今回は一旦sideをゲーマー夫婦に向けつつ、先へ行きます。
そして、今回は雫の心理描写、ユエとの対面です。
二人とも結構好きなキャラなので、しっかりと書いていきたいッ!
それでは、どうぞ!!
ハジメとリリィが奈落へ落ちたという報告がトラップ手前で離脱できた
「ほぉう?」
「……ほぉ、う……?」
「【推測】、リリィ・ドーラと南雲ハジメは生徒の内の誰かによる謀略に巻き込まれたのだろう」
「まぁ、
「……リリィ、リクと、シュヴィの、息子―――ハーフ、回復力チート、だから、だいじょーぶ、でも、ソイツ、許すまじ……」
「【理解】しかし【疑問】、ハーフならば弊害はあるはずだが?」
「リリィの場合、武装出力が低くて、飛行能力が無いのが弊害だ。まぁ、それがどう響いてるかだけどなぁ……」
「……でも、修復力、シュヴィ達と同等―――復帰力、最強……」
「【理解】、そして【報告】、《オルクス大迷宮》内に強大な精霊反応。まだはっきりはしていないが、
「なーんでこんな異世界にも、そんなのが居るんだろうなぁ……」
「……理解、不能……」
「【同意】」
「そういえばアインツィヒ、リリィとの連結状況は?」
「【回答】、あの迷宮は精霊が入り乱れていて、通信は不可能。たが、
「ただ?」
「
「……どういうことだ?」
「【推測】、リリィ・ドーラ自身が独立した
「それか?」
「
「……おい、冗談はよせ、アインツィヒ」
「そう考えれば、迷宮にて確認された強力な精霊反応にも納得できるのだ、
「……その可能性は?」
「半々というべきか……この世界では
「エヒトとやらは
「【否定】、もし
「そうか……まぁ、それは後々に解決するとしよう。それでこの先の事だが―――どうする?」
「【考察】、取り敢えず同行の継続を推奨。生存しているのならば各地を旅する筈、我々は現状身分を明かせず、土地も知らない。観測機を使うという手もあるが、関所がある以上無断侵入は危険。故に、同行を推奨する」
「シュヴィは?」
「……リク、の、判断に、任せる……」
「じゃあ取り敢えずは同行、リリィを発見し次第離脱だ」
「「【
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「はぁ……」
私、八重樫雫は憂鬱な気持ちに浸っていた。
何故なら、親友の想い人とその親友がクラスメイトの内の誰かの魔法で奈落へ落とされ、その事について誰も詮索出来ないようイシュタルにより箝口令が敷かれたからだ。
その親友も未だに目を覚まさない。
「香織、貴女がこの現状を知ったら……怒るのでしょうね?」
そう、精神的ショックから己を守るために眠り続ける親友に語りかけ、親友の心の平穏を祈り続ける。
王国は二人の損失をあまり重く見ていなかった。
片や“無能”のハジメ、初期ステータスオール10の成長速度も脆弱な文字どおりの無能。そして“中途半端”のリリィ、他のクラスメイト達と違い強力な特殊技能もなく、ステータスは平均、精々見たことのないナニカを使うのみ。
この二人の損失を前に、イシュタルと国王はむしろ他の者でなくてよかったと安堵の息を吐いていた。もっとも、それでも
私も我慢さえしていたが、自分たちを逃がすために残り、そして何者かに落とされてしまった二人を、「まだ、死ねない」とう慟哭を叫んだ
勿論あの光輝は怒ったが、それも結局光輝の株を上げるのみに収まってしまった。
あの時自分達を救ったのは、あの化け物を押さえ込んでいたのは間違いなく奈落に落ちたあの二人だ。
光輝さえ歯が立たなかったアレをたった二人で足止めして、何者かの魔法の流れ弾で奈落に落ちた。
クラスメイトは皆一様にその事について触れようとしない。「もし自分の放った魔法だったら」と思うと恐ろしくなり、話題に出せなくなる。それは、自らが人殺しであると認めてしまうものだからだ。
結局、皆は逃げるように二人が勝手にヘマをして死んだことになった。死人に口なしと、二人の自業自得だと、現実逃避した。そうすれば、皆悩む必要はないと。
苦しむ者がここにいるにも関わらず―――
その時、不意に握りしめていた親友の手がピクリと動いた。
「……ッ!?香織!分かる!?聞こえてる!?」
必死に呼び掛ける、すると眠っていた親友の瞼が震えながら、少しずつ開いていく。
そして、その
「雫……ちゃん?」
「香織!」
ベットから身を乗り出して、目覚めた親友を見下ろす。
親友はしばらく焦点の合わない目でボーっとしていたが、脳が覚醒したのか私に目の焦点が合い、私の名前を呼んだ。
「ええ、そうよ!私よ!香織、体はどう?違和感はない?」
「う、うん、平気だよ?ちょっぴり怠いけど、寝てたからだろうし……」
「そうね、五日間も眠っていたんだもの―――怠くもなるわ」
そうやって体を起こそうとする親友に手を貸して苦笑しながら眠っていた日数を口から洩らす。
その言葉に親友は反応した。
「五日間も?そんなに?何で……私は確か、迷宮に行って―――それで……」
徐々に合っていた焦点が散っていき、五日前の出来事を思い出そうとする親友にマズイ!と思い、話を逸らそうと試みるも、遅かった。
「それで――――あ……リリィちゃんは?ハジメくんも……」
「ッ!……それ、は」
苦しげに、何を言えばいいのか分からなくなっていく私を見て、親友もあの
「嘘……だよね?そう、だよね?リリィちゃんも、ハジメくんも、私が倒れたあと……助かったんだよね?リリィちゃんは、リクさんの所かな?ハジメくんも図書館か訓練所かな?いるよね?うん、二人に御礼を言わないと……だから離してよ雫ちゃん……ね?」
まるで、現実逃避するように一人で喋り出し、私達を守り、散っていった二人を探そうとする親友。
私はそんな親友を見て、胸が張り裂けそうになるのを抑えて、真っ直ぐに香織を見つめる。多分、表情は悲痛に歪んでいたのだろうけれど。
「……香織、彼らはここにいない―――貴女もわかっているでしょう?」
「やめて―――」
「香織、貴女の覚えてるとおりよ……」
「やめてよ―――」
「リリィちゃんも、南雲くんも……彼らは―――」
「いやッ、やめてよぉ……やめてったらぁッ!」
「香織!二人は死んだのよ!」
「ちがう、ちがう!死んでなんかいない!絶対っ、そんなことないっ!どうしてそんな酷いことを言うの!?いくら雫ちゃんでも許さないよ!!」
事実を否定するように首を振りたくって、私の拘束から逃れようとする親友。その親友の言葉が、表情が、私の心をひどく締め付ける。それを必死に耐えて、耐えて、冷えきっている親友の心を少しでも暖めることができるように、その体を抱き締める。
「離してッ!離してよぉ!リリィちゃんを、ハジメくんを探しにいかなきゃ!お願いだからぁ……絶対に生きてるんだからぁッ……離してよぉッ!」
いつしか、私の胸に顔を埋めて“離して”と叫んで泣きじゃくるだけとなった私の親友。
縋りつくようにしがみついて、喉を枯らさんばかりに大声を上げて泣き続ける親友を、私はただひたすら抱き締め続けた。少しでも、その心が癒えることを信じて。
落ち着いたころには蒼かった空は赤みがかかっていて、それが時間の経過を如実に表していた。
泣き叫んでいた親友は今はスンスンと鼻を鳴らしている。
その親友が身じろぎをして、心配になった私は声をかけた。
「香織……」
「……二人は―――落ちたんだね……雫ちゃん……ここにリリィちゃん達はいないんだね……」
囁くような、消え入るような声で私に話しかける。
私は誤魔化したくない。誤魔化しは一時的な心の癒しにはなる。けれど、その平穏はいつか倍になって重くのしかかってくる。
これ以上親友が傷ついて、壊れていく姿は見ていられない。
「そうよ……」
「あの時、私達のうちの誰かの魔法が二人に当たりそうになった……誰なの?」
「わからない……あの時のことは誰も触れようとしないから―――怖いのね、もしも自分のだったらって……」
「そっか……」
「恨んでる?」
そう、聞いてみた。想い人を殺された……それは憎悪となっても可笑しくないのだから。
「……わからないよ。もし誰かわかったらきっと、恨むとおもうよ―――でも、わからないのなら、それでいいと思う。きっと、私は、我慢できないと思うから……」
ポツリポツリと会話を重ねる。
やがて、さっきまで泣き腫らしていた顔に決意を宿して私を見上げた。
そして、親友は決然と宣言した。
「雫ちゃん、私、信じないよ。リリィちゃん達は生きている。死んだなんて信じない、絶対に」
「香織……」
親友の言葉にまた、心に影が射すのを感じる。
その願望は、きっと叶わないのだから。
でも、親友は私の顔を両の手で頬っぺたを包むと、綺麗な微笑みで私に告げた。
「わかってるよ、あの高さから落ちて、生きている訳がないって、そう思うほうが可笑しいって―――でもね、誰も二人が死んだことを確認した訳じゃない……確認してないのなら、
「香織……」
「私、強くなるよ……もっと強く、あんな状況に陥っても今度は守れるように―――そして、確かめる、自分の目で。リリィちゃん達のことを……だからね、雫ちゃん―――」
「なに?」
「―――力を貸してください!」
「……」
親友の瞳を見る。狂気や現実逃避の色はない。
ただ純粋な、己が納得するまで絶対に諦めないという意志が宿っていた。
こうなれば親友は、私でも、親友の家族でさえ手を焼く頑固者になる。
そんな親友に、少し笑ってから、己の回答を示す。
「勿論、力を貸すわ……貴女が納得するまで、とことん付き合うわ!」
「雫ちゃん!ありがとぉ!!」
「何言ってるのよ、親友でしょ?」
笑ってそう返す。
諦めなければ可能性はある。なら、親友と信じよう。二人の無事を……
「雫!香織はめざ……め……」
「おう、香織はど……う……」
泥に汚れた二人が部屋に入ってくる。二人ともあの日から、前以上に訓練に身が入っている。
流石にあの二人を喪ったことに思うことがあるのだろう。
だが……
「「お邪魔しましたッ」」
と、頭を勢いよく下げて扉を閉めて駆けていった。
何故?と考えて私の今の状態を確認する。
親友は私の膝の上に座って私と向き合っている。
さらに親友は、私に顔を近づけている上に私も親友の肩を手で持っていた。
理解する。百合である、紛うことなき百合である。
理解した私は、まだ理解できていない親友を前に深く息をつき―――
「さっさと戻ってきなさい!この大馬鹿者ども!!」
そう、何時ものように叫んだ。
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人間(?)二人、神様一柱の迷宮探索は続く。
あの残念な最期を遂げたサメのいた階層から既に50階層は下っている。
あのサメの肉を食してからはサクサク進んでいた。
気配遮断を使って必要なものは採って食糧になりそうなものは片っ端から刈り取っていった。
その間に強力な魔物もいたが、三人のチームプレーであえなくぶっ飛ばされた。
例えば毒の痰を吐くカエル(撒かれた毒は除染液で無力化した上でカエルをドンナー滅多撃ちにした。色は虹色、キモかった)、麻痺の鱗粉を撒き散らす蛾(見た目はモ○ラ、鱗粉は帆楼が風で巻き上げ、本体は【
因みに食糧としての味は蛾が上であった。
途中、デカイムカデや樹木型の魔物のいる何故か地下にある密林地帯を抜た。樹木型の魔物が投げていた木の実は本当に美味しかった。
ムカデは帆楼が涙目で消し飛ばしていた。キモいのは苦手らしい。
なお、この後、樹木型の魔物は果実の味をしめた私達が原因で滅びかけた。
そんなこんなで50層くらい踏破してきた。
まだ終わりは無いようだけれど、現在のステータスはこうなった。
―――――――――――――――――――――――――――――――
南雲ハジメ 17歳 男 レベル:49
天職:錬成師
筋力:880
体力:970
耐性:860
敏捷:1040
魔力:760
魔耐:760
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・言語理解
―――――――――――――――――――――――――――――――
リリィ・ドーラ 17歳 男 レベル:49
天職:幽霊
筋力:2500
体力:∞
耐性:∞
敏捷:6500
魔力:7500
魔耐:∞
技能:機凱種エクスマキナ特性【
―――――――――――――――――――――――――――――――
私たちはこの階層に来るまでに、それぞれ錬成の練度上昇や、帆楼を監督にした武装展開の速度を上げる鍛練。魔物を標的にした狙撃の練習などをしながら、トントン拍子で進んできた。
そして、私たちは探索していて、不思議な空間を見つけた。
それは、巨大で荘厳な扉。両側に単眼の巨人を模した彫刻が壁に埋め込まれるように鎮座しており、その異質さを一層引き立てていた。
この迷宮を探索し続けて培った勘が、この先には私たちの旅路を変える“ナニカ”があると、そう告げていた。
そのためにこの階層を巡って装備を整えて、その空間に突入することにした。
「よし、それじゃあ行くぞ?」
「……おっけぇーい……」
「うむ!いざ往かん!」
帆楼は巻物を、ハジメはドンナーを、私は巨砲をそれぞれ装備して、ハジメが宣言するように声を張り上げる。
「俺たちは!生き延びて故郷に帰る!日本に、家に、家族のもとへ!邪魔するものは何であろうと―――」
そして声を揃えて吼えたてる。
「「「捻り潰す!」」」
何時ものように、不敵な笑みを浮かべてそう宣言した。
三人で扉に近づく、その扉もその全容が見えてくる。
近づけば近づくほど、その扉に施された装飾の荘厳さ、美麗さがわかる。
そして、扉の中央には二つの窪みがあり、それを中心に魔法陣が描かれている。
「……ハジメ、わかる……?」
「いや、わからねぇな……これは―――魔法については結構勉強したけど、こんな式は見たことない」
「結構古めの扉のようじゃしのう……古の魔法陣ではないか?」
「その線が一番あり得そうだな」
「……そうだね……」
「取り敢えず、いつものように錬成で起動してみるかねぇ」
と言って、ハジメが魔方陣に触れて錬成を行う。
その瞬間―――
バチィィ――――ッ
赤い光が扉から噴出し、ハジメの手を灼きながら、ハジメを吹き飛ばした。
「ハジメ!?」
「くっそ!痛ぇなぁ!リリィ、ポーションプリーズ!」
「おっ、けぇい!」
「サンキュ!」
ハジメにポーション(神水)を投げ渡し、ハジメはそれを飲み干す。
すると……
オオォォォオッッ!!
咆哮が轟いた。
咆哮が発せられた方向、すなわち扉を見ると、両側に埋め込まれていた単眼の巨人像が灰色から暗緑色に色づき、周囲の壁を砕きながら本来の魔物の姿へと変貌する。
単眼の巨人、その姿はファンタジー系の創作物で定番のサイクプロスまんまである。
「まんまだなぁ……」
「……凄まじい、既視感……」
「緊張感ないのぅ……」
三者三様の感想を口にしつつ、サイクプロス×2がまるでゲーム内のモンスターの登場シーンでモンスターがポージングするかのように構えようとして……
ドパンッ―――
重い音とともに、哀れサイクプロス(右)の頭は爆発四散、ショッギョムッジョ。
そんなネタ丸出しな言葉が頭に過る。
そして、サイクプロス(左)が単眼ごとぶち抜かれ倒れ往くサイクプロス(右)と、単眼ごとぶち抜いたハジメを戦慄の表情で交互に見る。
その隙を私は―――
「【
加速して、紫色の宝石がついている指貫の滑らかな手袋に包まれた左手でモツ抜きを敢行、体内のちょうど心臓部にあった魔石を引き抜いた。
そんな穴空きサイクプロスはまたもや戦慄の表情を浮かべて私を見て、倒れ伏す。
「容赦の欠片もないのぅ……」
帆楼も苦笑いをしているが、普通だと思う。
隙を見せた向こうが悪いのだー。っと、奈落に落ちてからの常識を履行しただけである。
「肉は……後ででいいか」
「……魔石、あった……?」
「あぁ、あったぞ」
「……嵌める……?」
「まぁ、扉を開く条件はそれだろうしな」
魔石を扉の窪みに嵌め込む。
直後、赤黒い魔力光が魔方陣に走り、なにかが割れるような音が響き、魔方陣の光が消える。
そして、唐突に扉から光の奔流が噴出する。久しく見ていなかった、太陽のような輝きに目を瞬く。
ハジメを先頭に扉に近づく。
扉を押し開けて、その中を見る。
そこは、転移してきた時に見た教会の大神殿で見たような大理石のような艶やかな石造りで、幾つもの太い石柱が奥に向かって規則的に並んでいる。
そして、その部屋の中心には巨大な立方体の石が置かれていて、外からの微かな光に滑らかな表面が晒され光沢を放っている。
その立方体の前面中央になにかが生えていた。
「【観測】【解析】」
観測機がキュルキュルと音をたててその存在を解析する。
視界の端に、解析結果が表示される。
――――【対象解析結果:
「……
「ぬ?プラムとやらの同類かの?」
「……そのプラムっていうのは知らないけど、解析結果で判断すると、そうだと思う……」
「
「……うん、
「絶対に面倒ごとだ……」
「……だれ?」
話し込んでいると、その暫定
その方向を向いて、その暫定
上半身から下、両手が立方体の中に埋められていて、長い金髪が前に垂れて、その隙間から
年頃は、だいたい12か13あたりだろうか、随分と窶れている。
よくよく見れば、その容姿はそれこそ月のように美しかった。
そんな少女を見て、ハジメは……
「すみません、間違えました」
「……ちょい、待てぇい……!」
もとの道へ帰ろうとしていた。
終わっ、た……
言葉選びに悩みまくりました、はい。
そして始まる高2生活。頑張らなければ……
次回はユエとのお話しです。
他の機凱種武装ももうそろそろ出せればなぁ、と。
指貫の手袋。この伏線回収はもうちょい先です。
わかっている方もいるかもしれませんが、お楽しみに!