吸血鬼少女   作:フリッカ・ウィスタリア

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数日前の一件からしばらくは平穏な日常を送りながらジョジョ立ちの練習をしているルナだったが、またしても侵入者が現れたようだ


学校の怪談 リベンジャー

数日前に気まぐれで買いに行った漫画に思いのほかハマってしまい、劇中に登場するポーズを暇な時にとっていたりするくらい好きになっていた

ルナ「意外とこの体勢キツいわね…」

特に私はジョジョとかいう漫画のポーズを気に入っている

ルナ「えっと、この体勢のままウリィ?…WRYYYYYYYYYY!」

我ながら何やってるんだろうとか思いながらも、なぜかテンションが上がるのだ

そんな事をして遊んでいると、外で何かの気配がした

ルナ「誰か来た?まさか前の子達じゃないよね?」

前回あれほど脅かしたのだから流石にもう来ないと思っていたのだが、また来たのだろうか?

カーテンの淵から外を覗くと、どうやら前回の子達ではなさそうだが、見た感じ前回の子達の同級生の様だった

ルナ「どっちにせよ、あの子達も肝試しでもしに来たんだろうな…」

この感じでは今回の子達を追い返した後も誰かがここに来そうだ

ルナ「…できるだけならしたくなかったけど、実害があるって認識してもらうしかないわね」

作戦を考え、数本血のボトルと小型のナイフをリュックに詰めてからある場所へ向かった

 

侵入者サイド

実里「ねぇ、本当に大丈夫なの?」

弘毅「そんなのガセに決まってんだろ?バカバカしい…」

数日前に肝試しに来た三人が次の日に顔を青くして俺に言ってきたのだ

弘毅「というか、怖いならお前は付いて来なくてもいいんだぞ?別に俺だけで行ってくるし」

実里「そんな事出来る訳無いよ…何かあった時に助けを呼ばなきゃだし」

弘毅「だから何もある訳ねぇって…」

なんだかんだ言っているうちに件の廃校に着いた

弘毅「さてと、あいつらが何を見間違えたのか知らねぇけど、なんもないってことを証明して、明日あいつらを笑ってやろうぜ」

実里「(本当にそうなればいいけど…)」

その時、実里はふと二階の教室のカーテンが揺れている事に気が付いた

実里「ねぇ、あそこの窓、カーテン揺れてない?」

実里が声を少し震わせながら俺にそう言ってきた

弘毅「は?こんだけ古い廃校なんだから、隙間風ぐらい吹いてもおかしくないだろ?そんな事で怯えんなよ…」

実里の言葉を受け流し、俺は廃校の中に入って行った

弘毅「えっと、あいつらって何の為にここ来たんだっけ?」

実里「確か、この学校の七不思議を巡ろうとか言ってた気がする」

弘毅「と言うと…踊り場の姿見とか、理科室の人体模型とかか」

実里「じゃあ、さっさと調べて帰ろう」

まずは理科室に行く事に決まった

 

ルナサイド

ルナ「まずは理科室ね…」

二人の行き先を盗み聞いてから理科室へ急ぎ、ある仕掛けをしてから身を隠した

すると、少し遅れてあの二人が理科室へ入ってきた

実里「人体模型は何処だろう…」

部屋に入って来るなり人体模型を探し始めた

実里「あっ、これじゃない?」

前回とは違い壁際に人体模型は置いてあり、すぐに見つかった

弘毅「当たり前だけど、動く気配はねぇな」

人体模型が動かない事を確認すると、二人は出て行こうとした

しかし…

実里「…あれ?」

弘毅「どうしたの?」

実里「ドアが開かない…」

弘毅「は?そんなわけ…マジかよ…」

来る時は開いたはずのドアが開かなくなっていた

ルナ「(まあ、ドア幅と同じ長さの棒を横に置いてるだけなんだけどね)」

部屋が明るければ一瞬でわかるような仕掛けなのだが、今は夜という事もあり足元が暗く見えにくく、二人はその仕掛けに気が付かなかった

ルナ「(今の間に…)」

私は事前に用意しておいた血のボトルを開け、少し手に付けてから二人に忍び寄り、後ろに居た少女の肩を軽く触ってからすぐにまた身を隠した

実里「ヒャッ⁉」

弘毅「な、なんだよ急に大きい声出して…」

実里「だ、誰かに肩触られた!」

弘毅「俺ら以外誰もいないじゃねぇかよ…」

実里「で、でも!肩に手形が!」

弘毅が見てみると実里の肩に小学生の子供と思しき手形が付いていた

実里「もしかしてここってガチもんの心霊スポットなんじゃ…」

弘毅「ち、ちげーだろ!なんかのペンキが偶然そんな風に見えるだけだろ!」

そう言う弘毅の口調は実里にというより、自分に言い聞かせているようだった

実里「あっ!これだよ!これが挟まってたからドアが開かなかったのよ!」

ようやくつっかえ棒に気が付いたようだ

つっかえ棒を取り除くと急いで二人は出て行った

ルナ「(フフフ…流石にこの程度じゃ帰らないか)」

そんな事を考えながら私も三人を追った

実里「ねぇ、早く帰ろうよ…」

弘毅「あんな大口叩いてノコノコと帰れるかよ!」

実里「意地っ張りなんだから…次は音楽室?」

弘毅「ああ、早く行こうぜ」

ルナ「(音楽室か、となると…やっぱりあれかな?)」

次の作戦を考え早速行動に移した

 

音楽室

ルナ「(この絵をこうして…できた!)」

先程と同じように血を使ってモーツァルトの絵に血の涙を流させた

ルナ「それにしても、廃校になったのに何で絵だけは残ってるのかしらね?まあいいけど」

作業を終えた後、準備室の方へ回って二人が来るのを待った

実里「音楽室とか、廃校の中で一二を争う位不気味な所じゃん…」

どうやらあの二人が来たようだ

実里「うわっ、あのモーツァルトの絵、血の涙流してる…」

弘毅「ただの汚れだろ…たぶん」

廃校に入ってくる前の威勢は何処へやら、弘毅の声にも覇気が無くなってきていた

ルナ「(あともう一押しね…)」

最後の締めに取り掛かるために、私はそっと音楽準備室から廊下へ出た

そして、急にケタケタと笑いながら廊下を走り回った

ルナ「キャハハハハハハハハハハハ!」

実里「え⁉何⁉」

弘毅「誰かいるのか!?」

急に廊下から得体の知れない者の笑い声が聞こえてきたとなれば誰だって驚く

しかし、それを演技としてやっているうえに、やっている者が一人だけというのは仕掛け人の側からしてみれば恥ずかしいやら空しいやらこの上ない

 

侵入者サイド

実里「ねぇ、やっぱりここ誰かいるんだよ!」

弘毅「そ、そんなわけ…」

二人が戸惑っていると、先程の声が再び聞こえてきた

ルナ「キャハハハハ!新しいお友達は何処かなー?」ガラッ

少し遠くでドアの開く音が聞こえた。おそらく俺達を探しているのだろう

弘毅「実里、お前はここでじっとしてろよ。俺がちょっと様子を見てくる」

俺はそう言ってドアの音を立てないように開き、周りの様子を探った

すると、左に三教室程離れた所に俺らよりも幼い少女の後ろ姿が見えた

それだけなら良かったのだが、その少女の手には赤く錆びたナイフが握られていた

ナイフの存在を知覚した瞬間、俺の中に芽生えた感情は紛れもない『恐怖』だった

実里「ね、ねぇ、何があったの?さっきの笑い声の正体は何だったの?」

弘毅「静かにしろ!見つかったら殺されるぞ!」

実里「え?どういう事?」

弘毅「とにかく黙ってろ!」

弘毅の声は小声だったが、何処か危機迫った感じがしていた

ルナ「どこに隠れてるのー?もしかしてー、かくれんぼ?」

声が可愛らしいだけに、より恐怖が増幅される

ルナ「ここかなー?」バンッ!

音楽室の2つ隣の教室のドアが叩き開けられた

ルナ「こっちかな?」

今度はすぐ隣の教室のドアが開けられた

弘毅「(やばい…このままじゃ、次はこの部屋を開けられる…)」

少しずつ近づいてくる恐怖に押し潰されそうになりながら、俺はある事を思いついた

弘毅「実里、ピアノの下に隠れるぞ」

実里「う、うん、わかった」

正直、気休め程度にしか隠れられないだろうが、垂れ幕の様になっているピアノの下に隠れれば運が良ければ見つからないかもしれないと考えたのだ

ピアノの下に隠れて少し経つと、音楽室のドアが開く音がした

ルナ「どこに隠れたのかなー?」

少しの間、子供が音楽室の中を歩き回るような足音が響いていたが、少し待ってみると足音はドアの方へ戻っていき、ドアが閉まる音が聞こえた

実里「出て行った…?」

弘毅「たぶん…」

一応の為、少しだけ幕を捲って周りを見てみたが、誰も周りには居なかった

弘毅「よし、誰も居ない」

もう意地とか、なりふり構っていられそうにない為、さっさと帰ろうとピアノの下から這い出た

ルナ「やっぱりそこに居たー!」

しかし、俺の気持ちは再びドン底に叩き落された

先程出て行った筈の少女がピアノの上に座って俺達が出てくるのを待っていたのだ

弘毅「なっ…あっ…」

恐怖で足が竦んだ、声もうまく出せなかった

実里「こ、子供?」

実里の方は恐怖を感じている反面、子供がナイフ片手に笑っているという状況が呑み込めずにいるようだ

弘毅「に、逃げるぞ!」

俺はやっとの思いで体を動かし、実里の腕を掴んで音楽室を飛び出した

ルナ「今度は鬼ごっこー?じゃあ10数えたら追いかけるねー」

楽しげに数を数えるその少女の声が後ろから聞こえてきたが、俺は気が気じゃなかった

 

ルナサイド

ルナ「よしよし、なかなか怖がってくれたわね。あとは、どっちか捕まえてちょーとばかり血をもらおうかな?」

10数え終えてあの二人にとっては恐怖の鬼ごっこが始まった(まあ、吸血”鬼”が加わっている時点で鬼”ごっこ”ではない気がするが…)

私も音楽室を飛び出すと、ちょうどあの二人が廊下の角を曲がるところだった

ルナ「(半分位の力で走れば余裕で追いつきそうね)」

正直言って半分の力で走ってもあの二人に逃げられる可能性は0%だろう

私が曲がり角を曲がると、二人は別々の方へ逃げたようだ

ルナ「なるほど、別々に逃げればどっちかが助かるかもしれないもんね」

とりあえず足の速そうな少年の方を先に追いかける事にした

弘毅「こ、こっち来た!」

自分が追いかけられていると気づいた少年から明確な恐怖が感じ取れた

ルナ「捕まえた♪」

陸上選手とかなら別だが、普通の少年に私が振り切れるわけがなく、一瞬で私は少年に追いついた

弘毅「こ、殺さないでくれ!」

あんなに粋がってたくせに急に弱気になったなぁ…

ルナ「殺さないよ?ちょっと眠っててもらうだけ♪」

そう言って私は少年の頸動脈を軽く締め失神させた

ルナ「息は…してるわね。それじゃ早速…」

私は少年を持ち上げ、大まかな体重を調べた

ルナ「50㎏位かな?血液量は体重の8%だから…4ℓ?」

全血液量の三分の一を失うと危ないらしいから、取るなら1ℓまでが限度だろう

首は血が出過ぎるため、脹脛を少し切ってそこから血をもらう事にした

ルナ「…よし、これ以上はちょっと危ないかもだし止めとこう」

すぐに包帯で傷口を圧迫し簡易な処置を施した

ルナ「もう一人の方からも血を…いや、やっぱりいいや」

ここまでしたのだ。さすがにもうここに近付こうなんて考える子はいないだろう

前回同様、少年を昇降口に転がしておくと、少しおくれてもう一人の子が来た

実里「弘毅!?どうしたの⁉」

少女は少年に駆け寄ると往復ビンタをして無理やり少年を叩き起こした

ルナ「(乱暴だなぁ…)」

弘毅「うっ…あれ?なんで俺こんな所に倒れて…!!あいつは⁉」

起き上がるなり周りを見渡して私の姿を探していた

ルナ「(ああ!そんなに興奮したら傷が…)」

寝ころんだ状態から急に起き上がった事に加え、恐怖によって興奮した事で急に血の流れが良くなり再び傷が開いてしまった

実里「ちょっと、足から血が出てるわよ!?」

弘毅「今はそんな事より逃げねぇと!」

弘毅は無理やり立ち上がると、実里の腕を掴み走り出した

ルナ「(あの出血量だったらまず死にはしないと思うけど…血が勿体無いなぁ…)」

こんな発想をできるあたり私も吸血鬼なんだなと再認識した

 

数日後

あれから数日経ち、誰一人として私の家に忍び込んでくる人はいなくなっていた

ルナ「てめぇは私を…怒らせた!」

かくいう私は相変わらず踊り場の鏡を見ながらジョジョ立ちの練習をしていた

ルナ「エデン…名乗らせていただこう、ルナ・O…エデン」

一人でずっとこんな事やってるなんて空しい事この上ないが、なんか楽しい

ルナ「うーん、一人でやっても、なんか空しいなぁ…」

そんな事をやっていると、外で草をかき分ける音が聞こえた

ルナ「野生の動物かな?」

窓から外を覗くと、そこに居たのは二十歳そこらの青年だった

ま た か よ !

大方ここの噂を聞いて来たのだろう

ルナ「ハァ…昇降口で即刻追い払ってやろうかしら…」

ちょっと期間が空いたらすぐこれだ。好奇心は猫を殺すという言葉を知らないのだろうか…

噂というものは怖いもので、最初のうちこそ現実と話に微細な差しか生まれていないが、語られるにつれ大きな話になるのだ。ここの噂がどれほどまで誇張されているのか分かったものではない

ルナ「今回はどんな手口で脅かしてやろうかしら…」

あれこれと考えながら私は昇降口へと向かって行った

 

To Be Continued




新たな侵入者の目的は肝試し?それともただの登山者なのだろうか?
次回『露里家』
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