2023年1月6日午前3時【地球 英国 スコットランド ニューグラスゴー 国際・宇宙空港 日本マルス航空2206便】
地球初の国際宇宙空港から1機のスペースシャトルが離陸した。
乗客の大半は英国連邦極東軍の交代要員と地球復興局所属NGO組織の職員達である。
乗客達はどんどん遠ざかる灰色の大地と薄暗い海に
「かくして
真っ暗な宇宙空間にポツリと浮かぶ地球を視界に収めながら東山が呟く。
英国女王陛下を始めとする王室メンバーの懇願により、
「イワフネハウスの食事が
東山は久しぶりに火星に「帰国」したら最初に海の
同時刻【地球北米大陸 ネリス州グルームレイク 戦略秘密基地 エリア51】
地下深くの格納庫から火山灰が一面に降り積もる地上に白い袋を
白い袋の中には大出力電磁波照射アンテナが装備されており、そのアンテナは灰色の空の一角を向いた。
やがて地下司令部から照射開始の命令が下ると一斉に白いドームの群れから
↑地球へ照射された福音システム
この強大な電磁波は、各海域に展開していた原子力潜水艦の超長距離通信電波によって
この地域で生存していた人類は電磁波の干渉により脳細胞が振動して脳機能が
深海で待機中の戦略原子力潜水艦や電磁パルス防御を
同時刻【月面都市ユニオンシティ 行政庁舎】
エリア51占領部隊が全滅したとの報告を受けたソーンダイク代表は
「これ以上、マッカーサーの好きにさせるな!衛星軌道上からの核攻撃でエリア51を地上から消し飛ばすんだ!」
「しかし、放射能汚染が・・・」
補佐官が懸念を示す。
「今奴を
ソーンダイクが苦渋の核攻撃を決断した。
「ラグランジュベースに駐留している宇宙戦艦を全て衛星軌道上へ移動させるんだ!」
「サイバー攻撃で宇宙艦隊が乗っ取られませんか?」
月面安全保障補佐官が問う。
「無線封鎖で外部との接触を
「ジョーンズ司令はオーストラリアで危機的状況にありますが?」
「わかっている。火星でもエリア51のサイバー攻撃が及んだようだ。ボレアリフとの通信が不安定になっている」
「今度は何だ!?」
「エリア51から強力な電磁反応を探知!地球各地と
「月面全域に非常事態警報!」
「直ちにシャトルで脱出だ!可能な限り、火星へ急ぐんだ。火星諸国駐留軍に協力を要請しろ!」
「電磁波さらに増大!生体維持が危険レベルです!」
「「ぐわあぁぁ!」」
↑福音システムによる肉体的影響
会議室に居た全員が頭を押さえてその場で
「マッカーサー!貴様っーーー」
激しい頭の
この日、ユニオンシティに在留していた5万人を超える民間人と火星諸国駐留軍隊員が物言わぬ液体となった。
月と地球の中間地点付近を航行していた日本マルス航空月面都市行のマルスシャトルはラグランジュベースから国際宇宙救難信号を受信した為、航路を変更してラグランジュベースに機首を向けた。
シャトルへの誘導管制が一切行われず、こちら側からの呼びかけにも応答しない事に不審を感じた機長は副操縦士に火星横浜本社への緊急報告を指示した上でラグランジュベース民間宇宙港に向かった。
「おかしい・・・。通常、軍民共同施設の場合は軍の管制官から誘導指示が出るが一切応答しない・・・」
かつて
「まさか我々をおびき寄せる為の
横田の在日極東米軍基地を退役した副操縦士が
「ユニオンシティ軍が今更民間シャトルを人質に取ってどうするというのだ」
機長が肩を
「あれは・・・ユニオンシティ軍の戦艦だな」
機長が右前方を漂流する1隻のユニオンシティ宇宙軍戦闘艦艇を指さした。
戦闘艦艇は船体各所の航行灯が点灯しているものの、姿勢制御に失敗して前後にゆっくりと回転しながら何もせずに地球方向へ漂って行った。
「あのままでは太陽系から外れてしまうぞ!?」
機長と副操縦士は
ラグランジュベースへ近づくにつれ、何隻もの漂流艦艇に遭遇した民間シャトルはラグランジュベースの管制空域に入った。
「まもなく民間駐機区画に入ります。誘導ビーコンありません!」
「慌てるな!ゆっくり慣性航行だ」
機長が乗客に英語でアナウンスを行う。
『こちら機長。突然でありますが、お客様にご報告申し上げます。当機は先程ラグランジュベースから国際宇宙救難信号を受信、現在航路を変更してラグランジュベースへ航行中です。お客様にはお急ぎの所ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございません。状況を確認次第ご報告致します』
地球欧州のイングランド島ニューグラスゴー基地から搭乗した客の大半は英国連邦極東軍の交代要員かユニオンシティ難民高等弁務官事務所所属のNGO職員である。彼らは機長のアナウンスを真剣に受け止め、騒ぐこともなく、窓から
「機長、あの区画ならば駐機できるかと」
副操縦士が基地ターミナル脇の空間を指した。
「よし、慎重に横付けしろ。向こうからタラップの接続は無いと思えよ」
「はい。乗客の中から救助に協力してくれる方を
『こちら機長。まもなくラグランジュベースターミナルに自力接岸します。今までの所、ベースからの誘導及び通信が一切ありません。これは異常事態です。我々は自力で救助現場の確認をせねばなりません。大変恐縮ですが、お客様の中で宇宙空間活動経験のある方、又は訓練を受けられた方のご協力を要請いたします。最寄りの客室乗務員までお声がけください』
10分後、乗客の一人だった英国王室護衛任務で
シャトルは基地ターミナル口に密着するように
「おい・・・。これはいったい何だ?」
救助要員に志願した王室近衛兵が
「
副操縦士が顔を
「生命維持装置の誤作動でしょうか?」
「まさか!軍事施設がそんなイージーミスで
副操縦士と近衛兵が会話しながら辺りを調べる。
「やけに衣服が所構わず散乱しているな。わが隊ならば整理整頓の不備は一週間の外出禁止だぞ・・・」
近衛兵が
「しかし、自動小銃も衣服と放置するなんて変じゃありませんか?」
「軍紀の乱れだけでは説明出来んな」
二人は嫌な予感を感じながら立ち入り禁止と表示されているものの、扉が開け放しの
「うわっ!これは!」
「全員その場で・・・何が!?」
↑全員溶解したラグランジュベース管制室
管制室内の機器は正常に作動している様だが、
副操縦士は管制室の通信機器を使って機長にベース内部の状況を伝えた。
近衛兵は月面英国大使館に緊急通信を試みたが誰も応答しなかった。
ラグランジュベースの一角で彼らは途方に暮れるのだった。
いつの間にか座席で寝入っていた東山が侍従達に叩き起こされたのはそのすぐ後の事だった。
ほぼ同時刻【火星衛星軌道上 ユニオンシティ軍レーダー偵察衛星
コードネーム『
KH-M2は
↑福音システムにハッキングされたユニオンシティ宇宙軍軍事衛星
KH偵察衛星はアンテナを真下に向けると原子炉を最大出力で稼働させてレーダー波ではない、電磁波の一種であるリリー波を真下に向けて照射した。
ボレアリフ市民は
日本国と英国連邦極東のボレアリフ総領事館の外交官達だけは、事前に
火星ボレアリフ市民20万人の大半がこの電磁波攻撃で溶解した。
1月6日午前6時【東京都区内 某所 地下大深度避難施設】
都内地下鉄支線のとある場所、地下50mを超える深さに日本政府要人達が一時的に緊急避難出来る施設が存在した。
↑政府専用核シェルター
火星転移以降、東京都内に直接的な脅威が起こらなかった事と、国民よりも先に避難する事を嫌う澁澤総理大臣の意向により、この施設は永らく使用される事が無かった。
今、この施設の他都内数か所に分散にした大規模地下避難施設には、不測の事態による日本政府消滅リスクを回避すべく内閣の閣僚が
シャドウが地球のみならず月面や火星にまで電磁波攻撃を仕掛けてきたことに政府官僚機構は恐怖し、ユニオンシティ国消滅直後にこの施設の使用を開始した。
そしてそのうちの一つに移動した澁澤総理大臣がNHK地下放送局も兼ねる会見場で日本国民に向けた緊急声明を生放送で読み上げていた。
『4年前、我が国が火星に転移した直後、私達は食糧・燃料が不足し、
しかしながら国民の皆様はこの国難に際し、
私達は劇的な変化を遂げた火星環境の中、マルス
我が国及び列島諸国の人類は母なる星 地球再生に直接
しかしながら、本日私は、我が国も含めた全ての地球人類が真の脅威に直面した事を報告しなくてはなりません。
昨日未明から我が国は地球北米大陸に潜んでいた『シャドウ』と呼ばれる地球外知的生命体から大規模なサイバー攻撃を受けております。
ほぼ同時刻に、地球各地でも『シャドウ』に
現在、南太平洋海上都市は
防衛省と
現在わが国の国土は、マルス文明技術を応用した特殊な電磁波遮断シールドを官民合同で各地に展開し、電磁波攻撃から国民の皆さまをお守りする態勢が出来ております。したがって、国民の皆さまにおかれましては、冷静な行動をお願いするものであります」
澁澤はここで言葉を切って、国民に自身の言葉が受け入れるように間を空けると、無言でテレビカメラを見つめた。澁澤の緊急会見は全てのチャンネルで国内外に放送されていた。
「マルスアカデミーからの情報によりますと、『シャドウ』なる存在は地球に生命が誕生する以前からマルスアカデミーと対立し、地球創生期より
シャドウ・マルスの本拠地と思われる星系
『シャドウ』の目的は、地球生物全てを実験体として
過去、彼らの
そして今、私達人類は意に沿わぬ存在として、滅亡の
これは、我々地球人類にたいする明確な『侵略』以外の何物でもありません!
私は日本国憲法前文で
「これで
↑防衛省総合指令室
市ヶ谷の地下深くに在る防衛省総合指令室で澁澤総理の中継映像を見ていた桑田防衛大臣が
「大規模な部隊で地球へ派遣されるのでしょうね」
司令席の隣に座る石原
「大規模と言っても地上で受け入れ態勢が整わない以上は無理だ。最初は独立旅団規模で英国連邦極東やユーロピア特殊部隊と合同だろう」
桑田が頭の中で動員計画の見積もりを立てながら応えた。
「
満は瑠奈の心配もさることながら、日本国が火星転移前にも増して本格的に世界と
「あなた・・・私達は出来る事を出来るだけやる、のではなかったのですか?」
ひかりが満の右腕を優しく両腕で抱きかかえる。ひかりの暖かな体温が満の心を落ち着かせてゆく。
「・・・そうだな。やるしかないんだよな」
満はそっとひかりの腰を抱き寄せながらミツル商事の取るべき道に想いを
澁澤が全人類世界に呼びかけた『地球連合防衛軍(UNEDF)』創設は列島諸国とイスラエル連邦、スイス連邦の議会において
瑠奈からの通信が
国会は明治新政府発足以来、憲政史上前代未聞の「24時間審議」を生中継のもと10日間行い、衆参両院は満場一致で地球防衛法案を可決した。
1月26日、澁澤内閣は地球連合防衛条約への
人類反攻の時が始まろうとしていた。