・大月(おおつき) 満(みちる) = 40代。主人公。総合商社角紅社員。内閣官房室に出向中。
・ミーコ(美衣子)=ゼイエス開発の惑星生態系維持管理自律進化型人工知能。
・イゴール=宇宙国家アース・ガルディア 総代表。
・アレクセイエフ=宇宙国家アース・ガルディア火星派遣艦隊司令。
・ソーンダイク=宇宙国家アース・ガルディア内政局長。
ガルディア暦4年(地球暦2021年)7月20日【地球衛星軌道上 アース・ガルディア コア・サテライト 総代表執務室】
「火星でオリンピックだと?」
イゴール総代表が
「はい。火星日本列島政府から、国家代表選手の派遣要請です。一番の注目はこの種目です」
アレクセイエフが
イゴールは目を見開くと、
「何の冗談なのだ」
プログラムには、お
『モビルスーツ玉入れ』
『モビルスーツ相撲』
『モビルスーツ騎馬戦』
と、何やら日本の運動会的な種目が混じっているが、驚くのは《モビルスーツは大会組織委員会が貸し出します(但し現地のみ)》と書いてあるのだ。
ちなみに《モビルスーツ
「我が国の技術ではモビルスーツは作れません。大会に参加して何らかのノウハウを
アレクセイエフが進言した。
「では早速代表選手を
イゴールが意味ありげに薄笑いを浮かべた。
同じ頃、火星【ボレアリフシティ郊外 火星協力機構 研究所】
新国立競技場と同じ規模のドーム広場でモビルスーツ競技の
新たに開発した、地上専用型モビルスーツ『グヘ』『スゴック』『陸戦用バンダム』を装備した陸上自衛隊 習志野特殊機動部隊と、航空宇宙自衛隊 ホワイトピース搭載モビルスーツ部隊の対抗試合の形式を取っていた。
「始めなさい」
最初は美衣子が手頃な巨大ワームを生け捕りにして『綱』として使おうとしたが、模擬会場がパニックに陥った為に自衛隊が巨大ワームを退治してから、鋼鉄製のワイヤーを10数本編み込んだ『綱』を使用した。
ホワイトピースのバンダムとガンキャノン、ガンタンクがその他のジムゥと一緒に鋼鉄の綱を引き寄せる。
対する陸自側も『グヘ』『陸専用バンダム』部隊で 対抗した。スゴックは装備した3本爪が綱を
綱引きはガンキャノン、ガンタンクと重量に優るホワイトピース部隊の勝利に終わった。ガンタンクが何故綱を引けたかは謎である。
「モビルスーツの体格で
美衣子が珍しく悩んだ。
「美衣子。モビルスーツの使い分けをするのも既に勝負事の駆け引きにならないかなぁ?」
大月が意見した。
「重量のあるガンタンクは確かに綱引きや相撲には強いかも知れない。でもジムゥやザクゥ、グヘ、バンダムなんかは機動力で速攻勝負だよ。それらの特徴を練習で感じ取って、選択するのはもはや実力であって、格差ではないよ。どのチームも同じ機種を選べるように量産化を進めてみたらどうだろう。」
「ん。お父さん頼りになるわ」
ご機嫌な美衣子が大月にしがみついて身体をよじ登ると肩車の位置に収まった。
――――――――――
日本政府が極東米露やアース・ガルディアにも招待状と参加要請をしたためた書簡を送り、全ての国と自治区が何らかの競技に参加する事になった。
特にモビルスーツ競技は、全火星国家とアース・ガルディアが選手団を派遣した。ちなみにモビルスーツ競技は操縦出来れば問題ないので年齢上限は無い。15歳以上ならば、モビルスーツが万一転倒した衝撃でも怪我はしにくいと研究で判明したのである。
オリンピック開催の2か月前から各国の選手団が東京お台場海浜公園の選手村に入り、シミュレーターによるモビルスーツ操縦技術の習得や、通常種目のトレーニングを行い、スポーツの祭典は盛り上がりを見せ始めていた。
日本列島のマスコミは火星で行われる人類初の画期的なオリンピック準備を連日報道しており、日本国民は来年に迫る戦乱を忘れさせるお祭り前の楽しい雰囲気になった。
もちろん、選手村のすぐ外では選手団を率いてきた各国の政府高官が敵味方入り乱れて接触し、情報収集や秘密協議に日々
地球歴2021年8月上旬【火星アルテミュア大陸 人類都市ボレアリフ 総合行政庁】
「パノフ大統領。それは科学的に証明できるのですか?」
ミッチェル大統領が訊いた。
「科学的というよりは、結果的に状況を分析するとその様に判断するのが合理的と言えるのです。ミッチェル大統領」
パノフ大統領が答えた。
「日本列島の"守護者"が感情に左右されやすいと?」
「ええ。第一次上陸作戦で重症を負った日本人を覚えていますか?」
「ミスター大月でしたな」
「彼が巨大ワームに呑まれた後、ワームは守護者によって東京に転移させられて大月が救出されたのです」
「一昨年の学会でマルス人のゼイエス氏が語った、日本列島を維持管理する自律人工知能が守護者と思われます」
「では、ミスター大月の意向次第で日本列島の運命が左右されるのですか?」
「人工知能である以上、マルス人の設定プログラムを踏まえてミスター大月の動向をトレースしているのかも知れません」
「ミスター大月をこちら側に引き入れてしまえば良いのでは?」
「自由と民主主義の守護者らしくない発言ですね」
「所詮は国益追求の方便に過ぎない」
「アメリカ人は現実主義者でしたね」
「貴国程ではありませんよ。五輪期間内に彼をこちら側に『招待』しますか?」
「あからさまな招待は彼の周りにいる人々に気付かれるでしょう。機会を待ちましょう」
パノフ大統領が言った。
彼らは美衣子の存在を推測したが、その"操作"方法を全く間違えていた。
同時期【神奈川県横浜市神奈川区 NEWイワフネハウス】
「お父さんが危ないわ」美衣子が言った。
「危険が危ないわ」結が同調した。
「パパッチがロックオンされてるっすね」瑠奈も同意した。
「どうして?」ひかりが訊いた。
「"海外の人達"は私達の動向はお父さんが原因だと思っているから」
美衣子が答えた。
「極東米露が日本政府と対決するのに決め手を欠いているからだろう?」
大月がお茶を啜りながら言った。
「極東米露は美衣子をコントロールして誰よりも優位に立ちたいのが本音だろう。アース・ガルディアとの協調は少なくとも極東アメリカにとって不本意な展開になったのかも知れない」
第一次アルテミュア大陸上陸作戦前に行われた沖縄辺野古基地での海兵隊将校と打ち合わせをした際に、海兵隊は明らかに極東ロシアを嫌っていたのを大月は思い出しながら言った。
「愚かだわ極東米露とやら」
美衣子がフンスと鼻息荒くテーブルをぺちぺちと叩いた。
「私を屈服させるにはカボチャポタージュ1万杯は必要よ」
「チョロすぎよ美衣子」ひかりが注意した。
「少なくともお父さんに庭付き一戸建てを
「ひかりさんも大概チョロいよ!?」
大月が突っ込んだ。
「いずれにしても私達が軽く見られているのは我慢ならないわ」
46億歳の威厳を持って美衣子が怒る。
「報復ですわ姉さま」15000歳の結が
「マスターゼイエスのお置き土産でやっつけるしかないっしょ」46億5000歳の瑠奈が続く。
「末娘なのに恐ろしい子。計画を言いなさい」
美衣子が瑠奈に説明を求めた。
「私達に茶々を入れてきた奴等をマスターゼイエスのダンジョンに誘き寄せてしまうっす」
瑠奈が言った。
「瑠奈。ダンジョンなんて初めて聞いたよ?」
大月が訊いた。
「ダンジョンとは、マスターゼイエスの研究室が沢山あるシドニア地区の地下施設ね」
美衣子が答えた。
「「ああー」」大月とひかりが生返事で応えた。
ゼイエスの突発的な研究癖は周囲には周知の事実であった。
自分の研究目的を達成すると、成果物や施設に
極東米露のエージェントが無事に済めば良いけどと、大月は他人事のように思っていた。
夕食後にひかりは秘かに大月の警護強化と、極東米露の意図を美衣子達が悟った事を東山を通じて首相官邸に伝えた。
岩崎は内閣調査室に公安とは違う大月の警護任務を与えた。
ここまで読んで頂きありがとうございましたm(__)m