転移列島   作:NAO

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【このお話の主な登場人物】

・イワフネ=マルス人。月(観測ラボ『ルンナ』)が彗星により損傷した時、自動的に地球に降ろされた。
・ゼイエス=マルス人。アカデミー特殊宇宙生物理学研究所技術担当。
・アマトハ=マルス人。アカデミー特殊宇宙生物理学研究所 所長。『ゼイエスの善き理解者
澁澤(しぶさわ) 太郎(たろう)=内閣総理大臣。
岩崎(いわさき)=内閣官房長官。温和。
桑田(くわた)=防衛大臣。
甘木(あまき)=経産大臣。
・ミッチェル=極東アメリカ合衆国大統領。


マルス人の選択

地球暦2019年9月10日【火星 アルテミュア大陸 シドニア地区 ナザレ 旧マルスアカデミー本部】

 

神妙(しんみょう)な顔つきでアマトハ、ゼイエス、イワフネが中央ちゅうおう管制区域(かんせいくいき)機密(きみつ)ブロックにある一室(いっしつ)に集まっていた。

 

「久しぶりの場所だな。」アマトハが言った。

「そうだな。ゼイエスが"やらかした"ときにいつもここで対応策を()っていた気がする。」イワフネも言った。

「おれはやらかしていないぞ。"あの時は、"新天地を皆に見てもらいたかっただけなんだよ。」少しばつが悪くなったゼイエスが弁明(べんめい)(こころ)みるが、ため息をついて止めた。

 

「今日は3人で情報の共有と、今後の日本人との関係について話したいんだ。」

真剣な顔でゼイエスが言った。

 

――――――

 

同日午前10時30分【東京都千代田区 永田町 首相官邸 】

 

「極東アメリカとロシアは共同で火星進出を行うようです。空母、強襲揚陸艦(きょうしゅうようりくかん)、海兵隊、ロシア陸軍がヒトカップ湾に集結(しゅうけつ)しつつあります。おそらく、アルテミュア大陸北部の火山地帯で鉱物(こうぶつ)採集(さいしゅう)を行い、拠点(きょてん)構築(こうちく)を行うようです。」

桑田防衛大臣が報告した。

 

「総理、極東アメリカ国務省から拠点構築までの間、補給物資の提供、輸送について、日米相互防衛条約に基づいて支援要請がありました。」

甘木(あまき)経産(けいさん)大臣が報告した。

 

「それと、コマンド・ケイプが火星大地の水先案内人(みずさきあんないにん)として、角紅(かどべに)社員を1名派遣(はけん)して欲しいと言ってきました。」

岩崎官房長官が()げた。

 

「それは、日本人を人質にすると言う事かね!」「(あつ)かましいにも(ほど)がありますぞ!」

桑田と甘木が憤慨(ふんがい)した。

 

「確かに大月君達はマルス人とのパイプが太い。そこを狙われたな。」岩崎が言った。

「物資の手配(てはい)も商社マンだから可能でしょう。しかし――」

 

「――駄目(だめ)だ、危険過ぎる。物資の提供はやむを()なとしても、国民を案内人として送るのはいかん。」澁澤総理が言った。

 

「事前にマルス側からレクチャーを受ければ済む話ではないのかね?」甘木が言った。

 

「イワフネさんにホームステイのお返しでアルテミュア大陸の大地を訪れた時にはかなり、想定外の出来事が有ったようです。ショックが大きいみたいであのメンバーは今も肉が食べれないそうです。」岩崎が二人に説明した。

 

(くわ)しくは聞けませんでしたが、何でも地中(ちちゅう)から高層ビルクラスの巨大ワームが突然襲い掛かって来たり、オオトカゲや凶悪(きょうあく)なサソリモドキが地上にいるようです。」

「ならばますます送れんぞ。いくら極東最大の軍事力を持っていても、本当にそんな未知の生物相手に備えは大丈夫なのか?奴等(やつら)は何を考えてるんだ!」澁澤総理が言った。

 

「とにかく、水先案内人(パイロット)の話は駄目(だめ)だ。マルス側からよく説明を受けるように説得しよう。」

澁澤がミッチェル大統領へのホットラインをかけ始めた。

 

――――――

 

【旧マルスアカデミー 機密(きみつ)ブロック】

 

「最初に地球へ送ったカプセルは親カプセルと850万のナノマシーンに分かれている。そして、親カプセルの中には850万のナノマシーンを統括(とうかつ)する存在が居る。」ゼイエスが言った。

 

「親カプセルには50体の少女型クローンが搭載(とうさい)されている。親カプセルに搭載した人工知能が、とある1体のクローン体を(あやつ)って、ナノマシーンから管理統括した情報を報告させている。」

「そのクローン体の名前は『ミーコ』と言う。クローン体の時には人間と全く変わらない感情を宿(やど)しているが、感情の根底(こんてい)には人工知能が脳にプログラムした思考形態(しこうけいたい)を持つ。」

ゼイエスが説明した。

 

イワフネは初めて聞いた内容だった。

初耳(はつみみ)だったよ。これはまだ地球人類には言えないと思う。」感想を述べた。

 

「そうだな、ちなみに親カプセルの場所も最近分かった。」ゼイエスが言った。

何処(どこ)だ?」

「尖山基地の最深部(さいしんぶ)にある。私とゼイエスしかアクセス出来ない。」アマトハが口を開いた。

「イワフネ、君は尖山(ここ)を偶然に基地にしたのではない。脱出シャトルの航法装置にミーコが介入(かいにゅう)して呼び寄せたんだ。」ゼイエスが説明した。

 

余りの内容にイワフネはしばらく思考が停止してしまった。

 

「地球人に説明したように、ミーコは自律進化する人工知能だ。ミーコのクローン体を使ったり、精神体となって地球人類の思考を読み取ったりしながら、あの空間内部の生物が求める事を叶えようとする。あまりに突拍子(とっぴょうし)もない話だが、人工知能ミーコが何を考えているのか?どうしようとしているのかを知るアクセス権はアマトハと私だけが持っている。」ゼイエスが言った。

 

「だから、マルス文明の正当なる承継者である地球人類にはいずれアクセス権を(ゆず)ろうと思う。」

「今はまだ、誰にするかは見極(みきわ)めている最中だがおそらく、日本人が最適だと私は思う。アマトハ、イワフネとも話し合って決めたいがね。」

ゼイエスが今後の意向(いこう)を伝えた。

 

「分かったよ、ゼイエス。私はしばらくオオツキ達と行動を共にするから、彼らの事をよく見ておこう。」イワフネが言った。

 

「私は我々の文明承継を(めぐ)る各国の対応を注視(ちゅうし)してみよう。勿論(もちろん)この件についてはまだ中立だがね。」アマトハが言った。

 

「ありがとう。アマトハ、イワフネ。我々が悠久(ゆうきゅう)の昔に放った萌芽(ほうが)がここまで来たんだ。多少の紆余曲折(うよきょくせつ)は有るだろうが、期待を持って地球人類を見極(みきわ)めよう。」

ゼイエスが言った。




ここまで読んで頂きありがとうございましたm(__)m
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