その先の物語   作:人間性の苗床マン

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前回の続き!
UA20000突破記念に設定集や番外編でも書こうかなぁと思っている作者某。
今回もユエたそです。ユエたそぐうかわ(錯乱)


お月様と超越者達

「すみません、間違えました」

「……ちょい、待てぇい……ッ!」

 

さらりと来た道を帰ろうとするハジメ。気持ちはわかるけど、迷いの欠片もないねぇ!

 

「待って!……お願い、助けて……っ!」

「嫌です」

「……話くらいは聞いてあげてもいいと思うけど……」

 

「まぁ、リリィも分かってると思うけどな?ここは奈落の底のさらに底だ。そこにこんな厳重な封印施された奴だぞ?絶対にヤバイやつだ。それに……迷宮脱出には役に立たなそうだしな……てなわけで」

 

と、ド正論を告げて踵を返し、足早に去ろうとするハジメ。

私は一度、ハジメの後ろをついていく。その上で、この吸血種(ダンピール)の少女が助けを求める意思を見せるのか、耳を傾ける。何か理由があって助けを求めるのなら、その理由を語るはず。そう信じて。

 

「ちがう!ケホッ……私!何も悪いことしてないっ!……待って!私はッ……」

 

ハジメが扉を閉めかける。けれど、完全に閉めきるより早く、その叫び声が私たちの耳に入ってきた。

 

「裏切られただけッ!!」

 

ハジメの扉を閉めようとしていた手が止まる。

私はその叫びを発した少女に視線を向ける。

帆楼が顔を伏せる。私とハジメも、帆楼も共に一度裏切られた者。私たちは理由もよくわからず、帆楼は定石破りの布石の為に。どうやら、この少女は前者。即ち私とハジメのように、理由もよくわからず、もしくは胸糞の悪くなるような理由で裏切られたのだろう。

 

少女に向けていた視線をハジメに戻す。

どうする?と視線で私に問いかけている。

親友に自らの意思を伝える。

 

「はぁ~」

「……同じ境遇なら、私たちは見捨てる……?」

 

そして、答え合わせ―――

 

「「見捨てれないよね?」」

 

と、頷きあって。

もう一度、扉を大きく開く。

 

吸血鬼少女の前まで歩いていき、話をはじめる。

 

「……裏切られたって、どうして?裏切られたとしても、何で封印されたの……?吸血種(ダンピール)と何か関連があるの……?」

吸血種(ダン、ピール)……?」

「……そう、所謂吸血鬼のこと……」

 

その、吸血鬼という言葉を聞いてピクッと肩を揺らす少女。そして此方を覗く紅瞳はそのままに、少し黙ってしまう。

 

「話さないなら帰るけど?」

 

とハジメが告げる。

その言葉を聞いて、少女が慌てて語りだす。

 

「私、先祖返りの吸血鬼だから……すごい力持ってる……だから国の皆のために頑張ってきた。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかったのに……でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに封じられた……」

 

もう流石に叫び過ぎたのか、枯れるに枯れた喉でか細く騙る少女。

その話の中には、とても気になるワードがところどころに。

 

「……家臣に、王―――王族だった……?」

「……」

 

コクコクと頷く少女。

 

「殺せないってなんなんだ?」

「……勝手に治る。怪我してもすぐに治る。首を落とされても、その内治る」

「……おぉう……」

 

凄まじい能力だ。回復能力は間違いなく私より上。

ハジメも若干だが、目を見開いている。

 

「……他には……?」

「魔力を直接操れる……陣もいらない」

「二人と同じじゃのう……」

 

私は半機凱種(エクスマキナ)故に魔力(精霊)を直接利用できる。ハジメも魔物の肉を喰らってから、直接操れるようになったらしい。

 

ただ、ハジメは魔法の適性がないため、魔法は陣が必要になるらしい。

 

それを考えると、この少女は凄まじい。魔力を直接操る力。さらに魔法適性。絶対的ではないとしても不死身。この三つは凄まじいアドバンテージとなる。それこそ勇者(笑)と比較にならない程に。

戦力としては最高峰。相手が陣を使って魔法の準備をしている間に根本的に火力が上の魔法を幾つも放てるのだから。

 

「お願い……たすけて……」

 

その、懇願する声を聞いて。

 

「……ハジメ、やるよ……?」

「あーもう、わかったよ!」

 

右手で少女を封じている石に触れる。

 

「【解析】」

 

その石の構造、その全てを把握する。

 

「……基幹術式を確認、術式、及び素材崩壊を開始する……」

 

瞬間、凄まじい抵抗に目を見開く。

すぐさま、周囲の精霊を動力に変換して素材崩壊を優先する。

術式の抵抗ではない。その立方体の素材の抵抗だった。

周囲が精霊の動力変換時の発光で碧光に染めあげられる。

 

「“錬成”!手伝うぞ、リリィ!」

「……さん、きゅう……ッ!」

 

碧に染まった世界に、紅が混ざる。

 

「まだまだぁ!」

「……全力、全開……!」

 

凄まじい碧と紅の輝きが周囲を照らし出す。

 

私は碧、ハジメは紅の輝きを精霊動力、魔力として石に向かって全力で放出する。

 

「帆楼も手伝うぞ!」

 

と、帆楼が私とハジメの背に触れる。

力が増幅されていく。無から有を現出させる神霊種(オールドデウス)の力。それが、私とハジメに更なる力を与えて―――

 

次の瞬間、石がドロッと融解した。そして液状になった石は碧い光を伴って(ソラ)へ還り消えていき、少女の枷となっていた石は消えていった。

 

そして、少女の全貌がさらされる。

 

それなりに膨らみをもった胸部、やせ細ってなお美しさを感じされる肢体。

 

石が完全に消滅して、支えのなくなった少女が床にペタンと女の子座りで座り込む。

立ち上がる力は、どうやらないらしい。

 

ふぅー、と二人で息を吐き、帆楼に差し出されたポーション(神水)を受け取ろうとすると、その手が別の弱々しい力の手に握られた。

 

助け出した吸血種(ダンピール)の少女だった。

此方を真っ直ぐ見つめる紅玉の瞳には、強い少女の気持ちが宿っていた。

そして、小さな、それでも確かな声音で―――

 

「……ありがとう」

 

「……どうい、たしまして……」

 

感謝された。うれしかった。頼もしい仲間と共に助け出した少女のその言葉は、確かに私たちの心を暖めた。

 

ハジメと、帆楼と視線を交わして、笑った。

心から、三人で。

 

 

しかしまぁ、こんな場所に幾年も、それも信頼してきた肉親に裏切られた。

本当に、よく心が壊れなかったなぁと思う。

もし、心が壊れなかったのも再生能力が関わっているのなら、それはそれで恐ろしくなる。こんな何もない空間に一人で―――それでも正気でいることを強制されるのだから。

 

「……名前、なに?」

 

少女に聞かれる。

私は出来る限りの笑顔で自らの名を告げる。

 

「……リリィ・ドーラ、私の名前……」

「ハジメだ。南雲ハジメ。それが名前だ」

「帆楼、(ホロウ)という意味の名を与えられたものじゃ」

 

「リリィ……ハジメ……ホロウ……」

 

そう私たちの名前を反芻する。

 

「……貴女の、名前は……?」

 

そう聞くと、思い直したように私たちにお願いをした。

 

「……名前、付けて?」

「……名前、忘れた……?」

 

そんな問いに、少女はふるふると首を振って。

 

「もう、前の名前はいらない……リリィ達が付けた名前がいい」

「……ん、わかった……」

 

どうしようか、と考える。

月のような少女にあまり変な名前を付けたくないというのもあるし、名はその人を表したものでなければ―――と、思った所で気づいた。月に関する名前はどうだ?と。

 

ハジメと一緒に相談する。

そして、意見を一致させる。

 

「……ユエ、貴女の名前は、ユエ……」

「ユエ?……ユエ……ユエ……」

「……ユエ、ていうのは、ハジメと私の故郷で、“月”を意味する―――初めて見たとき、金色の髪とか紅い目がお月様みたいだと思ったから……ダメだった……?」

「ううん、うれしい……今日から、私はユエ。ありがとう」

「……どうい、たしまして……?」

「どういたしまして」

 

そして、まぁ、今さらなのだが、少女の姿を見て私はいつも私が纏ってるのと同じ見た目のフード付きのローブを作り出す。

 

「……とりあえず、これ、着て……?」

 

差し出されたローブを見て、そして今の自分の姿を見て、ポンッと音を立てるように真っ赤になったユエがローブを抱き寄せて

 

「リリィのエッチ」

「……不可抗力……」

 

言われても仕方ない事だとしても、一応言っておく。

割りと身長はそう大きな開きはないので、そのままローブにすっぽり包まれる。

そんな姿に微笑ましさを覚えていた、その時だった―――

 

 

帆楼がバッと顔を上に向けて

 

「リリィ!ハジメ!上からくるのじゃ!」

 

そして、その叫びと同時に気配感知に凄まじい気配が捉えられた。

 

そして、真上の天井が崩れ落ち、ソレが姿を現した。

黒光りする厚い甲殻、五メートル程の体長に八本の足、四本の鋏の付いた長い腕、そして針の付いた長い二本の尻尾。さながら蠍のような見た目の強い覇気を纏った魔物がそこにいた。

 

咄嗟に腕にユエを抱えて飛びずさった。

その腕にいるユエを見る。あの蠍擬きになぞ目もくれずに、私を見つめていた。

どうやら、私たちに自分の命運を託すらしい。

それに、どうやらユエを連れていくにはコレを倒さなければならないらしい。

帆楼でさえ直前に気づいたということは、気づいたその瞬間に魔物が生成されたのだろう。

ならこれはユエを逃がさないための最後の仕掛け。

なら、その悉くを踏み潰そう!!

 

ユエの口に神水の入った試験管を押し当てる。

 

「うむっ!?」

「……飲んで……っ!」

 

口に押し当てられた物に驚いていたが、私の声を聞いて大人しく中身を飲み込んでいく。

唐突に押し当てられたから若干涙目になっていたが……

 

「……しっかり、掴まっててね……?」

「……んっ!」

 

気味の悪い音を響かせながら寄ってくる蠍擬き相手にハジメと叫ぶ。

 

「邪魔するってんなら……殺して喰うだけだッ!!」

「……とっとと、皆で終わらせる、の……ッ!!」

 

さぁ、最後の砦を打ち砕こう―――

 

 




ユエたそ編まだまだ続くよ!

次回に【偽典・天撃】を使う予定です。
表現できるかな?

さぁて、頑張ろうかッ!!
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