魔法使いのToLOVEる   作:T&G

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第十三話

「あれ? ララは?」

 

いつものように美柑に起こされた俺は寝起きのまま美柑に玄関でそう尋ねた。

 

ちなみに最近は起きて朝食を作っていたが、文化祭が終わってからやっていない。

 

「大事な用があるって出かけたよ? 今日は学校も休むって」

 

ララが学校を休むとは珍しいこともあるものだ。

 

デビルーク星から家出して来てこの星の学校を楽しんでいたと思っていたのだが。

 

「珍しいこともあるんだな」

 

「ララさんも忙しいんだよ、きっと。 じゃあ、行ってきます」

 

靴を履き終えた美柑はそう言い残して学校へ出かけて行った。

 

俺も遅刻しないように素早く準備を整えて家を出る。

 

「あれ? アイツ、結城だよな。 隣にララちゃんがいないような」

 

「なんか、今日は休みらしいぜ」

 

周りからの視線が俺に集中しているのがわかる。

 

確かに最近はララと一緒に登校していたが、俺とララがセットになっているわけではない。

 

「おはよう、結城君」

 

周りの男子たちの会話を聞きながら通学路を一人で歩いていると、前から声を掛けられた。

 

声の相手を確認すると西連寺がコチラに歩み寄ってくる。

 

「おう、西連寺か。 おはよ」

 

俺は挨拶を返しながら学校へ向かう歩みを少し緩める。

 

西連寺も俺の隣に並び、一緒に学校へ向かって歩き出す。

 

「ララさん、今日はどうかしたの?」

 

「あぁ、なんか用事があって朝早く出かけたみたいだな」

 

俺が美柑に起こされた時には既に居なかったので、おそらくそうなのだろう。

 

「そうなんだ・・・・・・」

 

西連寺はそう返事をして、そのまま黙ってしまう。

 

俺も話題となることが特に思いつかなかったのでそのまま無言で歩き続ける。

 

「あ、あの、結城君!」

 

「ん?」

 

先ほどの会話の時より大きな声で西連寺に呼ばれたので、立ち止まって振り向いた。

 

「これを・・・・・・」

 

振り向いた俺に西連寺は少し大き目の紙袋を手渡してきた。

 

それを受け取った俺は何なのか確認するため、中身を取り出した。

 

「ジョウロか?」

 

大きくて水が沢山入りそうなシルバーのジョウロが中に入っていたのだ。

 

「うん。 前に結城君、自然が好きって言ってたから、家でも植物とか育ててると思って、その・・・・・・迷惑だった?」

 

手を目の前で弄びながら、上目遣いで俺の様子を窺う西連寺。

 

「い、いや・・・・・・嬉しいよ。 サンキューな、西連寺」

 

なかなか可愛い仕草に俺は少し取り乱してしまったが、悟られないように笑顔で礼を述べる。

 

「・・・・・・よかった」

 

俺の笑顔で感謝の気持ちがキチンと伝わったのか、西連寺も笑顔で返してくれた。

 

その後はいつもと同じように学校で授業を受けて放課後に帰宅する。

 

そう言えば、学校で白雪からズボンのベルトを貰った。

 

聞いた話によると、デザインが気に入って購入したが男物だったらしい。

 

俺的には気に入ったものなら男物も女物も気にしなくてもいいと思うのだが。

 

本人は気になったらしく、俺に渡してくれることになったのだ。

 

というわけで鞄の他にジョウロとベルトを別の袋に入れて家にたどり着いた。

 

「・・・・・・」

 

家にたどり着いた俺だが、玄関のドアの前で立ち尽くしていた。

 

前にもこんなことがあったような気がするが、深く考えないことにする。

 

「玄関に三人・・・・・・いや、四人か」

 

この時間帯に家に居る人間は美柑だけのはずだ。

 

仮にララが戻っていたとしても後の二人の説明が付けられない。

 

「まさか、父親と母親がいるんじゃないだろうな」

 

まだ見ぬ両親が居るかもしれないという可能性に俺は少し焦ってしまう。

 

もし俺が本当の『結城トシアキ』ではないとバレたらどうなることか。

 

「・・・・・・考えても仕方ねぇ、行くか」

 

俺は腹を括って玄関の扉を開け放つ。

 

「トシアキーーー! 誕生日おめでとーーー!!」

 

玄関に入った瞬間、ララが満面の笑みを浮かべて俺に抱きついてきた。

 

慌てて俺は受け止め、先ほどのララの発言を思い出す。

 

「おっと・・・・・・誕生日?」

 

「やっぱり忘れてたんだね、トシ兄ぃ」

 

俺の困惑した顔を見た美柑がそう言って呆れた表情を浮かべる。

 

「今日はお前の誕生日だろ?」

 

その呆れた表情を浮かべる美柑の隣で額に鉢巻きをした大男がそう言った。

 

もしかして、もしかすると、この人物が『俺』の父親なのか。

 

「・・・・・・そういえば」

 

俺自身の誕生日は四月四日なのだが、『俺』の誕生日はどうやら今日らしい。

 

とにかく、それらしく振舞っておけば何とかなりそうだ。

 

「ねぇ、トシアキ。 私、プレゼント用意したんだよ」

 

「プレゼント?」

 

その単語で思い出したのは今日の西連寺と白雪からの貰い物だ。

 

もしかすると二人とも、今日が『俺』の誕生日だと知っていたのかもしれない。

 

「ララ様はトシアキ殿へのプレゼントを探すために今朝早くから出掛けられていたのです」

 

デビルーク星の王室親衛隊長であるザスティンが横からそう教えてくれる。

 

どうやら玄関で感じていた気配はこの四人だったようだ。

 

そうなるとやはり話題に出ない母親の存在が気になるのだが。

 

「プランタス星にだけ咲くレアな花なんだよ。 どうしてもトシアキにプレゼントしたくって」

 

照れた様子でそう言ってくれるララに嬉しさを感じながら、レアな花に少し興味が湧く。

 

「庭に置いてあるから早く見て!」

 

「あぁ・・・・・・」

 

ララの後を付いて窓から庭へ出ると今朝にはなかった巨大な花が咲いていた。

 

というかこれは花なのか。

 

なにやら手のような枝と花のような顔があるように思えるのだが。

 

「どう? トシアキ。 可愛いお花でしょ?」

 

「・・・・・・そうだな」

 

世の中には変わった動物も存在するのだから植物もあってもおかしくはない。

 

見たところ、この世界の『精霊』からも受け入れられているので特に害はないだろう。

 

あとは俺の気持ちの問題だ、花として見る気持ちの問題だけだ。

 

「プレゼント、ありがとな。 ララ」

 

「うん!」

 

俺の感謝が伝わったようでララは嬉しそうにそう返事をしてくれた。

 

その後は俺とララ、美柑に親父、それからザスティンと共に美柑が腕によりを掛けて作ってくれた夕食を美味しく頂いた。

 

後、余談になってしまうが、夕食を食べている途中に郵便物が届き、中には天条院グループ系列の店で割引が効くシルバーカードと男物の香水、そして何故か小太刀が入っていた。

 

「先輩も誕生日知ってたんだな。 けど、何故に小太刀?」

 

自室のベッドで横になりながら俺は呟く。

 

今度、会ったときにお礼を言っておかないとな、と考えている内に俺は眠りに付いたのであった。

 

 

 

***

 

 

『俺』の誕生日から数日が経過したある日のこと。

 

ララと一緒に通学路を歩いているのだが、何やらララの様子がおかしい。

 

いつもならば、楽しそうに笑みを浮かべながら話しかけてくるのだが、今日は静かにスタスタと歩いているのだ。

 

「・・・・・・別に静かに登校するのが嫌な訳じゃないんだけどな」

 

嫌なわけでは勿論ない。

 

ないのだが、いつもと違うことに少し調子が合わないのだ。

 

「やっほー、ララちぃ。 おっはよー!」

 

別の道から声を掛けてきたのは沢田である。

 

隣には仲の良い西連寺と籾岡の姿もある。

 

「おはよう。 結城くん、ララさん」

 

「おう、おはよ」

 

「おはようございます。 春菜さん、里沙さん、未央さん」

 

俺も挨拶を返して再び歩き出そうとしたところで思わず足を止めてしまった。

 

ララの挨拶がいつもの元気な挨拶ではなく、どこか他人行儀な挨拶だったからだ。

 

「さ、行きましょう。 遅刻してしまいますよ?」

 

驚いて足を止めてしまったのはどうやら俺だけではないらしく、西連寺も籾岡も沢田もララの言葉遣いに驚いていたようだ。

 

だが、ララはそんな俺たちを気にすることなく、そう言って足を学校へ進めた。

 

「・・・・・・なにかあったのか?」

 

先に進むララの後ろ姿を見つめながら俺は小さくそう呟いた。

 

怪我なら治せないこともないが、病気では俺にはどうしようもない。

 

原因がわからなければ手の出しようがないからだ。

 

怪我なら目に見えている傷を塞いだりすることは出来るのだが。

 

「あぁ、ララちゃん! 今日も君は美しい!!」

 

再び違和感を覚えたのは休み時間の時であった。

 

実験室での授業が終わり、教室へ戻っている途中にレンがララへ近づいていく。

 

「その美しさはまさに宇宙の宝石! いや、神の芸術だよ!!」

 

前に屋上で宣言されてからレンはララによく話しかけるようになっていた。

 

もっとも、ほとんどララの感心を掴んでいる所は見かけなかったが。

 

「っ!!」

 

傍で様子を窺っていると、ララが突然顔を赤らめて俺の後ろへ身を隠した。

 

「ララちゃん!?」

 

「やだ・・・・・・恥ずかしいからやめてください」

 

俺の後ろから顔だけを出して、本当に恥ずかしそうな表情で訴える。

 

そのララの言葉にショックを受けたようで、レンは泣きながら廊下を走り去って行った。

 

「・・・・・・・・・やっぱ、何かあるな」

 

そう確信した俺は次の授業が始まるのを無視してそのままララを屋上へ連れ出す。

 

「なんでしょう、トシアキ・・・・・・お話って」

 

屋上の手すりに背を向けたララは俺の方へ身体を向けて俺が連れ出した訳を聞いてくる。

 

しかし、俺とは目を合わそうとせず、視線は下に向いたままであった。

 

「なぁ、ララ。 今日のお前・・・・・・」

 

そこまで言った時、後ろから楽しそうに『精霊』たちに身体を押されるのを感じた。

 

と言ってもそんなに強いものではなく、あくまで風が吹く程度であったが。

 

「あっ・・・・・・」

 

だが、そんな程度でも布生地は簡単に揺れてしまう。

 

ララの制服のスカートが先ほどの風でフワッと浮いてしまったのだ。

 

「っ!? ・・・・・・見ました?」

 

まさしく風のイタズラによってララのスカートの中身が見えてしまう。

 

ララは慌ててスカート押さえたが、俺の目にはしっかりと桃色が見えてしまっていた。

 

「あ、あぁ。 悪い」

 

「もう、トシアキのエッチ」

 

普段、裸でベッドに潜り込んできたり、風呂上がりにバスタオル一枚で歩きまわる奴の台詞には聴こえなかった。

 

だが、いつもと違うギャップに俺もなんて言っていいのかわからなくなってしまう。

 

「・・・・・・」

 

いつもならちゃんと服を着ろ、と注意することはできるのだが、両手で頬を押さえて恥ずかしがるララを見ていると言葉が何も出てこない。

 

これが婚約者としての自覚を促すテクニックだとしたら俺は完全にやられてしまった感じだ。

 

「トシアキ?」

 

俺が何も言わなくなったのが気になったのか、顔を覗き込んでくるララ。

 

いつもと変わらない行動だが、俺の心臓はいつもより大きく鼓動する。

 

「ラ、ララ。 お前・・・・・・」

 

「どうやら彼女、『コロット風邪』のようね」

 

突然、背後から声が聴こえ俺は慌てて振り向いた。

 

こんな近くにいるのに気配を感じられなかったのは俺が平常心でいなかったからか。

 

それとも、背後からの声の主が俺より実力者なのか。

 

「・・・・・・アンタは?」

 

後者であることを警戒して、ララを庇う様にしながらそう問いかける。

 

「私は保健教諭の御門よ。 あとはこの星の人間ではないってことも言ったほうがいいかしら」

 

この星の人間ではないということは、ララと同じで宇宙人か。

 

彩南高校の保健の先生は宇宙人だったってことか。

 

「なるほどな。 で、『コロット風邪』ってのは?」

 

「微熱に伴って性格が全く別人に変わってしまう症状が現れるの」

 

全く別人に変わるね、確かに今までの行動を思い出すと思い当たる。

 

試しにララの額に手を置いてみると若干、熱があるように感じられる。

 

「確かに微熱がありそうだな。 で、治す方法は?」

 

「コレをあげるわ。 私が調合した風邪薬よ」

 

俺は紫色の液体が入った小瓶を手渡される。

 

「本当なら報酬を貰うところだけど、カワイイ生徒からお金は貰えないからね」

 

「・・・・・・ありがとうございます、御門先生」

 

この薬が本当に効くのかどうかはわからないが、宇宙のことまで俺はわからない。

 

ここは宇宙人である御門先生の言っていることを信じることにした。

 

「別にいいわよ。 それじゃ、お大事にねお姫様。 それと王子様」

 

そう言い残して屋上から御門先生は立ち去って行った。

 

その後に受け取った薬をララに飲ませ、数時間後にはいつものララに無事戻っていた。

 

ともかく、風邪が無事に治ってよかったと俺はソッと胸を撫で下ろすのであった。

 

 

 

~おまけ~

 

 

屋上へ出た私は目的の生徒たちを見つける。

 

一人はデビルーク星の第一王女、ララ・サタリン・デビルーク。

 

もう一人はその王女に認められた結婚相手、結城トシアキ。

 

調べたところ、結城トシアキの方はこの星、地球生まれの地球育ちで特に何か有るわけではなさそうなのだけれど。

 

「どうやら彼女、『コロット風邪』のようね」

 

私の発言に驚いたようで、警戒するような視線をコチラへ向けてくる。

 

その一瞬でお姫様を背中に庇う判断力はなかなかのものね。

 

「・・・・・・アンタは?」

 

コチラは知っているけど、アチラは私を知らないようね。

 

もっとも、この星の人間に存在を隠しながら生活するのが私たち宇宙人だしね。

 

知らないのは当然ね、それにしてもこの子の殺気は凄いわね。

 

「私は保健教諭の御門よ。 あとはこの星の人間ではないってことも言ったほうがいいかしら」

 

変に揉め事を起こして困るのはコチラなので私は包み隠さず話す。

 

どうやら少しは警戒を解いてくれたようで、話方もそれとなく変わっていく。

 

それにしてもこの子の殺気は下手な大人なら簡単に気を失ってしまうわね。

 

さすが、お姫様が選んだ相手ってことかしらね。

 

「別にいいわよ。 それじゃ、お大事にねお姫様。 それと王子様」

 

最後にそう言い残して私は屋上から出て行く。

 

本当は授業中だから教室へ戻りなさいと言いたかったけれど、彼の情報収集も出来たから特別サービスにしておきましょう。

 

今度からは薬の代金を請求しても払ってくれそうだし、今のうちに良い付き合いをしておくことにしようと考えながら私はその場から立ち去った。

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