生き返ったと思えばAクラスに所属させられていた件について。   作:ジグ

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どーも、ジグです。
タグに神様転生を追加しました。朝起きれば新着メッセージが届いていて、誰からかと思えばまさかの運営。内容は神様転生を追加しろとのことでした。私、神様転生を神様が人間となって転生する意味と思ってまして。いやはやお恥ずかしい。
とまあ、前書きはこの辺りに。まだ評価透明の2話時点でお気に入りが80人もいて戦慄してます(真顔)

*修正
クラス人数を25から40へ、作者の勘違いです。申し訳ありませんでした。


3. 早くも坂柳の手下になりました。

──指導者とは、自己を売って正義を買った者だ。

 

 

哲学者ソクラテスの言葉だ。いやはや同感だ。偉人たちはやはりすごいな。

Aクラスの指導者足り得る人材は二人に限られる。葛城と坂柳。そしてその両方とも自己を売り、つまるところ積極的にクラスメイトと接触し、正義を買うのに長けた人物だ。ここでいう正義はきっとクラスメイトからの信用、友好なのだろう。坂柳だって最初から支配出来たら葛城の介入する暇なくクラスメイト全てを取り込んでいた筈だ。

まあそれはともかくとして。この世界で正義は民意と等しい。日本人は基本的にマジョリティ、多数派だ。ここで一つ考えてみてほしい。とある教室があったとしよう。その中には五人で構成されているグループと、一人ぼっちで本を読んでいる男子。

貴方はどちらと絡みたいと思うだろうか。勿論一人ぼっちな時点でその男はクラスメイトからは厄介者として扱われている。大半の人は前者を選ぶ。それが日本人のマジョリティだ。

 

「…桐ヶ谷くん?」

 

人が多い方に付いていった方が楽だし、責任も分散される。それに自分が間違っていても多数派ならその多数派全員が間違っていることになるから大した辱めを受けることもない。反対に、一人ならば責任はそいつ一人に全振りだ。間違っていても間違っているのは一人だけだし、他の多数派からは間違ったとして嗤われる。皆そのリスクが怖いのだ。

 

「んんー? 桐ヶ谷くんがどうかしたの、坂柳さん?」

 

「桐ヶ谷どうした? 立ったまま寝れる人材とか?」

 

それが顕著に現れるのは学校だ。嫌だった奴も多いと思う、教師にここ解いてみろと当てられるの。あの場合答えるのは当てられた自分だけだからな。答えない多数派と違って強制的に少数派に変えられる。そしてもし間違われればカーストが低いやつは総じて裏でくすくす嗤われる。

 

「いえ、先程からずっと固まってまして…」

 

前置きが随分と長くなった。つまるところ俺が何を言いたいかというと。坂柳と葛城とのクラス抗争、勝つ鍵は支持する生徒の数だ。

 

「っと。ごめんごめん。考えごとしててさ。んで、何だっけ?」

 

「しっかりしろよなー。今からファミレス行くんだろ?」

 

「あー、そうだったな。悪い坂柳、皆。時間取らせた」

 

いかんな。つい深く考えると周りの音が聞こえなくなる。そうだった。確か入学式を終えて今日はもう放課ということで皆でファミレスへと行くんだった。生徒会長安定だったなぁってことくらいしか覚えてないでござる。苦笑いを浮かべる俺に皆は茶化すように気にすんなよって笑って返してくる。あー、Aクラスの人たち良い人ばっかだな。ありがてえ…。

 

「気にしていませんよ。さ、行きましょうか」

 

「りょーかい。階段とかある場所大変だったら言えよ?」

 

「桐ヶ谷くんは優しいですね。大丈夫ですよ」

 

日常生活は問題なく送れますので。と微笑んでは皆を先導するように中心を歩き、それに付いていく形で他のクラスメイトが坂柳の周りを歩いていく。放課後すぐということもあってかまだ人は少ない。きっと大半の人は教室にいるのだろう。初日に各クラスの首脳陣を見れておけば良かったのだが。

と、情報を整理していると隣から肩をどつかれる。坂柳に扱いやすいとか言われてた男だな。

 

「なあなあ桐ヶ谷。お前坂柳さんとどういう関係なんだ?」

 

「グイグイ来るなお前…。黎耶でいい、あと別に何もねえよ」

 

「嘘だろー? 今も自然に隣に居たしよー」

 

ああうっぜ。クラスに一人はこういうやつ絶対いる。男にも女にも他人の恋愛事情に絡んでくるタイプの人間が。話しかけてこないやつよりはずっとマシだがそれでもうざい。つーか名前知らねえ。後で坂柳に聞いとこ…。

 

「ただお前らより早く知り合っただけだっての」

 

「じゃ、じゃあさ!俺が狙ってもいいよな!」

 

うっわぁ、わっかりやす…。つーかお前、隣に坂柳いるのわかってんのか?何こいつ池とか山内と同じ人類じゃね?何でAクラスなの?まあいいか、坂柳に冷静に振られる未来しか見えな……………待て。よく考えろ。

 

〇こいつ(以降モブ男)が坂柳に告白する。

〇坂柳にこっぴどく振られる。

〇モブ男が坂柳に悪印象を抱く可能性がある。

〇悪印象を抱いた場合モブ男は坂柳派閥から離れ、葛城派閥に入る。

〇そしてその葛城派閥に坂柳に悪い噂が流れるかもしれない。

 

ここまでいけば葛城派閥の連中を坂柳派閥へと引き抜く事は不可能に等しくなる。一度流れた噂は消えようとも、噂はが流れた人物としてそれだけでステイタスが落ちる。それだけは避けなければならない。

 

「駄目だ。坂柳が疾患あるの知ってるだろ。恋仲でも作って無理させたらどうする」

 

「…ぐぬ。で、でもよ」

 

「それで体調崩した時、“お前のせいで坂柳が体調を崩した”って噂が流れるだろうな?」

 

お前のせいで。これは今、学校が始まってすぐに人にカマかける言葉としては最善手だ。特にこの学校は同じクラスのまま3年間を過ごす。そんな状況で、一年生の前期に悪い噂でも流れたとしよう。さっきの通り、噂は消えても噂の張本人というレッテルは残り続ける。この一撃(言葉)は相当なダメージを与えた筈だ。

 

「ッ!わ、わかった。…アイドルとして信仰はしとくけど」

 

「おい」

 

まあそれくらいならいいだろ。逆にこいつの交流網が発達すれば坂柳派閥が増える可能性も生まれる。更にいえば他クラスにも、だ。まあ、坂柳さんそんなの関係なく支配すると思いますけどね!

 

「あら、何の話をしているんですか? 桐ヶ谷くん」

 

「坂柳…。今のはわざとか?」

 

「さあ? どうでしょう?」

 

そう言って坂柳はまたも意味深に笑う。だからそういう笑顔やめような。もっと坂柳派閥発達させようって張り切っちゃうから。この笑顔のせいで坂柳派閥を大きくさせようって決めたんだ。全く、男ってのは単純な生き物に作られているから困る。笑顔一つで従ってしまうんだから。

 

「はぁ。っと、そこ階段だ」

 

「あら。ありがとうございます、桐ヶ谷くん」

 

「ん」

 

「危うく転ぶところでした」

 

「言っておいて良かったよ」

 

冗談げに言葉を放つ坂柳に肩を竦め返す。

こういうやり取り憧れてたんだよな。こう、互いに心をある程度読み取れてるけど、言葉にしない的な。言葉にしなくてもわかるぜ的な。まあ、俺がわかるのは転生してるからなんだけど!この人に初見対面とか無理、勝てる気しない。操られて終わり。

 

周りを見渡せば坂柳の元に集まった男女が仲良く会話している。女と女、男と男、というところもあるが男女混ざって話すグループもあるようだ。どれも周りに響く大音量と言う訳ではなくある程度節度を持って話している様子だな。何だよAクラス、一部を除いてマジで有能じゃねえか。これはこれで扱いやすいだろうな。Dの方がよほど扱いづらいか、高円寺さんとかいるし。あそこは良くも悪くも個性的すぎる。

 

「ふふ、見えてきましたよ」

 

「っと。…うわぁ、おしゃれなレストランだなおい」

 

思わず溜息が出てしまった。

何だよあれ。ファミレスじゃねえよ中堅クラスのお洒落そうなレストランだよあれ。ポイントは日常品を買う以外にも裏で暗躍するのに色々と使うだろうからあんまり使いたくねえんだよなぁ。当面の目標も決まってるし。…まあ、初日くらいはいいか。

 

「んで、今回の目的は?」

 

「あら、目的なんて食事の時に合わない言葉ですね」

 

「生憎と、坂柳みたいな知り合いがいるんでな。大体わかるんだよ」

 

「珍しい知り合いもいるものですね?」

 

あっやべ、目逸らしてしまった。怪しまれただろうな。まあ、知り合いというか貴方なんですけどね。原作の。というかあくまでも知らない振りを貫くんですね坂柳さん。人がいる所では話せないということか。

 

「そうだな。…ま、食べ終わって皆解散した後でいいか」

 

「ええ。前の件も合わせてじっくりと問い詰めさせてもらいます」

 

「ははは。お手柔らかに頼みたいもんだな」

 

「ふふ、どうしましょうか」

 

結構楽しんでますね坂柳さん。偶に垣間見える微笑みが俺のストライクゾーンに直撃してんだよ。ま、こんな可愛い美少女に使われるんなら本望だ。

と、俺たちが話しながら歩いていると見えていたレストランに辿り着いたようで。

 

「さあ、皆さん入りましょうか」

 

 

 

それで、皆おー!とか声を挙げ店内に入った訳だが。内装もこれまた無駄に凝ってるんだよな。やや暗い店内を照らすのは燦然と光るキューブ状のランプ。それが等間隔にシンメトリー、左右対称になるように配置されている。隅には観葉植物も置かれていたり、それこそ実際に大都市にありそうな感じのレストランだ。顔立ちの整った男性に席を案内されここに居る20人全て許容出来るテーブル席へと辿り着く。

 

んでまあ、席に座る訳だが。

 

「おい桐ヶ谷ー!坂柳さんの隣とかずるいぞ!」

 

「ああ、これは少しばかり話をしなければならないな!」

 

「でも坂柳さん嫌がってないよねー」

 

「やっぱりあの二人実は…!?」

 

こういう事だ。男はまだいい。おい女子。そういう恋愛系の話大好きだな。何もねえから。俺が一方的に惚れてるだけだから。つーかこの調子で支配下に置けるのか?…ああでも、そうか。現状ではまだ友人という関係性でいいのか。1ヶ月後のポイント発表、もといクラスでのポイント争いになってから本格的にまとめるくらいでいい。その時期になれば色々と操れるような案件も出てくる。直近で言えばテストとか。

 

「話って何だよ。あー、坂柳、女子と代わるか?」

 

「いえ。今から移動するのは桐ヶ谷くんも面倒でしょうしこのままで構いませんよ」

 

「だとさ、男子共」

 

「ぐああああああ!?」

 

「覚えておけよ桐ヶ谷…!」

 

あーっ、あー。なんか男子から喧嘩売られてるんだが?確かあいつ橋本か。あの、アニメで坂柳に連絡取ってた小物系男子。こりゃ扱いやすいわ。ちょっと囁くだけで忠実な手下になりそうですね、坂柳さん。

その坂柳と言えば、何が楽しいのかくすくすと笑っている。こっちはあなたのせいで男子との交友関係詰みそうなんですが。まあそうなったら坂柳と行動すればいいと思っている俺ガイル。

 

「あーわかったわかった、文句は後で聞くからとりあえず何か頼もうぜ」

 

と言ってメニュー表を見る。

うん、……うん?2000ptとか見えるけど幻覚かな?おいおい、一つのメニューで2000ってなんだ2000って。ふざけんな。一番安いの頼むの安定だろ。そうそう、ここは無難に日替わり定食とか。こんなお洒落そうなレストランなのに日替わり定食とかあるのに驚きだけどな。あ、俺が情弱なだけ?

 

「んじゃ俺はこれで。坂柳はどうする?」

 

「ふむ。私は軽いもので大丈夫です。スープとかはあるでしょうか」

 

「あるな。野菜スープからコンソメスープまで様々」

 

「それでは野菜スープを。後はこのドリアで」

 

ああなんだ。普通のドリアか。ミラノ風ドリアとか言ったら某千葉県民の聖地が思い浮かんでしまう。相当重症だな、アニメの見すぎか。

 

「皆さん決まったでしょうか?」

 

「おーう!」

 

「はーい!」

 

「決まったみたいだな。注文いいですかー?」

 

「ただいまお伺いします」

 

スっとした佇まいで落ち着いた雰囲気を放つ男性店員が全員の注文をメモし、それをすぐに厨房へと指示する。うん、仕事が早いな。この学校の街の店員は全員そんな教育されてんのか?

 

十数分すると全員分のメニューが出され、各人の前にはそれぞれ頼んだ品が置かれている。それを確認した坂柳がグラスを持って口を開いた。

 

「入学式の放課後という貴重な時間に集まって頂きありがとうございます。少ない時間ですが、この時が皆さんにとって楽しいものになれば私も嬉しいです。…桐ヶ谷くん、後は頼みました」

 

「えぇ…。…んじゃまあ、ここに居る全員の入学を祝って、乾杯!」

 

皆俺に続くように乾杯、とグラスを掲げ、食事に手を付ける。

実は坂柳さん、こういうレストランに大人数、それも同級生集めてくる経験ないだろ。まあそんな初めてのものを簡単に行える時点ですげえけどな。俺じゃ無理だ。ほら、平凡な秀才ですし?常に安牌。

俺も料理を食そうかな、と思った辺りで坂柳がとんとんと俺の肩を叩いてくる。何かなと思って耳を貸すと、耳元でこんなことを囁かれた。

 

「桐ヶ谷くん、皆の皿が空になった辺りで私から話があると伝えて下さい」

 

ゾクッとする感覚が背筋に染み渡ると共に内容も理解する。

坂柳の声量では後ろまで届かないかもしれないから一度場を静かにして坂柳に視線を集めて欲しい、と。

いや、それはお安い御用なんですけどね?囁いたのわざとだろ坂柳さん。ぼそぼそ話す程度でいいでしょうに。洗脳かなにかされるかと思ったわ。

了解、とだけ返して今坂柳と話などしてないというように周りに認識させるために日替わり定食へと箸を動かす。

 

「おっ。桐ヶ谷それ美味そうだな、もーらいっ!」

 

「なっ、おまっ!」

 

隣の男子……あー、確か…清水?原作にも名前しか出てこなかったような。つーかAクラス40人全員名前割れてるのか?そんな深いところまで読み込んで無いからなぁ、後々命取りにならなきゃいいんだけど。まぁとりあえず仕返しするように清水の皿から肉を一つ奪い取る。うん、OC。

 

「ふっ、奪ったら奪い返す。当然だろ、清水?」

 

「くっ…、手が早いな桐ヶ谷…!」

 

「黎耶でいい、そしてその言い方は誤解を招くからやめろ」

 

「別に間違っても無いだろ、坂柳さんと仲良いし」

 

俺も直樹でいい、と言われ無事呼び捨てに。というか直樹って名前だったんだな。知らなかった。まぁとりあえず初の男友達ということで。

 

「お前らその話題好きだなぁ…、何もないって言ってんのに」

 

「何もないことねえだろ黎耶ー。つーか、さっき歩いてる時も話題に上がってたし」

 

「マジかよ…。登校初日からとかありえねえだろ、普通」

 

「まあそりゃそーか。って、味噌汁が冷めちまう。黎耶、食おーぜ!」

 

「はぁ。そうだな、食うか」

 

直樹以外にも色んな奴から話しかけられたがとりあえず全員呼び捨てでOKとの許可を取って終わった。ここまでは中学でもこなしたからな。コミュニケーションはゲームと思えばいい。話しかけられればギャルゲーのように脳内に選択肢を浮かび上がらせその通りに喋るだけ。

とまあ、そんな状態のまま20分ほど経ち皆の皿が空になった。坂柳がこちらを見て不意に微笑んだのでそれが合図だろう。何するかはよくわからんけどまあ、乗るだけ乗るのも一興だ。あ、今の笑顔も中々可愛かった。脳内フォルダに保管しておきますね。

 

「おっ、と。皆、ちょっといいか?坂柳から話があるってさ」

 

「おー?聞く聞くー!」

 

にこりと笑ってから坂柳は口を開く。さーてと、何を始めるんですかねこのお方は。

 

「ありがとうございます。楽しくなっているところすみませんが、今から少し真剣な話になります」

 

その一言で皆は静まる。あれ?もう支配できてね?笑顔一つでこの人今日集まったばかりの18人静めちゃったよ。とまあ、そんな事を考えている内に坂柳は本題に入る。

 

「皆さんは今日、学校から金銭に換算して10万もの大金を手に入れました。…何か疑問はありませんでしたか?」

 

「疑問?」

 

「よく考えてみてください。真嶋先生の話では毎月1日にプライベートポイントが振り込まれるそうです。となると、1年で皆さんは120万ポイントを手にしますね?」

 

「120万!確かにそうだね…、坂柳さん、それで?」

 

そうだ。誰も授業中に居眠りとか携帯を弄るとかしないで、何も失態を犯さず1ヶ月を過ごせば確かに毎月10万。今の時点ではポイントは増減することを皆は知らない。だから皆120万貰えるという事実に嬉しそうに驚く。でしょうね、こんな美味い話ないだろうし。

 

「はい。この学校は一クラス40人。全学年を数えれば、退学者を居ないものと考えると480人が在籍しています」

 

「…ああ、そういう事か」

 

「ん? どういう事だよ黎耶」

 

「生徒に一人毎年120万。それを480人全員に、ってこの学校は1年で生徒に何円払ってる?」

 

「おー、待て待て。120万を480でかけて……5億7千万!?」

 

直樹の言葉に坂柳と俺以外の皆は目を見開く。当然の反応だ。ただ学校に居る生徒に毎年5億もの大金を無償で与えているのだ。幾ら国が運営しているとはいえ一学校に払う額では無いだろう。

 

「その通りです。学校は私達に1年で5億以上ものポイントを与えていることになります。とまあ、話は変わりますが皆さん、綺麗なバラには刺がある、という言葉を知っていますか?」

 

流石はAクラス。坂柳のこの一言で察したようだ。このSシステムには必ず何かしらの裏がある、と。さっきまで馬鹿みたいに騒いでいた直樹や他の男子たちも今は神妙な顔つきで何かを考えている。

 

「皆さん察しが良いですね。この話には必ず裏があります。私の考えですが、きっと4月に10万ポイントを基礎の点数として与え、1ヶ月毎に各クラスが問題を起こすと減点されたりするものでしょうね」

 

「も、問題って?」

 

「そうですね…。ここは学校ですから、例えば授業中の居眠りとか、やらないとは思いますが携帯を弄ったりとか、でしょうか」

 

その瞬間、何人かの男子と女子がビクッと身体を跳ねさせる。うん、君たち寝ようとしてたでしょ。安心して。俺も転生してなかったらきっと寝てるから。とまあ、恐ろしい程に未来を先読みしている坂柳だ。つくづくハイスペックだなと思い知らされる。俺では到底敵わないだろうな、と。

 

「答えは1ヶ月後にわかります。ですので、それまで、極力居眠りやそういった行動は起こさないようにお願いしたいのですがよろしいでしょうか? 皆さんも、お金はあればあるだけいいでしょう?」

 

「おっ、おお!そりゃそうだ!こ、これが当たってら坂柳さんすげえな!」

 

「明日他の奴らにも伝えようぜ!」

 

と、モブ男くんが発言したところで。

 

「いえ。それはやめて頂けると助かります」

 

「坂柳さん? どうしてだ?」

 

葛城派閥を貶める為なんて言えませんよね。

どう言うのだろうか、と少しわくわくしながら坂柳の解答を待つ。

 

「それでは居眠りなどで減点されるかわからなくなります。多少のリスクは負うべきでしょう」

 

「あー、なるほどな。わかったぜ坂柳さん!」

 

「それに加え私が話したということは1ヶ月後まで内密にお願いしますね?」

 

皆頷く。綺麗にまとめるな、坂柳。公式チートだろこんなの。まあそんなこと言えば龍園もチートなのだが。あいつのスペックほんとおかしい。男として完全敗北してるわ。

 

「ありがとうございます。それでは皆さん、1ヶ月後を待ちましょう。私からは終わりです」

 

ぱちぱちと拍手が起これば、坂柳はにこっと優しげに微笑む。皆これ当たってたらやばいよなー、とか私授業中友達とメールするつもりだったー、とかちらほらと聞こえてくる。これが当たるんだよなぁ…。この時点で坂柳はここに居る18人を完全掌握したと言っても過言じゃないな。初日で半分を取り込んだ。ハイスペックすぎるだろ。

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

とまあ、それ以降も皆は適当に話して、18時になって解散した。ここで仲良くなった奴らがグループで寮へと戻る中、俺と坂柳は近くの川沿いの広場へと歩いていた。よく見ればここ櫛田さんの裏の顔発見現場じゃん。櫛田さんいない?そう思い立って辺りをちらほらと見渡すが人一人居る気配がない。でしょうね。

 

近くにあった椅子に坂柳と俺は腰掛ける。先程までのレストランとの喧騒とはかけ離れた静寂が辺りを包んでいる。春とは言えど18時を過ぎればやや薄暗い。どこか幻想的なこの時間で、坂柳はこちらを見つめた。

 

「今日はありがとうございました、桐ヶ谷くん」

 

「俺は特に何もしてない。話題は基本坂柳が作っていたろ」

 

「いえ。貴方がいなければ初日でここまで事が進むことはありませんでした」

 

え?マジで?俺まさか原作の歴史変えちゃった系?いやまあ、俺という存在(イレギュラー)がいる時点で原作改変なんだろうが、もうかよ。早いな。

 

「初日で、ってことはいずれはあの事を話すつもりだったんだな?」

 

「ええ。…まあ、前置きはこの辺りにしておきましょう」

 

と言って坂柳は立ち上がり川と歩道とを遮断する鉄柵の近くまで歩いていく。俺もそれに続き、その鉄柵へもたれかかる。

どう尋問されるんだろうなと内心すごい焦ってます。いや飛ばしすぎた。見た目凡人だからな、中身開けばいきなり自分の思ってることペラペラ喋ってくる男とか気持ち悪いでしょ。

 

「単刀直入に聞きましょう。桐ヶ谷くん。…貴方は何者ですか?」

 

「いきなりだな。何者もなにもどこにでもいる男子高校生だ」

 

「ふふ、冗談がお上手なのですね。…誤魔化さないで下さい」

 

「…はぁ。ま、誤魔化せねえよな。でも答えは同じだ。普通の男子高校生、ただの学生だ」

 

すると坂柳は拗ねたようにそっぽを向いた後、それ以上は追求せず別の質問へと移った。甘いな坂柳、俺は嘘は言っていない!嘘だッ!!とか見抜かれる心配も無いのさ!…なんで坂柳と戦ってる風なんだよ、俺。

 

「まあいいでしょう。…何故かはわかりませんが、桐ヶ谷くんの口振りからして、私の当面の目標は既に見抜かれているみたいですね」

 

「クラスをまとめあげる事、だろ?」

 

「ええ。私には目的がありますので。その為にはクラスの団結が必要になります」

 

「当たっててよかった。んで?」

 

「それをわかっていて何故桐ヶ谷くんが黙っているのかを知りたいのです」

 

そう言って坂柳はぐいっと俺に顔を近づける。その端正な顔立ちは月明かりに照らされてより妖しく、可憐に。幻想的な佇まいは今正に俺を魅了しようと視界から彼女以外の一切を奪う。うん、奪われました。駄目だわこれ美少女って罪すぎると思う。まあ、黙ってるも何も話す理由無いしな。

 

「俺はリーダー、って器じゃないし」

 

「だからリーダーの素質がある私に付いてきた、と?」

 

「まあ、そうなるな」

 

「でも、それなら葛城くんだってリーダーたり得るのでは無いですか?」

 

ぐっ。それを言われると弱いな。というかまだ顔近い。俺が少し顔を前に動かせばキスする距離だぞ恥じらいを持て恥じらいを。つーか俺冷静すぎん?転生して坂柳のことを知らなければ動揺して童貞歴15年の力を発揮するとこだった。せんきゅー神様。だがガチャのように転生させたことだけは許さねえからな。

とりあえずそれっぽい言い訳をしよう、そうしよう。

 

「確かに葛城もクラスをまとめる素質はあるだろうな。けどあいつはお前ほどのカリスマはない。証拠に今日坂柳のとこに集まったのは俺含め19人、一方葛城の方は10人だ」

 

9人の差はかなり大きいだろうな。それにあちらは男子が中心だ。この後のクラス抗争では妨害工作に簡単に引っかかるだろう。ただでさえCクラスに化け物がいるってのに、葛城に任せるのは最善手とは言えない。

あ、残りの9人は知らないっす。神室さんは居たけど。やっぱりこの時点じゃ坂柳とは対等なんだろうな。弱み握られてないし。

 

「それだけの理由で私を選んだと?」

 

今度は身体も近づけてくる。半分俺に寄り添うような形だ。思わず何してる!?と声を出すが坂柳さんはお構い無し。ちょっと坂柳さん?疾患持ってるんだからそんな無理しないで。いやご褒美でしか無いですけどね。色んなところが柔らかくて、うん…最高です。

そして坂柳は他にもあるでしょう?と。逃げ場は与えないというように笑っては問い詰める。…えぇ、これ言っちゃうんですか。俺人生初なんですけど。

 

「……からだ」

 

「もう一度言って下さい、よく聞こえませんでした」

 

難聴系主人公か!?いやすんません、俺の声が小さかっただけです。

 

「坂柳の、…お前の笑顔に惚れたからだよ」

 

「……っ!」

 

「こ、これ以上理由は無い!というかさっきから近いっ!」

 

一瞬、ほんの一瞬だけ坂柳は顔を赤らめた。が、俺の慌てる言葉を聞くともっと身体を寄せてくる。ちょっと、当たってるんですけど!?貧乳だと思ってたのに普通にあるじゃねえか!?

 

「ふふっ、では桐ヶ谷くんは私のことが好きなんですね?」

 

「…ああ、そうだよ」

 

思わず顔を逸らす。というか直視できない。無理。だって俺童貞だもん。自分で言ってて悲しいなと思っていると、頬をつままれそのまま顔を強制的に坂柳の方へと向かせられる。その顔は悪戯気に満ちていて、どう扱ってやろうかという完全なドSの顔である。ありがとうございます。

 

「納得しました。なら私に付いていく理由も、葛城くんに付かない理由も証明されますね」

 

「…そりゃ良かったな。あと付け加えるなら裏切ることもない、だ」

 

「ですね。…ふふ、貴方は頭がキレるでしょうし、いい人材を手に入れる事が出来ました」

 

人材とか言われてますけど全く持って問題ないねッ!今全身で感じ取っている坂柳さんの太ももとかその他諸々の為なら喜んで従うわ。リターン大きすぎるってこれ。

 

「お褒めに預かり光栄だ。大体のことは言うこと聞くさ」

 

「あら、それなら良かったです。では早速、頼みたいことがあるのですが」

 

「葛城と接触しろ、とか?」

 

「…ふふ、流石ですね。正解です」

 

まあこの時点で一番妥当な選択肢だろう。まだ一年はクラス同士で争うことになることを知らない。坂柳もまだの筈だ。であれば坂柳の目的とやらが何かは知らないが、当面の目標であるクラスをまとめることに関しての最大の強敵、葛城について調べなければならない。俺は男だしこの時ではまだ葛城には何の悪印象も抱かれていないだろうから適任だな。

 

「明日の昼休みとかでいいか?朝はきっと葛城のグループが周りにいて話が出来ない」

 

「ええ、構いません。…しかし桐ヶ谷くんは本当に不思議な方です」

 

「そうか?」

 

まあ転生してる身ですからね。というかまだ離れないんですか。いや全然離れなくていいんだけど坂柳さんは大丈夫なのだろうか。ほんと。

 

「はい。まあ、今日はこの辺りにしておきましょう。もう19時ですしね」

 

「そうだな。まだ購買にも行ってない。日用品買わないと」

 

いつの間にか時計の針は19時を指していた。辺りもここに来た時よりずっと暗くなっている。足元が見づらいくらいに。俺の言葉でようやく離れた坂柳は杖を持ち直して、服を正す。

 

「今日は本当にありがとうございました、桐ヶ谷くん」

 

「ん。こちらこそいいものをどうも」

 

いいものとは具体的に何かとは言わない。

とっても柔らかくていい匂いがしました。

 

「いえいえ。…それでは、私も生活用具を買っていませんし、一緒に行きましょうか」

 

「りょーかい」

 

と言って、歩き出す俺を止める。ん?他にまだ何かあるのか?

 

「桐ヶ谷くん」

 

「坂柳?」

 

 

 

「好きと言われて、嬉しかったですよ。桐ヶ谷くん」

 

瞬間。俺の中で世界の時が止まった。

その言葉と共に浮かべられた彼女の笑顔は今まで見たどれよりも輝いていて、可憐で、儚くて、美しかった。正に満面の笑みと言って差支えのないもので、視界から彼女以外の一切が消え、残ったのは彼女の周りに咲く幻想の花。花びらが舞い散るその光景は夢でも見ているかのように現実離れしていて、目の前の美少女は偽物なのではないかとさえ疑わせる。だが答えは否だ。確かに眼前の坂柳有栖という少女は本物だ。でなければ、こんなに俺の心臓の鼓動が高鳴ることも、俺の心が彼女しか考えられなくなることも、俺の顔が真っ赤に染まっていることも無いのだから。




気づいたら10000文字超えてました。誤字してないかな()
個人的によう実ってあまりラブコメ要素がない作品だと思ってまして。それが相手が坂柳の場合であれば尚更。ですので後半はああ言ったふうにさせていただきました。多少飛ばしすぎた感はありますが。
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