生き返ったと思えばAクラスに所属させられていた件について。 作:ジグ
前回は坂柳回でしたが今回は少し真面目回に。坂柳は出てくるには出てきますが糖分は控えめなので。というよりクラス回なので若干シリアス…?(シリアスの定義)
氏名:桐ヶ谷 黎耶(きりがや れいや)
クラス:1年A組
誕生日:1月22日
学力:B+
知性:B+
判断力:A
身体能力:B+
協調性:A
担任メモ
全体的に高水準の成績を収めている生徒で、まだまだ全力を出し切れてないように推測される。また、コミュニケーション力も高く、ある程度のカリスマも持ち合わせているが自ら率先してクラスメイトを導く気は無いようで、同クラスの坂柳 有栖と基本行動を共にしている。これからも注目していきたい生徒の一人だ。
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──賢者は財宝を貯えない。人に与えれば与えるほど、彼の財宝は豊かになる。
現在地、教室。今は担任の真嶋先生のLHRの時間だ。いつもとは違う先生の雰囲気によって皆何が起こるのかと不安げだ。そんな時、ふと思い出したのが古代中国の思想家、老子の言葉。ここでの賢者は誰だろうか。当然有栖だ。人とは誰か。クラスメイトのことだ。ここでの財宝はなにか。
情報だ。
有栖は入学早々十数人もの人々をまとめ上げ、そして情報をばら撒いた。この学校のシステムには裏があり、そしてその答えは1ヶ月後に明らかになると。今正にその1ヶ月後だ。結論から言えばその情報は正しい。転生した俺からすれば予め知っていた未来を見ているような、ネタバレ記事を見た後にコミックの最新話を読むような感覚だ。まあ今は俺のそんなことはどうでもいい。情報が正しかった、つまり純粋な財宝を有栖は与えたことになる、これにより何が起こるだろうか?
答え。有栖の支持がより一層固まることになる。
「今日は君達に重要な話がある」
そう切り出して、真嶋先生は黒板にABCDとアルファベットを書き連ねていき、それぞれの横にそれぞれ960などの数字を記入、最後のDの横には0と刻まれた。ああ、やっぱり0なんですね。まあ減点を抑えるのは無理でしょうなぁ、須藤いる時点で無理ゲー。
「これは1ヶ月間、君達一年生の授業態度や成績を各クラス毎に評価し、それをポイント化したものだ」
およ、喋っちゃうんですね。まあAクラスだしバラしてもいいんじゃね?的なやつか。まあ減点40だしなぁ、数える程しか私語してなかったし、居眠りに至っちゃ0だ。やべえわAクラス。康平派閥攻めづらすぎて辛い。
「君達は書いてある通り960。見ればわかるが、各クラスの中で最高の評価だ。これは誇るべき数字だ、この高度育成高等学校の歴史の中で、一年生の最初で減点をこれだけ抑えたのは偉業に等しい」
おーおー、すげえ褒める。が、まだ皆要領が掴めていないですよ。ほら、前の人とか頭に疑問符付けてますもん。もっとわかりやすい情報を教えろください。
「…いきなりこういうことを言われてもわからないか。簡単に言えば、君達は優秀な生徒ということだ」
すると皆はおお、と声を挙げる。まあそんな簡潔に説明されれば誰だって理解できますよね。ま、有栖は当然だと言うように微笑んでますが。今日も可愛いです。
と、そこで。
「だからこそ、君達には今月、96000ポイントが振り込まれた」
そう、ここからだ。ただ褒めるだけのご褒美タイムは終わりだ。皆、今日の朝起きてポイントを確認すれば10万ポイントではなく96000ポイントが振り込まれていた。何かの不具合ではないか、と康平派閥の人間は愚痴っていたが有栖派閥の人間は皆冷静、というより朝から坂柳さん、これもしかして当たってる!?とか何とか言ってたな。当たってる、というのは有栖の立てた推論のことだ。減点などで貰えるポイントは減る、っていうアレ。
「せ、先生!おかしくないですか、優秀な生徒なら10万以上のポイントを…」
「…はぁ。やはり居るか。戸塚、君は疑問に思わなかったのか?」
戸塚ナイス。褒めてやろう。誰も言わなきゃ俺が道化演じてやろうかと思ったけどそんなことをしなくて良かったようだ。そう、皆普通はそう考えるだろう。毎月基本の10万ポイントで、そこから優秀なら更に加算される筈だろう、と。だが、違う。
「な、何をですか」
「高校の一生徒に毎月10万。そんな大金を学校が無償で与えているとでも?」
「それは…」
常識的に考えておかしいよな。貰えた金額に目が眩むのは確かにわかるが、ちょっと考えればすぐにわかるはずだ。馬鹿げてる、と。高校生なら仕方ないとは思うけどな。ちょっと高校生離れした俺の想い人が初日で考えついてますけどね。
「君達には入学して、各クラス1000ポイントを与えていた。1ポイントは100プライベートポイントと同じ価値を持つ、だからこそ10万ポイントが与えられていた。それがこの1ヶ月で40ポイント減少しただけだ」
それに、と。
「だが、落ち込むことは無い。この1ヶ月間の行事で減点することはあれど、ポイントが増える行事は無かった。つまり、入学してからの1ヶ月は、如何に減点を抑えられるか、という試験を行っていたのだ」
おーおー、上手く纏めるなぁ。それなら確かにこれ以上不満が漏れる心配もなく、また、減点の原因を作った戸塚たちが責められることもない。正直残念だ、ここから崩せれば早々に康平派閥を脱落させられたのにな。
さて、んじゃ俺も仕掛けますかね。…って思ったら有栖が立ってたよ。
「真嶋先生、では、これからは増えることもあるのですね?」
「勘がいいな、坂柳。その通りだ。直近で言えば中間テスト。優秀な君達なら最初の1000ポイントを超えることも容易だろう」
まあ超えるんでしょうけどね。その言葉に皆安堵しほっとする者多数。
「君達が頑張れば頑張るほど君達のプライベートポイントは増えていく、話は以上だ。残りの時間は自由に過ごしてくれ、ああ。この時間は減点することはないから安心して欲しい」
そう言って真嶋先生は嵐のように過ぎ去っていった。実際嵐だったし。そこからクラスの静寂は大きく崩れる、そして、こちら側──正確には、有栖に向かう人多数。…っと、そうだ。クラスにいる間は坂柳と呼ばなきゃいけないんだった。気をつけよう。
「坂柳さんの予想当たってたーっ!」
「はい、やはり減点はされましたね」
「良かったぁ、俺坂柳さんから言われなかったら寝てたわ…」
「おいおい、居眠りとか減点でかいだろ」
とまあ、皆騒ぐ騒ぐ、大盛況。辺りを喧騒が包み、有栖派閥の人達は入学早々に有栖に減点されるかもしれないと言われ、今それが現実となったことによって有栖を褒め称えるもの、安堵するもの様々である。が、ここに。
「え、坂柳さん減点されるって予想してたの!?」
「ええ、まあ予想だったのでクラスの人全員には言えませんでしたが」
「でも当たってたじゃん!ねね、連絡先教えて!これからは坂柳さんと仲良くしたいな!」
ほら、増えていく。康平にも有栖にも付いていない無所属がどんどんと有栖の方へと流れゆく。有栖は二つ返事で了承し、今それを3件くらい繰り返す。
「ありがとー坂柳さーん!」
「大人気だな、坂柳」
「ふふ、そうですね。とりあえず桐ヶ谷くんの言う派閥、は結成されましたか」
「そうなるな。んで、ま…問題は」
康平の方だ。あちらもあちらで、減点の原因を作ったかもしれない、という戸塚達を慰める聖人君子こと葛城康平の姿。そしてそれに感銘を受けたのか少しだけ流れる無所属の人間達と、より一層支持を固める康平派閥。あーあー、駄目だわ。康平強いわ。くそ、カリスマ力たけえ。これは、俺が絡もうがどうしようが避けられないイベントってことか。
「…手強いですね」
「ああ、康平を崩すのはまず無理だな」
「おーい、二人とも仲良く何話してんだー?」
そうだわ。ここ教室だった。こんな物騒な会話は出来ないか。
「何でも、気にするなよ、直樹」
「ならいいけどよー」
簡単な誤魔化しでもいける直樹マジ直樹。…っつーか、これ、有栖と康平どうやって争うんですかねぇ。いや確かに有栖は好戦的だし康平は保守的だけど。…ああ、でも見えたかもしれない。原因が。
そして、その俺の考えが表面化するように、一人の男が口を開いた。
「少し失礼する。坂柳、どうやら減点されることを知っていたようだな」
おお、これは中々見ない構図。目の前に有栖と康平のツーショット。二大リーダー様の会話が始まるぞ。俺は傍観者に徹するとしますかね。康平はそのまま有栖に問いかける。
「はい、それがどうかしましたか?」
「減点される原因も予想は付いていたのか?」
予想通りだな。
有栖はその問いににこっと笑って肯定する。
「授業中の私語、居眠り、後は遅刻でしょうか」
「何故それを言わなかった。言えば、減点されることは無かった筈だ」
「…あら、おかしいですね。葛城くんは、クラスメイト全員が確証のないことを言って信じると思っているんですか?」
その時点では当然減点されることも知らない。元より有栖に付いてきた派閥の人間は信じるだろうが、康平や無所属の人間は違う。そんな証拠のない事を信じられるかよ、と。あちら側からしたら確証もないもので、授業を集中しろ、と遠回しに言っているようなものだ。そんな忠告を鬱陶しいと思うのは当然だ。それに、その忠告を聞くメリットもあちら側からしたらあまりない。毎月10万ポイント貰えると思っているからな、その時では。
「それは…、だが、少しは変わったかもしれない」
「そうですね。ですがそれでも少しです。であれば、一度大きく減点を受けて、皆に危機感を覚えさせる方がいいのではないですか?」
有栖と康平の価値観は大きく異なる。先程も、有栖は好戦的、康平は保守的と言ったがその通りだ。有栖はどんなものが相手だろうが、リスクを負うことを承知で真正面からそれを破りにいく。が、康平は違う。未知を相手にする場合、念入りに情報を探し調べ尽くして、そこから対策を練り、ようやく取り掛かる。リスクを最小限に抑えるタイプだ。
「だがその手段では、この先大きな問題が出てきたとして、間違えたら大きな損害を負う。これからは皆で相談し、じっくり考えていくべきだ」
「じっくり? 時間をかけている内にまた新たな問題が起こるかもしれません。それに、そこまでリスクを負うのが嫌なら自分で考えれたと思いますが」
「考えた、考えたがどれも確証が無かった。確証が無いものを伝える訳にはいかないだろう」
「矛盾していますね。私が確証が無いものを伝えなかったと聞いて注意したのに、自分がそれを伝えるわけにはいかないのですか?」
おいおい、康平。有栖には勝てねえぞ。まあ面白いから続けさせようかな。このまま進むときっと、有栖派閥と、康平派閥は見事分裂し、原作通りの展開になる。それは望むことだ。原作通りの展開でないと俺は対策できないからだ。一度原作と違う道を進めば結果が異なるかもしれない、それは避けないといけないからな。
「それは俺の耳にも入る。そうすれば皆で考えられる時間が生まれたはずだ」
「葛城くんの言うことを皆が聞く確証があると?面白いことを言いますね、その時だとまだ入学して1ヶ月も経っていません。葛城くんにそのような信頼があるとは思えませんが」
「…そうかもしれない、が、それでも変わった可能性はある」
「不毛ですね。過去の話をして何になると?」
有栖さん、確かに康平さんは頭不毛ですけど、あ、洒落ですかそうですか。
こう言われりゃどうしようもねえよなぁ…。過ぎ去った話を掘り下げても何も起こらないのだ。そう、この話自体の内容に確証が無い以上、康平はこれ以上有栖を責めることは出来ない。大体ブーメランとなって返ってくるからな。たらればはどこまでいってもたられば。過去を追求する康平と違って有栖は常に前を見ている。そこも違いなんだろうな。だけどこれで引き下がる康平でもないだろうし、これで康平派閥と有栖派閥の分裂は決定的になった、止め時かな。
「康平、坂柳。そこまでだ」
「桐ヶ谷くん?」「黎耶?」
おう、周りの声は聞こえるようで良かった。
「そのまま話を続けてもどちらも引き下がらない平行線になる、それこそ不毛だ。次は昼休みだし、一旦落ち着け」
「…そう、だな。少し熱くなっていたようだ」
「私も少し冷静では無かったようです、すみません」
嘘つけよ有栖。常に落ち着いてただろ、まあ話を合わせるという意味だろうが。女の子こわいなー。康平は有栖に謝ったあとに自分の派閥へと戻っていく。安寧が訪れました、しばらく平和ですね。
「葛城くんとは価値観が合わないようです」
「ほぼ対極だったな、平行線にもなる」
「ですね。…これからどうしましょうか」
「と言って、考えは既にあるんだろ?」
「ええ、まあ」
ですよねー。まあ俺もやりそうなことは大体検討付いてるけど。ただこれ、俺の労働量が物凄いことになりそうな。労働は反対、有栖は最高。足しても有栖分+だから問題は無いが。
「ねー、さっきから坂柳さんと桐ヶ谷くん何の話してるのかなー?」
「俺もよくわからん、黎耶と坂柳さんって何か、俺たちとは違う雰囲気があるっつーか」
「あ、それわかるかも!通じ合ってるっていうかさー」
俺と有栖が話し合っている間、有栖の元に集まったやつらが何か話してるが良く聞こえない。何を話しているのだろうかと思うが、俺たちの会話の内容に関するワードは聞こえてこないから大丈夫だろ。
「流石にここじゃこの手の事は話せないな。昼休み、俺は少し行く所があるからその間にメッセージで話せるか?」
「わかりました、大丈夫ですよ。私は昼休み、今集まった人たちを纏めなければいけませんから。ちなみにどこへ行くのですか?」
「ん? 生徒会室だけど」
「…何をする気ですか?」
ちょっと有栖が警戒心を込めた目で訝しげに見つめてくる。まあその気持ちはわかるが、こう言う俺もまだ時期尚早だとは思う。けど、アイツに対抗するには今からあそこへ行くしかないと結論が付いている。唯一アイツと物理的にやり合えるのはあの人くらいだろうし。生徒会室とか中学でも行ったことないけどな。
「秘密だ。つってもすぐにバレるだろうけどな」
「そうですか。桐ヶ谷くんの考えることです。間違いは無いでしょうね」
朗報。俺、有栖からかなりの信頼を得られている模様。やったぜ。これも日々偶像様を崇めていたお陰ですな。あ、関係ない? そうですか、そうですよね。とりあえず、ここからは俺も個人行動が多くなる上に、原作知識とはかけ離れる。リスク計算を第一に、無駄な地雷は踏まないようにしよう。
「ああ。っと、そろそろ予鈴が鳴るな。んじゃ、メッセージで」
「はい。…何をするかはわかりませんが、お気を付けて」
有栖のその言葉を最後に、授業の終了を告げるチャイムが鳴った。
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さてさて、昼休みだ。目的地は決まっている。予め直樹には今日は昼食は有栖たちと取ってくれと伝えてある、とりあえず教室を出た俺の現在地は学校全体のマップ前。まあ正直に言えば生徒会室の場所がわからなかったんですよ。そんなの知りませんしね。自分で自分に苦笑しながら俺は携帯端末を開く。
『それで、これからの目標というより、やる事ですが』
『各クラスの偵察、だろ?』
『ええ、そうなります。とりあえずはBクラスでしょうか』
『だが、偵察を表向きにするには色々と準備があるだろ?』
っと、あったあった。生徒会室。地味な場所にあるなぁおい。それと有栖さん、俺Bクラスの情報が一番無いので出来ればDクラスから潰したいんですが。無理ですよね。まあ、今はそのどちらでもない、Cクラスの対策に向かってるんですけどね。最終的にはDクラスの綾小路に向けてなんだけど。
『ええ、人員も要りますし。黎耶くん一人に負担をかける訳にもいきません』
『有栖の為なら問題無いけどな。だがまあ、俺一人じゃ遅くなることは確かだ』
スパイ適正もあるからこなせるにはこなせるが一度に全クラスはきつすぎる。これからそれ以外の事もしなければいけないというのに流石に過労死するって。孔明さんもビックリ。
『ですから私は明日にでも、もう一人程黎耶くんのように自由に動ける人を探してきます』
ああ、神室さんですねわかります。弱みを既に握ってそう。どんな弱みかはさて知らないが。とりあえずお疲れ、神室さん。
『ありがとな、助かるわ』
『いえいえ、黎耶くんの負担を和らげられれば幸いです』
現在進行形で、生徒会室に向かっている最中なのだが、今有栖から送信されたメッセージを見ては壁に拳を叩きつける。仕方ない、これは仕方ない。幸い周りに人は居なかった。惚れ殺す気かよ…、さりげないそういう一言がダイレクトアタックに近づいてるんだって。
『あ、そろそろ食堂なので私は失礼しますね』
『…りょーかい。また後で』
自分の顔が赤くなっているのを自覚しながらそっと携帯端末をポケットへ仕舞う。ああくそ、熱が収まらない。深呼吸だ、深呼吸。一度大きく深呼吸をして、壁に頭を軽くぶつける。どん、という音と共に伝わる頭部への痛みで思考を冷却させながら、生徒会室へと足を進めていく。
しかし、昼休みに行くと決めたはいいけど生徒会長居るのかね。これで副会長もとい邪魔虫居たら俺の計画総破綻なんだが。まあ昼休みだしあの軽い男は女子たちと昼飯食べてるでしょ。ああそうだ、きっとそうだろう、そうに違いない。そうでなければならない。
「…ノックして人を確認するか」
一番妥当な選択肢だろう。ノックすれば誰かが扉を開けてくれる。それが生徒会長なら最善、橘さんなら少し面倒くさくなるが妥協。副会長ならあ、間違えましたー!とか言って急いで逃げれば問題…あるけどない。そんな事を考えてはすたすたと歩いていく、やはり皆は教室か食堂、はたまた体育館にでも居るのか人一人すれ違わない。本当に生徒会長が居るのかどうかという一抹の不安を抱えながら、足を運ぶ。
「そろそろ着きそうなんだけど…」
歩いていて改めて思うのが、久しぶりに一人になった事だ。振り返ってみればあの適当神に
思考回路をぐるんぐるん回すのはここまでにしておこう。生徒会室が見えた。そのまま歩いていき、生徒会室の前に辿り着けば一度大きく息を吐く。ああ、少し緊張してきた。あの公式チートに会うのだから当然と言えば当然だが。よし、と心で呟いてから、ノックを行う。
(…誰が来る、…さあ、誰が…!?)
おい待て、よく考えればこれもガチャじゃね?運ゲーじゃねえか、俺の人生まさかガチャなのか…!?ガチャに踊らされて生きていると言うのか!?…こんな事を考えられるくらいには落ち着いているわ。
と、そこで。
「…昼休みに訪ねてくるとは珍しいな。生徒会室に何の用だ?」
ゆっくりとドアが開かれ、出てきたのはこれこそ超激レア、ぶっ壊れもいいとこの最強ランク、生徒会長 堀北学だった。ちらっと中の生徒会室が見えたが誰も居ない。よし、橘さんには悪いが居なくて良かった。堀北会長はやや怪訝な、俺を測るような目線で見つめてくる。
んじゃまあ、早速仕掛けるとしますかね。こんなチートに小細工は通用しないでしょうしね。
「──南雲 雅、後継者の育成への失敗」
ぽつりと、俺は囁くように呟いた。
「…何を訳の分からないことを言っている」
嘘だな。分かってるんだ、分かっているがまだ試している。ならばそれに乗ろうじゃないか。
「伝統の崩壊、学校の崩壊」
俺が言葉を放ち終わった刹那、とてつもない速度の拳撃が俺の腹部めがけて飛んでくる。あ、ヤバイわこれ。綾小路くん、これヤバイわ。これでも身体能力と反射神経には自信がある、咄嗟に身体を逸らし間一髪でそれを避ける。ひゅう、と空を切る音と共に堀北会長の拳は空振りに終わった。おいおい、これ高校生が出していい威力のパンチじゃないですよ。
「っと、あっぶねぇ…」
「これを避けるとはな。…何者だ、お前は」
あまりに凄まじい速度の拳だったのでつい驚いて大仰にバックステップを取ってしまった。それによりズレたブレザーを整えてはふぅ、と一息吐いてにこりと微笑む。そうだ、あくまで冷静に行こう。当たらなければどうということはなかった。当たってたら保健室行きでしたけど。
「1年A組、桐ヶ谷 黎耶。生徒会長、堀北 学と交渉をしに来た」
さて、難易度ルナティックの始まりだ。
邪教を捨てよ(挨拶)
真面目回と言いながらしっかりと坂柳とは絡んでいくスタイル。前話に比べればずっと糖分控えめですが。坂柳を全面に出さない話を書くのは少し慣れなかったです。