魔法使いのToLOVEる   作:T&G

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第二十二話

「ん? 気のせいか?」

 

「どうかしたの? 王子様」

 

登校中に背後から視線を感じたので振り返ってみたが、特に変わった様子はない。

 

唯一あるとすれば高級感が漂う車が一台停まっていることくらいか。

 

しかし、沙姫先輩の家の車のような気もするので俺は意識を隣に移す。

 

「・・・・・・その呼び方、何とかなりませんか?」

 

「ふふっ・・・本当のことなのだから構わないじゃない」

 

今日、俺の隣を歩いているのは保健教諭の御門先生だった。

 

ララは少し前を西連寺と歩いており、俺はたまたま通学路で出会った御門先生と話しながら歩いている状態だ。

 

「王子って、まだララの婚約者候補はいるし、俺にはそんな気ないですし」

 

「でも、デビルーク王からの発表ではお姫様の結婚相手はアナタで決まりのようだけど?」

 

「・・・・・・あの、クソ野郎め」

 

知らないうちに銀河全域にそういう話が流れているらしい。

 

ララの気持ちを考えて少し待ってるんじゃなかったのかよ。

 

これじゃあ、ララや俺が何と言おうと決まってしまったようなものじゃないか。

 

「それにしても、あの銀河の支配者に対してよくそんなことが言えるわね」

 

「まぁ、一度会って実力を見たからかな。 アレで全力じゃないなんて楽しみで仕方が無い」

 

話している内に気持ちが高ぶってきたためか、いつもより少々荒い言葉遣いになってしまった。

 

「あなたも彼と同じタイプなのね」

 

「そうかもしれないな。 っと、そう言えば先生はどうしてここに?」

 

呆れた表情で俺を見ている御門先生に気付いて、我に返った俺は前から気になっていたことを聞いてみた。

 

確か、先生も宇宙人だったはずだ。

 

「・・・・・・風が吹いたからかな」

 

「なるほど、それはわかりやすいですね」

 

風が吹いたということは本当に気まぐれだったのだろう。

 

しかし、その気まぐれで降り立った場所が意外と居心地がよかったのだ。

 

そういう経験は色々な世界を渡り歩いてきた俺にもあるので納得だ。

 

「今の説明でわかったの?」

 

「俺も似たようなことが何度かあったので」

 

「そう・・・・・・」

 

それっきり会話は途切れてしまったが、特に居心地が悪いわけでもなく、そのまま昇降口で俺は先生と別れを告げた。

 

「ってわけで、さっきぶりです」

 

一時間目の授業が始まる前に俺は保健室へと足を運んでいた。

 

「あら? 王子様、どうかしたの?」

 

昇降口で先生と別れた俺だったが、やはり今朝からの視線が気になって仕方がなかった。

 

もっとも、先生と別れたときに視線を感じなくなったので、おそらく見られていたのは先生だったのだろう。

 

「いや、少し気になることがありまして・・・・・・」

 

俺が色々と聞きたいことを話そうとした瞬間、俺と先生の間に小さなモニターが現れた。

 

「やぁ、お久しぶりですね。 ドクター・ミカド」

 

「ケイズ!? どうしてここが・・・・・・」

 

モニターに映し出された人物はどう見てもこの星の人ではないことがわかる。

 

サングラスのようなものではっきりとした顔は見えないが、まさしく悪人面とはこんな顔のことを指すのだろう。

 

「・・・・・・我らが組織、『ソルゲム』は貴方の力を必要としているのですから」

 

「お断りするわ。 あなた達とは考えが合わないの」

 

話を聞いている限り、悪の組織が優秀な先生を勧誘しているというところだろう。

 

それも、お互いが顔を知っていることからこの勧誘が最初ではない。

 

もしかしたら、先生はこういう奴らから身を隠すためにこの星で生活しているのかもしれない。

 

「ごらんいただこう」

 

いつの間にか話が進んでおり、モニターに映し出されていた映像が別のものに切り替わった。

 

「「!?」」

 

そこに映し出されたのは授業を受けているはずの西連寺と古手川の姿であった。

 

西連寺に関してはララと教室へ入って行くのを俺自身でも確認していたはずだ。

 

「さて、ごらんになられた通り、大事な生徒を二人預かっています」

 

その二人は薄暗い倉庫のようなところで両手を縛られ、身動きがとれないように柱へ括り付けられていた。

 

「ここには私の部下が居るのですが、彼らに一言命令するだけで二人の命は一瞬でなくなってしまいます」

 

幸い、今のところ西連寺も古手川も気を失っているようだったが、目が覚めたら覚めたで今の状況にパニックになってしまうかもしれない。

 

「さぁ、先生。 生徒たちを見殺しにできますか?」

 

「・・・・・・わかったわ。 あなたたちの言うとおりにする」

 

「それでは今から指定する場所に一人で来てもらいましょう」

 

それからモニターは消え、保健室には静寂が訪れる。

 

俯いて何かを考え込んでいた先生だが、顔を上げて笑顔を浮かべて俺を見る。

 

「安心して。 彼女たちは必ず助けるから」

 

「・・・・・・先生」

 

俺の言葉には返事をせず、御門先生は静かに保健室から出て行ってしまった。

 

何とかして先生を手伝ってやりたいが、西連寺と古手川が人質に取られていては簡単に身動きが取れない。

 

「どうせ、先生が一人で来るかどうかの監視もしているのだろうし」

 

「問題ありません」

 

俺の独り言に対して、扉の向こうから聞き慣れた声がした。

 

視線を向けると、先ほどまでモニターに映っていた奴と同じような格好をした男が二人、気を失って倒れていた。

 

「近くのビルの屋上でこの学校を見ていた不審者を始末しておきました」

 

「ヤミ!」

 

いつもの黒い戦闘服に身を包んだ俺の護衛者こと、金色の闇が倒れている男の傍で立っていたのだ。

 

「最初はアナタを狙う刺客だと思っていたのですが、どうやら違ったみたいで・・・・・・うぷっ!?」

 

特に頼んだわけではないのに、俺のことを考えて行動してくれたヤミ。

 

しかも、俺一人では手の出しようがなかったことだけに嬉しくなって、ヤミを抱締める。

 

そしてそのまま、可愛がるようにして頭を撫でてやった。

 

「さすが俺のヤミ! これでなんとかなりそうだ!!」

 

「ぷはっ! い、いきなり抱きつかないでください。 それに、わ、私は別にアナタのでは・・・・・・」

 

何やら顔を赤らめてブツブツと言っているヤミだったが、それより俺は気を失っている男たちを起こしにかかることにした。

 

「さて、西連寺たちの居場所を教えて貰いますか」

 

 

 

***

 

 

 

「残念だけど、あなた達の勝ちだわ」

 

「いや、まだ終わってないぜ」

 

河原の高架下で御門先生を見つけた俺はそう言った後、先生を庇えるような立ち位置に着いた。

 

「お、王子様!?」

 

「っ!? あなたは確か、デビルークの次期後継者・・・・・・結城トシアキ」

 

相手の方も驚いた様子だったが、すぐに人質のことを思い出したのか、余裕を取り戻している。

 

「その呼び方はどっちも嫌いなんだけどな。 先生にはちゃんと名前で呼んで貰いたいし」

 

俺は苦笑を浮かべながらそう言いつつ相手の方を睨みつける。

 

「さて、俺が来たからには先生には手出しさせないぜ?」

 

「ふっふっふっ、しかし我々にはあなたのクラスメイトがいるのですよ、お忘れですか?」

 

まだ人質が自分の仲間の手の中にあると思っているのか、余裕の笑みを崩さない。

 

「残念だが、もう救出してるんだよ」

 

「そのような戯言を・・・・・・」

 

相手はそこまで言って大きく目を見開いた。

 

俺の隣に現れた人物、金色の闇ことヤミの姿を確認したからだ。

 

もっとも、彼が驚いた原因はヤミの足元で倒れている二人を見つけたからだが。

 

「残念ですが、彼らは私が倒しました。 これで人質が居ないことはわかったでしょう」

 

「くっ!!」

 

自分が不利なことを理解したのか、踵を返して走り出すケイズ。

 

勿論、逃がすつもりは全くないので俺は指をパチンと鳴らした。

 

「ぐおっ!? な、なんだ、コレは!?」

 

俺の合図とともに地面から土の壁が彼の前に現れる。

 

そして四方を取り囲んだと思ったら、その土の壁が一斉に崩れだした。

 

「ぎゃあぁあぁあぁ!!!」

 

「ふむ、晒し首の刑、完了」

 

ケイズの身体は崩れてきた土で埋まり、首だけが出ている状態になった。

 

わかりやすく言うと、雪だるまの土バージョンといったところか。

 

「ヤミ、悪いけどコイツの仲間をここに集めてくれないか?」

 

「仕方ありませんね」

 

そう言ってヤミは姿を消した。

 

なんだかんだ言いつつも動いてくれる良い奴なんだよなヤミって。

 

「で、先生はもう大丈夫ですか?」

 

「え、えぇ、助かったわ。 ありがとう」

 

俺とヤミが突然現れたことや、俺の意思で土の壁が出来あがったことに驚いているようだった。

 

しかし、先生や西連寺たちが無事だったのでこれで良かったのだろう。

 

「あとはギドにでも連絡しとくか」

 

俺はギドから貰った携帯電話のような機械を取りだした。

 

テレビ電話の小型版だということだったのだが。

 

『ん? なんだ、お前か』

 

画面には王座に腰をおろしている小さいギドの姿が映し出された。

 

本当にこの機械で宇宙にいる奴と姿を見ながら会話が出来るらしい。

 

「俺には名前がある。 そんな代名詞で俺のことを呼ぶな」

 

『ケケケ、相変わらず生意気な奴だぜ。 結城トシアキ』

 

「まぁ、いい。 ところで少し頼みたいことがあるんだが・・・・・・」

 

俺がそう言った瞬間、画面の向こうに映し出されているギドの表情が変わった。

 

『俺様に頼み? 聞いてほしいなら今すぐ跪いて頭を下げろ、そうすれば聞いてやらないこともない』

 

銀河を統一した王なだけあって、簡単に頼みを聞いてくれるわけではないらしい。

 

普段ならそんな風に言われるとキレてしまう俺だが、こっちには切り札があるのだ。

 

「そんなことを言っていいのか? 聞いたぜ、俺をララの結婚相手だと銀河全域に発表したそうだな?」

 

『・・・・・・それがどうした?』

 

どうやら自分が犯した過ちを理解できていないらしい。

 

「ララには結婚のことは待って欲しいと言われてたのにそんなことをしたんだ。 当然、ララに嫌われても良いってことだよな?」

 

『うぐっ!』

 

「今の段階ではララはそんなことは知らない。 だが、お前が俺の頼みを聞いてくれないならララにこのことを伝えようと思う」

 

『・・・・・・』

 

画面に映るギドの表情は激しく歪んだ状態になっている。

 

きっとギドも俺と同じで上からモノを言われることが嫌いなのだろう。

 

「きっと、ララには嫌われて話も聞いてくれなくなるだろう。 そんなことだから・・・・・・」

 

『・・・・・・わかったよ。 そこまで言うのなら話を聞いてやろう』

 

普段なら気に入らないことがあれば力で相手と戦うのだろう。

 

しかし、全力を出せる状態ではないことと、俺がララのお気に入りということで我慢することにしたようだ。

 

「助かるよ。 で、俺の頼みなんだが・・・・・・」

 

俺の頼みを聞いたギドは一瞬、呆けたような表情だったが、事情を理解したらしく快く引き受けてくれた。

 

もっとも、最後に見せたあの悪魔的な笑みが気になったのだが。

 

「これで先生も安心してここで過ごせるだろう。 何かあればデビルークを敵に回すことになるからな」

 

ギドに頼んだ内容だが、御門先生はデビルークに所属していると発表して貰うことだった。

 

これで先生に手を出すということはデビルークに敵対するということになる。

 

「・・・・・・ほんとにアナタって凄いのね」

 

外部からの誘いがなくなり、先生が何も気にしなくていいようになったはずだ。

 

そして先生は感心した様子で言ってくれたが、俺にはまだ気になることが残っていた。

 

「だからさ、先生。 俺を代名詞で呼ばないでくれよ」

 

そう、御門先生は俺のことを未だに名前では呼んでくれないのだ。

 

今までの経験で俺は自分自身を見て欲しい、肩書や役職で見て欲しくなかったのだ。

 

そのため、親しい人間や仲間、俺が気に入った人たちには名前で呼んで貰っている。

 

「そうね、考えておくわ。 それと今回の件、ありがと」

 

御門先生は微笑みながらそう言ってこの場から去って行ってしまった。

 

おそらく学校へ向かったのだろうが、残された俺は少し寂しいものがある。

 

「・・・・・・まぁ、いいか」

 

ケイズとその仲間たちをヤミと一緒にザスティンに引き渡して俺の一日は終わった。

 

よく考えると、今日も学校をサボってしまったのだが、大丈夫だろうか。

 

 

 

~おまけ~

 

 

最初に生徒たちを人質にされたときは本当にもうダメかと思った。

 

今まで相手の素性に関係なく治療やメンテナンスをしてきた。

 

そのおかげで私は有名になったのだけど、そのぶん色々な組織からも声を掛けられることが多くなってきた。

 

ケイズのいる『ソルゲム』もその一つ。

 

今回は地球に長く居たために居場所が特定されてしまったのだろう。

 

「残念だけど、あなた達の勝ちだわ」

 

「いや、まだ終わってないぜ」

 

だからこの声を聞いたときは本当に驚いてしまった。

 

学校の保健室で別れた彼、結城トシアキの声を聞いた時は。

 

彼と金色の闇のおかげで私は何事もなく、生徒たちも助かった。

 

その後にデビルーク王と対等に話をしているのを見て、やはり彼は後継者としての資格を持っていると思ってしまったほどだ。

 

「助かるよ。 で、俺の頼みなんだが・・・・・・」

 

その後に彼の口から出てきたのは私という存在の保護。

 

デビルークに所属しているという形にしておけば手を出してくる者は減るだろうということだった。

 

「だからさ、先生。 俺を代名詞で呼ばないでくれよ」

 

「そうね、考えておくわ。 それと今回の件、ありがと」

 

彼からの頼みを断る必要な無いのだけれど、イタズラ心で私はそう答えてその場を去った。

 

ちなみに後日、デビルーク王から私のことについて発表があったのだけど。

 

『ドクター・ミカドは俺様の次期後継者、結城トシアキの専属医師になった。 手を出す勇気があるのならば好きにするといい』

 

といった内容で思わず笑ってしまったわ。

 

この内容を聞いたら彼はまた怒るだろう。

 

私は今度彼にあったらこう言ってみようかしら。

 

『これからよろしくお願いしますね、ご主人様』ってね。

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