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・ロイド・サー・ランカスター=英国連邦極東軍司令官。提督(中将)。
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・グリナート=ロイド提督の副官。元「ヴェンジェンス」艦長。大佐。
2022年6月1日午前1時【火星衛星軌道上 航空・宇宙自衛隊「ダイモス宇宙基地」司令部】
「MOAB搭載連合宇宙艦隊がヘラス大陸上空の衛星軌道上に到達。全艦発射位置に着きました」
「海軍連合艦隊、ヘラス大陸まで200㎞」
「ユニオンシティと日本の戦略航空編隊、海軍上空にてMOAB(大規模爆風爆弾兵器)ミサイル発射体制に入りました」
司令部のオペレーターが次々と各部隊の状況を報告する。
「提督。予定通りの進行です」
副官の
「フォボス基地から地上探査レーダーを照射」
ロイド提督が指示する。
衛星ダイモスから火星を
「ダイモス基地とのリンクは保っているかね?」
「はい」
「フォボス赤外線レーダーより、ヘラス大陸沿岸から大陸中央部まで巨大ワームとみられる熱源探知。総数約1万!」
オペレーターの声が心なしか上ずっている。
「連合海軍のE-2D
「沿岸探索中の潜水ドローン、大陸北側の海中に巨大な遊泳物体「群れ」を探知。群れの規模個体数10万!---潜水ドローンからの信号途絶!」
次々と想定を超える観測結果が報告される。
「ブレーンズの見解は?」
「こちらブレーンズ。南半球の生態系を推測する限り、これらの数は異常ではない」
「今の戦力で我々に
「探知された限りの数は殲滅できるでしょうが、潜在的な総数は今の数倍でしょう」
「
「
司令官席の卓上にある赤い色の電話が鳴った。上級司令部や各国政府首脳とのホットラインである。もちろん大月家も登録済である。
「ロイドです」
「作戦は中止よ。状況は理解しているわ」
「準備が足らず申し訳ございません」
「謝罪は不要よ。私の戦力見積もりが甘すぎたわ」
「それは・・・」
「ロイド、今晩ハウスに来なさい。反省会よ」
「了解しました」
``美衣子``との通話を終えたロイド提督は気を取り直すかのように大きく息を吸うと、命令を下した。
「作戦中の全部隊に命令。作戦中断!基地に一時帰投せよ!」
「よろしいのですか?」
鷹匠がロイドに確認する。
「アマクサが言った通り、弾切れで攻撃がとん
「統合作戦事務局が黙っていないでしょうな」
「役人の
ロイド提督が断言した。
「作戦中断!全軍速やかに作戦地域から一時撤収せよ!偵察衛星と海軍偵察機はヘラス大陸の監視を継続!」
こうしてヘラス大陸攻略作戦は一旦中断された。
火星協力機構「統合作戦事務局」から猛烈な責任追及の通信が相次いだが、作戦司令官のロイドは緊急協議のため不在であり、統合作戦事務局の不満は
同日午後8時【神奈川県横浜市神奈川区 NEWイワフネハウス】
共用のダイニングルームで「ミツル商事」の面々と澁澤首相、岩崎官房長官、桑田防衛大臣、作戦司令官のロイド提督が夕食後に反省会をざっくばらんに行っていた。
「やはり弾が圧倒的に足りませんな」
スコッチウイスキーのロックが入ったグラスを傾けながらロイド提督は呟くように言った。
「南半球の生物全てを殲滅するぐらいの覚悟でやらないと無理。中途半端はだめ、絶対」
美衣子がロイド提督と桑田防衛大臣の前でテーブルをぺちぺちと叩きながら言った。
「そのようにしたいのですが、
ロイドが珍しく語調を荒げて統合作戦事務局の方針に苦言を
「もはや協力機構の指示など無視して作戦を立てては
大月が首脳陣に訊いてみる。
「いや、それはまずい。人類都市ボレアリフからの穀物供給が
澁澤が苦しそうに言った。
「火星海洋上での海洋食料プラント稼働は軌道に乗りつつありますが、国民と列島諸国を養うにはやはりアルテミュア大陸内陸部と北方四島の穀倉地帯が必要です」
岩崎官房長官が言った。
一同がうーんと首を捻る。
「弾がなければ作れば良いのよ」
唐突に美衣子が言った。
「どこで?」
大月が訊く。
「シドニア地区でマスターが作った地下施設をフル稼働させるのよ」
美衣子が事も無げに言う。
「マルス文明のアンドロイド軍団を全て投入して徹底的に掃討作戦を行うのよ」
と言った。
「ミス・ミイコ。あなたの手持ち戦力は?」
ロイド提督が訊いた。
「戦闘用アンドロイド1万個体、水陸両用戦闘艦200隻。マスターの
美衣子がゼイエスの置き土産であることをさらりと言った。
「ゼイエスさん暇つぶしに恐ろしいもの作っていたんですね」
桑田防衛大臣が冷や汗を浮かべて言った。
「ただし、エネルギーの問題が有るわ。Pパワー(多次元供給システム)の設備が不足している。設備の増設は人類の新型爆弾MOABを量産するよりは容易。メガフロート都市一つ分を全て簡易ピラミッドで埋め尽くせば可能」
美衣子の説明に結と瑠奈も頷いた。
「我が国のゼネコンが全面協力したらどうなる?」
澁澤が訊く。
「2×4(ツーバイフォー工法)で2週間くらい」
美衣子が即答する。
「それで行こう!」
澁澤が決然と言い放ったところで美衣子が意見した。
「それは、ミツル商事警備保障部門への業務委託で良いのかしら?もちろん経費はそちら持ちで?」
岩崎と桑田の顔が少し引きつったが、
「可能な限りの負担は私の力の及ぶ範囲で尽力しましょう」
ロイド提督が
「少なくとも、手持ちの兵力が少ない今、
「もちろん我が国も独自の判断でミツル商事をバックアップしよう。火星巨大蛭も全力で育てて投入しようじゃないか!」
「
「「実は廃棄前に放していたのを回収しました」、と言えば多少数が増えていても文句は言われんだろう」
「総理大胆ですな」
「美衣子君達には負けるよ」
「
「少しは自重してね?」
こうして第二次ヘラス大陸攻略作戦は、史上類を見ない「陸・海・空・宙」の作戦として実行されることとなった。
2022年6月16日午前4時30分【火星 南半球ヘラス大陸から300㎞北方のマリネリス海域 第一作戦艦隊 英国連邦極東海軍航空母艦「クイーン・エリザベス」CIC】
「提督。第二作戦艦隊「いずも」から通信。「ネタはシャリを離れた」です」
副官のグリナート大佐が首を
「わかりました。上空待機中の戦略航空艦隊及びダイモス、フォボス基地と衛星軌道上のMOAB宇宙艦隊は、MOAB弾発射準備に入れ、目標ヘラス大陸西海岸!」
ロイド提督が命令した。
「人類史上初の火星文明を活用した民間警備会社との共同作戦ですか。果たして・・・」
ロイドがやや楽し気に呟(つぶや)いた。
同午前5時【火星 南半球ヘラス大陸東海岸から10㎞北方のマリネリス海域 第二作戦艦隊旗艦「いずも」CIC】
「先行するミツル商事水陸軍団がまもなくヘラス大陸東海岸に上陸します」
オペレーターが鷹匠准将に報告する。
「さて、ターミネイターさんのお手並み
鷹匠(たかじょう)が呟いた。
-同時刻【ヘラス大陸東海岸】-
明け方の薄暗い海岸になんの前触れもなく突然海面が盛り上がると200隻の銀色に輝くフランスパンの様な巨大物体が海面から顔を出すと赤い砂利が広がる東海岸の浜辺に勢いよく乗り上げた。
巨大な銀色をしたフランスパンの集団は砂利だらけの海岸でふわりと数メートル浮上するとそのまま貨物列車のように内陸部へ向けて一列になって突進していった。
-【第一作戦艦隊 旗艦「クイーン・エリザベス」 CIC】-
「第二艦隊「いずも」より通信。「ネタは
グリナート大佐がまたしても聞き慣れない
ロイド提督は頷くと
「すべて順調ですね」
と言った。
「MOAB(大規模爆風爆弾兵器)全弾、西海岸に投射!」
ロイドが命令した。
空母機動艦隊の
「対空レーダー、大気圏外からのMOAB弾頭捕捉。マッハ20で西海岸に落下中。まもなく着弾します」
「戦略航空艦隊のMOABミサイルがポップアップ機動(最終突入態勢)に入りました。宇宙からの誘導弾とほぼ同時刻に着弾予定」
程なく無数の流星がヘラス大陸「西海岸」に降り注ぎ、300㎞離れた「クイーン・エリザベス」からもその流星雨は視認出来た。
マッハ20を超える速度でヘラス大陸西海岸に突き刺さったMOAB(大規模爆風爆弾兵器)弾は地中深く突き進み、地下200m付近で通常弾頭の
ー【第二作戦艦隊 旗艦「いずも」 CIC】ー
「MOAB全弾着弾!起爆しました!」
「まるで西海岸全体が噴火したみたいだな」
モニターが映し出す爆炎のカーテンに鷹匠准将は目を見張った。
「艦上センサー、西海岸での急激な気温上昇を確認」
「もうひと押しだな」
「Pパワープラント船の稼働状態は?」
「現在90%の稼働率です。無線送信で順調に上陸部隊へエネルギー供給中」
「さすが火星文明だな。護衛艦隊はプラント船の警護に最大限の注意を払え!潜水艦隊も油断するなよ!」
「「じんりゅう」より!艦隊南側面海中に反応!海ワーム群れ20万!」
「全艦対潜戦闘!アスロック、爆雷をありったけ撃ち込め!パワープラント船を護るんだ!」
「オールウェポン・フリ-!」
鷹匠の艦隊も戦闘を開始した。
-【第一作戦艦隊 旗艦「クイーン・エリザベス」 CIC】-
「第二作戦艦隊が海ワーム群20万と交戦中!」
「我々も海ワームに警戒!」
「セントリー1より、西海岸地上レーダーに反応、サソリモドキ群、総数3百万接近!!」
「キャッスルリーダ、
ヘラス大陸中央部上空20000mを飛行していた航空自衛隊と英国連邦極東空軍のF3支援戦闘機とF35B攻撃機の群れが西海岸に向けて気化爆弾をセットした空対地ミサイルを次々と発射した。
ミサイルは西海岸の上空20mで
小型核爆弾に匹敵する猛烈な衝撃波と爆炎風が西海岸地表部分を襲った。
地上を覆っていた3百万のサソリモドキは
「セントリー1、更に地上レーダー反応!巨大ワームの群れが熱源目指して西海岸に集中」
「結構。第一作戦艦隊全艦はセントリー1の誘導に従ってトマホーク、ハープーンを発射せよ」
「全キャッスルは母艦に戻ってナパーム弾装備、西海岸にキャンプファイアを作り出せ!」
「第二作戦艦隊より報告、ミツル商事水陸軍団が東海岸から10km内陸まで進行中。間もなく「ヒル回収作戦」を開始するとの事です」
「よし、第一作戦艦隊は艦砲射撃可能位置まで前進せよ。作戦第三段階に備えよ!」
「ユニオンシティ海軍レールガン駆逐艦『ズムウォルト』前進します。護衛艦隊左右に展開、アスロック投射態勢。潜水艦隊、フリゲート艦は海底からの海ワーム襲撃を警戒せよ」
【ヘラス大陸東海岸 内陸部 ミツル商事水陸軍団 旗艦『アナーゴ』】
「瑠奈、もうすぐ目的地よ『荷物』の準備は大丈夫かしら?」
美衣子が訊く。
「こちら先頭艦『マロングラッセ』大丈夫っすよ!---あいたっ!!」
瑠奈が操縦する
「マロングラッセ横転。連結していた後続艦も次々と横転。どうしましょう。コンテナがフルオープンよ」
軍団制御に専念する
美衣子がフフッと小さく笑う。
「さすが瑠奈ね。『持ってる』わ。恐ろしい子」
「ロイドと鷹匠に連絡。『ネタが転んだ』、以上よ」
美衣子と結が座乗する旗艦『アナーゴ』も横転して90°傾いていた。
【第一作戦艦隊 旗艦 「クイーン・エリザベス」 CIC】
「第二作戦艦隊より緊急電!!『ネタが転んだ』以上」
ロイド提督は笑いを噛み殺しながら、
「第一艦隊全艦、作戦第三段階に入る!」
「提督、先程から怪しげな
三姉妹のフリーダムさを知らないグリナード大佐が
「問題ない。平常運転だよ」
ロイド提督は
第一作戦艦隊のフリゲート艦やイージス艦から多数のトマホークとハープーンミサイルが西海岸に出現していた「炎のカーテン」を維持し続けた。
ユニオンシティ海軍最新鋭駆逐艦「ズムウォルト」の
【ヘラス大陸東海岸内陸部20km】
瑠奈が操縦していた水陸両用戦闘艦『マロングラッセ』が横倒しになり、船体の側面にある貨物コンテナが全て開いて海上都市で育てられた大量の中型ヒルが赤い大地にわらわらと獲物を求めて散っていった。
『マロングラッセ』後続190隻余りの連結した艦列が残らず横転し、
最後尾で連結していて横転に巻き込まれた旗艦『アナーゴ』から報告や指示が飛び交う。
「「回収したはずの」火星ヒルが全て内陸部に移動!」
「瑠奈、全艦の連結解除。V字陣形よ。陸上、地中掃討モード。プラズマ砲スタンバイよ」
銀色のフランスパン軍団から半分の100隻程が赤い大地に先端をぐりぐりとのめり込ませながら地中に潜っていった。
地中に潜った戦闘艦は、先端をドリル状に変形させて地下50m程をV字形に広がりながら進行方向の地中に微弱な電波を発信して巨大ワームを捜索した。
「地中レーダーヒットっすよ!姉さま、地中に沢山ミミズが居るっすよ!!」
地中深くを進む「マロングラッセ」から瑠奈が報告する。
「瑠奈、プラズマ攻撃開始よ」
「了解っす!」
地中深く進む100隻の艦体先端が青白く発行すると艦の前方に巨大なプラズマ塊が発生して周囲の土壌を「溶かしながら」500m程プラズマ塊を維持して塊は消えた。表面温度1500℃のプラズマ塊に触れた巨大ワームは瞬時にその巨体を破裂させながら土壌の一部となり、溶けていった。
「まだまだプラズマ攻撃続けるっすよ!」
瑠奈の「地中艦隊」は後方の第二作戦艦隊から常時供給されるPパワーをフル活用してヘラス大陸東側の地中を文字通り焼き尽くしながら西海岸目指して進んでいった。
ヘラス大陸の巨大ワームは、西海岸のワームが空からのMOAB弾で地中から根こそぎ吹き飛ばされ、東海岸に逃げようとしようとしたところを地上から火星蛭の群れに身体を喰われ、地中では海岸から突き進んできた瑠奈の水陸軍団によるプラズマ攻撃で土砂ごと焼き尽くされながらその数を減らしていった。
最終的に大陸中央部砂漠地帯に追い詰められた巨大ワーム群は、火星蛭の群れと東西から降り注ぐ鉄と超電磁砲とプラズマ嵐の中に消えていった。
海ワームも進化間もない故に弱小な個体が大半であることが判明、鷹匠の
2022年6月23日午前8時、ダイモス宇宙基地がヘラス大陸上空を通過して赤外線とレーザーセンサーで地上を走査したが、巨大ワームやサソリモドキの群れは消え、
こうしてヘラス大陸は人類に制圧された。
火星協力機構統合作戦事務局はヘラス大陸開発をユニオンシティ国主導で行う事を内定したが、これには作戦の主導権を握ってきた英国連邦極東が激しく反発、ユーロピア共和国と日本国も統合作戦事務局に異議を申し立てた。
ユニオンシティ国のソーンダイク代表は事態の仲介に務め、ヘラス大陸開発権を辞退した。
ユニオンシティ国は一方で北半球アルテミュア大陸東部の開発を加速して、火星での影響力を強めた。
日本列島諸国は火星協力機構統合作戦事務局とユニオンシティ国への反感を強めた。
ヘラス大陸攻略で正規軍顔負けの戦闘力を誇示したミツル商事警備保障部門は火星協力機構軍事部門とイスラエル軍関係者から注目されることになる。
ここまで読んでいただきありがとうございましたm(__)m
次話は7月8日㈰に投稿予定です。