考えているのだ

店に入ると意外とすぐに店員を見つける事が出来た

ルナ「こコ、ナにやデスか?」

店員「ここ?ここは文具店ですよ」

ルナ「(ブングテン?あぁ、文房具とか売ってる所ね)じゃア、シャープペンシルとソのシンくだサい」

店員「シャーペンとその芯ですね?分かりました、ついてきてください」

口調が速くうまく聞き取れなかったが、困ったような表情をしなかったという事は私の言っている事は通じたのだろう

店員さんについて行くとシャープペンシルと芯を売っている場所に案内された

その後も少し苦戦しながらも日本語で用件を伝えて所望の物を手に入れる事ができ、私のショッピングモールデビューは成功で幕を閉じた

 

To Be Continued




生活できる最低限の言語力は身についた為、生活面では苦労が減ったルナだが、今回の滞在先でも何か起こる予感が…
次回『学校の怪談』
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