転移列島   作:NAO

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【このお話の登場人物】

・岬 渚砂=東南海大学海洋学部教授。
・大鳥=東南海大学海洋学部教授。
・ロイド=英国連邦極東派遣軍司令。少将。
・ジョーンズ=極東アメリカ合衆国海兵隊司令官。


火星研究機構

地球暦2019年11月1日【東京都千代田区市ケ谷 防衛省内】

 

稚内(わっかない)迎撃戦(げいげきせん)で多くの国民が犠牲(ぎせい)となった事で、火星新天地進出の有無(うむ)にかかわらず、火星巨大生物が襲撃(しゅうげき)する事実に恐怖した日本国民は、与野党問わず火星危険生物の排除(はいじょ)を政府に求めた。

 

日本国政府は英国連邦極東、極東米露と共に日英火星生物研究所を極東各国が参加する『火星研究機構』(理事長:澁澤首相 本部:市ケ谷防衛省内)に拡大(かくだい)発足(ほっそく)させ、マルス文明研究と火星生物の研究、対策に取り組む事になった。

 

火星研究機構の建物は、その研究内容と万一の火星生物のバイオハザードに備えて防衛省中庭の即席ワーム研究所を改築し、中庭部分に窓のない高層ビルディングが建築された。四周を囲む防衛省建物とは隔絶された構造となっており、出入口も地下鉄市ケ谷駅の特別改札からとなっていた。車両は隣接する公園を入り口に、地下駐車場が設けられた。

 

その研究機構の会議では、

「先日の市ケ谷と稚内(わっかない)に上陸した巨大ワームは、マルス側データによりますと短時間の水中活動が可能、との事でしたが今回は明らかに長時間の水中活動に耐えうる体質に変化していました。つまり、火星生物も環境激変に柔軟な適応力を持ち、多少の知能も有るということが分かりました」

尖山 から参加した(みさき)教授が説明した。

 

「巨大ワームの生態、生い立ちと繁殖(はんしょく)形態まで調べる必要があります。

火星には、巨大ワームの他、オオトカゲ、サソリモドキも居ます。特殊な生態系を解明しないとワームの生態まで辿(たど)り着けないかも知れません」

生物研究局長の東南海大学の大鳥「教授」が付け加えた。

 

「先月の艦隊襲撃時と市ケ谷に現れた巨大ワーム、北海道で迎撃したワームの戦闘記録を分析すると、巨大ワームには30mm以上の重機関銃やロケット弾、対戦車ミサイルを背後から撃ち込むのが有効です。また、精密誘導爆弾と火砲による集中砲爆撃も有効です。注意すべきは、近接戦闘によるワーム口からの酸性胃液の噴射と、巨大掃除機のような吸引力、艦船を海に引きずり込む巻き込みです」

戦術作戦局長の英国連邦軍ロイド少将が説明した。

 

「以上の情報から我々が再度、アルテミュア上陸、入植後の防衛、防御対策を検討しましょう」

元陸上自衛隊即応部隊出身の石原統括理事が会議の参加者に呼び掛けた。

 

生物研究局は火星生物の生態系を分析、脅威となる生物を特定する。

 

戦術作戦局は火星生物の特徴を手掛かりに、現有戦力での対策を練る。

 

統括理事会では、各部署の報告を基に火星地上での有効な上陸、防御作戦を決定する。

 

各部署の目標はシンプルに設定されており、各国利害による方針の違いが有れど、あらゆる状況に対応出来るように、幾通りもの戦略プランを立案する事になる。

 

また、アドバイザーとしてマルスアカデミーのゼイエスが技術的な助言を、イワフネはアカデミー所有連絡挺を使った現地での実験や情報収集を手助けした。

 

地球暦2019年11月10日午前6時【同 火星研究機構 戦術作戦局戦略シミレーション室】

 

「作戦開始」ロイド少将が告げる。

 

「アルテミュア大陸ボレアリフ海岸まで50km!」

戦術管制官がカウントする。

 

「潜水艦『ジェファーソンシティ』、『サンタフェ』艦隊正面に魚雷発射!起爆は15秒後」

「全艦隊ソナー使用。対潜ヘリは艦隊側面に展開、発熱ポッド付き爆雷投下!」

「戦闘ヘリは対潜ヘリの援護に回れ」

「攻撃機部隊発艦!上陸地点にMOAB(超大型爆弾)投下!」

ジョーンズ少将が指示する。

 

「艦隊中央、『ルーズベルト』両弦にワーム2体出現!」岬が報告する。

 

「護衛艦アスロック(対潜水艦魚雷)を『ルーズベルト』左右に発射!」

 

「ワーム更に4体、艦隊側面に出現!発熱ポッド投下中のヘリを直撃!」

 

「ワーム、『ルーズベルト』甲板に進入!戦闘攻撃機発艦不可能!」

 

「側面に展開中のヘリはワームに全機喰われました」

 

「『ルーズベルト』後部スクリューに巨大ワームがからまりました!航行不能!」

 

「上陸地点にMOAB集中投下成功。上陸地点地下のレーダー反応消えました!」

 

「ここまでにしましょう」ロイド少将がジョーンズ少将に言った。

 

「主力空母が機能不全になった段階で作戦は失敗です。ワーム出現をもっと早めに探知しなければ、不意打ちを喰らうばかりですな」

 

「中将、ワームは原子炉等高熱源に反応します。潜水艦から発熱ポッド搭載のドローンを艦隊正面に発進させて、囮にしては如何でしょうか?」

大鳥が提案した。

 

「ヘリは確かにワーム対策に有効ですが、真下から喰われてはもとも子も有りません。ヘリ高度は100m以上にしてエンジンの熱源反応を薄くし、高速で行動しましょう。それと、発熱ポッドを吊るすよりも、デコイをばら蒔いて艦隊側面から引き離すように誘(おび)き出すのも1案かと考えます」

岬も提案した。

 

「ありがとうミスター大鳥にミス、ミサキ。お前達、プロの我々がアイデアを絞らんと恥ずかしいぞ!」

ジョーンズ少将が幕僚達を叱咤した。

 

「中将、先程の全艦隊ソナーとMOABの海岸使用は適切だと思います」ロイド少将が評価した。

 

「ロイド少将、かたじけない。我々は1度敗北している。もっと損害を減らして上陸しないと亡くなった海兵達に申し訳が立たん」

ジョーンズ予備役少将は海図とアルテミュア大陸の地図を睨んだ。

 

その日も、戦術作戦局のシミレーション演習は夜遅くまで繰り返された。




ここまで読んで頂きありがとうございましたm(__)m
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