「トシアキのバカーーー!!」
私はトシアキに向かってそう怒鳴ってから部屋を飛び出した。
トシアキを楽しませようと私の発明品を部屋で使ってみたら調子が悪くて爆発してしまった。
幸い、素早く気付いたトシアキが対処してくれたから怪我はなかったのだけど。
「・・・・・・あんなに怒ることないのに」
トシアキの部屋から飛び出して来た私は川辺に座り込んでそう呟く。
確かに部屋がめちゃくちゃになったけど、私はトシアキの為を思ってやったのに。
「ララさん?」
「あっ、春菜・・・・・・」
川辺で座っている私に声を掛けてくれたのは友達の春菜だった。
学校が休みなのに制服を着ているけど、何かあったのかな。
「どうかしたの? こんなところで座って」
「春菜こそ、どうして制服着てるの?」
「私はテニス部の練習があったから、その帰りなの」
確か学校には部活という集まりがあって、その種類によっては放課後や休みの日にも活動していたような気がする。
「そうなんだ・・・・・・」
「ララさんはどうしてここに?」
私の質問に答えてくれたので、やっぱり私も答えるべきだと思うけど。
「・・・・・・ねぇ、春菜。 今日、春菜の家に泊めてくれない?」
春菜の質問には答えず、私は春菜にそうお願いしてみる。
やっぱり、トシアキに怒られて家を飛び出したなんて恥ずかしくて言えないよね。
「えっ、あ、うん。 大丈夫だよ。 それじゃあ、行こっか」
結局、春菜の聞いてきたことには答えていないのだけれど。
私が答えられないことだと思ってくれたのか、春菜は嫌な顔一つせずに私を連れて歩き出してくれた。
春菜の家に着いた時にはもう日が暮れていて、そのまま晩御飯の時間になった。
「この巨大しじみ美味しい!」
「ララさん、それはハマグリだよ」
このしじみはハマグリって名前なんだ。
私はハマグリをお箸で掴みながら考えを巡らす。
やっぱり、地球にあるモノの名前を覚えるのは難しいかも。
「しっかし珍しいねぇ、春菜がウチに友達を連れて来るなんて」
そんなことを考えていると、料理を作ってくれた春菜に似た女の人がこっちにやって来た。
「ララちゃん、だっけ? この子、友達少ないから仲良くしてあげてね」
「春菜は私の大切な友達だから仲良しだよ」
「あら、そう! よかったねぇ、春菜」
私の答えた言葉に嬉しそうにした女の人は春菜と楽しそうに話し始める。
話を聞いているとどうやらこの人は春菜のお姉ちゃんみたい。
そのままご飯を食べ終えた後は春菜の部屋に移動して色々と話をした。
「あれ? これって・・・・・・」
話しているときにタンスの上に飾ってあった写真立てを見つけた。
そこには今の制服とは違う服を着た春菜と一緒にトシアキも写っている。
「あっ! そ、それは中学の時のクラス写真だよ」
「へぇ、春菜とトシアキって同じ中学だったんだ」
中学っていうのは高校の前に勉強をしていた場所。
私の知らない昔のトシアキを春菜は知ってるんだ。
「こっちの写真は・・・・・・トシアキがトロフィー持ってる」
「それは中学のクラス対抗リレーの時の写真だよ」
トシアキはクラス写真の時は端っこで不機嫌そうな顔で写ってるのに、リレーの時の写真は真ん中で笑っていた。
「その時は結城君がアンカーでバトンを貰ったときには最下位だったんだけど、最後にトップでゴールしたの」
そう言えばトシアキって普段はヤル気がなさそうだけど、何かの拍子で凄く真面目になるよね。
その時のトシアキってちょっとカッコいいなって思うんだけど、この時もそうだったのかな。
「そのリレーの点数でクラスが逆転優勝になって・・・・・・あの時はカッコよかったなぁ」
「っ!?」
春菜が最後に呟いた言葉を聞いて、ドキッと胸が熱くなる。
やっぱり、私が思ってたように春菜もその時はそう感じたんだ。
「二人とも、お風呂沸いたわよ?」
「どうする、ララさん。 先に入る?」
春菜がそうやって聞いてくれたけど、私としては春菜と一緒に入りたい。
やっぱりお風呂は一人で入るより、皆で入ったほうが楽しいもんね。
トシアキは全然、一緒に入ってくれないけど。
「ううん、春菜と一緒に入りたい」
「えっ!? 私と?」
私のお願いに驚いていた春菜だったけど、結局一緒に入ってくれることになった。
「・・・・・・ねぇ、春菜」
「な、なに?」
シャワーを浴びていた春菜に私は湯船に浸かりながら呼びかける。
私の呼びかけに春菜は少し驚いた様子でコチラに視線を向ける。
「トシアキって私といてもつまんないのかなぁ」
「結城君?」
春菜とお風呂に入っていることもあって、普段なら誰にも言わないようなことを聞いてみる。
「トシアキってあんまり笑わないでしょ? もしかして楽しくないのかなぁって」
「・・・・・・男の子の考えてることは私にはよくわからないけど」
春菜はそう言いながら椅子に座って身体を洗い始める。
「でもね、それは別にララさんと一緒に居るのがつまらないってわけじゃないと思うよ?」
私は湯船に浸かりながら春菜の話す言葉に耳を傾ける。
「だって、結城君は中学からそんな感じだったし。 むしろ、今の方が楽しそうにしているように見えるけどなぁ」
身体を洗いながらそう言った春菜の表情は私からは見えなかったけど、なんだか悔しそうな表情をしているような気がした。
でも、私としても中学時代のトシアキのことを知っている春菜が羨ましく感じる。
「・・・・・・なんか、春菜の方が私よりトシアキのことを見てるみたいだね」
「えっ!? べ、別にそんなことないよ? 偶然、そう感じただけだから」
春菜の方がトシアキのことを見てるっていうことは春菜もトシアキのことが好きなのかな。
私はもちろん大好きだけど、全然トシアキのことわかってなかったんだ。
「ねぇ! 春菜!! もっと中学の時のトシアキのこと教えて!」
「えっ、うん!」
もっともっとトシアキのことを知って、トシアキが楽しいことや嬉しいことを知ろう。
そうすればきっとトシアキも私のことをもっと好きになってくれるはずだから。
~おまけ~
春菜の家に泊まってトシアキの色々なことを聞けた。
今から家に戻って、昨日のことをトシアキにちゃんと謝らないと。
「よう、家出娘。 もう、気は済んだか?」
春菜のウチから出たところで突然、そう声を掛けられた。
驚いて視線を向けると、壁に背を預けてコチラを見つめるトシアキの姿があった。
「えっ、ト、トシアキ?」
「おう。 探したぜ、ララ。 いきなり家を飛び出したら心配するだろうが」
こっちに近づいてくるトシアキの顔はなんだか怒っていて、私は反射的にギュッと目を閉じてしまう。
「ふえっ!?」
「まったく、家出してウチに来て、そこからまた家出なんかすんなよな」
トシアキは私の頭の上に手を置いて乱暴にかき乱した。
ちょっと痛かったけど、トシアキが心配してくれたことが伝わってきた。
「う、うん。 ごめんなさい・・・・・・」
「ほら、帰るぞ」
相変わらずの表情でトシアキは先に歩き出す。
でも、後ろ姿をジッと見てみると所々汚れていたりしていて私を探してくれていたことがわかる。
「うん!」
そんなトシアキの姿を見て私はとても嬉しくなり、先に歩くトシアキの腕に飛び付いた。
飛び付いた時は怒られたけど、その後は何も言わずにそのまま家まで帰ってくれた。