魔法使いのToLOVEる   作:T&G

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第二話

「ぐぅ・・・ぐぅ・・・」

 

現在、午前七時。

 

俺は未だに深い眠りに落ちていた。

 

しかし、もうすぐその平和な時間が終わりを告げるのだ。

 

そう、目覚まし時計という名の騒音をまき散らす悪の発明品が。

 

ピピピ・・・・・・ピピピ・・・・・・

 

「っ!? んっ・・・・・・」

 

そう思っている矢先に音が聞えてきた。

 

俺は仕方なく手を布団の中から出して目覚ましを止めようとする。

 

「・・・・・・ん?」

 

しかし、動かそうとした右手が何故か動かない。

 

まさかこれが噂に聞く金縛りなのか、と思いつつ目をあけてみる。

 

「・・・・・・」

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

そこには俺の右腕をしっかりと抱きしめ、幸せそうに眠るララの姿があった。

 

「いや、なんでだよ」

 

寝ぼけていた思考が一気に目覚め、思わずツッコミをいれてしまった。

 

まさか、俺が寝ていたとはいえララの気配に気づかなかったとは、早くもこの争いのない世界に馴染んでいるのか。

 

「あ、トシアキ。 おはよ」

 

俺のツッコミで目が覚めたのか、ララが目を開けて俺に挨拶してきた。

 

「おはよ、じゃねぇよ。 なんで俺のベッドにいるんだ、しかも裸で」

 

「だってトシアキと一緒に寝たかったし」

 

「いつもララ様のコスチュームでいるのは大変なのです!」

 

ララとペケがそう言って俺が聞いたことを答えてくれた。

 

「そんなもん、俺が知るか!」

 

答えてくれたが、俺にはそんなこと関係ないので、とりあえず偉そうに言い放ったペケには殺気を込めて睨みつけてやる。

 

すると、冷や汗をかいてララの後ろに隠れてしまった。

 

というか、ロボットも汗をかくのだろうか。

 

「トシ兄ぃ、いつまで寝てるの? 遅刻する・・・・・・」

 

そこへいつも目覚ましでは起きない俺を起こしに来てくれたのか、美柑が扉を開けて部屋を覗きこんできた。

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

ベッドの上に座る俺とその傍に裸でいるララ。

 

ララの後ろに隠れていたペケと部屋を覗きこんだ美柑。

 

四人とも一瞬、沈黙してお互いの顔を見合す。

 

「お邪魔しました」

 

最初に動いたのは美柑で、それだけ言って扉を閉めてしまった。

 

「ヤバいな、美柑が変に誤解してるかもしれない・・・・・・」

 

次に動いたのは俺で、頭を抱えて次から美柑に会ってなんて言おうか考える。

 

「今日は出かけなきゃ、ペケ」

 

「ハイ!」

 

最後はララで、いつもと同じようにペケにコスチュームチェンジをさせて窓から外へ出て行く。

 

「じゃ、トシアキ。 わたしちょっと出かけてくるね」

 

外で浮かんだまま振り返り、俺にそれだけ言って飛び去ってしまった。

 

というか、出かけて来るってことは戻ってくるということで、つまりここに住むのか。

 

「冗談じゃねぇ。 ただでさえ父親は母親のことが分からないのに、これ以上わからない奴が増えてたまるか」

 

もっとも、これから会っていく奴は俺の意識がはっきりしているので覚えていけばいいだけなのだが。

 

「・・・・・・美柑に事情を説明して、学校に行くか」

 

俺は制服を着込み、美柑がいるであろうリビングへと向かうことにした。

 

 

 

***

 

 

 

「はぁ・・・・・・」

 

俺は深いため息を吐きながら通学路を歩いている。

 

このため息の原因はもちろん、今朝のことだ。

 

あの後、美柑に事情を説明したのだが、

 

【宇宙人? そんなのいるわけないじゃん】

 

【いや、けどな美柑・・・・・】

 

【私、もう学校行くから】

 

と話を聞かずに出て行ってしまった。

 

俺の分の朝食を準備してくれているあたりは流石と思ったのだが。

 

「今更、美柑に俺とお前の兄は別人だと言うわけにもいかねぇし・・・・・・」

 

教室にたどり着いた俺はそう呟きながら足を踏み入れる。

 

「ん?」

 

黒板の隅に自分の名前が書かれていて疑問に思ったが、学校には日直というものがあったことを思い出す。

 

「・・・・・・面倒だな」

 

男子は俺で女子は西連寺という奴らしい。

 

昔の俺を知らない奴だといいな、と思いつつ気配がしたので振り返る。

 

「あ、結城君。 今日一緒に日直だね」

 

「あ、あぁ」

 

学級日誌を持ち、俺にそう話し掛けてくる女の子。

 

話し方や態度を見て、この子が西連寺で、昔の俺のことを知っている奴らしい。

 

「高校に入って初めての日直が中学から一緒の結城君でよかった」

 

そう言って微笑む彼女であるが、俺は心の中でこの西連寺という女の子のことがまったくわからず困っていた。

 

話し掛けてくるくらいだから嫌ってはいないだろう。

 

しかし、中学時代に恋人だったというわけでもなさそうだ。

 

「俺も、とりあえず顔と名前が一致する西連寺でよかったぜ」

 

顔と名前も別に一致しているわけではないが、中学からの知り合いということでそう言っておく。

 

今までのことからの結論で、比較的に仲のいい女友達だと俺の意識に叩きこんだ。

 

それから、授業が終わるたびに黒板を消し、必要な教材を教室まで運んだりと日直らしい仕事をして放課後になった。

 

「さて、これで終わりか」

 

教室の後ろの棚にあった花瓶の水を換え、教室に戻って来た俺。

 

俺が教室に戻ると西連寺は日誌を書き終え、開いていた窓を閉めているところであった。

 

「結城君ってさ、中学の頃もよく教室のお花の手入れしてたよね」

 

「ん?」

 

まさか教室に二人しかいない状況で日直の仕事の内容以外で話しかけられるとは思っていなかった。

 

「けっこう忘れちゃうんだよね、お花のお水換えるの。 でも、結城君はいつもこまめに手入れしていた」

 

「あぁ。 こう見えて俺は自然が好きなんだ」

 

昔の俺もこの作業をしていたらしいが、自然が好きという俺の言葉は本当のことである。

 

俺が使う『魔法』は自然にいると言われている『精霊』に力を貸してもらっているのだ。

 

昨日、黒服の男を吹き飛ばした時も風の『精霊』に力を借りたからである。

 

「都会は確かに色々と便利だけど、やっぱ、海や川、木や日の光とかも大切にしていかなくちゃいけないと思ってるからな」

 

そう言いながら俺は花瓶を置き、そこに入れられた花の傍にいた『精霊』に微笑みかける。

 

「でもやっぱり、それを行動に現わせる優しい結城君はカッコいいと思うよ」

 

「えっ? 西連寺、それってどういう・・・・・・」

 

まさか朝に、比較的に仲のいい女友達っていう判断をしたのが間違っていたのかと、少し心配になってしまう。

 

「な、なんでもない。 ゴミ、捨ててくるね」

 

しかし、西連寺も予想外の言葉が出てしまったのか、慌てて窓を閉め、ゴミ箱を持って立ち去ろうとする。

 

「あっ!?」

 

余程慌てていたのだろうか、扉のレールの部分に足を引っ掛けてゴミ箱を抱えたまま倒れそうになる西連寺。

 

「危ないっ!」

 

先ほど微笑みかけた『精霊』に力をかりて、移動速度を通常の数倍に上げ、一瞬で西連寺の傍により、身体が倒れないように後ろから抱きとめる。

 

そして、手放されたゴミ箱だけが廊下に倒れ、俺と西連寺は無言でお互い見つめ合う。

 

「わ、悪い。 助けるためとはいえ、抱締める形になって」

 

しばらく見つめ合っていた俺だが、このままの状態は流石にマズイと思い、西連寺を解放してそう謝罪する。

 

「う、ううん。 その、助けてくれてありがと」

 

西連寺も抱きしめられたことに照れているようであったが、特に怒っている様子ではなく、助けた感謝までされてしまった。

 

「結城君、ゴミ捨て手伝ってくれる?」

 

「あぁ。 これも日直の仕事だ。 最後まで二人でやろう」

 

二人で廊下に散らばってしまったゴミを拾い集め、二人で焼却炉まで足を運んだのであった。

 

 

 

***

 

 

 

帰り道で西連寺と別れた後、俺は川辺を歩いていた。

 

「やっぱ、自然はいいな。 今度の休みはここで昼寝しようかな」

 

「その時は私も一緒がいいな」

 

独り言に返事があると思っていなかった俺は驚いて身体を声のした方へ向ける。

 

「っ!?」

 

そこにはララが出ていった時の服装で宙に浮かんでいたのだった。

 

「もう、探したんだよ? 家に行ってもトシアキいないし」

 

「俺は今日、日直だったからな。 少し帰りが遅くなったんだよ」

 

普通に返事をした俺だが、ララの気配に気付けなかったことに内心驚いていた。

 

本当にこの世界は平和な世の中らしい。

 

いつもの俺なら、寝ていても空から話しかけられても近づいたら気付いていたのだが。

 

「とにかく、一緒に帰ろ?」

 

「いや、一緒にって、やっぱり俺の家に住むのか?」

 

朝に考えていたことが現実になりそうになり俺はなんとかしようと思考をする。

 

「そうだよ、結婚する人たちは一緒に住むんだよね?」

 

「俺はまだ、結婚するなんて言ってねぇだろ」

 

とりあえず、告白されたことを否定も肯定もしていないので、それを理由に俺の家から遠ざけようと考える。

 

「ララ様!!」

 

俺の思考を中断させるほどの大声でララの名前を呼んだ奇妙な人物。

 

全身に鎧を着込み、黒いマントをなびかせて、腰に剣を付けた奇妙な人物。

 

とりあえず、この地球には絶対にいないであろう奇妙な人物だ。

 

大切なことなので三回ほど言っておく。

 

「ザスティン!」

 

呼ばれたララは知り合いだったようで、彼の名前を呼ぶ。

 

というか、ザスティンというのは昨日来た黒服の男が言っていた人物ではないだろうか。

 

「さぁ! 私とともにデビルーク星へ帰りましょう、ララ様!」

 

そういえば、ララは父親が勝手に決めたお見合いが嫌だって言っていたな。

 

それにザスティンの役職は王室親衛隊隊長。

 

「嫌よ! 私、帰りたくない理由が出来たんだから」

 

「帰りたくない理由?」

 

そして、王室親衛隊であるザスティンが敬語を使って連れ戻そうとするララ。

 

「私、ここにいるトシアキのことが好きなの! 結婚もトシアキ以外とはしないから!!」

 

今までずっと無言だった俺を余所にララとザスティンで話を進めている。

 

そろそろ口を挟んでも問題ないだろう。

 

「ララ。 お前って、お姫様だったのか?」

 

「あれ? 言ってなかったけ? ララ・サタリン・デビルーク。 一応、第一王女なんだよ」

 

それで黒服の男たちや王室親衛隊隊長が来るはずだ。

 

「やっべ、俺、自分から喧嘩売っちゃったよ、デビルーク星の王女を誘拐したと思われても仕方ないかも」

 

「なるほど、そういうことですかララ様。 トシアキとやら、お前がララ様に相応しい男かどうか見極めてやる」

 

どうやら俺の言葉は聞えていなかったようで、喧嘩を売ったや誘拐などの危ない単語は聞えて無かったようだ。

 

しかし、お姫様であるララの結婚相手に相応しいかどうかって、また姫様かよ。

 

「見極めてやる? 貴様、何様のつもりだ」

 

「っ!?」

 

俺自身も王族として何年も生きてきたため、他国の姫様とのお見合いなど何度も経験している。

 

だが、俺自身を見下して上から目線で話す相手には正直、腹が立つ。

 

当時、7歳の俺が18歳の姫様とお見合いさせられたが、子どもを相手にしているような態度に俺が腹を立て、その国と全面戦争になったことすらある。

 

「俺を見極めるだと? たかだか、護衛風情が偉そうなこと言ってんじゃねぇよ!」

 

礼には礼を持って接するが、失礼無礼には勿論、失礼無礼で返すのが俺だ。

 

「覚悟は出来てるんだろうな? デビルーク星王室親衛隊隊長ザスティン、お前、死んだぜ?」

 

「なに?」

 

ザスティンが警戒して腰の剣に手を伸ばそうとした瞬間に俺は既に彼の後ろへと回りこんでいた。

 

「くっ!?」

 

とっさに反応して剣で防いだようだが、俺の攻撃はまだまだ続く。

 

「ほらほら、守ってばかりで見極められんのか?」

 

「ば、馬鹿な! このイマジンソードに対抗できる物質があるのか!?」

 

ザスティンがなにやら驚いているようだが、俺自身が使っているのは氷の剣だ。

 

傍の川に流れている水を凍らせて剣にしているだけである。

 

もっとも、『精霊』の全面支援があるので折れないし、俺自身のスピードも上がっている。

 

「・・・・・・興醒めだ」

 

俺は剣になっていた氷の『精霊』にお礼を言って水に戻し、ザスティンに背を向けて歩き出す。

 

見極めると言いつつ、大した実力もなかったザスティンに呆れて俺は家に帰ることにした。

 

「帰って王に伝えろ、見極めるなら自分で来やがれってな」

 

唖然とするザスティンを放って、俺は美柑が待つ自分の家へ帰宅する。

 

しかし、この時の俺の言葉を聞いたララが自分との結婚を決めてくれたのだと大喜びし、俺の後ろを付いてきているのに気付いたのが家の前であった。

 

 

 

~おまけ~

 

 

「お邪魔しました」

 

それだけ言ってトシ兄ぃの部屋の扉を閉めた私は階段をトントンと降りる。

 

「トシ兄ぃ、彼女いたんだ・・・・・・」

 

全くそんなことに気付けなかった私は妹としてダメなんだろうかと考える。

 

せっかく一緒に食べようと思って用意した朝ごはんが台無しだ。

 

「早く食べて学校に行こう」

 

学校に行っている間は家のことは忘れていられるから早く学校に行こうと思う。

 

自分の分だけを食べ終えて、リビングにおいてあったランドセルを背負う。

 

「あっ、美柑・・・・・・」

 

そこへ制服を着たトシ兄ぃが降りてきた。

 

だけど、トシ兄ぃに彼女がいたことに驚いて機嫌が悪かった私は返事もせずに玄関に向かう。

 

「実はあいつは宇宙人でな、追手に追われてるっていうから俺の部屋に」

 

「宇宙人? そんなのいるわけないじゃん」

 

嘘をつくならもっとマシな嘘をついて欲しい。

 

けど、追手に追われている人を匿う優しさはトシ兄ぃだと、私は変なところで感心してしまった。

 

いや、宇宙人は信じてないんだけど。

 

「いや、けどな美柑――」

 

「私、もう学校行くから」

 

色々と頭の中で考えている内に靴を履き終えた私は、トシ兄ぃの言葉を最後まで聞かずに家から出ていった。

 

登校しながら自分の行動を振りかえり、なんでトシ兄ぃに彼女がいて私の機嫌が悪くなったのか考えながら今日一日を過ごしたのであった。

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