魔法使いのToLOVEる   作:T&G

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第十二話

彩南高校の文化祭、彩南祭当日。

 

俺たちのクラスには沢山の客が押し掛けていた。

 

といっても客は男性客ばかりなのだが。

 

「いらっしゃいませ! アニマル喫茶へようこそ!!」

 

そう言いながら客を出迎えるのは露出度の高い動物のコスプレ衣装を着たウチのクラスの女子たちだ。

 

しかも、入口付近にはララ、籾岡、沢田、西連寺とかなりレベルの高い女子を配置している。

 

「猿山が考えそうなことだな」

 

配置や役割を決めたのは勿論、実行委員の猿山だ。

 

男子は裏方に徹しており、列の整理や飲み物や食べ物の準備を行っている。

 

ちなみに俺はというと。

 

「君を注文する!!」

 

「「さすが弄光センパイ! いきなり口説きにかかってるぜ!!」」

 

「悪いが、ウチのメニューには店員なんて載ってないんだよ、先輩」

 

こういう客や店員に執拗に声を掛ける迷惑な客の排除が仕事だったりする。

 

「ん? げっ!? お前は、結城!?」

 

「ナンパなら他でやってくれ」

 

俺の顔を見て表情を引きつらせた先輩の首根っこを掴み、出口へと案内する。

 

「「さすが弄光センパイ! いきなり撃沈させられたぜ!!」」

 

「アンタたちもだよ」

 

先輩を廊下へ放り出した後、叫んで迷惑な取り巻き二人も廊下へ放り出す。

 

少しはこの室内の騒がしさもマシになっただろう。

 

もっとも、女子の衣装に興奮している男たちが色々とうるさいが、店員に迷惑を掛けていないので俺は何もしないことにする。

 

「ゆ、結城君、その、ありがとう」

 

ウサギの格好をしている白雪がそうお礼を言ってくれる。

 

「気にするな、これが俺の仕事だ。 また困ったことになったら俺を呼べ、一応見回ってはいるが、何かあってからじゃ遅いしな」

 

「う、うん。 それじゃあ、私は戻るから」

 

「おう、頑張れよ。 白雪」

 

白雪は慌てた様子で席に着いたばかりの客のもとへ注文を取りに行った。

 

俺は引き続き室内の見回りを継続するためあちこちに視線を向ける。

 

「トシアキ、交代の時間だぜ」

 

「おう、わかった」

 

猿山の指示が出たので、俺は教室の裏スペースへ引っ込むことにする。

 

クラスメイトの鞄や休憩時に読んでいたであろう雑誌が散らばっている。

 

「ったく、休憩するのは自分たちだけじゃねぇんだぞ」

 

俺は一人でそう呟きながら自分の座るスペースを確保し、傍にあった雑誌を手に取った。

 

「お疲れ様、結城君」

 

そんな俺の所に西連寺が飲み物を持って来てくれた。

 

「サンキュー」

 

「アニマル喫茶、思ったよりも楽しいね」

 

俺が受け取ったジュースを飲んでいると西連寺がチラリと喫茶スペースを見ながらそう言った。

 

最初と違って、着ている黒ネコの衣装は恥ずかしくなくなったらしい。

 

「楽しめてるならよかったじゃねぇか」

 

「うん。 最初は恥ずかしくてイヤだったけど、慣れて来ると楽しくなったの」

 

そう言いながら俺の目の前で猫のポーズを取る西連寺。

 

確かに、慣れてしまえばそんなに気にならないのかもしれない。

 

猫耳と尻尾もなかなか似合っており、本人も気に入ったのなら良いだろう。

 

「そういや、休憩って俺だけなのか?」

 

「そうだと思うよ? 結城君、朝からずっと当番だったから皆と時間がズレてるんだよ」

 

確かに俺は朝からずっと休憩はなかったが、他の皆は交代していたらしい。

 

「猿山の奴、俺だけこき使いやがったな」

 

「ん? 呼んだか、トシアキ」

 

俺の言葉に返事をしたのは傍に居た西連寺ではなく猿山だ。

 

どうやらタイミング良くこっちに顔をだしたらしい。

 

「俺だけ休憩時間がなかったことを西連寺に聞いてたんだよ」

 

「悪いな、トシアキは一人で教室をカバー出来るからかなり助かってたぜ」

 

交代の時間を忘れていたわけではなく、知っていて俺を長時間働かせたらしい。

 

これは一度、拳で語り合う必要があるかなと考えていたのだが。

 

「そういや、トシアキ。 お前にお客さんだぜ?」

 

「客?」

 

拳で語り合うのはもう少し後になりそうだ。

 

しかし、俺に客とは珍しいこともあるものだ。

 

学校内には特に知り合いは居なかったように思ったのだが。

 

「やっほー、トシ兄ぃ。 来たよ」

 

「み、美柑!?」

 

猿山の後ろから顔を覗かせたのはなんと義妹の美柑であった。

 

確かにこの学校の文化祭は土曜日だから学校は休みなんだろうけど。

 

「トシ兄ぃの働いてる姿を見たかったんだけど、もう終わった感じ?」

 

「今は休憩中だ。 また働くこともある・・・・・・のか?」

 

俺自身のシフトを聞いてなかったので、傍にいる西連寺に聞いてみる。

 

「えっと、確かあったような・・・・・・」

 

「おう、トシアキは一時間後から最後まで入って・・・・・・ぶっ!?」

 

当たり前だが西連寺は知らなかったようで猿山が変わりに答えてくれた。

 

が、結局俺の休憩時間は一時間しかないという事実に、持っていた雑誌を投げつけてやった。

 

「痛いだろ! トシアキ!!」

 

「うるさい! なんで俺の休憩時間が文化祭中に一時間しかねぇんだよ!!」

 

というわけで、結局拳で語り合うことになった俺と猿山。

 

「で、俺はあと一時間休憩らしいけど、美柑はどうする?」

 

勿論、俺が猿山をボコボコにして適当な位置に寝かしてある。

 

西連寺も喫茶の方が忙しくなったため俺と猿山のことを気にしつつも戻って行った。

 

「トシ兄ぃはどこも回らないの?」

 

「あぁ。 最後まで働かされるなら今のうちに身体を休めておきたいからな」

 

そう言いながら俺は壁に背を預ける。

 

とりあえず、残りの時間で眠っておこうと考えたからだ。

 

「じゃあ、私もここにいようかな」

 

「それならば美柑ちゃん! この衣装を着てみないか!!?」

 

美柑の呟きを聞いた猿山が突然、起き上がってアニマル喫茶の衣装を持ってきた。

 

「・・・・・・高校生のサイズじゃ、美柑は着れないだろう」

 

「ふっふっふっ、こんなこともあろうかと美柑ちゃんのサイズに合わせて・・・・・・へぶっ!?」

 

不穏な発言をした猿山にはそこらへんにあった鞄をそのまま投げつけてやった。

 

というか、他人の義妹のサイズを知っているとか犯罪だろうが。

 

「と、トシ兄ぃはどう思う?」

 

猿山が倒れた拍子に落とした衣装に視線を向けながらそう聞いてきた美柑。

 

その質問は他人のサイズを知っていた猿山についてなのか、その衣装が美柑に似合うのかという意味なのか。

 

「・・・・・・美柑は可愛いし、似合うんじゃね?」

 

とりあえず、俺と視線を合わしていないことから後者であると判断して答えておく。

 

「かっ、かわっ!?」

 

「川? まぁ、いいか。 俺は寝るから、ゆっくりしていけよ」

 

俺はそう言ったあと、ゆっくりと目を閉じる。

 

それにしても白雪といい、美柑といい、何故そんなに川と叫ぶのだろうか。

 

そんなどうでもいいことを考えながら俺の意識は闇へと沈んでいくのであった。

 

 

 

***

 

 

 

「おい、トシアキ。 交代の時間だぜ」

 

俺が目を開けて最初に見たのは笑顔が眩しい猿山の顔だった。

 

というか、何故そんなに満面の笑みなんだお前は。

 

「あ、あぁ。 ん? 美柑はどうした?」

 

俺が眠るまで傍にいたはずの美柑の姿がない。

 

確か、俺の働いている所を見てから帰ると言っていたような気がするんだが。

 

「それより早く行ってくれ、これでも三十分遅れさせてやったんだからな」

 

そう言われては仕方がない。

 

俺は立ち上がろうとして、膝の上に置いてある自分の鞄に気付く。

 

「鞄なんて抱いたまま寝たか?」

 

自分の鞄を見つめながらそう呟く。

 

しかも、チャックが微妙に空いていたので中身を確認するために開いた。

 

「ぶっ!?」

 

そこには先ほどまで美柑が着ていた服とスカート、それから水色の下着が入っていたのだった。

 

「なんで美柑の服が・・・・・・まさか!?」

 

俺は眠る前にあったやり取りを思い出しながら、とりあえず表の喫茶スペースへと足を進めた。

 

「なっ!?」

 

喫茶スペースに行ってみると、予想していたが、それを上回る光景が広がっていたのである。

 

「いらっしゃいませ! アニマル喫茶へようこそ!!」

 

豹のララ、リスの沢田、猫の西連寺、狐の籾岡、ウサギの白雪はまだわかる。

 

同じクラスメイトでもっとも衣装が似合っていた五人だからだ。

 

だが、なぜだか犬の美柑と虎の沙姫先輩、牛の凛先輩と鹿の綾先輩がいた。

 

「・・・・・・」

 

「あっ、トシ兄ぃ」

 

俺が出てきたことをいち早く美柑が気付き、こちらに駆け寄ってくる。

 

その様子を見ていると、確かに飼い主を見つけた忠犬に見えなくもない。

 

「えへへ・・・・・・どう? 似合う?」

 

「あ、あぁ、似合ってるけど、なんで?」

 

予想していた通りに美柑は猿山が容易した衣装を着ていたのだ。

 

確かに犬の姿は似合っているのだけど、わざわざ手伝う必要はないと思うのだが。

 

「トシ兄ぃの働きっぷりを見るまで暇だったからお手伝いしたんだよ」

 

その気持ちは嬉しいが、まだ小学生の美柑にこんな格好をさせるのはどうかと思う。

 

衣装を用意した猿山は後でもう一度ボコボコにしておくことにしよう。

 

「トシ兄ぃもその衣装、似合ってるね。 その、か、カッコイイよ」

 

ちなみに俺が着ている衣装は動物とは全く関係ない真っ黒なスーツである。

 

一応、監視員としての服装なんだが、一部の女子からの要望でコレになったらしい。

 

「あぁ、ありがとな」

 

とりあえず褒められたので、お礼に俺は美柑の頭を撫でておくことにする。

 

その際に頭に着いた犬耳がピクピクと動いた気がしたが、深く考えないことにしよう。

 

予想を上回った原因でもある三人の方へ俺は足を進めた。

 

「沙姫先輩たちもありがとうございます。 飾りの布地に続いて、手伝ってもらって」

 

「も、問題ありませんわ」

 

美柑に続いて、上級生で自分たちのクラスの出し物もあるのに手伝ってくれている先輩たちにお礼を言っておく。

 

やはり、このクラスに先輩の想い人がいるのだろう。

 

「ゆ、結城のその衣装もなかなかのものだな」

 

沙姫先輩の連れである凛先輩も俺の衣装を褒めてくれる。

 

「一応、付属のアイテムもあるんですけど、流石にこれはつけられなくって」

 

今朝、衣装を渡されたときに一緒に渡されたのだが、使わずに胸ポケットにしまってある。

 

「どうしてですか?」

 

同じく、沙姫先輩の連れである綾先輩が不思議そうに尋ねてきたので、俺は実際に付けてみせた。

 

「流石にこれはマズいでしょう?」

 

その付属アイテムとはサングラスであった。

 

真っ黒なスーツにサングラスを室内で付けてる人間なんか近くに居てほしくないだろう。

 

「・・・・・・」

 

俺の目の前に居る綾先輩はジッとコチラを見つめたまま何の反応もしてくれない。

 

「・・・・・・先輩?」

 

「はっ!? あっ、その、えっと!!」

 

何やら赤くなりながら慌てた様子で手をブンブンと振る綾先輩。

 

「ご、ごめんなさい!!」

 

そして、そのままの姿で走り去ってしまった。

 

「綾!?」

 

「ちょ、ちょっと! どうかしまして!?」

 

凛先輩と沙姫先輩も綾先輩の後を追って教室から出て行った。

 

もちろん、アニマル喫茶の衣装を着たままで。

 

「・・・・・・大丈夫かな」

 

恩がある先輩たちのことが心配だが、仕事があるため追いかけるわけにもいかなかった。

 

仕方がないので、美柑に執拗に声を掛けている客のもとへ歩いていく。

 

「ウチの妹に何か御用ですか?」

 

「ひっ!? な、なんでもありません!!」

 

そう言えばサングラスを付けたままだったと客に声を掛けてから気付いたのだった。

 

その後は何事もなく、無事に彩南祭は終了して俺は美柑と共に帰宅するのであった。

 

 

 

~おまけ~

 

 

トシ兄ぃが眠ったあと、私は猿山さんが落とした衣装を手に取る。

 

衣装はかなり露出度が高く、着るのは恥ずかしいと思っていたのだけど。

 

「トシ兄ぃが可愛いって・・・・・・」

 

先ほど言われた言葉を思い出すと自然と頬が赤くなってしまう。

 

トシ兄ぃの働く姿も見たかったことだし。

 

「暇を潰すだけだもんね。 別に衣装を着た姿をトシ兄ぃに見て貰いたいわけじゃないんだからね」

 

この部屋には眠ってるトシ兄ぃと気を失っている猿山さんしかいないので、別に声に出す必要じゃなかったが、つい言ってしまったのである。

 

「着替えはここでするとして・・・・・・」

 

そう考えてから鞄を顔にぶつけられて倒れている猿山さんを見る。

 

「・・・・・・えいっ!」

 

残っている他の鞄を全て猿山さんの顔の部分に全て乗せる。

 

これで猿山さんが起きても見られることはない。

 

「トシ兄ぃには・・・・・・べ、別に見られても問題ないし」

 

兄妹だから問題ないはずだ。

 

家族なんだから別に見られても大丈夫だよね。

 

「うぅ・・・・・・ちょっと、胸の部分が苦しいかも」

 

猿山さんはトシ兄ぃと中学から一緒で私と面識があったけど、さすがにピッタリのサイズは作れなかったようだ。

 

「よし、着れた!」

 

露出度が高いので下着は外して服と一緒に畳んで置いた。

 

そしてその服をトシ兄ぃの鞄の中に入れておく。

 

「さすがにこのままここに置いておけないからね」

 

私の服が入った鞄を眠るトシ兄ぃの膝の上に置いて、私は表へと向かっていくのであった。

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