転移列島   作:NAO

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バトル・オブ・ブリテンⅡ/オセアニアの戦い【前編】

2023年1月7日【オーストラリア ノーザン・テリトリー地球連合防衛軍基地】

 

「出来たっス!」

やりきった表情の瑠奈(ルナ)とアシスタントのツルハシ13号が油と汗にまみれた顔を(ぬぐ)う。

ツルハシは汗をかいていないが、一応 (あるじ)真似(まね)をしている。

 

「で?・・・この芋虫(イモムシ)が空を飛ぶのか?」

作業を見学(監視とも言う)していたワイズマン中佐が首をひねる。

 

「あーっ!?信じてないっスね!試作品だから見てくれはアレですけど今の地球人類には必要だと思うっスよ!」

瑠奈が胸を張る。

 

()ずは実戦に耐え得るか試験するっス!」

瑠奈がそそくさと飛行機械の機首コクピットに乗り込むとワイズマンを手招きした。ちゃっかりコクピット背後スペースに乗り込んだツルハシ13号も手招きをする。

 

ワイズマンは何となく負けた気分になったが、勇気を振り絞って先頭座席に乗り込んだ。

 

「浮上っス!」

全長5m程の飛行機械が両サイドの可変式ロケットエンジンを下に噴射しながらフワリと浮き上がった---150m程。

 

「ヌガァァァ!早い早いっ!こんなんじゃ機体が持たん!」

ワイズマンが急上昇のGで座席に座ったまま押し(つぶ)されそうになって警告する。

 

「飛行操縦系、姿勢制御系共に問題無いっス!早速戦場で試して合点ッス!」

瑠奈はあっけらかんとしており、平常運転の様だ。

 

 芋虫型の試作飛行機械は可変式ノズルを下へ噴射させたまま、機体尾部にある小型単発エンジンを噴射して前方へ加速して飛行した。

 

基地から15km程離れた最前線の防衛陣地上空に到達すると、無線機から前線司令部の通信が入る。

『こちらバークリー陣地。見慣れない機体だな。所属はどこだ?』

「こちらミツル商事警備部隊の瑠奈っスよ!空中砲台の試験飛行ッスよ!腕試しがてら手ごろな目標プリーズっす!」

 

『ハハッ!ボーナスに感謝する。防衛陣地右翼前方3kmの岩山麓(いわやまふもと)に大型の生体反応が見つかった。こちらからだと岩山が邪魔で直接銃砲が撃てん。頼めるか?』

(うけたまわ)りッス!」

 

『頼んだぞ!ワームバスター』

 

瑠奈とワイズマンを乗せた飛行機械は火山灰で視界が(さえぎ)られる中、レーダーとマイクロビーム、簡易GPS(瑠奈が気球を飛ばして位置測定拠点とした)の誘導で操縦は簡単だ。

 

ヘッドアップディスプレイに表示される地図と探知座標を手掛かりに岩山を回避してサイボーグワームが潜む砂地上空に到達した。

 

目標探知アラームが鳴る。

「目標補足!ワイズマン中佐、出番っス!」

 

「おぇっ!・・・やれやれこれが武装制御系か?お嬢、この並んでるカラフルなボタンを押しまくればいいのか?」

「そうっス!左から順番にお願いするっス!」

「この赤いやつだな。ほれ!」

 

ワイズマンが赤いスイッチを押す。

途端(とたん)に座席の後ろからヘッドアップディスプレイ付きのヘッドセットが迫り出してワイズマンの頭にスポッと(はま)る。

 

「何だこれ?」

「30mm視覚連動型バルカン砲っス!」

 

飛行機械機首下部のバルカン砲がブーンと低く(うな)りながら火を噴く。

 

前方の岩山がバルカン砲の破壊力の前に削り取られていく。

ものの30秒で岩山の高さが半分になり、ワイズマンと瑠奈の視界に眼下の砂地で(うごめ)くサイボーグワームが入る。

 

「次っ!黄色いボタンっス!」

「ほれっ!」

 

操縦席のすぐ後ろ、機体両側に備え付けられた8連装ロケットランチャーからロケット弾がシュバッと飛び出す。

16発の非誘導型ロケットは砂地へ真っすぐに着弾して爆発すると、サイボーグワームの破片交じりの砂を空高く噴き上げた。

 

生き残ったサイボーグワームが頭頂部のセンサーで瑠奈たちを(とら)えると巨体をくねらせながら砂地からジャンプして襲い掛かる。

 

「のわっ!お嬢!」

「オレンジボタン!ッす!」

 

「うぉぉぉ!」

恐怖に耐えかねたワイズマン中佐がオレンジボタンを連打する。

 

連打ボタンに反応した30mmバルカン砲が再び火を噴き、機体の上下に装着されていた4基の大型多目的ミサイルが次々と発射された。

 

「誘導はお任せッス!」

瑠奈がミサイルの誘導を担当する。

 

30mmバルカン砲を至近距離で喰らって殻の一部を破壊されたサイボーグワームは砂地へ逃げ込もうと巨体を(ひるがえ)すが、背後からミサイルが直撃して砂地に巨大な爆炎が立ち昇る。

 

「ターゲット撃破っス!」

瑠奈が前方に座るワイズマンとハイタッチを交わすとガッツポーズをとった。

 

『こちらバークリー。目標の消滅を確認。よくやってくれた。ワームバスターのボーナスに感謝する!』

苦戦続きの前線司令部から久しぶりに歓声が挙がった。

 

ノーザンテリトリー基地へ帰投した瑠奈とワイズマン中佐は司令部に(おもむ)いてジョーンズ中将に試作兵器の性能評価結果を報告した。

 

「・・・以上ッス!使い物になるッスか?」

「ワームバスターとして充分に使えるとも!間に合わせのパーツであれほどの物が出来るとは・・・でかしたな。二人とも」

ジョーンズがニヤリと笑う。

 

「これで前線部隊の負担が少しは減るだろう。火山灰の影響を受ける事が無く空中支援を行えるのが良い!」

「戦闘時空中稼働時間が15分足らずですがよろしいのでしょうか?」

ワイズマン中佐が訊く。

 

「複数の砲台を交互に運用すればエア・カバーは維持される。対地上攻撃用としては問題ない」

「他の戦場でも利用できるといいですね」

 

「この試作飛行機の設計図をニューグラスゴーへ送信できるかね?」

「このUSBメモリに入ってるっスよ!」

瑠奈がジョーンズにUSBメモリを渡した。

 

「瑠奈嬢には助けられてばかりだ。感謝する」

瑠奈の頭をジョーンズのゴツゴツした手が優しく()でる。

 

「んぁ~、最高っス!」

「じゃ、お嬢。これから突貫工事で量産だ!」

ワイズマン中佐がウットリしていた瑠奈の首根っこを(つか)むと倉庫へ引きずって行った。

 

倉庫では先程の戦闘映像を見た整備兵たちが集結しており、瑠奈に組み立て作業への協力を申し出てきた。

「早くあの新兵器を量産して虫けら共に喰われた戦友の(かたき)を取ってやるんです!」

と血走った眼で整備兵は言うのだった。

 

「了解ッス!みんなでじゃんじゃんバリバリ作るッスよ!」

連日連夜の試行錯誤と組み立て作業で疲労困憊(ひろうこんぱい)している(はず)の瑠奈だったが、そのような事をおくびにも出さず嬉々として整備兵たちの群れに飛び込んで製作作業に取り組んだ。

 

「あんなに人を思いやるとは、とても人工知能の化身とは思えんな」

ワイワイと大勢の将兵達と騒ぎながら作業に打ち込む瑠奈を見守りながらワイズマンは思った。

 

【挿絵表示】

 

↑深夜にも関わらず整備に忙しいニューグラスゴー基地

ーーーーーー

 

2023年1月21日【地球 英国 スコットランド ニューグラスゴー(旧英国海軍基地)UNEDF(地球連合防衛軍)司令部】

 

薄暗い司令部内に設置された赤いランプが明滅(めいめつ)して警報システムが作動した事を知らせた。

 

【挿絵表示】

 

↑バトル・オブ・ブリテンⅡブリテン島 戦況図

 

「ランズ・エンド岬レーダー基地より敵探知!サイボーグワーム、同サソリモドキ群およそ2万、ダンケルク海岸からドーバー海峡を横断中。英仏海底トンネル跡からも大量の虫達(バグズ)が真っすぐ我が国沿岸に向かっています!」

「守りはどうなっている?」

臨時司令官のロイド提督が()いた。

 

ロイドは女王陛下護衛の為、志願して火星から『どこへもドア』で訪れたまま、シャドウのサイバー攻撃で火星との連絡が途絶(とぜつ)したために帰還できなくなっていた。

 

「ロンドン南西60km、オールダーショット郊外に国防義勇軍(日本で言うところの予備自衛官)歩兵4個大隊、ドイツから撤退してきたNATO機械化歩兵2個大隊が展開中」

「避難民の状況は?」

 

「沿岸部の生存者は既にロンドン市内に疎開させています。オールダーショットには2000名の生存者が居ましたが現在輸送部隊と共にロンドン北部に退避しています」

「不幸中の幸いか・・・」

 

「ですが、ロンドンにはまだ5万人を超える人々がおります」

「海路は虫共(バグズ)の侵攻と鉢合(はちあ)わせするから無理だな。この火山灰では飛行機やヘリも使えんから徒歩か、(ある)いは自動車か?」

 

「そちらは最大限の車両を徴発(ちょうはつ)してロンドンへ向かわせています。鉄道ですが、大変動以降、火山灰で送電設備が故障していましたがミツル商事運輸部門とボランティア技術者が協力、一時的に復旧しました。キングス・クロス駅、パディントン駅から中部リバプール郊外までピストン輸送中ですが、あと2時間はかかります」

「上出来だ!防衛部隊は避難民の脱出まで、あらゆる手段を使ってバグズ共をロンドンに入れるな!」

 

【挿絵表示】

 

↑前線で迎撃するNATO将兵

 

「北海に展開中の戦略原子力潜水艦『アガメムノン』から入電!MOAB(大規模爆風爆弾)弾道ミサイル全弾ドーバー海域に照準完了!」

「発射!!」

 

旧フランスダンケルク海岸から、火山灰で灰色に変色したドーバー海峡へ飛び込んでテムズ川河口を目指していたサイボーグワームと偽サソリモドキの群れに、(はる)か上空から複数の光り輝く流星が降り注ぐ。

 

【挿絵表示】

 

↑ドーバー海峡空爆

 

やがてドーバー海峡に、ワームやサソリモドキの破片を含む巨大な水柱が幾つも立ち昇った。

「MOAB全弾目標に着弾!」

「敵影なお5000!侵攻速度変わらず、依然(いぜん)テムズ川を指向中(しこうちゅう)!」

 

「あれを使うか」

ロイドが(つぶや)く。

 

「カーディフ空軍基地からWB(ワームバスター)21を出撃させろ!組み立てが完了したものから順次、ロンドン防衛部隊を空中から援護!短時間でも構わん!」

 

『WB21(ワームバスター)』は、オーストラリアで孤立している瑠奈が「暇つぶしに」分解した垂直離着陸(VSTOL)型ハリアー戦闘機と、アパッチ対戦車攻撃ヘリコプターのパーツを組み合わせて作り上げた「試作型空中戦闘砲台」である。

 

【挿絵表示】

 

↑防衛線に向かうWB-21ワームバスター編隊

 

「カーディフ空軍基地からワームバスター6基が出撃!20分後に防衛線上空(ロンドン)へ到着予定!」

「なんとしても奴らの上陸を許してはならん!」

地上戦開戦時の悲惨な戦況を思い出しながらロイドは命令した。

 

 シャドウとの開戦直後、西ヨーロッパは東側から大量の旧ソヴィエト製戦車の猛攻を受けたが、戦車は『シャドウ』に支配(ハッキング)された各地の秘密軍事都市管理AI(人工知能)が、廃棄、放置されていた戦車を無人遠隔操作用に改造したものだった。

 数万台に上る新旧戦車軍団が雲霞(うんか)(ごと)くポーランド国境に殺到して侵攻、黒海のルーマニア側海岸からはサイボーグワームと偽サソリモドキの群れが上陸、あっという間に天変地異で弱体化していた各地のNATO軍を蹂躙(じゅうりん)して(わず)か2週間でスペインのイベリア半島まで制圧した。

 

防衛線を突破されたNATO軍は各地で孤立、イングランド島や中欧アルプス山脈に立て()もって地の利を生かすべく、防衛陣地を構築していた。

 

中東では黒海から旧トルコのイスタンブールへ上陸した巨大サイボーグワームと偽サソリモドキの群れが残存トルコ軍を殲滅(せんめつ)して侵攻、カッパドキア地下都市に立て(こも)るイスラエル連邦軍と一進一退の攻防戦を繰り広げていた。

 

 ロイドは(ひそ)かな危機感を抱いていた。

 イギリス本土はローマ時代を除き、外敵に侵略された事が無い。

 

 あのWWⅡ(第二次世界大戦)時も、強大なドイツ第三帝国軍の猛攻に「バトル・オブ・ブリテン」と後世で呼ばれる熾烈(しれつ)航空撃滅戦(こうくうげきめつせん)を展開して制空権を守り切り、ドイツ軍の上陸を許さなかった。

 

 故に、イギリス本土には「本格的な」陸戦用機甲師団が存在しないのだ。

 

 天変地異で火山灰に埋もれた国民は疲れ切っており、士気が低い。

 加えて、今までの侵略者と違い、今回の侵略者は英国お得意の「外交交渉」が通じず、人類を『食糧』としてしか見ていない。

 慈悲(じひ)もなく、ワームに()かされて(くら)われる未来をどれだけの国民が想像できるだろうか?

 

「!?奴らは何をしているのだ!」

ロイドは暗澹(あんたん)たる思考に沈みかけていたが、前線部隊を映すスクリーン片隅にテレビカメラを抱えた一団を見つけてオペレーターに()いた。

 

「彼らは我々の勇猛(ゆうもう)果敢(かかん)な姿を英国中に知らしめる役割を、善意で担ってくれる英国放送協会(BBC)の生き残りですね」

無邪気な笑顔でオペレーターが答えた。

 

 スクリーン脇の小型テレビにはそのテレビクルーが映るBBCワールドニュースが生中継されていた。

『かつて、アインシュタイン博士は第四次世界大戦で人類が使う武器はこん棒と石だと予言していました。今、こちらの前線部隊では弾薬が不足しつつあり、迫りくる虫の群れに対してセラミック製建材で出来たこん棒と瓦礫(がれき)、石で対抗しようとしています』

緊張と恐怖のあまり顔面蒼白(がんめんそうはく)のリポーターは、虫に恐怖しているのか、生中継に恐怖しているのか、慣れない様子でレポートを続けていた。

 

「あいつらは火星生物の恐ろしさを知らんのか?」

矢継ぎ早に防衛部隊へ指示を出しながらロイドは憂鬱(ゆううつ)になるのだった。

 

「まだ、ナガサキ極東BBCの方がまともだ・・・」

 

突然レポーターの絶叫が聞こえ、テレビ画面が暗転した。

「国防義勇軍の前線が地下からワームの奇襲を受けています!」

 

ロイドはため息をつくと、テレビ画面を視ることなく前線部隊の指揮に没頭した。

 

そして、憂鬱(ゆううつ)な戦いはオーストラリア大陸でも繰り広げられていた。

 

 

【挿絵表示】

 

↑オーストラリア戦況図

 

【オーストラリア中央部 ノーザンテリトリー準州 バークリー台地 地球連合防衛軍 防御陣地】

 

「カルバートヒルズレーダー基地から緊急!インドネシア諸島東ティモール海上から偽ワームと偽サソリモドキ群5万!ダーウイン防衛ラインを迂回(うかい)してヨーク岬半島手前の海岸からこちらに侵攻中!」

「裏をかかれたか!?」

ジョーンズが声を上げる。

 

「違うっス!陽動っすよ!おそらく本隊はディエゴガルシア方面から直接キンバリー砂漠を横断してテナント・クリークからこちらの背後を攻めるつもりっスよ!」

瑠奈(ルナ)が断言する。

 

「ニューカスル早期警戒システム敵影探知!バグズおよそ10万!キンバリー砂漠をこちらへ向かって侵攻中!」

「ね?」

瑠奈がフンスと胸を張る。

 

「お嬢!威張(いば)ってないでこちらからお出迎えに行くぞ!」

ワイズマン中佐に首根っこを掴まれた瑠奈が「マロングラッセ」に連れて行かれる。

 

「孤立しているというのにどうしてあんなに落ち着いていられるのでしょうか?」

通信機を背負う隊員が不思議そうに首を(かし)げる。

 

「我々よりも激戦の場数(ばかず)が多いのだろうよ。彼女は人類誕生より前から生きていたのだぞ」

ジョーンズが真面目な顔で応えた。

通信兵は肩を(すく)めると瑠奈との通信をスピーカーモードに切り替える。

 

『マロングラッセ出撃準備完了!先に砂漠の虫をやっつけるっスか?』

「そうだ。『マロングラッセ』とマンスフィールド級空中艦隊はテナント・クリーク側防衛線上空でキンバリー砂漠から来る虫共(バグズ)にたんまりとミサイルを振るまってくれ」

ジョーンズが指示する。

 

【挿絵表示】

 

(うけたまわ)りっス!ジョーンズおじさん、例のペットを試しても良いっスかね?」

「アレか?ワシはもう虫共(バグズ)を好きになれんのだが?」

 

「好き嫌いはご飯の時だけで充分っスよ!?瑠奈の可愛いペットは可愛くワームを頂くっス!」

モニターの向こうで両手を合わせた瑠奈が目を(うる)ませてジョーンズ中将におねだりする。

 

ジョーンズがため息をついて許可する。

「『ネタ』の取り扱いは慎重にな?」

 

「あざっス!」

瑠奈が元気よく敬礼する。

 

ジョーンズは、おそらく瑠奈はやらかすだろうが、サイボーグ(ヒル)は遠隔操作可能であるから同士討(フレンドリーファイア)ちは無いだろうと予想した。

 

【キンバリー砂漠上空『マロングラッセ』】

 

虫共(バグズ)上空についたぞ、お嬢」

ワイズマン中佐が瑠奈(ルナ)に告げる。

 

「『22号改』ファミリー投下ッす!」

 

『マロングラッセ』から10個の貨物コンテナがパラシュートを付けて投下された。

貨物コンテナの大きさは5m四方であり、内部には体長3mの「サイボーグ改造蛭(かいぞうヒル)」が収納されていた。

 

 ヘラス大陸で放し飼いにしていた火星蛭の一部を瑠奈はツルハシ3号に命じて回収、ワーム捕食生態をあらためて研究し直し、対ワーム戦用 改造蛭(かいぞうヒル)として試験的に飼育していた。

 

 パラシュートを付けた貨物コンテナがゆっくりと「蒸し暑い」砂漠に着地すると、コンテナの(ふた)が自動的に解放されて中から元気よく改造(ヒル)が飛び出す。

 

 改造蛭は「生身」のヒルよりも元気に飛び跳ねると真っすぐにサイボーグワームの群へ(きき)々として飛び込んで行った。

 

 サイボーグワームに取りついた小さな改造蛭は(むさぼるように)硬いワームの(から)を喰い破ると口から特殊な溶解液を分泌(ぶんぴつ)してワームの体内を荒らし回ると再び殻を喰い破って外に飛び出して次の獲物へ飛びかかった。

 

「キンバリー砂漠サイボーグワーム群、防衛線手前で混乱している模様。映像ご覧になりますか?」

「遠慮しておこう。結果は見なくてもわかる。瑠奈嬢の勝利だろう?」

 

 ジョーンズ中将は息を吸い込むと意を決して指示する

「今だ!ありったけの武器を奴らに叩き込め!」

 

 キンバリー砂漠防衛部隊に配置されていた「空中砲台」や対戦車ミサイル、りゅう弾砲が火を噴いてサイボーグワーム群に砲弾とミサイルの束を叩き込んだ。

 

【挿絵表示】

 

↑砲爆撃で炎上するキンバリー砂漠

 

5時間後ーーー

 

「生身のバグズは全滅!残りは全てサイボーグバグズです!」

「これよりEMPボムを使用する。防衛線の部隊は電磁波対抗システムを起動!2キロ後退!」

 

「これで終いだ。EMPボム発射!」

ジョーンズが命令する。

 

 マンスフィールド級空中戦艦のハッチから小規模な電磁パルスを生み出す弾頭を載せたミサイルがVLS(垂直発射筒)から飛び出すと、防衛線からややバグズ後方の上空で炸裂(さくれつ)した。

 

 爆発した弾頭から小規模だが密度の高い核分裂が発生して大量の中性子と電磁波が周囲2キロにわたってすべての物質をま(つらぬ)いた。

 

 サイボーグバグズはその場で強烈な電磁波を全身に浴びると、体内にある人工知能と人工心臓がショートして焼け焦げ、口から煙を吐き出すと砂漠に倒れた。

 

「敵バグズ、殲滅に成功!」

「ダーウイン基地から至急!国籍不明の爆撃機編隊が接近中!数50、速度マッハ5!?」

オペレーターが|驚愕《きょうがく)しながら報告する。

 

「気を(ゆる)めるな!戦いは始まったばかりだぞ!」

ジョーンズが防衛部隊を叱咤(しった)した。




ここまで読んでいただきありがとうございましたm(__)m
次話は10月28日日曜日に投稿予定です。

ヒトの体を失ってしまいまいたが、琴乃羽のイラスト完成です。
「イラストレイター 更江 様」に描いて頂きました。良い味出していますです!

【挿絵表示】


マンスフィールド級空中戦艦のイラスト完成です。
今まで兵器系のイラストまでは取り組んでいなかったのですが、
「イラストレーター鈴木プラモ様」にお願いして描いて頂きました。不格好な現代&未来兵器の持ち味を上手く引き出していただきました。

【挿絵表示】


【このお話の登場人物】
大月 瑠奈(ルナ)=マルス地球観測天体管理人工知能。結の妹分。

ワイズマン=イスラエル連邦軍中佐。軍事顧問としてミツル商事に出向中。瑠奈(ルナ)の相棒。
ジョーンズ=オーストラリア防衛軍指揮官。ユニオンシティ地上軍中将。

ロイド=英国連邦極東軍 イングランド防衛軍臨時司令官。中将。
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