転移列島   作:NAO

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【このお話の主な登場人物】

大月(おおつき) (みつる)= 40代。一応主人公。総合商社角紅社員。
・西野 ひかり= 20代後半。一応ヒロイン。総合商社角紅役員。実は社長の孫娘。
・西野美衣子(ミーコ)=日本列島生物育成環境保護システム。
鷹見結(タカミムスビ)=マルス文明尖山基地人工知能。
大月瑠奈(ルナ)=マルス文明地球観測天体人工知能。日本社会勉強中。
琴乃羽(ことのは)美鶴(みつる)=マルス文明応用科学技術研究担当。
・岬 渚紗(なぎさ)=海洋生物研究担当。
・春日 洋一=海産物養殖担当。
・イワフネ=マルス人、商社マン見習い。
・澁澤 真知子=瑠奈の小学校担任。夫は澁澤首相。


超 恋愛無双~再び~

-ある日-【神奈川県横浜市 NEWイワフネハウス 3階「ミツル商事」】

 

「それでは新規事業開拓会議を始めます」

琴乃羽(ことのは)が会議の開始を告げた。

 

「先日のヘラス大陸攻略作戦で新たにアンドロイド兵による警備保障事業がスタートしましたが、大軍団を使った仕事が沢山ある訳ではありません。わが社の安定的な収益を将来的にも確保するために新規事業に取り組む必要があると思います」

社長の大月が言った。

 

「はーい!」

瑠奈が手を挙げる。

「ゲームっす!」

元気よく自信たっぷりに言った。

 

「不朽の名作「恋愛無双」の続編を作るのよ」

椅子の上に立ち上がった結が拳をグッと握りしめて賛同する。

 

「ふっ。この前の「恋愛無双-参-」なんて目じゃないわ」

美衣子も椅子の上に立ち上がって決意表明をする。

 

「くそゲー反対!」

琴乃羽が異論を唱える。

 

「これ以上心が折れる犠牲者を増やしてはいけないわ」

ひかりが琴乃羽に同調する。岬もうんうんと深く頷いている。

 

「うちの女性社員は恋愛経験が足りないわ」

美衣子が爆弾発言をした。

 

「「「お前が言うなっ!!!」」」

ひかり達の反撃は凄まじかった。

 

「たしかにくそゲーは否定しないが、改善すればそれなりに楽しめると思うんだけどなぁ」

大月が言った。

 

「選択肢の複雑さは二次元での表現だからこその問題だと思います」

春日が指摘した。

 

 

「VR(ヴァーチャルリアリティ)方式を進化させてプレイヤーの意識そのものをゲームの世界と同化させるのが理想形だと思います」

イワフネが意見を述べた。

 

「うーん。フルダイブVRはなんか意識があっちにいったまま帰れなくなる怖さがあるわね」

ひかりが言った。

 

「寝たきりの引きこもりが大量生産されそうで怖いな」

大月が呟く。

 

うーむと事務所の一同が腕を組んで首を捻って悩む。

 

「家庭向けゲーム機ではなくて、ゲームセンター向けに貸し出して、オンライン制御でこちらから時間制限をかけるのはどうかな?」

岬が方策を提言する。

 

「こちらでプレイ時間を制限するのはいい考えね」

ひかりが頷く。

 

「やりこみ要素が薄くなってモヤモヤしませんかね?」

琴乃羽が作品に対する魅力が半減しかねないと懸念を口にする。

 

「大量の寝たきり引きこもりを生産して社会問題になるよりはましじゃないですか?」

春日が取りあえずやってみたらと言う。

 

「現実を常に意識すればいいのよね?」

美衣子が出席者に尋(たず)ねる。

 

「取りあえず試作品を作ってみるわ」

「やるわ」

「理想と現実のバランスをとるッス!」

瑠奈が若干(じゃっかん)不安な事を言った気がするが皆スルーした。

 

「じゃあ、美衣子達にお願いしようかな。完成したら放置せずに必ずひかりに報告して三人以上でプレイすること!」

大月が条件付きで開発のGOサインを出す。

 

こうして開発計画が開始されたーーーーーー

 

「あいたっ!ちょっとこの腰の痛みは何!?」

 

ひかりが同級生「ミツル」と校門でぶつかって地面に倒れた衝撃で腰を痛めた。

腰痛(ようつう)で北欧に転校するにはこれぐらいの痛みが必要・・・」

 

「その選択肢は却下(きゃっか)!シナリオ本筋に関係ないところで不必要な痛みはマイナスポイントよ」

ひかりがダメ出しをする。

 

「風紀委員の便所飯ルートを体験してみたけど結構心に染みるトラウマだわ・・・」

岬の顔が若干蒼ざめている。

 

「実際の事件をもとに再現してみた」

「事件ダメっ!!再現アウトっ!!」

岬が激しく反対する。

 

「刺激のないゲームは魅力が半減する」

 

「「「現状で魅力ゼロだわ」」」

ひかりと岬、琴乃羽の反応は変わらず(すさ)まじかった。

 

「この戦闘機パイロットは実際に戦闘機を操縦出来れば面白いかもね」

大月が「サクヤ」ルートを体験して感想を言ってみる。

 

「わかった。戦闘機は自衛隊とほかの国もあるけど?」

 

「軍事機密に触れない範囲で他の国の戦闘機もいくつか入れてみて。うん、戦闘機ゲームの要素もありかな」

 

「テニス部の先輩も実際にテニスゲームをプレイする要素を盛り込んだらどうかしら?」

琴乃羽がテニスゲームを盛り込むことを提案する。

 

「女教師ルートは・・・」

 

「「「却下!」」」

ひかり、岬、琴乃羽がなぜかムキになって反対する。

 

男性陣にとってはご褒美(ほうび)かもしれないのだが・・・

 

「女性教師は男子生徒の憧れじゃないですかぁ?」

春日が男性代表として名残惜しそうに言う。

 

「「「えっ!?」」」

三対の白目が春日を(にら)む。

 

「す、少しぐらい夢があってもいいんじゃないかな!?」

大月がとりなすように入る。

 

「憧れは憧れのままで終わらせるべきよ」

瞳に(かげ)りを(にじ)ませたひかりがフンスと断言する。ひかりさん、まじ怖ぇ。と大月は思った。

 

「そこのシナリオはストーカーではなく、(あこが)れのマドンナ的に行ってみるわ」

美衣子がわかったようなわからないような返事をする。

 

「じゃあ、これをベースに美衣子達よろしくね」

 

「「「任せなさい(るっス!)」」」

三姉妹は元気よく返事した。

三姉妹は自作ゲームの栄光を既に予感していた。

 

ーーー他の社員は既に悪夢の再来を予感していた。

 

ーーー数日後

 

大月の操縦するF15J戦闘機がすいすいと空中で巨大なタコと戦っていた。

 

「なんで浮遊タコ?」

「昔から地球にいる「スカイフィッシュ」を巨大化させてみた」

「そうなの!?」

 

無駄口を叩いている内に浮遊タコの触手が戦闘機の主翼を直撃し、大月は脱出した。

 

しばらくパラシュートでスカイダイビングを楽しんだ後に着地した場所は聖セント・アトランティス学園の女子寮中庭だった。

 

中庭でバーベキューをしていた寮生たちから黄色い歓声が挙がる。

「キャー!戦闘機パイロットさんよ!?」

「カッコイイ!!」

「付き合って」

 

「・・・・・・」

大月はうんうんと幸せを噛み締めるように深く(うなず)くと、

「はい。このルート採用!」

 

「えっ!?」

ひかり達が唖然(あぜん)とする。

 

「あなた・・・私というものがありながら」

ひかりの瞳がまたしても陰りを帯びて大月を見つめる。

 

「ひかりさん待って!これはゲームだからっ!テストだからっ!」

大月はひかりに首根っこをつかまれると問答無用で大月家の方にズルズルと引きずられて消えていった。

怯えた春日が「ナンマンダブ・・・」と大月に向けて手を合わせていた。

 

「あれは・・・あと2時間は帰還できませんね」

「ひかりさんって結構ヤンデレ?」

岬と琴乃羽がひそひそと話す。

 

「尊い犠牲の上に成り立つゲームシナリオ・・・心が痛いわ」

美衣子が目頭を押さえながら(なげ)く。

 

「美衣子さん棒読みまるわかりだから」

岬と琴乃羽は何故か、じと目だった。

 

「岬にはこのルートがお勧め」

美衣子が攻撃を避けようと懸命に新ルートをアピールする。

 

「これね。テニス部ルートかぁ・・・」

 

「かなり改善したわ」

 

朝練で見かけた転校生ミツルをテニス部に勧誘した「カグヤ」はミツルをデートに誘うことに成功した。

 

そしてデートの日、まだ日が昇らない早朝の三浦漁港にミツルとカグヤは居た。

「今日は一日沖釣りでのんびりしましょっ!」

 

「海釣りなんて初めてだよ、ありがとうカグヤ」

「えへへ~。ほら、舟に乗るわよ」

 

三浦市沖の東京湾でミツルとカグヤは釣りを楽しんだ。

二人は鯛たいや鯵あじ、サバなど大量に釣り上げた。

 

カグヤは舟の上で釣り上げたばかりの鯛を三枚におろして刺身を即席で造り上げた。

「美味いっ!最高だよカグヤさんっ!!」

「おおげさよミツル君」

「俺一生カグヤさんについて行くよ!」

「そんなっ!気が早いわ。・・・私達まだ高校生よ」

「美味い刺身の前にそんな理屈は要らないよ。カグヤ、港に戻ったら結婚しよう!」

「嬉しいっ!」

 

ミツルとカグヤは三浦漁港に戻るとすぐに近くの神社で結婚式を挙げて地元の漁師たちから祝福された。

毎朝夫婦で沖に出る二人を漁師仲間は生温(なまあたた)かくいつまでも見守るのであったーーーーーー

「なんか途中から変」

岬がそっけなくダメ出しをする。

 

「変!?」

カグヤ編を担当した瑠奈ががくりと床に手をつく。

 

「なんで初デートで大漁だから結婚になるの?」

目出度(めでた)い楽しい思い出があったじゃないすかっ!」

 

「そんな落語のオチじゃないんだからっ!」

「1回の釣りデートで素人の高校生が漁師顔負けデビューなんて、あり得ないでしょう!?」

岬がバンバンと事務机を叩きながら熱弁する。

 

「いい!?高校生の恋愛っていうのわねっ、甘ーいっ、思い出を少しずつ積み上げながらやがて成就するものなのっ!」

 

「「「・・・・・・」」」

美衣子達三姉妹がドン引きしていた。

 

「岬はピュア派が好みなのね?」

岬は思わずキャラ崩壊した自分に気づいて赤面した。

 

「わかった。毎日釣りデートして半年後に漁師デビューエンドにするわ」

「マグロエンドにするッス!」

「テニス部どこ行った!?」

 

ミツル商事のゲーム開発は果てしなく続きそうだった。

そんなある日、ゲーム開発の転換点とも言える出来事が起きた。

 

真知子先生の抜き打ち家庭訪問?である。

「瑠奈さん。ご両親に家庭訪問のご連絡プリントを渡したはずですが?」

 

「ごめんっす先生。ランドセルの底でくしゃくしゃに丸まっていたッス!」

胸を張って(わる)びれずに瑠奈が答える。

 

真知子先生いきなり出だしからつまづく。

「くっ・・・もういいです。今から瑠奈さんの職場訪問に変更です!」

 

「ええっ!?でも職場はここですよ?」

「今はゲームの開発中ですよ!」

 

真知子先生がゲームソフトを手に取る。

「ん?「恋愛無双」?瑠奈さん、これは?」

 

「恋愛シミレーションゲームの開発中の試作品ッす!」

「ほう?これが。瑠奈さんにはいささか早いような・・・?」

「恋愛に年齢は関係ないっすよ!」

「それ小学生の言う事じゃありませんっ!」

「取りあえずプレイして感想が欲しいっす!」

「わかりました。(つつし)んでプレイさせていただきます」

 

真知子先生のプレイという名の「検閲(けんえつ)」が始まった。

「なんですか・・・家政婦が男子生徒の家に・・・はしたないっ!」

「えー!?想い人の近くに近づけるなんて素敵じゃないっすか!?」

「こんな下心見え見えのやり方はいけませんっ!」

「でも・・・」

「このシナリオは却下です!!」

 

真知子先生の「検閲」は苛烈(かれつ)を極めた。

特に教師「マチコ」ルートは同じ名前故か、激しい思い入れがあるようでシナリオは真知子先生が1週間瑠奈の補習を中断してまでも大月家に通い詰めてシナリオ作りに没頭した。

 

そしてーーー

 

「できましたわ」

心なしかやつれた顔の真知子先生が大月に報告した。

 

「お父さん、早速やってみるっすよ!」

瑠奈が大月にプレイを(うなが)した。

 

「では・・・」

大月が端末の前に座ってプレイを始めた。

 

新学期最初の英語の授業で「ミツル」が「マチコ先生」に指名される。

「さあ、ミツル君。この文章を訳してくださいね」

 

大月は英語が苦手だった。しかも、マチコ先生の英文は超長文だった。5000文字はあるのでは?

下手な転移列島作者よりも文字数が多かった・・・。

大月はマチコ先生が英文の読書が趣味であることを知らなかった。

 

「先生。降参です」

ミツルがうなだれてしまう。

 

「ふっ。甘いわ。ミツル君。放課後に進路指導室にいらっしゃい。補習です」

マチコ先生の罰は厳しかった。

 

その後もミツルとマチコ先生の補習という名の個人授業は続き・・・

 

「勉強することの素晴らしさを感じた高校生活だった・・・HAPPY END・・・」

 

「くわーっ!!」

温厚な大月が激しくゲーム機の前で悶絶(もんぜつ)して床をゴロゴロと転がり、机をバシバシと叩く。

 

「このルート、絶対攻略無理!」

大月がゼエゼエと息を荒げて真知子先生に詰め寄る。

 

「当たり前です。学校は勉強する場所です。恋愛などあり得ません!!」

 

「「「それ最初から言えやっ!!」」」

 

こうしてミツル商事のゲーム開発は精神的にも肉体的にも全社員が耐えられずに開発が中止となった。

 

ただ、このまま(やみ)に葬り去るのは忍び難く、三姉妹は一縷(いちる)の望みを持って秘かに自作ゲーム紹介サイトで発表したが「21世紀最大のクソゲー」認定を受け、ショックを受けた三人は数日間シドニア地区の地下研究施設にターミネイター軍団と共に引き籠るのだった。

 

また大月はしばらくの間、夢で英語にうなされる夜が続いたという。




ここまで読んでいただきありがとうございましたm(__)m
次話は7月22日㈰に投稿予定です。
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