転移列島   作:NAO

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【このお話の主な登場人物】

・大月(おおつき) 満(みちる) = 40代。主人公。総合商社角紅社員。内閣官房室に出向。
・西野 ひかり= 20代後半。ヒロイン。総合商社角紅社員。社長の孫娘。
・春日(かすが) 洋(ひろし)= 20代前半。総合商社角紅若手社員。魚捌きは上手い。
・東山(ひがしやま) 龍太郎(りゅうたろう)=20代後半。西野の大学同期。首相補佐官。
・イワフネ=マルス人。月(観測ラボ『ルンナ』)が彗星により損傷した時、自動的に地球に降ろされた。



ホームステイ(大月、西野、春日、東山)

地球暦2019年8月30日午前6時【第4惑星マルス アルテミュア大陸 シドニア地区 旧マルスアカデミー本部】

 

前日の夜に尖山から土星円盤型大気圏シャトルでシドニア入りした大月達は、その夜は円盤に泊まり、朝、アカデミー本部を訪問した。

 

アカデミー本部の壮麗建築(そうれいけんちく)は圧巻なのだが、一番驚いたのは、宇宙服無しで外気(がいき)にあたることだった。空も青く、アカデミー本部の最上階からは海が見えた。

まるで、移民船で入植したみたいだ。経験無いけどな、大月はそう思った。

 

「では、皆さん、火星の大地をご案内しますね。」イワフネがホームステイのお返しとばかりに今回はエスコート役である。

 

地上スレスレを飛ぶアダムスキー型シャトルはシドニア地区の壮麗な建築群を抜けると、赤い大地が一面に広がる光景が目に入った。

「現在の空気濃度は地球とほぼ同じです。酸素が少し多いですね。」イワフネが話す。

 

「あっ!イワフネさんあそこに何か居ますよ!」春日が嬉しそうに叫ぶ。春日ストレス溜まってるなぁ、と大月は思った。

 

春日が指差した方向の大岩の上に地球のイグアナに似た灰色の(うろこ)を持つ体長1m程の生物が日向ぼっこするようにじっと座っていた。

「あれは、火星に昔から居たヒュドランの進化種ですね。地上の昆虫を食べます。こんな荒れ地ですが、ワーム(ミミズ)やサソリモドキが居ますから(えさ)には事欠(ことか)きません。」イワフネが説明した。

 

さらにアルテミュア大陸を南下すると赤い大砂漠に遭遇した。

「ここはアマゾニス平原です。酸化鉄を含む砂と(ちり)が大砂漠を形成しています。」

イワフネが説明している時に、シャトルの航法システムがアラートを鳴らした。

イワフネはアダムスキー型シャトルを急いで100m程急上昇させた。

大月達は、上昇するGがかかって皆、床に(かえる)みたいにへばりつけられていた。

 

上昇が止み、下を見ると、突然直下の地面下が幅5mわたり、陥没した。同時に"陥没した穴"が"上昇"して此方(こちら)に真っ直ぐ向かってきたが、30m程で止まった。

 

よく見ると口を開けたピンク色の肌を持つ巨大ワームがイワフネのシャトルを呑み込もうとしていたのだ。

全長は地上部分だけでも30mは超えており、大月達の想像を絶していた。

 

暫くすると、次々と巨大ワームが地中から現れ即席の巨大ビルディングの群れが、ゆらゆらと恨めしげに大月達に向けて口を開けていた。

やがて諦めたワーム達は、出てきたときと同じようにあっという間に赤い砂の海に埋もれて消えた。

 

「これは、マルス生物の頂点にいる巨大ワームです。この砂漠に多く生息します。最近は海でも短時間は入れるようです。キャンピィングやピクニックの時は気をつけて下さいね。」

イワフネが説明と言うか、注意を促した。

 

「これは、気を付けてなんとかなるレベルを越えていると思う。」

東山が真っ青な顔で言った。他の3人も首をコクコクさせていた。

 

その後は、しばらく高度100mを保ちながら、アマゾニス平原を抜けてシレーヌス海、マリネリス海溝を観光した。

 

地球と同じ青い海だが、海溝(かいこう)部分を除くと、やや深みに欠けた、明るい水色が多かった。

「海が形成されたのは、日本列島が転移してから2ヶ月目です。今は、海中の有機物からバクテリアやプランクトンが発生しています。魚類の誕生はまだまだ先でしょう。」イワフネがコメントした。

 

「日本近海の魚は火星の海に適応出来ますかね?」春日が質問した。

「成分的には地球の海洋と似ています。基本的には適応可能でしょう。ただ、その魚が食べる餌はまだ誕生していないでしょうね。」イワフネが答えた。

 

「じゃあ、生け()で区切って養殖すればいけませんかぁ?」西野が質問した。

「餌を我々が与える方式ならば可能でしょう。海中のワームから魚を(まも)る対策が必要ですが。」イワフネが肩を(すく)めて答えた。

 

「荒れ地にも地球の植物が根付く可能性も有りますね。」大月が言った。

「荒れ地でも鉄分を好む作物に良いでしょう。」

イワフネが応えた。

 

海を渡り、南半球のヘラス盆地は、赤い砂漠の大陸だった。さぞかしミミズ釣りにはもってこいだろうな、と大月達は早くヘラス盆地出たいと思った。

 

ひたすら"草原のように"延々と地中から巨体をくねらせて口を開ける巨大ワーム群を飛び越えて、大月達は、シドニア地区に帰還した。

10日程は、何故か全員が野菜サンドを食べるのだった。

 

こうして、ホームステイが終了したが、日本国ではとある政治的決断がされようとしていた。




ここまで読んで頂きありがとうありがとうございましたm(__)m
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