転移列島   作:NAO

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【この小説の主な登場人物】

大月(おおつき) (みちる) = 40代。主人公。総合商社角紅社員。内閣官房室に出向。
・西野 ひかり= 20代後半。ヒロイン。総合商社角紅社員。社長の孫娘。
春日(かすが) 洋一(よういち)= 20代前半。総合商社角紅若手社員。魚捌きは上手い。
東山(ひがしやま) 龍太郎(りゅうたろう)=20代後半。西野の大学同期。首相補佐官。
・イワフネ=マルス人。月(観測ラボ『ルンナ』)が彗星により損傷した時、自動的に地球に降ろされた。
・ゼイエス=マルス人。アカデミー特殊宇宙生物理学研究所技術担当。
・アマトハ=マルス人。アカデミー特殊宇宙生物理学研究所 所長。『ゼイエスの善き理解者。
・ミーコ=ゼイエスカプセルの全てを司る自律進化型人工知能。
澁澤(しぶさわ) 太郎(たろう)=内閣総理大臣。
岩崎(いわさき)=内閣官房長官。温和。
仁志野(にしの) 清嗣(きよつぐ)=総合商社角紅社長。西野ひかりの祖父。


ミーコの選択

地球暦2019年10月4日午前8時【富山県立山市 尖山(とがりやま)

 

西野ひかりは大月が那覇(なは)DCに向かった翌朝、イワフネを(たた)き起こすと有無(うむ)を言わさずに、尖山に向かった。

 

尖山の基地に着くなり、

「それで、一体どうしたのですか?」とイワフネの問いに西野は、大月が極東アメリカ軍の強い意向で、やむを()ずにアルテミュア大陸北部に上陸して入植(にゅうしょく)する部隊に同行する事を()げた。

 

事情を聞いたイワフネは(ただ)ちにアマトハ、ゼイエスに報告、対応を相談した。

「現状では極東アメリカ軍のど()ん中から彼だけを救出する事は不可能です。また、我々の飛行挺(ひこうてい)を使用するのは、中立の立場をとる我々としては出来ない。」アマトハが沈痛(ちんつう)な表情で西野に告げた。

 

「そんな...」西野は絶句(ぜっく)した。

西野は角紅社長や岩崎官房長官に直談判(じかだんぱん)したが、二人とも「申し訳ない。」と手段が手詰(てづ)まりであることを明かした。

 

「我が国は澁澤総理自ら、ミッチェル大統領に抗議しましたが、彼等は核を含む軍事力を前面に出して強引な要求を行いました。そこで私が先日、大月さんにお願いして同行(どうこう)して頂く事になったのです。もちろん、そちらの仁志野(にしの)社長にも苦渋(くじゅう)の決断を告げるしかありませんでした。」

岩崎が苦しい状況を吐露(とろ)した。

 

しかし西野は、

「あなたは、最初にお()いした時、総理と共に最大限私達をサポートすると(おっしゃ)っていた(はず)ですが。あれは口だけですか?」

詰問(きつもん)した。

岩崎は(こた)えようが無かった。

 

西野は一方的に岩崎との通話を切ると、尖山基地の管制室にある椅子にぐったりと座り込むと、コンソールに顔を伏せてじっと頭をフル回転させて大月を救う為の方策(ほうさく)を考え続けた。

 

そんな彼女にイワフネはもとより、後から駆けつけた東山と春日も含めて、基地に居る誰もが近付くことなど出来なかった。

 

――――――

尖山基地(とがりやまきち)最深部(さいしんぶ)ゼイエスカプセル本体

 

その存在は、カプセルの中で悠久(ゆうきゅう)の眠りについている様に思えたが、実際は人工知能が(つかさど)思念体(しねんたい)が日本列島を(まも)る800万を超えるナノマシーンから情報を収集し、あらゆる生物の思念も()き続けていた。

その人工知能『ミーコ』は、カプセルのすぐ近くに、強い愛情と苦悩(くのう)苦悶(くもん)する女性の思念を感じた。

 

人工知能の空間内(くうかんない)知的生物(ちてきせいぶつ)支援概念(しえんがいねん)(もと)づいて、思念体(しねんたい)がカプセルに搭載(とうさい)されていた少女型のクローンに取りつくと、クローンが覚醒(かくせい)シークエンスに入った。

同時に、『ミーコ』が基地内に居た西野を最深部(さいしんぶ)のカプセルまで転送させた。

ミーコは、西野の愛情と苦悩(くのう)(こた)える選択をプログラムにしたがって取り始めたのである。

――――――――

 

遠巻(とおま)きに西野を見守っていたイワフネ達は、突然西野の姿がかき消えた事に動揺(どうよう)したが、シドニアの旧アカデミーにいたゼイエスが、親カプセルの稼働(かどう)をキャッチしたと連絡をよこした。

取りあえず、イワフネ達は安堵(あんど)した。

 

シドニアに居たアマトハ、ゼイエスは、初めての親カプセル稼働(かどう)に驚き、尖山に向かった。

 

基地の管制コンソールに突っ伏(つっぷ)して大月を助ける方策を模索(もさく)していた西野は、見たこともない基地内に居る事に気付いた。

その空間は薄暗(うすぐら)く、真ん中に高さ5m、幅4mはある流線型の弾頭に似た部分が地面に突き刺さった形の物体が有った。物体は蒼白(あおじろ)い光を空間に(はな)ちながらゆっくりと明滅(めいめつ)していた。

 

貴女(あなた)、』

突然背後から女の子の声が響いて西野は飛び上がらんばかりに驚いた。

 

そこには西野より少し小さい、イワフネ達よりも(おさな)い体格の、ヒト女性に似た起伏(きふく)を持つマルス人が立っていた。

 

貴女(あなた)は、彼を助けたいの?』

無表情で"ミーコ"が西野に(たず)ねた。

 

「そうよ。私が()()げる人だから。」西野が毅然(きぜん)とした態度で言った。

 

『そう。』短く(つぶや)くと彼女の周りに水色の淡い光球(オーブ)が現れた。

『彼を(まも)って』オーブに指示すると、光はスッと消えた。

 

『これで一応彼は大丈夫。』彼女はそう言うとパタリと地面に倒れた。

(あわ)てて西野が抱き起こすと、

 

『お腹、減った。』と言って、水色の縦長(たてなが)(ひとみ)で西野を見上げた。

『私、ミーコ。イワシパイ食べたい。』

そう小声で言うと今度こそ彼女は気を失った。

 

やがてゼイエスやアマトハが駆け付けるまで西野は唖然(あぜん)としながらも、"ミーコ"をしっかりと抱き締めていた。




ここまで読んで頂きありがとうございましたm(__)m
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