しかし、相手の様子は何かおかしく…
昇降口
ルナ「(それにしても、まだ日が出てるうちから来るなんて、どんだけ暇なのよ…)」
そっくりそのまま自分に返ってきそうなセリフを吐く私だったが、実際今はまだ午後の3時であり、一般的な人なら学校か仕事に行っている時間であるはずだ
青年が昇降口へ入ってきた
そのまま青年は中に入って行き、日の光が届かない所まで入ってきた
次の瞬間、私は物陰から飛び出し青年に飛びついてそのまま押し倒した
青年「うわっ!?」
ルナ「お腹が空いてしょうがないの!あなたを食べてもいいよね?」
ニコニコと笑いながら牙を見せつけた
青年「よ…」
ルナ「は?なんか言ったかしら?」
青年「よ……だ」
ルナ「もっとはっきり喋りなさいよ」
青年「幼女だー!!」
急に起き上がった青年に私は跳ね飛ばされてしまった
ルナ「イタタタ…」
青年「本当にいた!嘘じゃなかったんだ!」
この人、なんかすごい興奮してるんだけど…気持ちわる…
ルナ「(というか、こんな反応をするってことは目的は噂じゃなくて私自身って事?)」
もしそうなのだとしたら演技する必要もないだろう
ルナ「それで、私に何の用かしら?」
青年「ああ、そうだった」
青年は少し真剣な顔で私に向き直った
青年「君、僕の家に来ないかい?」
ルナ「…?何で私が貴方の家に行く必要があるのよ」
青年「僕はこの山を西側に下りた所に住んでるんだけど、ちょっと前にこの廃校の噂を聞いてね。それで、廃校に肝試しに来たっていう中学生が親に出来事を話した結果、この廃校を取り壊す事になったみたいなんだよ」
ルナ「(ちょっとやりすぎちゃったか…)」
青年「さっき触った感じで君は幽体ではなさそうだし、僕の家においでよ」
ルナ「確かに幽体じゃないけど、私は吸血鬼よ?つまり、家に住まわせるという事は貴方は少なからず私に血を吸われるリスクを負うって事になるわよ?」
脅かす意味も込めてニヤリとしながら私は聞いた
青年「血を吸われるリスク?幼女に吸われるなら本望!」
この人は変態なのか?それともドMなのか?
ルナ「ちょっと待って、仮にそうだったとしても、なんで私を貴方の家に呼ぶのよ?」
青年「なんで?そんなの決まってるじゃないか」
青年は一呼吸おき、はっきりと宣言した
青年「僕が子供大好きだからさ!」
さっきから薄々感じていたが、やっぱりこの人ロリコンな気がする!
だが、この家が無くなるとなると、私は再びホームレスになってしまう。そんな時に家を提供してくれるというのはありがたい話だ
ルナ「…わかったわ。確かに家がないと何かと不便だもんね。ありがたく貴方の家に居候させてもらう事にするわ」
何かおかしな行動を取ったらすぐ逃げればいいし
青年「よっしゃぁぁぁ!!」
その時、私はふと名前を言っていなかったことを思い出した
ルナ「私の名前はエデン…名乗らしていただこう、ルナ・O…エデン」
青年「ん?あぁ、わかったよルナちゃん。僕の名前は露里 梱(つゆざと こうり)だよ」
梱は私の自己紹介が何のネタか分からなかったのだろう。苦笑いしながら受け流されてしまった。恥ずかしい…
露里家
梱「さあ、ここが僕の家だよ。ちょっと狭いかもだけど、ちゃんと部屋はあるから」
梱が立ち止まった家は一軒家だった
ルナ「(決して狭くはないと思うけどなぁ…)」
確かに広い家ではなかったが、3、4人家族が暮らすのに別に狭い感じはしない家だった
それより私はある事が気がかりだった
ルナ「そういえば、今更だけど家族は?」
梱「ん?いないよ?」
ルナ「一人暮らしって事?」
梱「いや、違うよ。僕の家は父子家庭だったんだけど、父さんは去年病気で死んじゃったから僕一人になっちゃったんだよ」
ルナ「あっ…悪い事聞いちゃったわね…」
梱「別に気にしないよ。もう結構な歳だったしね」
ルナ「(20代なのに親がかなりの歳なの?)」
後に聞いた話だが、梱自身もちゃんと働いており、今日は有休を使ってあの廃校へ来たらしい
ルナ「ところで、私はこの家でどういう立ち位置に居ればいいのかしら?養子?従妹?」
梱「別に知り合いの家に泊まってるって事でいいよ。あっ、でも僕の事を『にぃに』って呼んでくれると「それは却下で」あっ、はい」
別にさん付けでも良かったのだが、他人行儀だと梱が言った為、私は梱の事を呼び捨てで呼ぶ事になった
梱「でも、これだけは守って欲しいって事があるんだ」
ルナ「守って欲しい事?」
梱「さっき、吸血がなんたらって言ってたよね?」
ルナ「ええ、言ったわね」
梱「血を吸うのは僕が死なない範囲なら吸うのは構わないんだけど、吸う方法を決めさせてもらっていいかな?」
ルナ「直接吸うなとか、傷が残らないように吸って欲しいとかかしら?」
梱「手の指から吸って欲しいんだ」
ルナ「指?またなんでそんな変な所から…」
梱「だって!指から吸ってくれれば、指を咥えるって事だよ?それってすっごい可愛いと思うんだ!」
ルナ「いや、そんなに熱弁しなくても…まあ、別にいいけど…」
変なこだわりだと思いながらも、別に吸血できないわけではないので要求通りにする事にした
数日後
ルナ「梱、この機械は何?」
梱「これ?パソコンだけど…見た事無いの?」
ルナ「土地代、家のローン、ガス水道光熱費、食費オール0円生活してたからね。あっ、でも、川の水で毎日しっかり体は綺麗にしてたわよ?」
梱「なるほど、究極の倹約生活を送ってたわけだね」
別名サバイバル生活だけどね
梱「とにかく、それは電気を使って世界中の情報を調べる事ができる機械だよ」
ルナ「へぇ…便利な世の中になったものね…」
梱「そういえば、ルナちゃんって今何歳なの?見た目だいぶ幼いけど」
ルナ「女性に年齢を聞くものじゃないわよ。というか、今何年の何日なのか教えてくれないと答えようがないわ」
普段から昼夜くらいしか気にした事が無かった為、カレンダーがあっても見る習慣が無く今が何日なのか理解していなかったのだ
梱「今日?今日なら2001年の6月9日だね」
私の誕生日が1970年の12月25日だから、私は今30歳になるのか…おばさんって感じの歳ね
梱「おやおやぁ?なんだかショックを受けてるようだけど、何かあったのかなぁ?」
そう言ってくる表情から私の考えている事を理解したうえでからかってきているのがありありと見て取れた
ルナ「ぐぬぬ…思ったよりも歳を取ってただけよ…」
梱「嫌じゃなかったら教えて欲しいな」
ルナ「…30歳よ。というか、今年31歳になるわ」
梱「なんだ、全然若いじゃないか。正直さっきの反応から3桁行ってるのかと思ったよ」
ルナ「そこまで行ったらむしろ開き直れそうね…それより、今後これを使えた方が何かと便利そうだし、使い方教えてくれない?」
運の良い事に今日は土曜日で梱も仕事が休みだ
梱「いいよ、まずはここを押してね…」
その後、日が沈みそうになるまで梱にパソコンの使い方を教えてもらい、夜になる頃には大方の基本機能は使えるようになっていた
更に数日後
ルナ「ねぇ梱、今使ってない通帳とかない?」
梱「使ってない通帳?学生時代にバイトの振り込み用に使ってた通帳ならあるけど…」
ルナ「それって今でも使える?」
梱「手続きさえすれば使えると思うけど…どうしたの?」
ルナ「ちょっと前にFX?とか言うのを見つけてね。やってみようと思うのよ」
梱「FXか…まあ、外に出ずにお金を稼げる方法ではあるけど…結構難しいよ?世界通貨って結構レートが変わるし」
ルナ「一応ちょっとだけならお金も持ってるし、それを元手にして小遣い稼ぎ位の気持ちでやってみるわ」
梱「ハハハ、まあなんでも経験だし、いいよ。じゃあまた時間が空いた時にでも同意書とか諸々の手続きしてくるよ。それじゃ、仕事行ってくるね」
一応私は食費等がいらない為、梱の収入だけで十分暮らしていけるのだが、ずっと世話になるのもなんだか申し訳ない為、ダメ元でやってみようと考えていた
ルナ「えぇ、行ってらっしゃい」
梱を送り出した後、私はふとある事を思いつき、パソコンと向き合い調べ事をしていた
ルナ「あの事件って調べたら出てくるかな…」
キーワードを某検索先生の所に入れ検索をかけてみると、それらしいサイトが出てきた
ルナ「場所は…イギリスか、じゃあ違うわね…ん?これかな?…場所はドイツで…女児の死体が行方不明」
自分の案件以外に死体が消えた事件があった事に驚いたが、少し探してみるとオーデン家の事件を見つける事が出来た
ルナ「ドイツ史上最大の謎って…また大層な名前を付けられたものね…あっ、このおじさん、あの時の…」
記事を読んでいくうちに、行方不明になっていた私の発見情報の記事も載っていた。そこには逃亡何日目だったかに猪を売りに行った精肉店のおじさんが写っていた
ルナ「なるほど、あの人が私と会った事を警察に言ったから、打ち切られるはずだった捜索が長引いてたのね…」
特に怒りなどはないが、面倒な事をしてくれたものである
ルナ「というか、梱の血を吸ってる時点で分かりきってるんだけど、吸血された人も吸血鬼になるって伝承も嘘なのよね」
意外と伝承は信用出来ないものだ
そんなこんなで夕方になり、梱も家に帰ってきた
梱「ルナちゃーん!ただいまー!」
帰宅早々でテンション高いなぁ…
ルナ「おかえり、仕事お疲れ様」
対する私はいたって冷静に対応した
梱「あれ?これは何?」
ルナ「え?何って夕飯だけど…」
少なくともダークマターは出来上がっていないはずだ
梱「料理できたの!?」
ルナ「そんなに驚かなくたっていいじゃない…私だって料理ぐらいするわよ」
とは言っても冷蔵庫にある物をより合わせただけなので、大した物は作っていないのだが
梱「ずっとサバイバルをしてたのに、なんで家事なんか…」
ルナ「これでもサバイバルを始める前は家事全般を(お母さんが鬱病でずっと寝てたから)私がやってたのよ」
梱「大したもんだねぇ…僕は家庭科系は服のボタンを付けれる程度なのに」
ルナ「男は仕事、女は家事っていう昔の考えは好きじゃないけど、梱は働いてるんだからそこまでやらなくてもいいのよ。というか、私は昼間に外に出れなくて暇を持て余してるんだから家の事くらい私に任せて」
梱「…わかったよ。じゃあ、家事はお願いできるかな?」
ルナ「ええ、任せといて」
梱「じゃあ、僕は少し部屋に取りに行く物があるから夕飯温め始めといて」
ルナ「了解」
はたから見たら夫婦かと思うようなやり取りだが、決してこの二人はそのような関係ではない
梱の部屋
梱「やっばかったぁ…もう少しで抱きしめちゃうところだったぁ…」
さっきのやり取りは梱的にはかなりグッとくる物だったらしく、とてつもなく幸せそうな顔をしていた
それが表に出そうだった為、物を取りに行くなどと噓をついて自室へ逃げてきたのだった
梱「僕、ニヤけずにいられたかなぁ…」
部屋の姿見で顔を確認し、呼吸を正してからルナの待つ部屋に戻った
梱「ルナちゃんお待たせ」
食卓に座ると、梱はルナの料理を食べ、ルナは梱の左手から血を吸っているという異様な光景が出来上がった
ルナ「こんな光景、他人に見られたら確実に変な人よね…」
梱「ははは、そうかもね」
吸血を終え、私はふと空を見上げた
ルナ「(今日は上弦の月の少し手前か…)」
つまり、今は満月に向かっている時期という事だ
ルナ「(近々、何かしらで血を集めなきゃ、梱からの吸血だけじゃ足りなくなっちゃうわね…)」
別に隠す必要はないのだが、なんとなく梱にこの事を話すと無理をしてでも血を吸わせようとしてきそうだ
ルナ「(とりあえずまた夜中にでもペットボトルに血を溜めに行って、どうしようもなくなった時にちょっとずつ飲もう)」
あの廃校に住み始めてから気づいた事なのだが、満月が近い時でも喉が異様に渇くだけで必ずしも大量に血を飲まなくても死にはしないという事が判明したため、ちょっと飲んで間を置くという方法を取る事にしている
しかし、直接血を吸うとなると歯止めが利くか分からないので気を付けておこう
梱「ルナちゃんどうしたの?」
ルナ「別に何でもないわ。月が綺麗だなって思ってただけよ」
梱「それって、あの有名な告はk「違うわ」チクショー!」
チクショーとか言ってる割には梱は楽しそうである
ルナ「それじゃ私はお風呂に「じゃあ僕も一緒に」捩じ切るわよ?何をとは言わないけどね♪」
私に笑顔で警告され流石の梱も引き下がった
お風呂
ルナ「ハァ…温かい…」
数日前までは、ほとんど触れた事さえない湯に今は毎日入れている
ルナ「私の生活、退屈しないって言ったら聞こえは良いけど、波乱万丈って言葉がぴったりくるのよねぇ…」
何気なしに胸に手を当ててみる
ルナ「もう少し体が成長してから吸血鬼になりたかったわね…」
20年経ってもまだ体は10歳の幼児体系な事に最近になってちょっとコンプレックスを抱き始めた
ルナ「心臓…やっぱり動いてない」
20年前のあの日から、ルナの心臓はおそらく一度も拍動していない。だが、ルナは呼吸をし、思考もしている。だが、心臓だけはやはり動いていないようだ
実を言うと、どうやって血液を全身に回しているのかが自分でもよく分かっていないのだ
ルナ「まあ、何年も考えても答えが出なかったんだから、今更答えが出るわけないわね 」
考えても無駄だと思いながらも、ついその無駄な事を考えてしまうのが私の悪い癖だ
ルナ「体とか洗ってさっさと出よう…梱がお風呂入れないし」
最初こそ少し警戒していた私だったが、この数日で梱に害意はないと感じ、ここでの暮らしも悪くないと感じ始めていた
ルナ「梱ー、お風呂あがったわよー」
To Be Continued
まさか人間の家に居候することになるとは思ってもいなかったが、梱は敵意がないと感じるルナは、もう少しこの家に居候させてもらう事にした。ここでの暮らしは長く続くのだろうか?
次回『日常』