転移列島   作:NAO

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【このお話の登場人物】

ロイド・サー・ランカスター=英国連邦極東軍司令。
春日(かすが) 洋一(ひろかず)= 20代前半。角紅社員。魚捌(さかなさば)きは上手い。
(みさき) 渚沙(なぎさ)=東南海大学海洋学部教授。
澁澤(しぶさわ) 太郎(たろう)=内閣総理大臣。
(ワン)=台湾自治区代表。


人類都市ボレアリフ

地球暦2020年1月11日【アルテミュア大陸ボレアリフ海岸上陸拠点】

 

極東連合軍が火星大地に上陸して10日が過ぎた。最初の1週間は昼夜問わず、大小ワームやサソリモドキ等が襲来(しゅうらい)し、兵士達はひたすら装甲車両に(こも)ってバルカン砲と火砲を撃ち続け、アイアンドーム拠点防空システムは連日ワームが吐き出して拠点に飛来する"ワーム入り"岩石を上空で撃墜し続けた。

お返しとばかりに極東ロシア軍の名兵器『カチューシャ』多連装ロケット弾が離れた位置の巨大ワームに鉄の嵐を降らせて撃滅した。

 

海岸近くの高地に築いた拠点は周囲約一キロ半あり、その圏外(けんがい)には(おびただ)しい火星生物の死骸と(おとり)ドローン、溶けた装甲車の残骸(ざんがい)が散らばっていた。

 

この3日間は襲撃が途絶(とだ)え、拠点周辺に設置した地中探査レーダーも地面の下から近づくワームを(とら)える事は無かった。

ボレアリフ平原上空を旋回する極東米軍のAWACS(早期警戒機)も地上監視を続けているが、サソリモドキの群れや、巨大ワームの活動等は観測されなかった。

 

日本本土のマルスアカデミーからも、上陸拠点周囲10kmに火星生物は居ないとNEWイワフネハウスのアマトハからロイド提督に報告が来ていた。

 

上陸作戦司令部の空母『セオドア・ルーズベルト』のブリーフィングルームでロイド提督は、火星生物の警戒と殲滅(せんめつ)を続行する一方で、本格的な上陸拠点構築と拡大に取り掛かる事を宣言した。

 

上陸艦隊のはるか後方で待機していた補給船団とドック船やコンテナ船が続々とボレアリフ海岸に到着し、ボレアリフ海岸拠点に駐留する兵士の宿舎、滑走路、シェルター式格納庫、管制塔、衛星打ち上げ施設、地下司令部、補給倉庫、採取鉱物精製プラント、軍港、長期滞在施設を次々と建設していった。

 

建設期間中、ボレアリフ海岸沖では極東連合海軍艦隊による徹底的な巨大ワーム『狩り』や、海岸拠点からは連合空軍が核兵器以外の全ての爆弾を使用した20km圏内(けんない)の敵対的火星生物 撃滅(げきめつ)が連日連夜行われた。

 

地球暦2020年1月21日【アルテミュア大陸 『人類都市ボレアリフ』】

 

拡大増設された海岸拠点の人口は、極東各国駐留部隊と軍人の家族、設備保守点検を行う軍属(ぐんぞく)やプラントで働く作業員とその家族等合わせて20万人にまで(ふく)らみ、地方都市に匹敵(ひってき)する規模にまで発展した。

 

火星研究機構と極東各国政府はこの海岸拠点を、人類が築いた火星最初の都市『人類都市ボレアリフ』と命名した。

 

人類都市ボレアリフを拠点として火星研究機構が組織した内陸資源採掘チームはボレアリフ平原に進出し、強力な陸軍護衛部隊と空軍駐留部隊の援護(えんご)を受けながら鉱物資源の採掘(さいくつ)を開始、ボレアリフ軍港から極東各国に『輸出』した。

 

ボレアリフ都市郊外では、大月が米露艦隊と共に持ち込もうとした作物が栽培され、順調に生育した。

 

軍港のすぐ脇にある角紅(かどべに)商事(しょうじ)が設置した生け()では、岬教授と春日が育てた『火星シュリンプ(火星海老)』や牡蠣(かき)などが移されてほぼ予想通りに成長していった。

イワフネと春日は連日、岬教授と共に養殖設備の拡充に力を注いだ。

 

都市機能の運営が軌道に乗って一月が過ぎ、日本政府は人類都市ボレアリフの行政サービスを日本人以外の職員に引き継がせて英国連邦極東、ユーロピア自治区出身者が大半を占めるようになった段階で派遣していた日本政府職員を帰還させた。

 

澁澤首相は極東各国首脳と協議し、人類都市ボレアリフを極東米露、英国極東、ユーロピアで管理運営する事を提案し、各国の同意を得た。

同時に人類都市を始めとする生存圏拡大を見越(みこ)して、ユーロピア自治区を独立国家として昇格させる事でも各国の了承を得た。

『ユーロピア共和国』の初代首相には自治区代表だったジャンヌが就任した。

 

日本政府としては、転移に巻き込まれて国内で避難的な生活を()いられてきた極東各国の国民が火星大地を第2の故郷として安全に定住出来るよう支援を続ける意向を持っていた。

 

人類都市ボレアリフは極東各国からの移住者により各国毎(かっこくごと)の区画が自然と誕生し、ボレアリフ都市中心部が極東4ヵ国の共同統治、都市郊外の区画を各国が各々の『領土』として開発、拡大された。

 

ある日、澁澤は横浜中華街にある台湾自治区の庁舎を訪問し、王代表と会談した。

(ワン)代表。ユーロピア自治区が国に昇格した今、台湾人も悲願だった独立国家建設に動かないのですか?」と()いた。

 

(ワン)代表は、

「澁澤首相。大陸の共産主義者が居ない今、我々は国家としての体裁(ていさい)よりも広大な火星大陸の開発と貴国との商売拡大に興味があります。台湾人コミュニティは充分日本の皆様に良くして頂いており、感謝しきれません。我々は既に日本国の一員、地方自治体で構わないと思うくらいです。」

と在日台湾人の声を伝えた。

 

澁澤は(ワン)代表の意向を尊重し、引き続き台湾自治区として自治独立を認めると共に、自衛隊入隊や地方公務員としての採用を認める方針を打ち出した。

台湾人の多くは、日本国民とほぼ同じ扱いを受けることを歓迎した。

また、人類都市ボレアリフの台湾自治区はアジアンエリアと呼ばれ、異国情緒(いこくじょうちょ)(あふ)れる街並みに日本本土のみならず極東各国から観光客が大挙して訪問し、活況を(てい)した。




ここまで読んで頂きありがとうございましたm(__)m
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