本編はまだ出来上がっていないんだ……すまない……。
今月入試があるから忙しいんだ本当にすまない……。
書き終わってる奴だけ投稿します……本当に本当にすまない……。
盤外編 バレンタイン~夜叉神天衣の場合~
☗ 決意
何故か知らないけど天ちゃんの付き人である晶さんに呼び出された。
場所は神戸のとある喫茶店。人も少なく落ち着きのある場所だ。
そんな晶さんはテーブルの上で手を組んで深刻そうな顔つきだ。
「それで晶さん、一体どうしたんですか?」
「お嬢様の様子が最近可笑しいのだ。よそよそしく何か隠しているのはすぐにわかったが聞いても『晶に答える義理なんてないわ』といって教えてくださらない。太一先生なら何か知っていると思ってな」
「…え?天ちゃんが隠し事?」
「そうか、先生も心当たりがないか…」
なん…だと…?天ちゃんが隠し事ッッッ!?最近、よく会うがそんなことは微塵も感じさせなかったぞ!!
なんだ、何かヒントとなるものがないのか…!
2月…。―――嘘、だろ…?
「ど、どうした先生!虚ろな目で世界そのものに絶望した顔は!!?」
「…晶さん、落ち着いて聞いてください」
「なんだ!?何か知っているのか!?」
「今月は何があると思いますか?」
「今月は確か二月だったな…。おい、まさか―――!」
俺と晶さんは合わせるように言う。
「「バレンタイン!」」
「天ちゃんがよそよそしいのはもしかしたら意中の相手にチョコを渡すためなのでは?」
「し、しかし!まだそう決めつけるには―――!」
「この前公園で天ちゃんがこう言ってきました『そ、その…男って
「それで先生はなんて答えたんだ?」
「喜びのあまり死ぬね、と。これは完全にバレンタインを意識してのことでしょうね。男である僕から聞くことによって作り出す勇気の一歩としたわけだとしたわけだ」
「いい答えだ、先生。しかし、お嬢様がそういう意中の相手がいるなんて…」
晶さんのその表情は暗い…。かくいう俺も晶さんと同じような雰囲気を醸し出していることだろう。
晶さんは幼いころから…それはもう天ちゃんのご両親が存命だったころからからの付き合いだ。心の奥底から愛している天ちゃんが誰かに奪われるかもしれないという恐怖感。
俺もそんな感じだ。勝手ながら天ちゃんは孫のように思っている。くそっ!!情けない!!!天ちゃんの幸せのためだと思っても割り切れん!!
晶さんはおもむろに口を開いた。
「先生、一つ提案があります」
「…なんでしょうか」
「お嬢様の意中の相手の調査をしませんか?」
「晶さん…それはっ!」
「わかっています。もしばれたら私はお嬢様に嫌われてしまうでしょう。けれど!誰だかわからない男に渡すぐらいなら――」
「みなまで言わなくてもいいです、晶さん…!」
俺は、晶さんの想いに感銘を受けた。
だったら!俺もその思いに答えるべきなんだ―――!天ちゃんの幸せのために―――!!
「ゆこう」
「ゆこう」
そういうことになった。
☖ 尾行
「前方500m、お嬢様の姿を発見」
「了解、引き続き尾行を続行します」
晶さんが双眼鏡で天ちゃんの姿をとらえる。
俺たち二人は黒服、マスク、サングラスという最高の変装を施し天ちゃんの尾行を行っていた。
天ちゃんは朝から地下デパートに赴いていた。
まだ寒い時期、厚着をしている天ちゃん。すごくモフモフしてる、撫でたい。
付き人も一緒に行こうとしたが強く断られたらしい。
ますますバレンタインが疑わしくなってきた…。
サッサッと身軽な動きで建物の陰を移動しながら天ちゃんと一定の距離を保つ。
天ちゃんは、地下デパートの入り口で誰かを待っていた。
「もしや…男か…!」
「いいえ、晶さん。落ち着いてください。まだわかりませんよ。…と、あの子が天ちゃんの待ち人って…え?」
「あの子は―――!」
天ちゃんに駆け寄っていったのは
弟弟子、八一君の一番弟子。
なら天ちゃんのチョコを渡す相手は八一君か…?いや、ならそれぐらいなら最近大人しくなった天ちゃんなら教えるはずだ。
カートを女子小学生二人が可愛らしく引きながら談笑していた。主にあいちゃんが一方的に喋っているが。
天ちゃんは材料を丁寧に選んでいた。だが、『ひな鶴』の娘であるあいちゃんの観察眼には負けている、途中から機嫌が悪い。
「ほう、『ふんっ!これぐらいで勝った気にならないでよね!』か。天ちゃんらしい」
「先生、読唇術を!?」
「いや、天ちゃんの雰囲気、苛立ち様、先ほどまでの行動、それらをすべて考慮して天ちゃんならそういうでしょう」
「流石だ、先生。とても心強い」
だが、晶さんもまた最短ルートを即座に割り出し俺を誘導してくれている――!とても動きやすい。
俺と晶さんは少しの間見つめ合うと、拳と拳を合わせた。
友情が育まれた瞬間だった、晶さんとはいい友人になりそうだ。
「しかし…ここで観察しても意中の相手については知りえないな…。どうする先生?」
「いや…もう少し様子をッ!?」
「どうした先生!?」
俺の動揺に晶さんが心配そうに問いかける。
だが、動揺するのは仕方がない。天ちゃんの手には―――赤薔薇があったのだから。
「赤薔薇がどうかしたのか?」
「赤薔薇の花言葉は…」
俺は震える声でこういった。
―――『あなたを愛しています』
俺の言葉に晶さんの顔から血の気が引いていく。
「これはもう意中の相手だと考えていいでしょう、赤薔薇を渡して告白…天ちゃんも本気だ」
☗ 調理
場所は変わってここは料金さえ払えばだれでも料理できるところにいた。
あいちゃんは八一君に渡すから八一君の家では作れない。天ちゃんはお屋敷だと人がたくさんいて作れない。
だからこういうところに来たわけか。
俺と晶さんも材料を買って天ちゃん達の様子を伺いながら観察していた。
「ちなみに晶さん、天ちゃんの料理経験は?」
「ゼロだ」
不安しかない。
と思っていると天ちゃん達がいるところからあいちゃんの声が届いた。
「天ちゃん、何やってるの…?」
「…何ってチョコ溶かしてるんだけど」
そこには割ったチョコをボウルに入れて、
「違うでしょ!このだら!!」
あいちゃんが怒ったああああああああああっっっ!!??旅館の娘として間違った調理法は許せんのだろう。
流石の天ちゃんも申し訳なさそうにしている。しょげた天ちゃん。―――晶さん写真撮ってないで集中して。
「わ、悪かったわね!一回も料理をしたことなんてないんだから!!」
「けどけど直接お湯入れるのは違うってわかるでしょ!?」
「はぁ!?そんなこと知らないわよ!溶かしてって言われたらレンジかお湯入れて溶かすっていう発想になるじゃない!!アンタが先手番何指す?って聞かれて速効「相掛かり」って答えるようなものよ!?」
えぇー……そんなんで納得するはずが……。
「そう、だね……ごめんね天ちゃん」
あ、相手はあいちゃんだもんな(諦め)
「…先生」
「どうしました晶さん」
「何か急に申し訳なってきました…」
「いきなり冷静にならないでください。僕だってそう思い始めてきたんですから」
天ちゃんは慣れない手つきでチョコを作っている。その光景は天ちゃんのためだと言って勝手に行動している俺たちにとっては猛毒だった。
申し訳ない―――彼女がこうやって一生懸命作ってくれてる、知らない男の子のために。
天ちゃんのほっぺについたチョコ―――それは彼女が一生懸命な証拠だ。
天ちゃんの疲れた表情―――相手のために全力を尽くした証拠だ。
天ちゃんが時折見せる幸せそうな顔―――これは相手を愛しているということに他ならない。
だから―――
「帰ろう」
「帰ろう」
そういうことにした。
☖ 結末
俺と晶さんはバレンタイン当日、朝から某コーヒー店でコーヒーを啜っていた。
あの日以降、晶さんとは気が合いこうやって食事を共にする仲だ。
だが、俺たちの心は穏やかとは真逆のものだった。
「天ちゃん…」
「お嬢様…」
考えている人物は一緒。
夜叉神天衣についてである。今どうなっているのか、休日だからいつ頃攻めるのか。
不安に不安を重ねていると俺と晶さんの携帯に同時にメールが受信された。
宛先名―――夜叉神天衣
その名前を見た瞬間、俺と晶さんは―――限界を超えた。
「…なんで二人ともそんな汗だくなの?」
「い、や…晶さんと…はぁ…はぁ…追いかけっこ…してて…ね…はぁ…はぁ…」
「きも」
天ちゃんが指定した公園に全速力で向かった俺と晶さんは冬場にもかかわらず汗をかいていた。青春の匂いがする。
晶さんは俺よりも息切れが少ない…流石だ…。
「ふぅー…。それで天ちゃん用事って?」
本文に書かれていた『いつもの公園にこい』、つまり用事があるってことだ。
天ちゃんは顔を赤らめ、モジモジしながら何か迷っているように見えた。
「お、お嬢様、無理は―――」
「まって、ちゃんと言うから」
天ちゃんはそう言うと二つの可愛らしいラッピングが施されたものを出してきた。
「…これ、あげる」
「天ちゃん―――!」
「お、お嬢様―――!それは―――!」
「い、いらないならいいわよ!自分で食べるから!!」
「いやいやいや!頂くよ!!ねぇ、晶さん!?」
「あぁ!お嬢様からまさか頂けるとは!?」
天ちゃんが渡してくれたのは―――黒色をベースとした装飾に赤色のリボンと赤薔薇の装飾が為されている『バレンタインの主役』のチョコだった。
「晶」
「はい…!」
「い、いつも感謝してる。私のわがままに付き合ってくれて。たまに私のこと嫌いになるんじゃないかって本当は怖かったの。お父様とお母様みたいに突然いなくなるかもなんて…。そう考えた時期が合ったわ」
「そっ、そんな!不肖晶いつまでもお嬢様と一緒にいます!!」
「けど、晶は居てくれた。昔からずっと私の傍にいて、離れないようにすぐそばで手を握れるような距離に居てくれた。それがたまらなく嬉しかった。―――だから、本当にありがとう」
「お、おおおおお嬢さまああああああああああああああっっっ!!」
天ちゃんの言葉に晶さんは大粒の涙で答え、抱きしめる。
嫌がる素振りは見せずに、されるがままだった。
なんか…涙出てきた…。
「太一」
晶さんから解放された天ちゃんは次に俺に話しかける。
いつものような棘のある声ではない、優しくて慈しみのある声だった。
「…天ちゃん」
「アンタにも感謝している。
「うん……!うん……!」
小学4年生に泣かされる俺と晶さん…。
みっともないかもしれない、周りから見れば恥ずかしい光景かも知れない。
けれど、それがとても愛おしかった。
天ちゃんが一生懸命チョコを作ってくれたのだ。晶さんが訊いても答えなかったのは晶さんに作るため。
天ちゃんが素直になったバレンタインの魔法。
感謝せずにはいられなかった。
そして、晶さんの最後の一言―――
「尾行する必要はなかったな!先生!!」
「は?尾行?どういうことか説明しなさい晶」
これで全て台無しになった。
☗ 夜叉神天衣という女の子
「ほんっとに信じられないわ!」
晶と太一の奴私のことを尾行していたなんて……!って、あの時の私はどうかしてたわ!
今思い返せば……うぅ…頬が赤い…。
「恥ずかしかったけど…ちゃんと言えた…。まぁ、いいわ」
私は一人で
服が汚れるけど…今日ぐらいはいいわよね。
「お父様…お母様…。私ね、将棋強くなったわ。今ならお父様に勝てちゃうかも。―――ふふっ、冗談よ。あのね、これ置いておくわね。私が頑張って作ったの。お母さまみたいに上手くできてないけど」
墓石に置いたのは二つのチョコだった。
「話したい事沢山あるの。けど、そろそろ行かなきゃ―――あのクズ
今、墓石の前にいるのは高飛車なお嬢様ではない。
ましてや、じゃじゃ馬でもない。
素直で、可愛らしくて、愛らしいどこにでもいる普通の女の子だった。
袖で頬に伝ったモノを拭い、彼女は立ち上がって大きく伸びをする。
ふぅーと小さく吐き出した息は空中で白く染まった。
それが何故か面白く思い、微笑んだ。
振り返ると遠くから手を振っている付き人に向かって天衣は歩き出すのだった。
わい「会長との対局ぼかすか~w」
アニメ視聴後
わい「ええ……(困惑)」