「さて、久しぶりの日本。 懐かしの我が家だわ」
私は小さな旅行鞄を持って空港から自宅へと戻って来た。
仕事の都合でなかなか帰って来れないけど、子供たちは元気にしてるかしら。
「ただいま~」
「えっ? お、お母さん!?」
玄関まで出迎えてくれたのは私の娘である美柑であった。
エプロンをしてお玉まで持って出て来ちゃって、相変わらず可愛いわね。
「ただいま、美柑。 相変わらず可愛いわねぇ」
「ちょ、ちょっと、お母さん!!」
久しぶりに会う愛娘を抱締め、家族のもとへ帰って来た実感をかみしめる。
もっとも、仕事の都合でそんなに長くは居られないんだけどね。
「あれ? そう言えばトシアキは?」
昔からしっかりしていたもう一人の子どもの姿を探すが出迎えには来ていない。
あの子は自分が興味を持ったこと以外には感心が全くないからかしら。
「トシ兄ぃはまだ学校だよ。 ララさんもまだみたいだし」
「ララさん?」
美柑の口から私が聞いたことのない名前が出てきたので詳しく聞いてみる。
リビングで美柑の入れてくれたコーヒーを飲みながら話しを聞いていた。
「なるほど、宇宙人ね。 トシアキも宇宙のお姫様に好かれるなんてやるじゃない」
「まぁ、トシ兄ぃはトシ兄ぃのままだけどね」
私の言葉に少し呆れたような声色で返事をした美柑。
そんな様子を見て、トシアキは最後に会ったときから変わっていないんだと考えていた。
「でも、よかったじゃない美柑。 美柑も昔はトシアキのことが・・・・・・」
「ただいま・・・・・・」
「と、トシ兄ぃが帰って来たみたい! わ、私、行ってくるね!!」
私の言葉を途中まで聞いた美柑が慌てて帰って来たトシアキを迎えに玄関まで走って行った。
「あの娘も変わってないわね」
自分の娘も昔と変わらず可愛い性格のままのようであった。
勿論、姿は成長した分だけ可愛くなってるんだけどね。
「お、おいっ!?」
そんなことを考えていると美柑に腕を引っ張られながらリビングに入って来た私の息子であるトシアキ。
「あら? トシアキじゃない、お帰り♪」
最後に見たときから背が少し伸びている気がするけど、カッコ良くなってるわね、一体誰に似たのかしら。
「・・・・・・母さん、いつ帰って来たんだよ」
「ついさっき。 ちょっと日本で仕事があったから、あまりゆっくり出来ないけど」
この子も性格は相変わらずのようね。
久しぶりに母親に会っても驚きもせず、淡々と話しをするなんて。
息子と娘を放っておいて仕事ばっかりの私に興味を持ってないからかもしれないけど。
「親父に連絡は?」
「急な仕事だったから連絡は出来てないの。 あっちの仕事の邪魔しちゃ悪いしね」
やっぱり長男ということもあって、私とパパの関係にも気を使ってくれてるのかしら。
それにしても、本当にトシアキってばしばらく見ないうちにカッコよくなって。
義息子じゃなければアプローチしていたかもしれないわ。
「もう! トシアキったら、知らない間にカッコよくなっちゃって!!」
「お、おいっ!? なにして!?」
これくらいは親子のスキンシップとしても問題ないわよね。
「ちょっと、お母さん! トシ兄ぃが困ってるでしょ!!」
私のスキンシップが過激すぎたのか、美柑が慌てて間に割って入って来た。
そう言えば美柑はトシアキのこと好きって言ってたっけ。
聞いたのはずっと昔だったから兄妹としての好きかもしれないけれど。
「あらあら、美柑ったら相変わらずトシアキにベッタリなのねぇ」
「べ、別にそういうわけじゃ・・・・・・」
頬を赤らめている美柑を見て、兄妹としての好きではないことを確信した。
やっぱり美柑は私の娘よね、異性の好みがこんなにも似ているんだもの。
「・・・・・・じゃあ、俺は部屋に居るから」
私のスキンシップの所為で居心地が悪くなったからか、それとも単に話しをする必要はないと感じたからなのか、どちらかわからないけど、トシアキはリビングから出て行こうとする。
でも、私にとっては久しぶりの親子の会話だから何とかこの場に引き留めようと話題を探す。
「あ、そういえばトシアキ。 美柑から聞いたけど、宇宙人の子が居候してるんだって?」
「ん? あぁ、そうだけど・・・・・・」
私の言葉に反応してくれたトシアキはその場で立ち止まって話しを続けてくれる。
どうやら、私のことが気に入らなかったわけではないとわかったので一安心したのは秘密だったりする。
「ただいまー!」
「お、おじゃまします」
そんな時トシアキの後ろ、つまり玄関の方から聞いたことのない女の子たちの声が聞えてきた。
「ちょうど帰ってきたようだ」
「そうみたいね」
気を利かせた美柑が玄関まで女の子たちを出迎えに行ってくれた。
「トシアキのママ、初めまして! ララです!」
「えっと、西連寺です」
美柑に連れられて来た二人の女の子は対照的な二人。
片方は初めて会うはずなのに元気よく挨拶をし、笑顔を見せている子である。
もう片方は初めて会うからか、緊張した様子でコチラに失礼が無いように気を付けている子であった。
「むっ!?」
しかし、そんな対照的な二人だが共通している点があった。
「ちょ、ちょっと!?」
「きゃっ!?」
それは二人ともモデルになれるくらい素晴らしいボディということだった。
思わず私は彼女たちに近づき、様々な角度から眺め、見つめ、観察した。
そして、最後に二人の身体を隅々まで触り、掴み、図ったところでトシアキにコツンと頭を叩かれてしまった。
「悪いな、西連寺。 こんな母親で」
「う、ううん。 大丈夫だから」
ついつい仕事の癖が出てしまったことを反省した私はトシアキと話している女の子、西連寺さんの様子を見てピンときた。
「あら? ひょっとして・・・・・・」
「おい、母さん。 流石に二回目は本気で怒るぞ?」
西連寺さんにちょっとした確認をしようと近づいてみたら、私に気付いたトシアキに睨まれてしまった。
美女が怒ると怖いと聞くけど、美男が怒っても怖いわね。
「ち、違うわよ。 西連寺さん? ちょっといいかしら?」
静かに頷いたのを確認してから私は西連寺さんを連れてトシアキから距離を取る。
「あ、あの、何か・・・・・・」
「あなた、トシアキのこと好きでしょ?」
落ち着かない様子の西連寺さんだったけど、私の言葉を聞いた瞬間、顔を真っ赤にして固まってしまった。
「私は中立だから応援してあげられないけど、あの子は倍率高いわよ?」
「わ、私! 急用を思い出したので帰ります!!」
私の言葉をどう受け止めたのかわからなかったけど、慌てて出て行ったのを見ると恥ずかしくなったのでしょう。
「・・・・・・何言ったんだよ」
「ふふふ、人気者なのね。 少し妬けちゃうわ」
西連寺さんが突然帰ったことで私が何かしたと思ったのか、トシアキがそう聞いてきたけど、こればっかりは答えられないわね。
だから私はいろんな子たちから好意を寄せられている義息子にそれだけ伝えたのであった。
~おまけ~
次の仕事の為に再び外国へ向かわなくちゃいけなくなったので空港までやって来た私たち。
見送りにはトシアキと美柑、あとララさんも着いて来てくれた。
「じゃあ、またね。 あっと、美柑」
飛行機に乗る前に私は大切な愛娘を手招きして呼び寄せる。
「なに? お母さん」
トシアキとララさんから充分距離を取ったのを確認した私は美柑に小さい声で話す。
「やっぱりまだ、トシアキのこと好き?」
「なっ!? なんでそんなこと!?」
私の言葉に頬を赤らめてあたふたと慌てる美柑を微笑ましく思いつつ、話しを続ける。
「好きなら頑張りなさい。 あの子、きっとライバル多いわよ」
「・・・・・・・・・うん」
小さく、それも時間が掛ってからだが、美柑はちゃんと頷いてみせた。
「それじゃあ、またね。 あと、ララさんを呼んでくれる?」
美柑と入れ替わりでやって来たララさんに顔を近づけて話す。
「頑張ってね、ララさん」
「えっ?」
私の言葉の意味が理解できなかったのか、キョトンとしたままのララさんを置いて私は搭乗口へ向かった。
次に会えるのはいつになるかわからないけど、それまでに何か進展があったら面白いな、と考えつつ私は飛行機で再び外国へ向かうのであった。