生き返ったと思えばAクラスに所属させられていた件について。   作:ジグ

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どーも、ジグです。
再びやってきた日間入り、4位でした。
そろそろ80000字を超えそうと言うのに1巻分が終わっていないことに気づいてしまった。2巻分はオリジナル要素が強くなりそうです。原作で名前が出ていないAクラスの生徒も輝かせていきたいので。と、早速今回1人登場します。苗字だけは出てたんですけどね。


10. 俺の身体はそろそろ限界です、有栖さんよ。

 

 

 

 

 

 

 

 ──自信ある行動は、1種の磁力を宿す。

 

 ラルフ・ワルド・エマーソン、アメリカの思想家の言葉だが、今まさにそれを実感しているところだ。先日、有栖に挑発的な告白をしていたのが自信ある行動というのなら確かにこれは磁力を宿していると体感出来る。といっても、これは有栖の磁力というのもあるだろう。中間テストまであと2週間ほど。皆がしっかりと真面目に勉強に取り組む時期だ。これがDクラスなら1週間前から追い込みをかけるのだろうが流石はAクラス。有栖派閥だろうが康平派閥だろうがこの時期に入ってから、遊びに行くのはせいぜい土日の息抜き程度であり、平日の放課後に遊びに行こうぜ、などの声は聞かない。と、話が逸れてしまった。磁力の件だ。まあつまり、何があったかというと。現在時刻、朝。

 

 

 

「黎耶、今日も勉強会はするんだろ?俺も混ぜてくれないか」

 

「黎耶ー! 国語、俺に国語を教えてくれっ!」

 

「坂柳さん! 今日はグループの皆集めてやろうよっ!」

 

「坂柳さん、桐ヶ谷くん!皆こう言ってるしさー!」

 

「……馬鹿ばっか」

 

 こういうことだ。いや、Aクラスに入ってからも自慢ではないが人が周りには必ずいた。が、ここまで人が殺到することはない。土日明け、月曜からこの状況だ。どうなってるんですかね。何かあったといえば、何も無い。俺が有栖のもう1つの面を垣間見たくらいだ。重要ではあるが。しかしこうなってからというもの、俺の体力は削られてばかりだ。不定期に、といって2日に1度はある堀北会長との稽古に加え生徒会の書類処理。朝からハードワークをこなしたと思えば安定と信頼の座学が待っている。午前の授業が終わったら昼休み。だが毎回直樹たちに誘われ1人で飯を食ったことなどここ最近は全く無い。そして極めつけは放課後の勉強会だ。そろそろ身体が死ぬ。

 

「直樹わかったわかった。そして侑斗、それ聞いてるだけで俺が断っても参加してくるよな?」

 

「いいじゃないか。友達だし、さ」

 

「その爽やかフェイスイケメンだから栄えててムカつくんだよ…!」

 

 だがまあ、悪いことばかりだったかと言えばそうじゃない。里中 侑斗。原作1巻、綾小路と櫛田が話している時の話題に挙がった女子の中のイケメン男子ランキング。綾小路がランキング入りしていることに目を奪われて、そのランキングの1位の人など忘れていた。……うん、すぐにわかったよ1位。平田を超越する爽やかな笑顔に高身長。里中 侑斗だ。四文字で侑斗のことを表すのなら、イケメン。廊下でこいつが笑えば女子はキャーキャーと騒ぎ、彼女いない系男子は睨みを効かせる。歩く天災、それが里中侑斗だ。……少し言い過ぎか。んでまあ、俺と有栖が話している時に侑斗が来て、そこから飯を共に食べ、現在友人として関係を築いている。

 

「ごめんごめん。だけど黎耶だって充分にイケメンじゃないか、充分に」

 

「煽ってんのか侑斗? おうわかった、表出ろよ」

 

「ははは、バレたか。サッカーでいいなら勝負に乗るよ」

 

 それでまあ、中々いい性格してるんだよこれが。ネタにも付いてこれる、二次元にも割と精通している上にこの通り冗談げに煽ってくる。話せばわかるがかなり話しやすい。これもモテる秘訣なんだろうな、と思ってしまうほどに。といっても、今のように軽口を叩けるのは俺くらいらしい。理由は「だって、俺と張り合える人じゃなきゃ煽りがいが無いだろ?」との事だ。ほんといい性格してるよ、全く。女子のみなさーん、この人相当黒いですよー!

 

「はぁ。……坂柳、今日もやるのか?」

 

 侑斗の返答に軽くため息を吐きながらここに集まっている人数を数えてみる。有栖派閥の中にもテスト勉強は1人じゃないと出来ない、というタイプの人間ももちろん居る。が、それを差し引けばここに集まっているのはほぼ有栖派閥の人間全員だ。お前ら団結力高すぎない?これも有栖のカリスマなのだろうか。

 

「ええ。もちろんです。私が理数系を、桐ヶ谷くんが文系という分担でしょう?」

 

「そろそろ過労死しそうなんだが?」

 

「ふふ。もし死んでしまったら蘇生させてあげますね」

 

 有栖さん、あなたネクロマンサーか何かですか。ネクロマンサーというと果ての果てまで行進するおじさんの後ろで友達募集してる幽霊屋敷の少女しか思いつかない。あのぶっ壊れどうなってるんですかね。とまあ、俺の休みたいという願望を即座に切り捨てられたわけで。今日は夜更かしせず早く寝て身体を休めようと決意した瞬間でもあった。

 

「こええよ。……あ、悪い。ちょっと席外すわ」

 

 大仰に肩をすくめつつ、教室全体を目を逸らすように見つめていると、扉の外に見覚えのある人物が立っているのを見た。ちょうど目が合ったようで、彼女はこちらを手招くように手を小さく振っている。坂柳や侑斗たちに断りを入れて自分の席を立つ。

 

「黎耶?」

 

「桐ヶ谷くん?」

 

「知りあいの先輩に呼ばれてるんだ。すぐに戻る」

 

 人口密度が高い席の周りを抜け出し、やや駆け足で廊下へと扉を開けて出る。ふぅ、と軽く息を吐いては待っていてくれた彼女に会釈する。

 

「わざわざ教室まで来てもらってすみません、橘先輩」

 

「会長の指示ですから」

 

 廊下で待っていたのは生徒会書記、橘先輩だった。知り合ったきっかけはもちろん生徒会なのだが。そのままやや重そうな書類を橘先輩から受け取る。

 

「ふぅ、ありがとうございます。桐ヶ谷くんは人気者みたいですね」

 

「はは、まあ。これから中間テストですし、勉強会の計画の話ですよ」

 

「なるほど。ですが大丈夫ですか? 試験勉強もあるのに、この書類の量は」

 

「夜の自由時間を削ればなんて事ありませんよ。それに、今日は早く寝る予定ですから」

 

 心配の声を漏らす橘先輩ににこりと笑って問題ないです、と。自由時間といっても転生したからゲーム機器は無い。つまりこれといってすることがない。携帯端末で動画を見たり有栖や直樹、侑斗たちとチャットするくらいか。転生前なら自由時間ヒャッハー! とか騒いでネトゲしまくっていた時が懐かしいな。

 

「ならいいですが。身体には気をつけて下さいね。では、私はこれで」

 

「あ、待って下さい。これ、俺の連絡先です。ここに連絡してくれれば今度からは先輩の教室まで受け取りに行くので」

 

 可愛らしく笑って立ち去ろうとする橘先輩を呼び止めて、連絡先をメモした紙を渡す。渡す際に堀北会長経由で携帯端末から連絡先交換をすればいいと思ったけどもういいや。俺の声に立ち止まった先輩は紙を受け取る。

 

「ありがとうございます。あとで入れておきますね」

 

 ぺこ、と会釈して橘先輩は今度こそ廊下から去っていった。うん、有栖とは別のベクトルで可愛い。なんと言うかこう、庇護欲をかき立てられるというか、そんな感じの。まあ先輩なんですけど。

 

「さてと、戻るか」

 

 そんな橘先輩を見送り、俺も教室に戻ろうか、としたその時。その教室側から肩を叩かれた。

 

「桐ヶ谷。ちょっといい?」

 

「……神室?」

 

 振り替えればそこには、黒髪ロングに、やや鋭い瞳が特徴な女子が立っていた。神室真澄。堀北さんと同等の身体能力を持つと書かれていた美術部所属の女子。

 

「まあいいけど。それで何かあったか?」

 

「今日の勉強会のことなんだけど」

 

「勉強会? 勉強会がどうかしたのか?」

 

冗談げに聞き返す。

 

「……わかって言ってるの、桐ヶ谷。それとも、本当にわからない?」

 

 まあわかってますけどね。やや嘘らしく返した俺に神室さんは強く睨みを効かせる。おおこわこわ。それでまあ、この神室さん。端的に言えば有栖に弱みを握られて、有栖に従わざるを得ない状況に陥っているんだな。どんな弱みかは俺もさて知らないが、見事に有栖の罠にハマったらしく、気づけば有栖の傍で待機するようになっていた。有栖曰く、彼女は優秀ですしずっと前から目をつけていたんですよ。とのこと。そんな話を聞いて神室さんにくっ、殺せ!とか1度言わせてみたいと思ったのは内緒だ。んで、そんな神室さんが勉強会について話をもちかけてきた理由についてだが。

 

「大人数が無理、かといってそれを表立って坂柳には言えない。そんなとこだろ」

 

「わかってるならわざわざ聞かせるな。それで何とかならない?」

 

「何とかなるといえば何とかなるが。ようは騒がしいのが嫌なんだろ?」

 

「まあ、そうだけど」

 

 協調性に乏しい上に人と馴れ合うのが苦手、というより嫌いな神室のことだ。勉強会は妥協にするにしても静かに過ごしたいということだが、神室のルックスがある以上多少なりとも男子が声をかけてくるのは想定している。女子からもそれは同様だ。といってもこのクラスの女子は少々特殊なようで孤立していようが何していようが暇そうな時に声をかけている。そのお陰で神室は多少は女子と交流があるのだが、女子だけだ。男子で交流があるのはそれこそ俺くらい。

 

「ならちょうどいい案がある。戻ったら坂柳に提案しようと思ってたところだ」

 

「……そう」

 

 素っ気なく神室は答えるがその顔からは少しの安堵が見て取れる。ポーカーフェイス苦手なんですかね。だからにやっと口を弧に歪め笑ってこう返してやった。

 

「安心した、って顔だな」

 

「っ!黙って!」

 

 少しばかり顔を赤くした神室は俺に瞬時に構え、刹那正拳突きを繰り出すが遅すぎる。軽々と手で受け流し距離をやや取る。そんな俺の行動が、いや、自分の攻撃を受け流されたのが予想外だったのか神室は顔を歪める。

 

「……あんた、何かやってんの?」

 

「ん? ああ、まあな」

 

 ええ、やっていますよ。朝に生徒会室で堀北会長と。あなたの攻撃が手抜きしてるんじゃね? って思えるくらいの一撃を連続で繰り出す化け物から稽古つけてもらってるからな。いくら至近距離といえ直感を働かせるまでもない。神室が構える間にもう受け流す用意は整っていた、それだけのことだ。飄々と避けた俺のことが気に入らないらしく、神室はそっぽを向いた。

 

「いつか殴るから」

 

「もう殴ってるって。そろそろ俺は戻る、坂柳に言うこともあるしな」

 

 きっと睨む神室を華麗にスルーし教室に戻る。時計はあと5分で始業の鐘が鳴ると知らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇〇〇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桐ヶ谷。私、大人数は無理って言ったんだけど?」

 

「充分少人数だろ。ほら、7人だ」

 

 放課後。場所は図書館。沈みかけている太陽が図書館の窓に映り、どこか幻想的な雰囲気を漂わせる中、神室は確かな不満を持つ感じさせる声を放った。

 

「はぁ……」

 

「俺と坂柳以外の参加者二十数人を放課後後半に5人にまで減らしたというのに、まだ文句があると」

 

 ここにいるのは俺と有栖、直樹、侑斗、神室。それに神室の数少ない女友達2人だ。俺はあのあと、教室に戻った時有栖にこう提案していた。

 

「坂柳。流石にこの人数を一気には無理だ。放課後前半と後半に人を分けてやらないか?」

 

 とな。これこそが神室の提案をある程度汲める上に俺の負担も軽減されるパーフェクトプラン。ほんと二十数人同時とか死にますって。放課後前半に大人数を割り当て、後半に俺と親しい直樹と侑斗に加え、神室が不満を漏らさないよう神室の友人に頼んで残ってもらった。2人はもっと神室と仲良くなりたいから、と快諾してくれた。本当に有難い。直樹と侑斗は前半でもいいけど後半の少人数の方が細かく教えて貰えるから、とのことだ。

 

 神室は俺の一言にしぶしぶ席につく。わがままか。

 

「いつの間にか真澄さんと仲良くなっていたんですね、桐ヶ谷くん」

 

 と、隣の有栖から声がかかる。その声色からはよく真意が読み取れない。疲労からか、あまり思考回路が動かない。困った。

 

「少しな。坂柳ほどじゃない」

 

「ふふ、それはわかってますよ」

 

 坂柳ほどじゃない(弱みは握っていない)と、皮肉を込めるがやはりにこりと笑って返されてしまった。その笑顔で疲労が取れました。ありがとうございます。馬鹿か、俺。

 

「かーむろさーん!ここ教えて、ねね!」

 

「わ、わかった。わかったから……!」

 

 その神室について話していれば、神室の友人が神室の腕に抱きついていた。なるほど、積極的にいけばなし崩し的にいけるんですね。参考にしますね。鬱陶しそうにしながらも力強く振り払おうともしない神室を見てふっ、と笑いながら俺は隣のノートへと目を向けた。

 

「……う、うーん……なんだここ……」

 

「貸せ。そこはこう訳せばいい、これがこうなるからな。……あとでよく出る古文の文法についてのメモ渡しとく」

 

 直樹が古文に苦しんでいたのを見ては知識を動員して答えを導く。他人に勉強を教えるというのは中々難しいもので、自分で言う解くだけなら自分が理解していればいいが教える場合相手に理解させる必要がある。理解させた上で問題の答えまで導かなければいけない。教師という仕事は大変なんだなと。嫌みたらしい教師は除く。問題が解けた直樹は嬉しそうに笑って、次へと進んでいく。

 

「なるほどなー。いや、古文は苦手でさ。ありがとな黎耶」

 

「ん。まあ古文は現代文とか漢字と比べると難易度は高いからな。一度覚えれば楽にはなるけど」

 

「マジか。数学とかはいけるんだけどなー」

 

 直樹は理数系か文系かと言われれば迷わず理数系と答える。レストランの件で即座にポイント総額を暗算してのけたことを考えると数学はかなり得意なのがわかる。反面国語、その中でも古文を苦手にしているからそこで成績をやや落としているらしい。ということで国語が得意な俺に、放課後後半という人数が少ない時に個別で俺に教えてくれ、と。

 

「黎耶。俺も少しいいかな?」

 

「りょーかい。どこだ?」

 

 侑斗は俺とは直樹を挟んでいる位置にあるのでここからではよく見えない。立ち上がって侑斗の元まで移動しては指さされた問題を見る。どうやら英語の問題らしい。

 

「この例文の意味があまりよくわからなくて。訳しても変な風になるんだ」

 

「なるほど、確かにこれは少し難しいな。俺が訳してもいいけどそれじゃ勉強にならないからな。このページにその例文と同じ文法を使う文がある、和訳もされてるからこれを見てもう1度解いてみ。わからなかったらまた呼んでくれ」

 

 応用力が試される問題だった。侑斗はイケメンに加え成績も優秀、見たところ今の問題以外に間違いは見られなかった。が、応用問題がやや苦手なようで他の応用問題には何度も消しゴムで消した跡があった。基礎は出来ているが応用力にやや難ありってとこだな。だからこそ、もう1度基礎を見直させてそこから解かせる。イケメンでハイスペックなのはちょっと思うところがあるがこういう時は有難いな。

 

「ああ、解けた。ありがとう黎耶、やはり基礎を学ぶのは大切だな」

 

「応用問題が苦手ならとことん基礎を鍛えて、そこからなら応用もいけるはずだ」

 

「わかった。また困ったことがあれば呼ぶよ」

 

 うーむ。この忙しさ。まともに自分の勉強が出来ない。まあ、最終手段過去問題借りればいいんですけどあの取り引き先生たちには筒抜けらしいしな。ここは高円寺を見習って俺なら余裕オーラを出すしかない。……出したところで勉強してないならオーラ出しても意味ねえじゃねえか。ちらっと神室の方を見れば溜息を吐きながらも、友人たちの勉強を時たま見ながら黙々と課題に取り組んでいる。

 

「桐ヶ谷くん、大変そうですね」

 

「そう思うなら助けてくれよ、坂柳」

 

「私は理数系担当ですから」

 

 このメンバーを見れば、神室の友人はよくわからないものの、直樹が理数系、他の神室と侑斗は万能型だ。つまるところ、有栖が出る幕がない。必然的に俺だけが教えることになる負のシステムが構築されてるわけだ。これが社畜か? 違うか、違うね。にこりとやや自虐的に笑う有栖に苦笑を返しては、ならば俺は数学をやろうじゃないかと教科書とノートを開く。

 

 空白のページに教科書に書かれている例題をコピーし埋めていく。

 

 問題文を書き、解く。問題無い。

 

 問題文を書き、解く。オールグリーン。

 

 問題文を書き、解く。なかなかいける。

 

 問題文を書き、解く。まだ舞える。

 

 問題文を書き、解……解けない。もう舞えない。

 

 ぶち当たった壁の正体は証明問題。俺が最も苦手とする系統だ。俺は文句を言いたいんだよ。もう答えが出てるなら証明する必要が無いだろうと。何故答えが出ているものをわざわざ正しいかどうかなど書かなきゃいけないのだ。問題作ってるんだから基本答え合ってるだろ。と、頬に汗を垂らしながら必死に黙考する。公式を当てはめ、テンプレ文を書き。わからなくなった。

 

「手が止まっていますね、桐ヶ谷くん」

 

「……数学は苦手なんだよ」

 

 指摘されると恥ずかしくなり、そっぽを向く。そんな俺を見てくすっと声を零した有栖は、

 

「なら、教えてあげましょう」

 

 身体を近づけ、寄り添うようにして俺のノートと教科書の方を見る。うん、ちょっと待って。近い近い近い。いい匂いする。クラクラする。あと柔らかい。教えてもらうのはいいんですけど、教えてもらうレベルの段階じゃない。心臓がばくばくとうるさい。冷静な思考が出来ない。熱くなる顔を感じながら俺は抗議の声を零す。

 

「わざとやってるのか、坂柳……」

 

「さあ、どうでしょう?」

 

 悪戯するように笑う有栖のその表情に、情けないかな。見とれてしまった。本当に耐性つかないな俺、と自分自身に嘆息しては目を逸らすように問題文を見つめる。

 

「はぁ。それで、ここがな」

 

「ふふ。なるほど、証明問題ですか」

 

 楽しげな有栖を横目で見ながら思考回路を冷却させる。落ち着け。もちつけ。落ち着け俺。そう、これはただ有栖に勉強を教えてもらうだけ。周りには直樹たちがいる。下手に慌てるな。クールにいけ。彼女いない歴&童貞暦=年齢の俺ならいける。そうだろう? 自虐すると一気に熱くなっていた頬が引いていき冷えていく。作戦は成功のようだ。

 

「ここはこう解くんですよ。この公式があるでしょう?」

 

「ああ、なるほどな。それでここから代入か」

 

 有栖は俺がわからなかった点を的確に見定め、ヒントを与えた。そのヒントを参考に問題を解く。すると先ほどまで解ける気配のしなかった問題がスラスラと解けていく。自分でも驚くほどに書く手が止まらない。恐ろしいな有栖。教える才能もあるのかよ。と、まあ。そこからはあっという間に証明完了まで辿り着く。

 

「ありがとな、有栖。助かった」

 

「いえいえ、お役に立てたのなら幸いです」

 

 にこっと微笑む有栖からはやや邪気を感じる。さしずめ慌てた俺が見られて良かったってとこだろうな。Sですか、そうですか。ありがとうございます。

 

「……まあいいか」

 

 結果役得ではあったし、問題も解けたと。少し休憩しようと椅子にもたれかかったその時。

 

 

 

「あれ?里中くん? ここで勉強会?」

 

 

 少し遅い時間というのに、後から声が聞こえる。

 落ち着けると思ったのに何かがあるな、と。

 俺の背後から聞こえるBクラスのリーダー、一ノ瀬 帆波の声を聞いては。にっこりと意味深に笑う有栖を見ては、俺はもう一度嘆息した。

 

 

 

 

 

 

 

 




里中くんの下の名前は創造です。もし出てたなら教えて下さると助かります。全速力で修正させていただきます(きっと寝てる(殴
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