魔法使いのToLOVEる   作:T&G

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第十話

「さて! もうすぐ待望の彩南高校学園祭!! 実行委員になった猿山だ!」

 

普段からうるさい奴だと思っていたが、今日はいつもに増してかなりうるさい。

 

季節は秋に変わり、この学校でも文化祭が行われる季節になったようである。

 

その実行委員にいつの間にかなっていた猿山が準備のために担任に交渉してこんな機会を作ったらしい。

 

「この前のHRで皆に出してもらった物案だが、オバケ屋敷に演劇など、どれも普通過ぎてつまらない!」

 

普通でも別に構わないと思うのだが、猿山的に何か許せないものがあったのだろう。

 

俺は俺で、絶対に他の人と同じにならないように書いたから問題ない。

 

もしも多数決になった場合、他人が選ばないような少数意見は却下されるだろうから。

 

「だがそんな中、俺と全く同じ考えをしている奴が一人だけ居たのだ!」

 

猿山と同じ考えをする奴なんてこのクラスに居ただろうか。

 

俺は何も考えずに周囲に視線を向けてみる。

 

「ずばり! 『アニマル喫茶』だ! ウチのクラスはこれで行こうと思う!!」

 

「トシアキ、大丈夫?」

 

猿山の言葉を聞いた瞬間、俺は自分が座っていた椅子から転げ落ちてしまった。

 

近くの席に座るララが心配してくれたが、それどころではない。

 

まさか、俺が書いた意見がこうして行われようとしていることに驚いたのだ。

 

「アニマル喫茶ぁ? なにそれ? コスプレ喫茶みたいなもん?」

 

「えぇえぇ、ヤダぁ」

 

俺が椅子から落ちたことはララ以外のクラスメイトは気付くことはなかった。

 

もっとも、一番後ろの一番端に座っている俺より、教卓に居る猿山に視線が向かっているからであるが。

 

「反対意見は認めない! 俺以外にもそう考えた奴がいるんだ!」

 

「誰だよ、ソイツ!」

 

「猿山と同じことを考えるってことはきっと、雉島ね!」

 

「俺はそんなこと書いてねぇよ!」

 

なんだかクラスメイト対猿山の構図になってしまっているが、このままだと俺の名前が出されるのも時間の問題だ。

 

「いいか! 時代はアニマル!! 弱肉強食の時代!!!」

 

目をギラギラとさせながら演説を行う猿山に真面目な生徒が若干引いている。

 

それでも納得いかない者もいるようで、まだ反対しているようであった。

 

「ふっふっふっ、そう言っていられるのも今のうちだ。 こっちにはあのトシ・・・・・・ぐはっ!?」

 

俺の名前を出しそうになったので、俺はアルミで出来た筆箱を猿山に向けて全力で投げつけた。

 

突然倒れた猿山に、クラスメイトの視線が筆箱を投げた俺に集中する。

 

「・・・・・・うるさい、もう少し静かに話せ」

 

とりあえず視線を集めてしまったため、不機嫌な表情でそう言ってみる。

 

それを見たクラスメイトも俺から視線を外して、隣近所の友人たちと話始める。

 

どうやら見なかったことにしてくれるらしい。

 

「トシアキ、さっきからどうしたの?」

 

「いや、なんでもない。 なんでもないんだ」

 

まさか自分に被害が及ぶ危険性があるから猿山を黙らせたとは言えないため、とにかくララにはそう言って教卓へ向かう。

 

教卓へ向かうと中身がぶちまけられた筆箱が猿山の額に乗っており、本人は完全に気絶していた。

 

「・・・・・・とにかく、中身を回収するか」

 

散らばったシャーペンや消しゴムなどを集めていると、入口に積まれた箱が幾つも置いてあるのを見つけた。

 

「ん? なんだこれ」

 

気になった俺は積まれた箱を見てみる。

 

その箱の蓋の部分にはウチの女子生徒の名前と動物の名前が書かれていた。

 

「なるほど、猿山が考えそうなことだ」

 

俺が意見を書いたアニマル喫茶とは動物たちと触れ合いが出来るのをイメージしながら書いたものだった。

 

しかし、猿山は女子生徒たちに動物のコスプレをさせて、接客する喫茶店をイメージしたらしい。

 

「まぁ、本人が気絶してるし、関係ないか」

 

そう思っていると、後ろからララがやってきて俺と同じ箱に視線を向ける。

 

「あっ! 私の名前が書いてある、これ私の?」

 

「いや、猿山が考えていたアニマル喫茶の制服だよ、別に着なくても・・・・・・」

 

「みんなぁ! 一度コレ、着てみようよ!」

 

俺の話を全部聞かず、ララは他の女子生徒たちにそう言って声を掛け始めた。

 

最初は不満そうな顔をしていた生徒たちも、ララの言葉に乗せられ、女子生徒は皆で更衣室へ行ってしまった。

 

「・・・・・・とりあえず、猿山を起こしてもしもの時の楯にするか」

 

気絶している猿山に声を掛けて起こし、女子生徒たちが着替えに行っていることを伝えた。

 

「そうか、とりあえず着替えに行ったんだな。 これでクラスの半分は味方になる」

 

何を自信にそんなことを言っているのかわからなかったが、女子生徒たちが戻って来た時にそれは理解できた。

 

「「「おぉおぉおぉーーーーーー!!」」」

 

クラスの半分である男子生徒たちが女子生徒たちの着替えてきた衣装を見て叫び声を上げたのだ。

 

女子生徒は皆、短いスカートに小さいエプロンを付け、頭やお尻に動物の耳や尻尾の飾りがついており、露出度が高い。

 

というか、ヘソが出ている奴とか胸の谷間が見えている奴とかいるけど校則的に大丈夫なのか。

 

いや、あの校長のことだ、多分何の問題もないことだろう。

 

「すげぇ、いいじゃねぇか! 猿山!」

 

「あぁ! これこそが俺たちが求めたパラダイス!」

 

そう言いながら肩を組もうとしてくる猿山の手から離れ、俺は自分の席へ戻る。

 

女子生徒たちも衣装の可愛さと男子たちの反応を見て、やることに反対する者は居なくなっていた。

 

「っ!?」

 

女子生徒の中でただ、一人だけ恥ずかしそうに身体を隠している西連寺。

 

目が合ったと思った瞬間、彼女は頬を赤らめて俯いてしまった。

 

「おい、猿山」

 

楽しそうに騒いでいる首謀者を捕まえ、後ろの方へと連れていく。

 

「本当にやりたくない女子が居たらやらなくていいと言っとけ。 クラスメイトは見世物じゃないんだぞ」

 

「わかってるって! でも大丈夫だと思うぜ?」

 

本当にわかっているのかとか、何が大丈夫なのかと色々と聞きたかったが、ララがこちらに来たので猿山を解放してやる。

 

「ねぇ、トシアキ! どう? 私の格好!?」

 

近寄って来たララはそう言いながら俺の前でクルリと回って見せる。

 

「あぁ、可愛いと思うぜ。 それはペケの変身じゃなく本物の衣装なんだろ?」

 

衣装としては露出度が高いが、ララが着ると何の違和感もなく可愛く見える。

 

「そだよ! えへへ、トシアキに可愛いって言って貰っちゃった」

 

そう言って微笑みながら皆のいるところまで戻って行った。

 

別に俺が言わなくてもクラスの男子たちが言ってくれるだろうに。

 

「あ、あの、結城君」

 

「どうした?」

 

そう考えていると今度は名も知らない女子生徒が声を掛けてきた。

 

「わ、私、変じゃないかな?」

 

彼女はウサギの格好をしているショートカットの女の子であった。

 

肌も白く綺麗でウサギの格好が良く似合っている。

 

頬だけ赤いところもウサギを連想させていて本当に可愛く見える。

 

「あぁ。 全然変じゃない。 可愛くて似合ってると思うぞ」

 

「か、かわっ!?」

 

俺の言葉を聞いた女子生徒は赤かった頬をさらに真っ赤にして俯いてしまった。

 

頭から湯気のようなものが出ているが、大丈夫なのだろうか。

 

「川? って、おいおい、大丈夫か?」

 

「っ!? ご、ごめんなさい!!」

 

額に手をあてて熱を測ろうとしたところ、彼女は驚いて謝りながら皆のところへ走って行ってしまった。

 

その後の会話を聞いていると彼女の名前は白雪冬華という名前らしい。

 

「しかし・・・・・・」

 

こうして見てみるとこのクラスの女子の可愛さはなかなかのものだと思う。

 

普段着ていない服装だからそう感じるのかもしれないが。

 

「どうだ、トシアキ」

 

「何がだ?」

 

そんなことを考えていると一度離れた猿山が再び俺のもとへとやって来た。

 

「とぼけるんじゃねぇよ。 アニマル喫茶、お前が書いたんだろ?」

 

「・・・・・・」

 

この前の投票では名前を書かずに案件だけを書いて提出したはずなのだが。

 

「俺が中学からの付き合いのお前の字を見間違えるわけないだろ。 伊達に宿題を写させて貰ってないぜ!」

 

「そこは威張るところじゃないだろ」

 

そんな感じはしていたので、先ほども筆箱を投げたのだ。

 

というか、そんなことを言うならもう宿題見せてやらんぞ。

 

「しかし、トシアキは女に興味がないと思ってたが・・・・・・仲間が増えて嬉しいぜ」

 

「勿論興味はある。 ただ、俺の好みの奴が今までいなかっただけだ」

 

とりあえずそういう風に言っておくとする。

 

もっとも、最近になって気になる奴らが出てきたのだが、そんなことは表情には出さない。

 

「そうなのか、ちなみにトシアキの好みって?」

 

「それより、実行委員。 早く次のこととか決めないと先に進めないぞ」

 

答えたくないので猿山にそう言って教卓へ行くように追い払う。

 

「ん?」

 

猿山を追い払った時に一瞬、俺は窓の外から視線を感じた。

 

そちらを見てみると、木に登ってこちらの様子を窺う女子生徒がいた。

 

「見ているのは・・・・・・このクラスか?」

 

視線が俺に集中しているわけではないので、放っておいても大丈夫だろう。

 

だが、あの時の男のように何かする可能性もある。

 

「・・・・・・一応、釘を刺しておくか」

 

俺は楽しそうにしているクラスメイトたちに気付かれないようにソッと教室から出て行った。

 

 

 

~おまけ~

 

 

私は授業が行われている教室を抜け出し、木に登り目標がいる教室を覗き見た。

 

「沙姫様、どうやらこのクラスはアニマル喫茶というものをするそうです」

 

そこで主人である沙姫様の指示通り、目標がいるクラスの出し物を調べていた。

 

目標の人物というのは最近、この学園に転入してきたという一年のララ・サタリン・デビルークのことである。

 

彼女の動向を報告するため、私は持っていた小型無線機を使い沙姫様へ連絡した。

 

「何やらララという一年が、男子が大喜びしそうな衣装を着ています」

 

「なんですって!?」

 

私の耳元についているイヤホンから沙姫様の大きな声が聴こえて来る。

 

しかし、沙姫様は確か授業中のはずだが、大丈夫なのだろうか。

 

「それと・・・・・・っ!? いない!?」

 

他にも少し気になることがあったので報告しようと再び教室を見たが、元凶である生徒の姿が消えていた。

 

やる気がなさそうで周りからも少し浮いていた男子生徒だが、確かに一瞬目が合った。

 

教室から離れた、しかも木の葉に姿が隠れているはずの私と視線が合うなどまず普通ではない。

 

「どうかしましたの?」

 

耳元から沙姫様の不思議そうな声が聴こえて来る。

 

「い、いえ。 なんでもありません」

 

報告しようと思っていた対象が消えてしまったため、慌てて誤魔化すことにした。

 

「そう? なら、もう戻ってらっしゃい。 報告御苦労さま」

 

「はい、失礼します」

 

私はそう返事をして無線機の電源を切った。

 

覗き見るために使っていた双眼鏡をしまい、耳に付けていたイヤホンを外す。

 

「探していたのは俺のことか?」

 

そうして気を抜いた瞬間、目の前に逆さまになった男子生徒が現れた。

 

「きゃっ!? えっ・・・・・・」

 

普段なら人の気配をよんで行動する私だが、任務を終えた後だったため油断していた。

 

驚いた反動で乗っていた木の枝から身体が落ちて行くのがわかってしまう。

 

「あっ、ヤバい」

 

そんなときなのに何故だか目の前に現れた男子生徒の声だけははっきり聴こえてきた。

 

状況が状況だったため、私は落ちた時の衝撃に備えて目を瞑る。

 

「悪い、驚かせるつもりはなかったんだ」

 

しかし、私が予想していた衝撃は一向に来ず、優しい感じの風と先ほど聞いたばかりの男子生徒の声が聴こえてきたのであった。

 

私はギュッと閉じていた目をゆっくりと開けてみる。

 

「あっ・・・・・・」

 

目の前には先ほどまで探していた一年の男子生徒が心配そうな表情をしてコチラを見つめていた。

 

そして、この目の位置から自分がどんな状態でいるのか想像し、頬に熱が集まってくる。

 

「は、放せ! 自分で立てる!」

 

「お、おい!? 暴れるな! 下ろすから、落ち着け」

 

ゆっくりと地面に下ろされた私は素早く彼から離れ戦闘態勢に入る。

 

私の視線に気づいた彼だ、何か武術を修めていてもおかしくはない。

 

だが、そんな彼は何もせずにその場で両手を上げて首を振った。

 

「・・・・・・助けてくれて感謝する。 私は二年の九条凛だ」

 

そんな様子を見せられてはコチラも警戒を解くしかない。

 

それに結果として助けられたのだ、礼は言わねばなるまい。

 

「俺は一年の・・・・・・って言わなくても知ってるか。 どうやらさっきは俺を探してたみたいだし」

 

やはり私の視線に気づいていたらしい彼は、結局名を名乗らなかった。

 

もっとも、天条院グループの情報をもってすれば簡単に調べがつくはずだ。

 

「気付いていたのか」

 

なので私は普通にそう返し、特に彼の名前を聞くことはしなかった。

 

しかし、私は二年なのだが彼は年下ではなかったのだろうか。

 

「まぁな。 それよりどうして俺たちのクラスを見てたんだ?」

 

別に言っても問題はないはずだが、沙姫様の許可なしに勝手なことは出来ない。

 

それに、彼が沙姫様に危害を加えないとも保障出来ないため迂闊なことは言えない。

 

「すまないが、それは言えない」

 

私がそう答えると彼は興味をなくしたのか、背を向けて歩き出した。

 

「んじゃ、いいや。 それじゃあ、またな」

 

あまりの呆気なさに私はつい彼の背に手を伸ばしてしまう。

 

しかし、結局声を掛けることはなく、彼はそのまま校舎へと消えて行った。

 

「私は何をしているのだ・・・・・・」

 

伸ばしたままの自分の右手を見つめ、私は一人でそう呟くのであった。

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