転移列島   作:NAO

35 / 121
【このお話の主な登場人物】

大月(おおつき)(みちる) = 40代。主人公。総合商社角紅社員。内閣官房室に出向。
・西野 ひかり= 20代後半。ヒロイン。総合商社角紅社員。社長の孫娘。
・ミーコ=ゼイエスカプセルの全てを司る自律進化型人工知能。。
・ジョーンズ=極東アメリカ合衆国海兵隊司令官。中将。
・ダグラス・マッカーサー三世=極東アメリカ合衆国中央情報局長官。


海兵隊の選択

地球暦2019年10月7日午前7時【極東アメリカ合衆国海軍 エリア・ヨコスカ内『コマンド・ケイプ』司令部】

 

大月は那覇(なは)DCで海兵隊や入植(にゅうしょく)調査隊の科学者と打ち合わせを行った後、米海軍横須賀司令部に移動した。

 

MP(軍憲兵)が運転するジープが軍港すぐ後ろにある岩窟山(がんくつやま)裏手(うらて)(まわ)ると、岩窟山の下半分が(えぐ)り取られた様な形で米軍の各種設備が密集していた。入口は厳重な警備がされており、完全武装の海兵がゲート前で検問していた。

 

検問を通過して巨大な鉄扉(てっぴ)を抜けると、二車線はあるトンネルが緩やかな傾斜(けいしゃ)延々(えんえん)と地下に続いていた。旧日本軍が戦時中に建設した施設を更に強化したこの巨大な司令部基地を、『コマンド・ケイプ(洞窟司令部)』と呼ぶ。

 

MPに案内されて司令部に行くと、巨大な壁面(へきめん)スクリーンに火星アルテミュア大陸と北海道北部の地図が映し出されていた。

「ようこそ、ミスターオオツキ」

ジョーンズ海兵隊中将と、極東CIA長官のダグラス・マッカーサー三世が大月を歓迎した。

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

大月がさっとお辞儀をした。

「中将閣下、ワーム対策は如何(いかが)でしょうか?」大月が確認した。

 

沖縄辺野古(へのこ)の海兵隊本部で、大月は自分が火星で体験した事を詳しく説明した。

特に巨大ワーム、サソリモドキの注意を喚起(かんき)した。

 

法螺話(ほらばなし)のような、信じがたい内容を話す大月を、海兵隊将校は笑い飛ばしていたが、

「彼の話を信じないのなら、部隊が全滅いたしますぞ!」

と叩き上げの先任軍曹が彼らをどやしつけた。

 

軍曹の一喝(いっかつ)で将校達は多少態度をあらためたが、基本的に火星生物を"地球のサファリパーク"に居るライオン並としか考えていないようだった。

大月は内心絶望したが、自分が生き残る為にも、伝えておくべき事は伝えたかった。

 

(うろこ)を持つ、筋肉質の全長200mはある巨大ワームの耐久力は相当なものだと思います」

「また、低空を音もなく翔んで来るサソリモドキのハサミとしっぽから噴射される毒液の威力は、上空から毒水をばら蒔く飛行消火挺と考えてください」

大月の証言を基に、対抗兵器と不意打ちを避ける対策が"軍曹主導で"検討されるのだった。

 

「ミスターオオツキ、ワームやサソリモドキはジャベリンとグレネード、M1A3戦車の120mmとブラッドレー装甲車の12.7mm機関砲がメイン武装となるな。

ロシア熊はRTG(対戦車ミサイル)の大量運用で対応する。兵員は基本的に装甲車かアパッチヘリの護衛のもと、ヘリボーンで移動して、生身で襲われるのを防ぐ予定だ」

 

「それと、ワームの接近を探知する地中レーダーと虫が嫌いな周波数の電波も試して貰えませんか?」

「分かった。地上部隊とヘリボーン部隊の両指揮官に通達しよう」

「ありがとうございます。閣下」

大月が礼を述べた。

 

「オオツキ、作物の準備は大丈夫かね?」

マッカーサー三世が訊いた。

 

「鉄分の多い土壌で育つものを選びました。ニンジン、ジャガイモ、ホウレン草、ベリーにトマトです」

「それと、海岸沿いでは海水の有機成分を餌とするシュリンプを養殖します」

大月が答えた。

 

「グレイトだ」マッカーサー三世が感嘆して言った。

「素晴らしい」ジョーンズ中将も同意した。

「これだけの希望の種が有るならば、兵士も守りがいがあるというものだ」

 

「いずれにしても、火星生物は未知の部分が多すぎます。油断大敵です」

海兵隊将校の態度を思い出しながら、大月があらためて注意を(うなが)した。

 

「海兵隊(我々)は精強なプロ兵士の集団だ。戦闘で遅れなどとらんよ」

ジョーンズ中将が鼻で大月の慎重さを笑った。

 

30分後、大月はヘリで空母レーガンに移動した。

択捉島(えとろふとう)沖合いで極東米露連合軍が合流し、一路艦隊はアルテミュア大陸を目指して北上した。

 

ジョーンズ中将達海兵隊は、確かに人間相手にはプロだが、(ほとん)ど生態が解明されていない火星生物の(ひそ)む大地と海洋で、その実力を発揮できるか大月には疑問が残った。

 

強襲揚陸艦『イオージマ』艦内の居住区に割り当てられた三段ベットで横になると、大月は溜め息をついて、西野を連れてこなくて良かったと心から思った。

 

――――――――

その頃尖山(とがりやま)で目を()ましたミーコは、西野が基地で作ったかぼちゃポタージュを美味しそうに食べていたが、急にスプーンを置くと虚空(こくう)()た。

 

『ワーム達が来る』ミーコがつぶやいた。




ここまで読んで頂きありがとうございましたm(__)m
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。