転移列島   作:NAO

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【このお話の主な登場人物】

・大月(おおつき) 満(みちる) = 40代。主人公。総合商社角紅社員。内閣官房室に出向中。
・西野 ひかり= 20代後半。ヒロイン。総合商社角紅社員。社長の孫娘。
・西野美衣子(ミーコ)=日本列島生態環境保護システムの人工知能。
・鷹見結(タカミムスビ)=マルス文明尖山基地管理人工知能。クローンに移植されバージョンアップされた。
・大月瑠奈(るな)=マルス文明地球観測天体(月基地)管理人工知能『ルンナ』。月基地に保管されていた日本人標本から誕生。
・イワフネ=マルス人。ルンナが彗星の影響で破損した為に地球に降下した。
・澁澤(しぶさわ) 太郎(たろう)=日本国総理大臣。
・岩崎(いわさき)=内閣官房長官。。
・東山(ひがしやま)=内閣官房首相補佐官。西野の大学同期。
・ジョーンズ=極東アメリカ合衆国海兵隊指揮官。少将。
・ダグラス・マッカーサー三世=極東アメリカ合衆国中央情報局長官。
・ソーンダイク=宇宙国家アース・ガルディア民政局長。


空飛ぶ方舟

地球暦2020年10月19日【旧フロリダ半島沖(現フロリダ諸島)】

 

噴煙と雪雲(ゆきぐも)が混じるどんよりした空模様の中、(かろ)うじて連絡がとれた旧米海軍ロスアンゼルス攻撃型原子力潜水艦20隻が集結していた。

各艦長は迎えのボートに乗って陸上の旧ケープカナベラル宇宙センターで、ソーンダイク代議員からとある作戦の説明を受けた。

 

あまりにも奇想天外な作戦に皆は困惑したが、米国民を安全地帯に送り届ける作戦に全艦長が同意した。

 

艦に戻って1時間後、暗い空から巨大な三角形をしたマルス文明の大型シャトルが姿を見せると、艦長以下水兵はあんぐりと口を開けて固まっていた。

 

マルス大型シャトルは1隻ずつ、ロスアンゼルス型潜水艦を船内に収納すると月面のルンナラボに特設されたエアドックに移送した。

 

エアドックでは、鷹見 (むすび)の技術指導を受けた生き残りのNASA科学者と米海軍技術者が潜水艦のスクリューをパルスエンジンに転換する作業と、大気圏を出入りする際に生じる摩擦熱(まさつねつ)で船体が加熱されるのを防ぐための耐熱カプセル装着と製作がルンナラボに収容された欧州避難民とガルディア旧米国民を総動員して行われていた。

 

耐熱カプセルは、スペースシャトルの耐熱タイルを敷き詰めたずんぐりとした円錐形(えんすいけい)であり、潜水艦をすっぽりと覆っていた。

巨大な円錐形の急造潜水艦シャトルは、作業にあたった水兵から『空飛ぶ方舟(はこぶね)』と呼ばれるようになった。

 

20隻の『空飛ぶ方舟』は、北米大陸各地から米国避難民や生き残った軍部隊と装備を収容してルンナラボを往復した。

 

10月下旬になると、東山と結達が火星へ帰還したのと入れ違いに、火星からジョーンズ少将率いる第二次救出部隊が月面都市に到着した。

 

航空宇宙自衛隊の強襲揚陸護衛艦ホワイトピースや空飛ぶ方舟を使用した救出作戦は続けられ、2020年12月末時点で5万人を超す避難民、1万人近くの米軍兵士がルンナラボに収容された。

 

また、ジョーンズ少将の提案で火星救出部隊と旧米海軍が南太平洋上に電磁フィールド展開可能なメガ・フロート群が建設され、北米大陸等からの避難民15万人が月面都市に避難するまでの一時的滞在場所として活用された。

 

メガ・フロート船団は火山灰の影響が少ない南半球海域の火山帯を避けて旋回航行した。時おり濃厚な火山灰や火山ガスに遭遇した時はマルス文明を応用した電磁フィールドを展開して、フィルター機能で火山灰や火山ガスを中和し、メガ・フロート群に清涼な空気を送り込んだ。

 

火星の日本列島諸国が懸命に救出作戦に従事(じゅうじ)しているのを()の当たりにした英語圏代表代議員ソーンダイクは、日本政府と対立するのは得策(とくさく)ではないとの思いを強くした。

 

マルス文明と友好関係を築いた日本政府の技術力は実用的で、月面基地と地球海洋上メガフロートでの仮設居住区建設は大いに避難民達の生活向上に寄与(きよ)している。

 

地球上の天変地異が治まるまでは、一時的に衛星軌道上や月面で避難生活を送るしかないが、その為には火星から奪うのではなく、共存して生存圏を拡げる努力が必要である。

ソーンダイクの思想は、やがてアース・ガルディア内で反主流派をまとめる大きな流れとなっていった。

 

日本政府と東山は、鷹見 (むすび)を通じて月面マルス基地のメインサーバー『ルンナ』を閉鎖(瑠奈として火星に引き取った)した上でソーンダイク派閥に基地施設を提供した。

調査・観測機能が無い、単なる寝床程度の意味しかない最低限の居住区画ではあるものの、ソーンダイク派にとっては地球上の地震津波や火山噴火に逢うことが無く、スペースコロニーよりも居心地の良い環境は10数万人の国民を収容するには充分だった。

 

ソーンダイク派閥は日本政府と火星協力機構の支援を受けながら居住区を拡充していき、やがて月面地球側表面に人類初の月面都市が誕生することになった。

 

月面都市『ユニオンシティ』は北米大陸から次々と救出される避難民の生活拠点となり、残存旧米軍とガルディア軍ソーンダイク派部隊、火星協力機構派遣軍司令部が置かれた。ユニオンシティは、日本列島政府や火星協力機構との物資交換、軍事技術の共同研究を深めながらささやかな繁栄を遂げた。

この月面都市は、衛星軌道上の首都コア・サテライトコロニーに対峙(たいじ)する国力を持つ第2首都として力をつけていった。




ここまで読んで頂きありがとうございましたm(__)m
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