魔法使いのToLOVEる   作:T&G

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第十五話

「トシアキ! 早くしないと遅刻しちゃうよ!!」

 

彩南高校の予鈴を聞きながら俺は先に走りだしたララの背を見送る。

 

ララは楽しみにしている学校での生活の為に走っているのだろうが。

 

「・・・・・・朝から本当に元気だなぁ」

 

鞄を担ぎながら俺はトボトボと歩いて門を潜った。

 

新学期ならば風紀委員が居そうなものだが、今回は特に問題もなく学校内へ入ることが出来た。

 

「ん?」

 

学校に入ってから視線を感じたので、辺りを見渡してみる。

 

「・・・・・・おっ!」

 

見渡してみると、校舎の屋上で黒い衣装を身に纏った金髪の少女を発見した。

 

視線が合ったのを確認した後、俺はここに来るように彼女に向かって手招きをする。

 

「なんですか、結城トシアキ」

 

変身能力で白い翼を羽ばたかせながら俺の目の前に降り立つ金色の闇。

 

前回の戦いの後、俺のことを護衛するように依頼したのだ。

 

「ほらこれ」

 

「?」

 

俺は鞄の中から包みを取り出し、彼女の手の上に乗せる。

 

金色の闇は手の上に乗っている包みと俺に視線を交互に向けながら首を傾げた。

 

「それは弁当だよ。 今日の昼飯に食ってくれ」

 

「・・・・・・毒でも入っているのですか?」

 

「なんてこと言うんだよ。 一応、俺が腕によりを掛けて作った自信作だぜ?」

 

人がせっかく早起きして作った弁当に対してなんて言い草だ。

 

今日はララと美柑にも同じ弁当を渡している。

 

その時に彼女の顔も思い浮かんだので一緒に作ってみたのだ。

 

「そうですか」

 

相変わらず表情を変えずに手に乗せた弁当をジッと見つめる。

 

するとその場で包みを解き、弁当を食べ始めた。

 

「おいおい、昼飯用に作ったのに今食べるのかよ」

 

「・・・・・・やはり、地球の食べ物は変わっていますね」

 

俺の呆れた言葉に返事をするかのように弁当を口に含んだ後に彼女はそう言った。

 

つまり、俺が腕によりを掛けて作った弁当はそんなに美味しくなかったということだ。

 

「ですが、こういう変わった食べ物も悪くありません」

 

「えっ? お、おい!」

 

落ち込んでいる俺の姿を見てそう言ってくれたのか、本心からそう思っていたのかわからなかった。

 

結局、金色の闇はそう言ったあとに再び白い翼を羽ばたかせてどこかへ飛んで行ってしまった。

 

「・・・・・・まぁ、いいか」

 

弁当は受け取ってもらえたし、そのまま持って行ったので食べてはくれるだろう。

 

結果的によかったと、そこまで考えた所で始業のチャイムが聴こえ、俺の遅刻が確定してしまうのであった。

 

こうなってしまっては急いでも仕方がないので、俺はゆっくり校舎へと向かう。

 

上靴に履き替えようと靴箱を開けると大量の手紙が落ちてきた。

 

「・・・・・・マジかよ」

 

最初は女の子からの手紙かと少し期待したのだが、よく見るとどれもそんな様子はない。

 

なぜなら、手紙にカッタ―の刃が仕込んであったり、文字が赤く染まっていたりしているからだ。

 

俺はそのうちの一枚を取り、中身を読んでみる。

 

【直ぐにララちゃんと別れるんだ!!】

 

内容が内容だったため、俺は気にせずに傍にあったゴミ箱へ捨てる。

 

カッターの刃がついている危ない物や文字として読めないようなものも一緒に捨てておく。

 

【月のない夜は気を付けろ、俺はお前を狙っている】

 

【陽のあるうちは歩けると思うな、俺たちはお前を監視している】

 

「・・・・・・つまり、月のある夜は歩いても大丈夫なんだな」

 

全ての手紙を読み終え、くだらない結論に達した俺。

 

もっとも、素直に手紙の内容を守るつもりもないのだが。

 

「ん?」

 

上靴を手に取った俺はまだもう一枚、手紙が残っていたことに気付く。

 

この最後の一枚は綺麗な封筒に入っており、文字も普通に読めた。

 

【屋上で待ってます】

 

「・・・・・・いや、いつだよ」

 

思わず手紙に突っ込みを入れてしまった。

 

この手紙を何度読み返してもそれしか書いていない。

 

差出人も時間帯もわからないままだ。

 

昨日、俺が帰るときに靴箱には何もなかったので入れたのならばその後だ。

 

「昨日の放課後の話じゃねぇだろうな」

 

どうせ遅刻が確定してしまっているので、俺は教室へは向かわずに屋上へ向かう。

 

もし、昨日から待っていたのならば、と考えての行動だったのだが。

 

「・・・・・・誰もいないな」

 

既に一時間目の授業が始まっており、屋上には誰の姿もなかった。

 

仕方なく俺は落下防止用のフェンスの傍まで行き、腰を下ろす。

 

「いつの時間帯かわからないから仕方ないよな」

 

俺以外には誰もいないのだが、授業をサボる言い訳を呟きながら目を閉じる。

 

風が心地よく吹いており、この分だと気持ちよく眠れそうだ。

 

俺はそこまで考えている内に意識が遠のいていくのを微かに感じていた。

 

 

 

***

 

 

 

「んっ、ん?」

 

俺の傍で言い争う様な声が聴こえて来たので閉じていた目を開ける。

 

まったく、せっかく気持ちよく寝ていたのに邪魔をしたのは誰だよ。

 

「・・・・・・だから、あなたに用はないの。 そこを退いて」

 

「どのような理由があろうと、彼は私の依頼主。 ここを通すわけにはいきません」

 

俺が開けた目に最初に飛びこんできたのは、金色の闇の背中だった。

 

背が小さい彼女だが、俺は座っている状態なので少しその背中が大きく見える。

 

「もう! トシアキ君は私が手紙でここに呼んだの! だから、私には会う権利があるんだよ」

 

そして、金色の闇の対面側に立つ女の子がどうやら手紙の差出人らしい。

 

金色の闇の背から顔を覗かせて見てみたが、俺が初めて見る生徒だった。

 

「手紙でここに・・・・・・やはり、彼を襲うために呼び出したのですね」

 

どうやら彼女は眠っている俺が襲われそうになっていると勘違いしているらしい。

 

確かに護衛をするように頼んだが、まさか本当に傍で守ってくれるとは思わなかった。

 

「よっ、金色の闇。 色々とサンキューな」

 

「起きたのですか、結城トシアキ。 あなたはいついかなる時でも警戒しておくべきです」

 

いつまでも座っているわけにはいかないので、俺は起き上がって彼女の肩をたたく。

 

俺が隣に立ったのに気付いた金色の闇はそう言って注意してくる。

 

確かにララの他の婚約者候補から命を狙われていればそう思うのかもしれないが。

 

「警戒って言ってもなぁ。 いざとなったら助けてくれるんだろ?」

 

「っ!」

 

そう言いながら彼女に向かって微笑む。

 

俺と戦える実力者が護衛してくれているのだから何も心配なんてしていないのだ。

 

「・・・・・・知りません。 それから彼女はあなたに用があるそうです」

 

プイッと俺から視線を外した金色の闇は先ほどまで言い争っていた女の子に視線を向けた。

 

そんな彼女に俺は苦笑しながら、初めて顔を会わせるであろう女の子に視線を向けた。

 

「えっと、初めまして、でいいよな?」

 

「うん、初めまして。 でも、私はずっとトシアキ君のこと見てたんだよ?」

 

そう言われても俺にはそんな記憶はない。

 

ある程度離れていても視線を感じられる自信はあるのだが、彼女のような女の子からは覚えがない。

 

「私の気持ちを伝えたくて・・・・・・でも、チャンスがなくて」

 

「気持ちって?」

 

俺がそう聞き返すと、彼女はチラリと俺の隣にいる金色の闇に視線を向けた。

 

どうやら、他の人には聞かれたくない話らしい。

 

「悪い、金色の闇。 少し外してくれないか?」

 

「・・・・・・依頼人からの願いなら構いませんが、いいのですか? 彼女があなたの命を狙っていないという保障は有りませんよ?」

 

今の会話を聞いて俺は金色の闇は立派な仕事人だと考えてしまった。

 

俺が依頼した『護衛』という仕事をキチンとこなそうとしている姿が立派に見える。

 

今まで暗殺しかしてこなかったというのが嘘のように感じられたのだ。

 

「そう言ってくれるのは嬉しいが、俺の強さは知ってるだろ? 問題ないさ」

 

「・・・・・・わかりました。 あなたがそう言うのなら」

 

俺の言葉を信じてくれたのか、金色の闇は白い翼を変身能力で出現させて少し離れたマンションの上に降りたった。

 

なんだかんだ言って俺のことは見守っていてくれるらしい。

 

「なんか、トシアキ君って凄いね。 あの『金色の闇』にあそこまで言えちゃうんだもん」

 

今の言葉から察するにどうやら彼女も宇宙人らしい。

 

しかし相手は女の子、流石にララの婚約者関係ではないと思うのだが。

 

「この前はごめんなさい。 レンが迷惑をかけて」

 

「ん? もしかして、兄妹かなにかか?」

 

ここで思いもよらないクラスメイトの名前が出てきた。

 

以前、ララに自分をアピールするために色々と絡んできたレンの知り合いらしい。

 

「えっと、兄妹っていうか、なんていうか・・・・・・」

 

どうも話しにくい事情があるようなので俺は特に何も聞かず、話の続きをするように視線で促す。

 

「メモルゼ星の王族として謝罪します、本当にごめんなさい」

 

メモルゼ星が何処にある星なのかは知らないが、彼女も王族の出のようだ。

 

つまり、その知り合いであるレンも王族なわけで。

 

「そうか。 君・・・・・・っと、名前をまだ聞いてなかったな」

 

「あっ! ごめんなさい。 私はルンっていいます」

 

俺の言葉に慌てて名前を教えてくれる彼女、ルン。

 

そんなルンの今までの様子を見ていて、悪い奴ではないと判断した。

 

「ルンの謝罪は確かに受け取った。 王族としての謝罪なら受け取らない方が失礼だしな」

 

本当なら本人の口からそう言った言葉を聞きたかったが、仕方ない。

 

俺自身も王族の出なのでこういったやり取りは初めてではないのだ。

 

もっとも、その仕事の殆どは王であった父親がずっとやっていたのだが。

 

「そう言えば最初に言ってたルンの気持ちって、もしかしてこのことか?」

 

身内の不始末の為に頭を下げるルンの行動に感嘆しつつ、そう尋ねた。

 

もし、そうならば話は終わりということになり俺は帰ろうかと思っていた。

 

「えっと、そうじゃなくて・・・・・・」

 

ルンは急に頬を赤らめ、俯きながら一人で小さく何かを呟いた。

 

顔を上げた彼女の瞳は決意で固まっており、閉じていた口をゆっくりと開いて言葉を発する。

 

「・・・・・・あなたのことが好きです。 私と付き合ってください」

 

突然の告白に少し驚いた俺だが、ララには結婚したいと言われたこともある。

 

「理由を聞いても良いか?」

 

そのため、すぐに落ち着きを取り戻した俺はその理由を尋ねてみた。

 

そもそもメモルゼ星の王族が地球の一般人にそんなことを言っていいのか。

 

と、そこまで考えた所でララもデビルーク星の王女であったことを思い出した。

 

「私、レンに対して本気で怒っているトシアキ君を見て、一目惚れしたの!!」

 

あの教室で思わず殺気を出してしまった時のことか。

 

しかし、その時の出来事は教室にいたクラスメイトしか知らないはずだが。

 

「他の人の為に怒る優しさ! レンを睨んだときに表情! もう、カッコよくって!!」

 

「そ、そうか・・・・・・」

 

その時のことを力説するルンに少し苦笑気味の俺。

 

確かに好意を持たれたことは嬉しく思うが、俺はまだルンのことを知らない。

 

「その気持ちは嬉しいけど、俺はまだルンのことをよく知らない。 だから残念だけど・・・・・・」

 

そこまで言った所で突然、目の前の『精霊』が暴れ始めた。

 

その様子から何かを伝えてくれようとしているのがわかるが、内容までは理解できない。

 

「くしゅん!」

 

『精霊』が暴れたことが原因で風が起こり、ルンの鼻が刺激されたのか、彼女は可愛らしいクシャミをする。

 

すると、先ほどまでいたルンの姿が消え、女子の制服を着たレンが現れた。

 

「・・・・・・」

 

「ルンの奴、少しはボクの気持ちも考えてくれよ」

 

俺が無言で見つめているのを知ってか知らずか、涙目になりながらレンは自分の姿を見てそう呟く。

 

「くっ! 結城!! ララちゃんだけでなく、もう一人のボクであるルンの心まで奪うとは」

 

俺の視線に気付いたのか、コチラを睨みつけながらそう言ったレン。

 

だが、男であるレンが女子の制服を着てそんな風に言っても雰囲気が台無しだ。

 

「許しがたい! 許しがたいが、今日は勘弁してやろう!!」

 

俺の呆れた表情が効いたのか、それだけ言い残して慌てて去って行くレン。

 

おそらく、女子の制服を早く着替えたいのだろう。

 

それにしても、また新しい宇宙人と関わりを持ってしまった。

 

これでまた面倒事が増えるかもと心配する俺であった。

 

 

 

~おまけ~

 

 

私はクシャミをしてしまったことによって周りが暗い闇の中にポツンと佇む。

 

「もう! もう少しでトシアキ君からの返事を聞けたのに!!」

 

思わずレンの意識に向かってそう怒鳴ってしまう。

 

一応、レンが見た光景は私も見えるのだけど、レンは制服を着替えるために既に屋上から立ち去ってしまっていた。

 

「本当はクシャミ程度じゃ、入れ替わることなんてないのになぁ」

 

レンがララを追いかけて地球に来た所為で身体が少しおかしくなってしまった。

 

さっきもトシアキ君が何か言ってたけど、クシャミを我慢しようと意識をソチラへ向けていたので全くわからなかった。

 

「せっかく告白したのに・・・・・・」

 

答えを聞けなかったのは残念だけど、おそらく断られていただろう。

 

あのララの婚約者候補になっているくらいだし、他からも告白されているかもしれない。

 

「でも、いいもん! 私、負けないから!!」

 

今はレンが表に出ているけど、今度私が出たときにまた告白してみよう。

 

それでもダメだったら、振り向いてもらえるまで頑張る。

 

メモルゼ星の王族はデビルーク星の王族なんかに負けないんだから。

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