転移列島   作:NAO

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H30.8.15大幅追加しました。

【このお話の登場人物】

・イワフネ=マルス人。地球調査隊隊長。調査研究ラボ『ルンナ』生存者。
・モウゼ=マルス人。調査研究ラボ『ルンナ』生存者。
・ユダ=マルス人。調査研究ラボ『ルンナ』生存者。
・岬(みさき) 渚沙(なぎさ)=東南海大学海洋学部教授。
・大鳥(おおとり)=東南海大学海洋学部助教授。
・スティーブン=極東アメリカ合衆国海軍航空母艦「レーガン」艦長。大佐。


試練

日本列島が消滅する12000年前【大西洋上空】

 

イワフネはアダムスキー型シャトルから、あちらこちらにある火山が大噴火を起こし、赤い炎と無数の噴石と溶岩を、空高く噴き上げながら沈没してゆく大陸を、戦慄の表情でじっと見つめていた。

 

大陸上では噴火の他にも、巨大地震、大津波が発生し、地上の人々を地面や海面の中に呑み込んでいた。

地上にある多くの火山が荒れ狂うかのように噴火を起こしていた。やがて噴煙はこの星を覆い、一時的に氷河期と呼ばれる極寒な気候になるだろう。

人は、生き延びられのだろうか?と彼は少し考えた。

 

「モウゼ、原因は?」イワフネが訊いた。

「シロヒト人地殻振動兵器の乱用が、マグマの暴走を起こした模様。」モウゼが冷静に答える。

 

哺乳類(ほにゅうるい)とは、かくも(いくさ)という試練から逃れられぬ運命なのだろうか。」イワフネが独り(つぶや)く。

 

現地人に一から文明誕生の手ほどきをしても、ある段階でイワフネ達は身を引く。

人類が自ら学び、発展しなければ、それは単なる「文明の模倣(もほう)」になってしまうからだ。

しかし、与えた力が大きいほど、人は原理の研究よりも力の行使を率先する傾向が強い。

 

「私達のご先祖様は違ったのでしょうね。」モウゼが言う。

「寿命が違うのだ、我々の1万分の1にも満たない年月では、生き急ぐのは無理もないのか?」

とても想像出来ないな。とイワフネは思った。

 

「ユダから連絡。太平洋のアカヒト人連合大陸が大噴火の末、沈没中との事です。アカヒト人のマントルエネルギー転換大容量レーザー施設が制御不能に陥った模様です。各種原子核臨界爆発も大陸各地で連鎖的に発生!」モウゼが報告した。

 

イワフネは溜め息をつくと、

「この時代はもうダメだ。タカミムスビに戻ろう。新たな文明が勃興(ぼっこう)するまでスリープモードに移行する、ユダにも伝えるんだ。」

円盤型のアダムスキー型脱出シャトルは、極東にある基地に向けて飛び始めた。

 

同時刻【大西洋南部上空】

 

「ふむ。奴らは玩具(おもちゃ)を振り回し過ぎたようだ」

大陸の遥か上空、衛星軌道上で楕円形の形状をした高速連絡艇に乗り込んでいた縦長の瞳を持つ人物がコーンパイプで阿片(あへん)をふかしながら眼下で滅び行くアトランティス大陸の断末魔の光景を興味深げに眺めていた。

 

「マスター、大陸南部にシロヒト人残存勢力が再結集している模様。月面まで避難を試みる様です」

同じく特殊なプラグスーツを着た縦長の瞳と萌黄色(もえぎいろ)(うろこ)を持つ連絡艇操縦士がコーンパイプをふかす主人に報告する。

 

「それはいかん。奴らがまだ宇宙(ここ)に来るのは2万年早いというものだ」

眼下の大陸南端に集まるシロヒト人避難民を馬鹿にしたように見つめる彼が宣(のたま)う。

 

「アカヒト人の大陸で生き残っている電磁波システムは有るか?」

彼が訊く。

 

「はい、マスター。イースターベースのモアシステムが稼働中」

操縦士が答える。

 

「よし、こちらでモアシステムのコントロールを掌握するのだ」

 

僅かな時間の後に、

「マスター。モアシステムコントロール来ました」

と彼に報告が上がる。

 

彼はニヤリと白銀の薄い鱗に覆われた顔を歪めると命令した。

「モアシステム最大照射!目標アトランティス南部サーガッソー!」

 

太平洋東南部の一角から強力な電磁波が電離層を反射して大西洋南部にある崩壊した大陸の一角に降り注いだ。

「モアシステム照射中。出力150%、施設の耐用限界値を突破します」

「構わん。どのみち滅ぶのは奴らだけだ」

 

「アトランティス南東部沈黙。宇宙港機能停止しました」

「よろしい。私達は地上が落ち着くまでラグランジュポイントでしばし眠りの時間に入る。監視体制はオートで構わん」

 

「しかし、これでしばらく奴らの新鮮な心臓が食べられないとは(つら)いな・・・」

コーンパイプを加えた彼と数名の爬虫類搭乗員を乗せた連絡艇はそのまま滑るようにバンアレン帯を飛行して地球大気圏を突破、月面との中間地点に向かった。

 

眼下の地上では、1万2000年後に「南米大陸アマゾン地域」と呼ばれる、かつてアトランティス大陸南端部分だった所に、真新しい苗木が群生する大草原が誕生していた。

真新しい大草原の下には、アトランティス文明が誇っていた多くの大陸間連絡シャトルや衛星軌道にも到達可能なアダムスキー型連絡艇等の高度な飛行機械が埋もれていた筈(はず)である。

 

また、太平洋東南部の一角は電磁兵器の乱用で激しい地殻変動を起こして施設の大半が海に沈み、モアシステムのレドーム部分が耐用限界を超えて過熱溶解し、まるでヒトの顔のような物が地上に露出した形で残されることとなった。

 

この施設が在(あ)った地区は後世で「イースター島」と呼ばれることとなる。

 

シロヒト人の大陸はアトランティス大陸、

アカヒト人連合大陸はムー大陸と後世の人類は呼んでいる。

 

神の怒りに触れて、一夜にして沈没したと言われる両大陸が実在したかについて、現在でも議論がされている。

――――――

 

地球暦2019年5月15日午後10時【北海道東方沖の太平洋 海上自衛隊護衛艦『ひゅうが』ブリーフィングルーム】

 

1日の調査を終えて『ひゅうが』に戻った岬と大鳥は、夕食を終えるとブリーフィングルームに向かった。

 

二人がブリーフィングルームに入ると、研究結果の発表が始まった。

この発表は岬教授の強い希望により、全艦隊の乗組員が聴けるように、通信回線をオーブンにしている。

 

まず、岬教授から

「海流ですが、黒潮は北上するとそのまま審判の壁に吸い込まれるように消えていきます。

反対に、黒潮南端からは、海中の審判の壁から海底付近まで、涌き出るように『黒潮』が発生している事が確認されました。

また、海中のゴミや汚れは、北上して審判の壁に吸い込まれたあと、黒潮南端から、「綺麗(きれい)な」海水として流れています。まるで審判の壁がフィルターの役割を果たしているようです。

魚類、プランクトン、(さめ)は審判の壁にそのまま入り、同時に黒潮南端から出現しています。これは、南端側と黒潮北端の両端に待機させた、ドローンによるリアルタイム撮影で確認しました。ちなみに鯨、イルカは本能的に審判の壁を避けて黒潮北端から審判の壁沿いに南下する流れに乗って黒潮南端に戻り、再び北上しています。

実に摩訶不思議(まかふしぎ)な仕組みとしか言いようがありません。」

「海流の仕組みとしては、オゾンで消臭・消毒された水が水槽の中を循環するイメージです。」

と大鳥が補足し、

「気流・気圧についても同様です。まるで審判の壁が転移前の内部の気流・気圧を「知っている」かのように、コントロールされた大気の流れが発生しています。南側に行くほど新鮮な空気が多い。そう考えて頂いて構いません。」

大鳥が報告した。

 

レーガン艦長のスティーブン大佐が、

「ミス・ミサキ。もしその通りだとしたら、日本列島は以前から審判の壁を作った存在に、取り込まれていたのではないかね?」と質問した。

 

岬は、

「今のところ、その存在に結び付く手掛かりが皆無(かいむ)であり、科学的な立証もこれからになるので、分からないとしか言えません。」

「しかし、個人的には大佐のお考えが自然な流れだと思います。」と答えた。

 

「審判の壁は太古の神々が、我々人類に与えたもうた科学的、技術的な試練かも知れません。また、この空間を作り上げた存在は、内部の生物を育て上げ、守り抜く為に、この大掛かりな仕掛けを作り上げたとしか思えないのです。」

岬はちょっと宗教的になった(かぶり)を振って目を醒ますかのように、科学者としての思考を取り戻しながら考えを述べた。

 

「明日は、審判の壁沿いの海底地形を調査します。地震列島と言われる地殻と火星との関係を調べます。ソナーを使う予定です。それでは皆様、お休みなさい。」岬教授が発表を締めくくった。

 

任務調査艦隊のやるべき事は多い。




ここまで読んで頂きありがとうございましたm(__)m
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