魔法使いのToLOVEる   作:T&G

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第二十三話

俺は今、制服を着て学校へ向かっている。

 

日曜日という学校が休みの日にも関わらずだ。

 

「まぁ、確かに最近はサボり気味だったけどさ」

 

ちょくちょく学校を休んだり、授業を抜けたりしていた俺だが、ついこの前の御門先生の事件で呼び出しが掛ってしまったのだ。

 

「あの日は結局、保健室しか行かなかったしなぁ」

 

御門先生を助けるためだったので後悔は全くしていないが、先生も少しくらい庇ってくれてもいいと思う。

 

保健教諭じゃ通常授業のサボりを弁護出来ないとは思うけど。

 

「あなた達! そこは通行のジャマよ! 道をあけなさい!!」

 

俺がそんなことを考えていると聞いたことある怒鳴り声が聴こえてきた。

 

視線をソチラへ向けると、風紀委員の古手川がガラ悪そうな三人組みに怒鳴っている所だった。

 

「いや、気持ちはわかるけど自分に関係ないことまで首を突っ込む必要ないだろ」

 

思わずそう呟いてしまったが、その言葉を聞いてほしい相手は向こうにいる。

 

学校に行かないといけないので無視してもよかったが、同じクラスなだけに放っておくわけにもいかない。

 

「仕方ないか・・・・・・」

 

俺はため息を吐きながら古手川の方へと足を進めることにした。

 

この街で平和に過ごすために平和を乱すゴミ掃除をしようと俺は考えながら歩く。

 

「はっ、放しなさいよ!!」

 

「そんなこと言わずに遊ぼうぜ」

 

ガラ悪そうな三人組みは古手川を羽交い締めにして身動きを封じてイヤらしい視線を向けている。

 

「へぇ、結構かわいいじゃん」

 

「綺麗な足してるな」

 

一人が古手川の顎を持ちあげ、もう一人はスカートを捲くろうと手を伸ばしていた。

 

そのころには傍まで寄ることが出来ていたので相手に声を掛ける。

 

「いい加減にしとけよ?」

 

「あぁ? ぶっ!?」

 

古手川の顎を持ちあげていた奴の肩を後ろから引っ張り、コチラへ顔を向けた瞬間、思いっきり殴りつけてやった。

 

「てめぇ! 何しやがる!」

 

「俺たちに喧嘩売って、タダで済むと思うなよ!」

 

残りの二人も古手川を放りだして、俺を囲むようにして立ちはだかった。

 

「ゆ、結城君」

 

驚きと困惑が入り混じった視線を俺に向ける古手川を無視して、俺は残りの二人を挑発する。

 

「タダじゃ済まないってことはいくらか貰えんのか?」

 

「この野郎!」

 

殴りかかってきた男の拳を避けて、腹部を目掛けてひざ蹴りを放つ。

 

「ふごっ!?」

 

残りの一人もごちゃごちゃ言う前に殴って沈黙させ、ゴミ掃除は完了した。

 

「ったく、誰彼構わずに注意してんじゃねぇよ」

 

「だってあの人たちが!」

 

自分が危険な目にあったというのにまだ理解出来ていないらしい。

 

「お前一人で何が出来るんだよ? 俺が居なかったら自分がどうなってたかわかるか?」

 

「でも・・・・・・」

 

俺に言われて先ほどの状況が頭に蘇ってきたらしい。

 

確かに間違っていると注意するのは良いことだ。

 

だけど、全員が注意されて素直に聞くわけでもない。

 

「注意するならその後に起こることの責任を持て。 注意するだけして後は知りませんって、単なる自己満足じゃねぇか」

 

「っ!?」

 

「もし、あいつらが怒りの矛先を他人に向けてたらどうだ? 物に向けてたらどうだ?」

 

今回はこうなったが、次回も同じとは限らない。

 

近くを通った子どもに怒りの矛先が向いたかもしれないし、店の看板やガラスが犠牲になったかもしれない。

 

そうなるなら、放っておいてくれた方が良かったと思う人間も出てくるだろう。

 

「全部自分で解決しようとするな。 学校なら他の風紀委員や教師が、街中なら警察とかいるだろ」

 

「・・・・・・」

 

普段、不真面目なことをしている俺に怒られているのに悔しいのだろう。

 

俯いている古手川の目から涙が流れているのを確認した。

 

「お前も女の子なんだから、自分の身を守ることも考えて行動しろ」

 

言い過ぎたかもしれないと思ったが、結局言いたいことは言ったのでこれで良しとする。

 

最後に俯いている古手川の頭を撫でて慰め、俺はその場を後にした。

 

結局学校へも行けず、俺は次の休みにもう一度呼び出されることになったのは余談である。

 

 

 

***

 

 

 

「えぇ~、突然ですがぁ~、転校生を紹介します」

 

担任の骨川先生がそう言いながら教室に入って来てホームルームが始まった。

 

というか、話しながらプルプルと震えているが大丈夫なのかあの先生。

 

「おっ! 可愛いじゃん!」

 

猿山がそう反応したように確かに可愛い女の子が転校生なのだが、俺はあの姿に見覚えがあった。

 

「む、村雨静と申します。 お静って呼んでください」

 

やっぱりあの旧校舎にいた幽霊の女の子だよな。

 

身体があって転校してきたってことは、生き返ったのか。

 

「・・・・・・ほんと、退屈しない世界だな」

 

俺はクラスメイトからの質問攻めにあって困っているお静を見ながらそう呟くのであった。

 

「御門先生居ますか?」

 

休み時間になると同時に俺は保健室へと足を運んだ。

 

御門先生ならお静が身体を手に入れた事情を知っていると考えたからだ。

 

最初はララの発明品の所為かとも思ったが、クラスメイト達に混じって質問していたので関係ないのだろう。

 

「あら? ご主人様じゃない、どうかしたの?」

 

「・・・・・・」

 

保健室にある事務机に座っていた先生は俺を見るなりそう言って首を傾げた。

 

というか、ご主人様って呼ばれたような気がしたのだが、気のせいだよな。

 

「? ご主人様?」

 

「気のせいじゃなかった!!」

 

あまりの出来ごとに俺は思わず頭を抱えて叫んでしまった。

 

街中でやったら不審者と間違われても仕方がない行為でもある。

 

「先生、なんで俺のことをそんな風に呼ぶんですか?」

 

「だって私はアナタの専属医師だもの。 仕える人をそう呼ぶのは間違ってないでしょう?」

 

御門先生が俺の専属医師ってどういうことだ。

 

ヤミを護衛者として雇うのだってお金が掛っているのに専属医師なんて雇えるわけがない。

 

「・・・・・・いつそんな話が?」

 

「この前のデビルーク王からの発表で。 前に私を助けてくれた時のことよ」

 

俺が頼んだのはデビルークに所属しているということにしてくれってことだったはずだ。

 

それが何をどうすれば俺の専属医師の話しになるんだ。

 

「ご主人様は今やデビルークの後継者よ。 デビルーク王が言ったことも間違いではないわ」

 

そもそもデビルークの後継者という話しもギドが勝手に言ったことだ。

 

その話とかみ合わさってもう後に引けない状態にまでなってしまっている。

 

「・・・・・・」

 

「そういうわけでよろしくね、ご主人様」

 

「話は理解したので、その呼び方はやめてください」

 

というわけで、俺の肩書がララの婚約者候補からデビルークの後継者になった。

 

平和にこの世界を楽しもうと思っていたのになんて仕打ちだよ。

 

「それで、結城君はどうしてここに来たのかしら?」

 

「あぁ、そう言えば忘れてました。 お静を生き返らしたのは御門先生ですか?」

 

どうやら俺の意見を聞いてくれたようで呼び名は『結城君』になったようだ。

 

その後、本来の目的を聞くために先生と話を始める。

 

「別に生き返ったわけではないわ。 私が造った人工体に憑依しているだけよ」

 

「人工体? 先生は人間の身体を造れるのか?」

 

「限りなく人間に近い、ね。 本物のようにはいかないけれど」

 

そう言った先生は話の区切りとしてか、コーヒーをゆっくりと飲む。

 

「前の宇宙人たちのリストラ騒動で皆に仕事を紹介した後に彼女に会ったの」

 

そりゃ、あそこにずっと住んでいて騒がしくて眠れないって言ってたからな。

 

「何度か外へ出たらしいんだけど、どうしても身体を手に入れてやりたいことがあるって言ってたから協力したの」

 

「やりたいこと?」

 

「ふふふ・・・・・・残念ながらそれは教えられないわ」

 

聞き返した俺に先生は笑みを浮かべてそう答えた。

 

先生が話を聞いて身体を与えたのなら特に問題はなさそうなので、俺は深くは聞かないことにした。

 

「失礼します。 御門せんせ・・・・・・あっ! トシアキさん!」

 

ちょうど話が終わったところに噂のお静が姿を現した。

 

彼女は御門先生に用があったようだが、俺の姿を見て嬉しそうにコチラへ近づいてきた。

 

「教室ではお話できず、とても寂しか・・・・・・きゃっ!?」

 

「おっと、大丈夫か?」

 

話ながら近づいてきたお静だが、自分の足を絡ませてしまい俺の方へ倒れてくる。

 

幸い、彼女が近くまで来ていたため難なく受け止めることに成功した俺だが、念の為に怪我が無かったか確認する。

 

「あっ・・・・・・は、はい、大丈夫です」

 

間近で異性の顔を見たためか、彼女は頷きながらも頬を赤らめて俺から視線を外す。

 

「すみません、自分の足で歩くのが久しぶりなもので」

 

「まぁ、無事ならいいんだが・・・・・・」

 

お静は照れたようにそう言って、俺の傍から離れるかと思っていたのだが。

 

そのまま自分の手を俺の背中に回してギュッと抱きつくような形になった。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「あなたたち、ここは保健室よ。 そういうのは人目のつかないところでやってちょうだい」

 

俺もお静も動けないままの状態で居ると、今まで静かに俺たちの様子を見ていた御門先生がそう言葉を発した。

 

「っ!? あわわ・・・・・・ごめんなさい!!」

 

御門先生の言葉に驚いたのか、慌てて俺から距離を取ったお静。

 

「私、長い間身体がなくて、人の温もりや感触を忘れてて、その・・・・・・」

 

確かにずっと幽霊で存在してればそうなっても仕方ない。

 

足で歩くのも久しぶりだと言っていたし、誰かの温もりを感じることもなかったのだろう。

 

「あっ・・・・・・」

 

そう思うとなんだか可哀想になってきたので、俺は距離を取ったお静に近づいてソッと抱きしめてやった。

 

「大丈夫だ、これからは俺たちがいる。 だから何も心配することはない」

 

「はい、ありがとうございます。 トシアキさん・・・・・・」

 

お静のその言葉を聞いたあと、抱いていた俺の腕に負担が掛ってきた。

 

「・・・・・・寝ちまったのか」

 

「そのようね。 こっちに寝かせて貰えるかしら?」

 

いつの間に準備をしたのか、保健室にあるベッドの傍に御門先生は控えていた。

 

俺は先生の案内に従ってお静をベッドに寝かせた。

 

「本人も言ってたけど、やっぱり身体に慣れていないのか」

 

「ふふふ・・・・・・この子のことが心配?」

 

「まぁ、そうだな。 せっかく知り合った仲だし、心配もする」

 

お静が寝てしまっているので、俺がここにいてもやることはない。

 

休み時間も終わるころなので俺は保健室から出て行くことにした。

 

「それじゃあ、御門先生。 お静のことは頼みましたよ」

 

「わかったわ。 それじゃあ、またね。 結城君」

 

御門先生の声を聞きながら俺は保健室の扉を閉めた。

 

次の授業の先生にお静が体調不良で保健室で寝ているということを伝えるため、チャイムの音を聞きながら俺は歩く速度を速めるのだった。

 

 

 

~おまけ~

 

 

保健室から彼が出て行ったのを確認した私は先ほどまで座っていた席へ戻る。

 

「ふぅ・・・・・・」

 

そこに置いていた温くなったコーヒーを飲みながら一息吐く私。

 

いきなりあんなことを言って本気で嫌がられたらどうしようと思っていた。

 

「私を庇うということは私の火の粉も彼に掛ってしまうということだもの」

 

ところが彼は口では色々と言いつつ、最終的には納得してくれていた。

 

もっとも、あの呼び方は本当に嫌だったようだけれども。

 

「それに、この子も・・・・・・」

 

ベッドで幸せそうに眠る彼女を見つめながら私はそう呟く。

 

旧校舎で会ったときに彼女に身体が欲しいとお願いされて困ったものだった。

 

「四百年振りの恋ね・・・・・・でも、彼はライバルが多いわよ?」

 

彼が自分の姿を見つけて、話しかけてくれたことが印象に残っていたらしい。

 

幽霊である自分の為に動いてくれたことも嬉しかったようだった。

 

「デビルークのお姫様に金色の闇、彼に好意を持っているのは他にもいそうだし・・・・・・」

 

そこまで言って最後にカップに残っていたコーヒーを飲み干す。

 

「それに、私もその一人だしね。 まぁ、新しい身体で頑張りなさい」

 

未だに眠ったままの彼女の頭をソッと撫で、私は保健教諭としての仕事を終わらせるために再び机に向かうのだった。

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