転移列島   作:NAO

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【このお話の登場人物】

・イゴール・アッシュルベルン=宇宙国家アース・ガルディア 総代表。
・ソーンダイク=英語圏内務局担当代議員。
・アレクセイエフ=ロシア語圏防衛担当代議員。防衛軍司令。


野望

ガルディア暦3年(2020年)3月14日【アース・ガルディア コア・サテライト】

 

「そうか、火星は在日米軍の他に北方領土に駐留しているロシア軍の基地も有ったな」イゴール総代表が言った。

 

「まさか、こうバラバラに返事を寄越(よこ)すとは想定外だ」彼はニヤリと笑った。

 

(おっしゃ)る通りです同志総代表。日本国政府は日本人以外の国の人間達に自治独立を与えているのでしょう。このご時世(じせい)贅沢(ぜいたく)な事です」

アレクセイエフ防衛統轄(とうかつ)代議員(防衛軍司令)が言った。

 

「総代表。日本国だけは唯一(ゆいいつ)まともな返事をしていますね。『我々も孤立困窮(こんきゅう)しているが、必要な物が有れば連絡を欲しい』と、かの国の自給率は15%程度ですから無理も有りません」

ソーンダイク内務担当代議員が言った。

 

「日本人は基本的に誠実だ。素直に現状を伝えてきたのだろう。だから、各国の現地独立を許したのだろう」

イゴールが感想を述べた。

 

「日本との通信は穏便(おんびん)に行う。支援物資を受けとるまではな。他は我らの傘下(さんか)に、違ったな、お互い助け合おう、でいいだろう。連中には通じる(はず)だ」

イゴールが口の端を吊り上げてニヤリと笑った。

 

「ところで火星派遣艦隊の準備はどうなっている?」

イゴールが()いた。

 

「主力の兵員輸送用大型武装シャトル1機と随伴(ずいはん)の中型戦闘シャトル3機、大型武装シャトルに搭載した地上降下用シャトル6機とSR92を4機、燃料は注入済みです。現在、弾薬、食糧の補給中ですが、3日以内に出撃出来るでしょう」

アレクセイエフが答えた。

 

「ソーンダイク内務代議員、明日の早朝にガルディア代議員会議を開催して、火星日本列島 奪還(だっかん) 作戦を討議しよう」

イゴールが国会に該当(がいとう)するガルディア代議員会議開催を指示した。

 

「分かりました。地上代議員への連絡を急ぎます」

ソーンダイクが応えた。

 

「それと、総代表。避難民の大量受け入れで軌道上コロニーの収容限度が軒並(のきな)み超えています。出来れば火星派遣シャトルの一部でも、避難民収容スペースに加えたいのですが」

ソーンダイクが懇願(こんがん)した。

 

同志(どうし)ソーンダイク、火星を手に入れればそのような些末(さまつ)な問題は解決だ。それまでなんとかしたまえ。偉大な国家の為ならば、人民は多少の困難等我慢するものだ」

イゴールは素っ気なく言うと総代表執務室に入ってしまった。

 

「君は避難民の大半が劣悪(れつあく)な環境でコロニーに居ることを知っているよな?」

ソーンダイクがアレクセイエフに迫る。

 

「わかっているさ、でも軌道基地の施設はあらかた回収してこれ以上の増設は出来ない。一方で火星に必要な戦力は足りないくらいなんだ。君は今まで上手くやって来たじゃないか。もう少し頑張ってくれたまえよ」

アレクセイエフがソーンダイクの肩を叩くと防衛軍司令室に向かった。

 

溜め息をついたソーンダイクは、内務局室に戻ると、通信オペレーターに

「明日、モスクワ時間で午前8時に代議員会議を開催する。議題は火星日本列島奪還作戦の検討だ。各コロニーに連絡をお願いします」

と地球上も含めた代議員への連絡を指示した。

 

内務局室の奥にある代議員の個室に入るとソーンダイクは、

「軌道上の避難コロニーが3000人の定員を超えている状況で火星文明とやり合う(ひま)など無いだろうに」

(つぶや)くと、内部軍事回線でX34シャトルにいる防衛軍の仲間と連絡を取り始めた。

 

「ソーンダイクだ。総代表は火星日本列島を軍事侵攻するつもりだ。我々が知る限り、技術的にも、国力としても日本国には(かな)わないだろう。火星の合衆国(ステイツ)も総代表の提案に乗り気なところが気になる」

 

「火星派遣艦隊が出撃した後で我々が状況をコントロールするしかないだろうな」

シャトル側が応えた。

 

「我々だけで日本国政府に内密に連絡を取れないものだろうか?」

ソーンダイクが相談する。

 

「遠距離通信系統は、防衛軍が握っているからサテライトからだと無理だな。地上の大出力アンテナか、火星に向けて通信衛星を送り込むしかないが、どちらもアレクセイエフにバレるぞ」

シャトルが懸念(けねん)する。

 

「派遣艦隊隊員に我が方の支持者を入れれば何とかなるだろうか?」

「接触出来る可能性は上がるが、こちらとの通信が問題だな」

 

「それでもまずは火星に行って見るしかないだろう。そちらでデルタフォースかシールズの生き残りを送り込めないか?」

「了解した、やってみる。シャトル隊はこれからベラルーシ方面の避難民の救出だ。北米が後回しなのは(しゃく)だな。また連絡を取ろう」

 

ソーンダイクは通信を終えると内務局に戻った。




ここまで読んで頂きありがとうございましたm(__)m
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