転移列島   作:NAO

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【このお話の主な登場人物】

大月(おおつき) (みちる) = 40代。主人公。総合商社角紅社員。内閣官房室に出向。

・西野 ひかり= 20代後半。ヒロイン。総合商社角紅社員。社長の孫娘。
春日(かすが) 洋一(よういち)= 20代前半。総合商社角紅若手社員。魚捌(さかなさば)きは上手い。
東山(ひがしやま)龍太郎(りゅうたろう)=20代後半。西野の大学同期。首相補佐官。


国民の選択

地球暦2019年9月12日正午【NHKニュース】

 

国営放送のアナウンサーにもかかわらず、政権与党に対して批判的な態度を取ることで有名な女性アナウンサーが(きき)々としてニュースを伝えていた。

「澁澤総理大臣は6月25日に政府が締結(ていけつ)したマルス科学技術文明の段階的承継(だんかいてきしょうけい)を、『国民の充分な議論、検討が為されないまま締結(ていけつ)されてしまった不十分な内容の承継(しょうけい)方法だった』として、国民投票による協定(きょうてい)追認(ついにん)()たいとの考えを示しました。」

 

「今回の国民投票は国民投票法が国会で成立してから初めて、具体的(ぐたいてき)事案(じあん)に対する澁澤政権の(しん)を問う選挙、...失礼しました、投票になります。」

あからさまに自分の願望(がんぼう)を思わず口にしたアナウンサーが失言(しつげん)気付(きづ)いて顔をしかめた。

 

「やっぱりこうなったんですねぇ。」

社員食堂で大月やイワフネ、春日と共に昼食を取る西野が言った。

 

「本来、政府が対外的な条約を、国民の意見が違うから等と情緒的(じょうちょてき)な理由で反故(ほご)にすることは国際的な信頼を(いちじる)しく失墜(しっつい)させる大失策(だいしっさく)なんだけどな。」

大月が西野の作ったツナサンドをもしゃもしゃ食べながら言った。

 

「だが、国際的も何も、火星(マルス)に存在する我が国はそのようなことは、あまり関係無くなってしまった。むしろマルス側に対して、日本国はちゃんと考えていますよ、という姿勢を見せる事の(ほう)が大事なんだよ。」

「それと、マルス文明というオーバーテクノロジーを承継(しょうけい)する事の意味を国民全員が真面目(まじめ)に考えることで、これから発展、開発される新技術を使う免罪符(めんざいふ)にもなるんだよ。」

大月が政治的な見解(けんかい)を一気に(しゃべ)った。

 

西野は大月さん素敵と目がハートになっており、東山は(うなず)くばかりでイワフネは(だま)って聞いていたが、春日は、

「そんなにいちいちみんなの意見を()いていたら、物事(ものごと)が全然進まなくなりませんか?」と疑問を(てい)した。

 

「確かに、でも、火星に()ろうが我が国は建前上(たてまえじょう)、『民主主義国家』だ。なるべく多くの民意(みんい)を政府に集めないことには何事(なにごと)も進められない。」大月が(こた)えた。

 

「じゃあ、極東アメリカ、極東ロシアも選挙、じゃなかった。国民投票するのかな?」

西野が()いた。

 

「いや、"向こうは"1度選挙で勝った政党が政権を(にぎ)ったら、全ての政策に信任(しんにん)を得た、として政権の決定を()し進めるだけだ。だから、」

大月は言葉を切って、東山を見る。

 

「日本国と方向性の違う承継(しょうけい)の選択をした極東米露(きょくとうべいろ)に、日本国が明確に意思表示をしたというアピールを示したかったんじゃないかなぁ。」

 

東山は大月の分析に同意しながら、

「大月さんの言われる通りです。もう少し過激な見方をすると、極東米露は将来、我が国に(きば)()く、と官邸は考えています。」

かなり衝撃的な発言をした。

 

大月、西野、春日は暗い未来を想像して、残りの昼ご飯を(もくもく)々と食べていた。

そんな彼ら彼女をイワフネはじっと見つめていた。

 

『マルス文明に(かか)る段階的承継の国民投票』は、10月12日に投票、即日(そくじつ)開票(かいひょう)と日本国政府は発表した。

これから1ヶ月間、与野党(よやとう)が全国各地を回りながら是非(ぜひ)()う長い闘いが始まった。

 

――――――――

仕事が終わり、『イワフネハウス』でアマトハ、ゼイエスが乱入した"恒例(こうれい)"のアフターファイブが終わると、大月と西野はSPが運転する車に乗って政府が用意した赤坂の「仮住(かりず)まいのホテル」へ向かった。

 

車中で西野がふと、

「そう言えば今頃(いまごろ)地球はどうなっちゃんですかねぇ?北欧(いなか)のお世話になった人達が心配です。」と言った。

 

大月は、

「そう言えば全然考えてなかったなぁ。」と相槌(あいづち)を打ちながら、

「でも極東米露や他の国は故郷(ふるさと)をずっと忘れていないだろうな。」と言った。

 

彼らが外に出たがるのは、地球の『本国』と連絡を取りたいから、又は本国より有利になりたいから?ではないのだろうか?

と大月は少し思ったが、話し始めた(とう)の西野が寝息(ねいき)を立てて大月の肩に頭を乗せてきたので思考を止めて西野の"寝たフリ"に付き合った。

 

大月の予想は当たっていたが、『地球に居る者の視点』までは予想の範囲外だった。




ここまで読んで頂きありがとうございましたm(__)m
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