魔法使いのToLOVEる   作:T&G

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第二十五話

マジカルキョーコが居るという大魔王の城までようやくたどり着いた俺たち。

 

「ここが大魔王の城・・・・・・」

 

綺麗な肌に傷をもなく、このステージまで順調に進んできた『戦士』ルン。

 

「なんか雰囲気出てるね。 流石、最終ステージって感じ」

 

小学生ながらもしっかりしている義妹で魔法のエキスパート『賢者』の美柑。

 

「これでようやく終わりですか。 少し疲れました」

 

途中から仲間に加わったメイド服着用の戦闘スペシャリスト『守護者』のヤミ。

 

「よし、行くか」

 

最後に特に何の役にも立っていない『謎の男』こと俺。

 

武器もあるが鞘から抜けないし、暗器もあったが使うと消えてなくなってしまった。

 

結果的にルンやヤミに守られて、何もせずに経験値だけ貰ってレベルが上がったような感じだった。

 

「皆さーん!!」

 

大魔王の城の扉を開けると向かい側から見慣れた姿が飛び込んできた。

 

「あれは確か、ペケ?」

 

「良かった! ここまでたどり着けたんですね!!」

 

そう言ったペケの言葉からここが大魔王の城で間違いないらしい。

 

もっとも、外観や雰囲気でそんな感じはしていたのだが。

 

「で、ここは結局どうなってるんだ?」

 

ペケと合流してからララのもとへ向かうために城の中を走って行く。

 

その時に今まで気になっていたことを聞いてみた。

 

「歪曲空間を利用して造られた電脳世界だと思います」

 

「歪曲空間か・・・・・・」

 

俺が相棒であるゲンジと旅をしていたときに使っていた『ゲート』とはまた違ったものらしい。

 

ゲンジのは空間を歪めて別の世界に繋がるとか、そんな感じだったはずだ。

 

「しかし、空間パターンが以前、ララ様が造りかけてやめたゲームに似ているのですが」

 

などと走りながら話をしている内に前方に敵が出現した。

 

「邪魔!」

 

「排除します」

 

先頭を走っていたルンが剣を一振りして敵を薙ぎ払い、その後ろを走っていたヤミが残党を処理する。

 

ちなみに走りながら美柑はルンとヤミの攻撃力が上がる魔法を使っていた。

 

そして相変わらず俺は何も出来ない状態のまま走り続ける。

 

「おっ?」

 

丁度、先ほど倒した敵の経験値で俺のレベルが上がったようだった。

 

すると、今まで何の変化もなかった剣が突然輝きだした。

 

「な、なに?」

 

「と、トシ兄ぃ・・・・・・」

 

俺の腰あたりから急に光が出たのでルンが驚き、美柑が心配そうな目で俺の方を見る。

 

「これは・・・・・・」

 

「へぇ、もう着いたんですか。 結構早かったですね」

 

光り始めた剣に気を取られていると前からそんな言葉が聞こえてきた。

 

視線をそちらへ向けると、マジカルキョーコこと大魔王が玉座に座ってコチラを見つめていた。

 

「トシアキ君、考えてくれました? この前の話」

 

「この前の話?」

 

「前に会ったことあるの? トシ兄ぃ」

 

そう言えばルンや美柑には大魔王と会ったことを話していなかった。

 

ヤミはその時、現場に居たので事情を知っているが俺が答えるのを待っているのか、黙ったままだ。

 

「一応、前に会ったことがある」

 

そこで一度言葉を句切った俺はその時の会話の内容を伝えるために再び口を開く。

 

「俺が大魔王キョーコのモノになるなら皆を元の世界に帰してくれるって言って・・・・・・」

 

「な、なによそれ! そんなの絶対ダメだよ!」

 

「トシ兄ぃはモノじゃないし! 私も反対!!」

 

俺が最後まで話す前にルンも美柑も怒った様子でそう叫んだ。

 

ヤミも二人と同じ意見なのか、言葉にはしていないが戦闘態勢に入っている。

 

「悪いな、大魔王キョーコ。 皆、反対みたいだ。 それに・・・・・・」

 

「それに?」

 

「俺がお前のモノになる? はっ、笑わせんな。 お前が俺のモノになるなら考えてやってもいいぜ」

 

前に言われた時も思ってたんだが、俺は基本的に上から目線で話されるのは嫌いだ。

 

そんな俺をモノ扱いするなんて到底許せるものではない。

 

「トシアキ君のモノに・・・・・・いいかも」

 

「トシ兄ぃのモノになったら構ってもらえるかな」

 

「結城トシアキのモノに・・・・・・今とあまり変わりませんね」

 

俺の発言に対して思うことがあったのか、隣に立っている女性陣から色々な呟きが聴こえてきたが、聞かなかったことにする。

 

「うーん、キョーコもトシアキ君のモノになるのは悪くないんだけど・・・・・・」

 

そこまで言って大魔王キョーコは後ろへと視線を向ける。

 

「みんな!!」

 

大魔王キョーコの後ろから彼女の手下らしいフードを被った二人組みが現れる。

 

その二人組みに連れられたララが姿を見せ、俺たちを見つけて喜びの笑みを浮かべる。

 

「キョーコとこの子、どっちが欲しい?」

 

「・・・・・・答える意味あんのか?」

 

「勿論ありますよ。 キョーコはトシアキ君の一番が良いんです。 それ以外はダメなの」

 

ここでキョーコが欲しいと言えば上手く行くかもしれないが、ララを消してしまう可能性がある。

 

だからと言ってララが欲しいと言っても大魔王と戦うことになりそうだ。

 

「・・・・・・」

 

「結城トシアキ。 相手にする必要はありません」

 

俺が答えに悩んでいることに気付いたのか、ヤミがそう言いながら前へ進み出る。

 

「ヤミ?」

 

「倒せば良いだけのことです」

 

そう言いながらヤミは大魔王へ向かい走り出す。

 

そして変身能力で強化された髪でキョーコを切り刻んだ。

 

だが、露出している肌に一切傷がつかず、表示されている数字も減っていない。

 

「いきなり切るなんてヒドーイ。 っていうか、あなた守護者でしょ?」

 

そう言いながらキョーコはヤミの背後にまわり、彼女の身体を後ろから抱締める。

 

「守る人を放っておいていいのかな?」

 

「っ!?」

 

大魔王の言葉に弾かれたように俺へと視線を向けるヤミ。

 

だが、俺の方には何も問題は起きておらず、彼女はまんまと騙されてしまった。

 

「ス・キ・あ・り♪」

 

ヤミを抱きしめていたキョーコがそう言ったかと思うと、突然自分ごと燃やし始めたのだ。

 

そして、表示されているヤミの体力を現す数字がどんどん減っていく。

 

「? 全然熱くないんですが・・・・・・」

 

「や、ヤミさん! 服、服!」

 

数字が減っていくのと同じように、今まではなんとも無かったメイド服が焼けていく。

 

美柑の慌てた声でようやく気付いたのか、なんとかキョーコを引き剥がしてコチラへ戻ってきた。

 

「熱くないから油断しました」

 

「とりあえずこれ着とけ」

 

俺は自分が使っていた黒いマントをヤミに渡し、今度は自分自身が前に出る。

 

「それでトシアキ君、どっちが欲しいか決めてくれました?」

 

「俺はどうやら欲張りみたいでな、どっちも欲しいみたいだ」

 

結局、俺の中では結論が出なかったのでそう言って誤魔化すために不敵に微笑む。

 

なにやら二人組みの手下ががっかりしたような気がしたが、気にしないことにする。

 

「えぇーーー。 そんな女の敵のトシアキ君は燃やしちゃいます。 えい♪」

 

「トシアキ!? ふぁっ! 尻尾はダメぇ・・・・・・」

 

ララが珍しく焦った表情で俺の元に来ようとしたが、二人組の手下に尻尾を掴まれているので動けない。

 

俺に向かって炎が迫ってくるが、焦らず腰で輝いている剣を抜き放つ。

 

何となくというか、感覚的に、この剣は大魔王を倒すための武器だとわかったのだ。

 

「おりゃ!」

 

そしてそのまま向かってきた炎を切り払った。

 

すると、向かってきていた炎が消え、大魔王の体力の数字が減っていた。

 

「『謎の男』は一定以上の経験値を積むと大魔王を倒せる『勇者』に変わる」

 

二人組の手下がララに話している言葉を聞き取った俺は、そのままキョーコへ向かって走って行く。

 

「悪いな、大魔王キョーコ。 今度会ったら歓迎するよ」

 

「残念、もうおしまいか。 まぁ、いいや。 それなりに楽しめたし♪」

 

倒されたというのに気にした様子もなく、大魔王キョーコの姿が徐々に消えていく。

 

「じゃあ、またね。 トシアキ君」

 

そして、彼女は笑顔のまま消えていき、最後に『大魔王を倒した』という表示が目の前にでてきた。

 

「た、倒したの?」

 

「とりあえず、勝てたと見ていいかと」

 

後ろで様子を見ていた美柑とヤミがそう話しながらコチラへ向かってくる。

 

一緒にここまで来たペケやルンも喜びながらコチラへやってきた。

 

「あとは・・・・・・」

 

ララを捕まえている二人組みの手下がまだ残っていた。

 

あの二人を倒して、ララを助けてようやく終わりかと考えていると二人組の手下の様子がおかしい。

 

「ん?」

 

「あ、あなたたち、もしかして・・・・・・」

 

良く見ると、捕まっているララの様子もおかしい。

 

そして二人組みの手下が被っていたフードが消えるとそこにはララと同じ桃色の髪が似合う可愛い女の子が現れたのだ。

 

「やっぱり!!」

 

「久しぶりだね、姉上」

 

「お久しぶりです、お姉様」

 

どうやら敵役としてララの妹達が参加していたらしい。

 

それはそれでいいけど、ちゃんと元の世界に帰れるんだろうな。

 

「ら、ララさんの妹?」

 

「そうだよ。 私の妹で双子なの」

 

美柑の質問に答えたララは二人を前に押し出す。

 

「デビルーク第二王女、ナナ・アスタ・デビルーク」

 

「第三王女のモモ・ベリア・デビルークです。 よろしくお願いします」

 

二人が自己紹介を終えるとララが怒った表情で二人に訳を聞く。

 

どうやらこの世界に俺たちを連れてきたことにララは関係ないようだ。

 

「ナナ、モモ。 どうしてこんなことをしたの?」

 

「姉上の身近にいる地球人のことをよく知りたかったんだよ」

 

「特殊な状況に置かれる程、人柄がわかりますからね」

 

つまり、俺や美柑のことを詳しく知るためにこんなことを仕出かしたのか。

 

ルンやヤミ、それに実の姉であるララまで巻き込むとは大した双子だ。

 

「それで、俺たち義兄妹は合格か?」

 

「そうですね。 素晴らしいお友達だということがわかりました。 これからもお姉様をよろしくお願いしますね」

 

会話を聞いてる限りじゃ、どうやら俺がララの結婚相手だとは知らないらしい。

 

もっとも、知っていたら知っていたでララに相応しいかどうかまでやらされていた可能性もあったが。

 

「わかったから、そろそろ元の世界へ帰してくれ」

 

「あれ?」

 

俺の言葉を聞いてか、ナナがリモコンのようなものを取りだして操作を始めたが途中で首を傾げる。

 

「どうしたの?」

 

ナナの様子を見たモモが不思議そうな表情でそう尋ねる。

 

「いや、転送システムが作動しないんだけど・・・・・・」

 

そこまでナナが話した途端、大きな揺れが大魔王の城を襲った。

 

建物が壊れ始め、空間に亀裂が入っているのがわかる。

 

「バグが発生してる! このゲームのプログラムが不完全だったんだ」

 

ララの言葉でナナとモモの表情が驚きから怯えへと変わる。

 

つまりこのままだと異次元を死ぬまで彷徨ことになるということだな。

 

「それで、なんとかなりそうなのか?」

 

「うん、任せて! 妹たちが掛けた迷惑は私が何とかするから!」

 

ナナとモモの表情を見た美柑やルンにも怯えが伝染してしまったようで、二人とも俺にしがみ付いている。

 

ヤミはそんな俺の周りで崩れてくる建物を切断し、身を守ってくれていた。

 

「わかった。 後は任せたぞ、ララ」

 

プログラムのバグは俺ではどうすることも出来ない。

 

だが、色々な発明品を造るララなら何とか出来るだろう。

 

俺はララに任せ、完全に怯えている二人を宥めることに集中するのであった。

 

 

 

~おまけ~

 

 

あの後、お姉様のおかげで無事に元の世界に戻ることができました。

 

戻ってから色々と怒られてしまいましたが、仕方ありません。

 

「なぁ、モモ」

 

「どうかした?」

 

今は宇宙船の中でナナと迎えに来た親衛隊に囲まれながらデビルーク星に向かっています。

 

「あの地球人、どうだった?」

 

「結城トシアキさんのことですか?」

 

ナナに話をされて彼の行動を振りかえってみます。

 

確かになかなか出来る人ではありましたが、お姉様が惹かれるほどではなかったように感じました。

 

「そうそう。 アイツ、最後の選択でどっちもって選んだけど、姉上の相手がそれじゃダメだよな」

 

お姉様のお相手という点で見れば、私たちから見ればダメなのですが。

 

「でも、デビルークの支配者としてならあの選択でも正解だったと思いますよ」

 

そう、王としての選択でどちらも選んだのならば間違っていません。

 

後継者をつくり、自分に変わる王を育てるための選択肢なら正解です。

 

「えっ?」

 

「ふふふっ、これからが楽しみですね」

 

私の答えにポカンとした様子のナナの表情を見ながらお姉様のお相手である結城トシアキさんを思い浮かべ、地球を後にしました。

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