魔法使いのToLOVEる   作:T&G

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第二十話

いつものように美柑に起こされた俺は先に起きて飯を食べていたララと一緒に学校へ到着した。

 

「あっ、おはよー! 春菜」

 

「はい! おはようございます。 お二人ともお元気そうでなによりです」

 

「あはは、春菜もなんか元気だね」

 

ララは特に気付いた様子ではなかったが、俺は西連寺がいつもと違うような気がしていた。

 

よく視てみると西連寺の身体の周りに何か白い膜が覆っているのが確認できた。

 

「・・・・・・また、厄介ごとか」

 

ララの婚約者候補の宇宙人が西連寺の身体を使って何かしようとしているのだろう。

 

まったく、ギドはどんな奴らを婚約者候補として選んでるんだよ。

 

宇宙的地位は高くても人として最低な奴に跡を継がせていいのか、銀河の支配者。

 

「あっ、ホントだ」

 

考えに没頭していた俺を現実に引き戻したのは西連寺のそんな声であった。

 

「・・・・・・」

 

廊下の真ん中で自分の制服を捲って下着を確認している西連寺。

 

声を聞いて視線を向けたため、俺はその姿をまともに見てしまった。

 

慌てた籾岡や沢田が西連寺の制服を元に戻していたが、それでも何人か目撃してしまっているだろう。

 

「西連寺、ちょっと来い」

 

「えっ? えっ?」

 

訳がわからない表情をしている西連寺を連れて、俺は早足で歩きだす。

 

ララや籾岡に後ろから声を掛けられたが、聞えなかったことにして俺はそのまま屋上へと向かった。

 

「あの・・・・・・トシアキさん、私に何か・・・・・・」

 

「とぼけんなよ。 お前は西連寺の身体を乗っ取ったんだろ? 俺に始末されたくなければ早く西連寺から出ていけ」

 

幸い、登校時間だったので屋上に他の人間はいない。

 

これならある程度暴れても俺が見つかることはないだろう。

 

そう考えて今までのようにボコボコにしてやろうかと戦闘状態に入る。

 

「ふぇっ!? ご、ごめんなさい! でもでも、私、ここから出られなくって!!」

 

俺の殺気を正面から受けたためか、身体をビクッと震わした後、涙目になりながらガタガタと身体を揺らす西連寺。

 

しかし、話を聞いているとララの婚約者候補絡みではないらしい。

 

「出られない? お前は一体・・・・・・」

 

「わ、私です。 幽霊のお静なんです」

 

「・・・・・・静かになってゆっくり眠れるようになっただろうが」

 

少し前にリストラになった宇宙人の溜まり場となっていた旧校舎で出会った幽霊が西連寺の身体に憑依してしまったらしい。

 

「はい。 それで、その、死んでしまった土地から出られないと思ってたんですが・・・・・・」

 

彼女自身は自分のことを地縛霊だと思っていたらしい。

 

だが、実際はそういうわけではなく、あの後に他の場所にも行けることに気付いたそうだ。

 

「で、四百年振りにあの場所から出たことに興奮して、たまたま居た西連寺にぶつかって憑依してしまったと?」

 

「はい、すみませんです」

 

西連寺の顔で申し訳なさそうに顔を俯けるお静。

 

気持ちはわからなくもないが、憑依された方は堪ったものではないだろう。

 

「いくら興奮してたとはいえ、前に何があるか見えなかったのか?」

 

「そ、それは、その・・・・・・」

 

俺の質問に対して、彼女は頬を少し赤らめてしまった。

 

俯きながら手を忙しなく動かし、チラチラとコチラに視線を向けてくる。

 

「・・・・・・まぁ、いい。 とにかくそのままじゃ西連寺が危ないからそこから出すぞ」

 

「えっ!? そんなこと出来るんですか!?」

 

俺の言葉に驚いたように顔を上げるお静。

 

先ほど視たときの白い膜がおそらくお静の魂か何かだろう。

 

「前に言ったろ? 俺は『魔法使い』なんだぜ」

 

視えていれば出来ないこともない。

 

俺は西連寺の身体を抱締め、背中の方に視える大きな白いモノを優しく手で包みこむ。

 

そのまま引き寄せていき、西連寺の身体から白いモノを全て抜き取ることに成功した。

 

「ほら、出来ただろ」

 

「わぁ! ほんとです! もとの幽霊に戻れました!!」

 

そう言いながら俺の周りをフワフワと浮かんでいるお静。

 

「ゆ、結城君!? えっ!? 私、なんで・・・・・・」

 

お静が西連寺の身体から出ることが出来たためか、西連寺本人の意識が表に出てきたようだ。

 

しかし、彼女の身体はお静を出すために俺が抱締めているままである。

 

「・・・・・・気をつけろよ西連寺。 何もないところで躓くなんて危ないぞ?」

 

俺は抱きしめていた言い訳として、そう言いながら西連寺の身体を放してやる。

 

先ほどまではお静の意識だったはずなので、何とか誤魔化せると考えたのだ。

 

「えっ? あ、うん。 ありがとう、結城君」

 

どうやら彼女は俺の言葉を信じて、躓いて倒れそうになった所を俺に抱きとめられたと勘違いしてくれたようだ。

 

「早くしないと一時間目に間に合わないから急ごうぜ」

 

「う、うん。 あの・・・・・・」

 

校舎へ戻ろうとする俺を戸惑いが含まれた声で西連寺が呼びとめる。

 

ちなみにお静は俺の後ろでその様子を窺っている。

 

地縛霊の次は背後霊にでもなるつもりなのだろうか。

 

「どうかしたのか?」

 

「・・・・・・ごめんなさい、なんでもないの」

 

結局、西連寺は何も言わずに俺の横を通り過ぎて校舎へ入って行った。

 

「それで、お静はこれからどうするんだ?」

 

「せっかくなので街を見て回ろうかと思ってます」

 

見て回るのは全然構わないんだが、また問題を起こされては困るので釘を刺しておくことにする。

 

「それはいいけど、もう憑依しないようにな。 あと、視える人に祓われたりするんじゃないぞ」

 

「はい! それではトシアキさん、失礼します」

 

俺の言葉を理解してくれたのか、そう言い残して彼女は街の方へと飛んで行ってしまった。

 

それと同時に一時間目開始のチャイムが鳴り響き、俺の遅刻が確定してしまったのは余談である。

 

 

 

***

 

 

 

「「いただきまーす!!」」

 

皆で声を合わせてそう言ったあとに、テーブルの中心にあるスキヤキに手を伸ばした。

 

ちなみに皆とは、ララ、西連寺、ヤミ、美柑、俺の五人である。

 

「春菜が買って来てくれたお肉、おいしー!」

 

「ウチの近所のお肉屋さんで買ったの。 いつもオマケしてくれるのよ」

 

最初はヤミに地球の食べ物を食わしてやることと、美柑にヤミを紹介することが目的だった。

 

そこからララが西連寺を誘ってこのメンバーでの食事ということになったのである。

 

「・・・・・・」

 

「ヤミさんっていつもどんなもの食べてるの?」

 

ヤミはモグモグとスキヤキを食べ、隣に座っている美柑が早速話しかけている。

 

これで目的は達成できたので、俺も安心して飯を食べることが出来る。

 

ちなみに美柑にはヤミがララと同じ宇宙人であることは話している。

 

「たいやき・・・・・・」

 

「えっ!?」

 

ヤミの主食がまさかのたいやきとは、さすがに俺も驚いてしまった。

 

けど、たいやきは俺と初めて会ったときに食べていたものだ。

 

「覚えていてくれてんなら嬉しいけどな」

 

ヤミと美柑が話しているのを見ながら俺はそう呟いた。

 

俺の護衛に付いてくれているヤミだが、学校に行っていないため友人がいないのでは、と思っていた。

 

「食べ物には特にこだわりはないので」

 

「いや、もう少しこだわった方がいいと思うよ」

 

そこで美柑を紹介することで話すことのできる友人を増やそうと考えたのである。

 

二人もキチンと話せているので特に問題はないだろう。

 

そんな風にして五人で仲良く楽しくスキヤキを食べるのであった。

 

「もう、お腹いっぱい」

 

「あっ、もうこんな時間。 そろそろ帰らないと・・・・・・」

 

スキヤキを皆で食べ終えて一息ついていると、西連寺が時計を見てそう言った。

 

確かに時間を見るともう八時を過ぎてしまっている。

 

「もう帰っちゃうの? 明日は学校休みだし、二人とも泊っていけばいいのに」

 

「え?」

 

帰ろうとしている西連寺にララはそう言って引き留めようとする。

 

泊るのは構わないのだが、男の同級生が一緒では問題になりそうなんだが。

 

「そうだよ、着替えなら私やララさんのがあるし」

 

美柑もヤミに泊って欲しいのか、ララと同じく二人の泊りに賛成のようであった。

 

「でも・・・・・・」

 

西連寺がチラリとコチラに視線を向けてきた。

 

「俺は別に構わないよ。 男の俺が居るけど、それでも構わないのなら」

 

泊ることに俺自身も反対ではないのでそう答えておく。

 

後は、ヤミや西連寺が判断してくれるだろう。

 

「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」

 

というわけでヤミと西連寺がこの家に泊ることになった。

 

美柑に片付けを任せた俺は風呂掃除をしておくことにした。

 

「流石に西連寺やヤミが使うなら丁寧に洗っておかないとな」

 

ゴシゴシとスポンジで浴槽を洗い終えた俺は、お湯を入れて風呂の準備を完了させた。

 

「・・・・・・せっかくだし、このまま先に入ってしまうか」

 

一度、脱衣所に戻った俺は着ていた服を洗濯機の中へ放り込み、浴槽へと身体を沈めた。

 

「ふぅ・・・・・・風呂はいい、風呂は心を癒してくれる」

 

浴槽に背を預け、天井を見つめながらそう呟く。

 

そういえば、こんな時にララが浴槽から出てきたんだった。

 

「あれからもう、一年も経ったのか・・・・・・」

 

最初は俺が『俺』になっていたことに驚いたものだが、今ではもうこの世界に馴染んでしまっている。

 

このままゲンジが迎えに来なかったら俺はどうなってしまうんだろうか。

 

「考えていても仕方がないか・・・・・・ん?」

 

脱衣所の方から物音が聞えてきたので視線をソチラへ向ける。

 

「おっ!? 風呂が広くなった?」

 

広くなったと言っても、小さな町にある銭湯くらいの広さだ。

 

浴槽もシャワーも一つしかなく、ただ広くなっただけのようである。

 

「みんなー。 私、先に入ってるよー」

 

その声と共にララが裸のまま扉を開けて入って来た。

 

いや、風呂に入るんだから裸なのは当たり前なのだが。

 

「おい、ララ! 俺が入ってるんだから早く出ていけ」

 

「あっ、トシアキ。 ここにいたんだ」

 

俺の言葉を聞かずにトコトコと浴槽まで歩いてくるララ。

 

相変わらず、自分の身体を隠そうともせず俺の傍までやって来るのであった。

 

「早く出ていけよ。 一緒に入るのはマズいだろ」

 

「え? なんで?」

 

男である俺と一緒に入ることにララはなんの抵抗もないらしい。

 

ララは良くてもあとから来るであろう三人には問題あるだろう。

 

「ララさーん! 待ってよ・・・・・・って、トシ兄ぃ!?」

 

次に入って来たのは美柑で、ララを追って浴槽までやって来て俺を見て驚いている。

 

「ほら、美柑も。 今は俺が入ってるから西連寺やヤミが入ってこないように・・・・・・」

 

「私がなにか?」

 

美柑の後ろからヤミが続いて姿を現した。

 

さすがにヤミは身体をタオルで隠しているが、特に俺が居ることを気にしている様子はない。

 

「年頃の女の子が男と一緒に風呂にはいるんじゃ・・・・・・」

 

「春菜ー! トシアキも一緒でもいいよねー!」

 

ヤミと美柑への俺の言葉はララの大きな声でかき消されてしまった。

 

結局、この風呂場に五人で入ることになって俺はかなり居心地が悪い。

 

流石に西連寺は恥ずかしいのか、俺から離れた位置でララと一緒にいる。

 

「美柑は俺と一緒でよかったのかよ?」

 

「だってほら、兄妹だし。 前にも一緒に入ったことあるし」

 

隣に居る美柑に聞いてみたが、恥ずかしいらしいが嫌ではないらしい。

 

顔は赤く染まっているが、笑みを浮かべていることから問題ないようだ。

 

「ヤミはいいのか?」

 

「えっちぃのは嫌いです。 ですが、あなたを護衛する任務の為ならば仕方ありません」

 

美柑の隣にいるヤミにも聞いてみたが、同じく嫌ではないようであった。

 

彼女も頬を赤らめているが、怒ってはおらずむしろ機嫌が良いようにも見える。

 

「・・・・・・ララは相変わらずだし、常識人は俺と西連寺だけかよ」

 

もっとも、俺が潔く出ていけばいいだけの話なのだが、先に入っていたのに追い出されるのはなんとなくムカつく。

 

我ながら子どものような思考だと思ったが、こういう性格なので仕方ない。

 

俺は四人が出て行った後に元の大きさに戻った風呂場で身体と頭を洗ってからその場を後にした。

 

最初に入って最後まで風呂に居たためか、それとも別の理由かわからないが、熱くなっている顔を冷ますのに時間が掛ってしまうのであった。

 

 

 

~おまけ~

 

 

皆でお風呂に入ろうとララさんに言われたとき、私は戸惑ってしまった。

 

女だという自覚はあるのでお風呂には入りたい気持ちがあったけど、皆で入れるとは思っていなかったからだ。

 

「大丈夫! ここのお風呂は広いんだから」

 

ララさんに連れられてやってきた脱衣所はやはり一般家庭の広さしかない。

 

本当に四人が一緒にお風呂へ入れるのだろうか。

 

「みんなー。 私、先に入ってるよー」

 

私がそんなことを考えている間にララさんは服を全部脱いで、お風呂場へと入って行った。

 

その時に見えた感じでは確かに四人でも入れそうな広さだった。

 

「ヤミさん、私たちも行こうよ」

 

「わかりました」

 

結城君の妹さんの美柑ちゃんとヤミちゃんも既に服を脱いでタオルを持っている。

 

私も早く行こうと思って服を脱ぎ、畳んで脱衣所の端へ置いた。

 

「なんだろ、コレ」

 

風呂場へと続く扉に何か変な機械がついていたけど、下手に触って壊してはいけないと思い、そのまま入ることにした。

 

「春菜ー! トシアキも一緒でもいいよねー!」

 

お風呂場へ足を踏み入れた途端に聞えたララさんの声で、咄嗟に身体をタオルで隠せたのは幸運だったと思う。

 

でもまさか男の子と、しかも結城君と一緒にお風呂に入るなんて思わなかった。

 

結局、浴槽でも洗い場でも結城君はこっちに来なかったし、顔も背けてくれていた。

 

恥ずかしかったけど、皆で一緒にお風呂に入れてよかったと私は思うのであった。

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