魔法使いのToLOVEる   作:T&G

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第二十六話

「ただいま」

 

「あれ? 美柑が出てこないね」

 

学校から帰宅した俺とララは玄関で靴を脱ぎながら美柑が出迎えに来ないことを話す。

 

「まだ学校から帰ってないのかな?」

 

「そんなこと無いだろ。 玄関のカギだって開いてたんだし・・・・・・」

 

そう話ながらリビングまで歩いていくと、ソファに倒れている美柑がいた。

 

凄い汗をかいていて、顔も赤くなっており体調が正常ではないことがわかる。

 

とりあえず美柑の部屋に運んだ俺はベッドに寝かせて、額に手を置いて熱を測る。

 

「38度2分ってとこか・・・・・・」

 

「えっ!? 美柑、病気なの!?」

 

よく考えてみれば最近は家事の一切を任せていたような気がする。

 

小学生の高学年でしっかりしているとはいえ、負担をかけ過ぎたのだろう。

 

「薬を飲んで寝ていれば大丈夫だろ」

 

「そっか・・・・・・」

 

ララはやはり心配なのか、ベッドで眠る美柑を不安そうな表情で見ている。

 

そう考えている俺もこんな弱々しい美柑を見たことがないので心配だったりする。

 

「・・・・・・まいったなぁ、洗濯物とか溜まってるのに」

 

自分が熱で辛いであろう時にも家事の心配をしてくれている美柑。

 

「心配すんな。 家のことは俺がやっとくから」

 

「私も!」

 

いつも任せているのでたまには俺がやるのもいいだろう。

 

飯も作れるし、洗濯や掃除も問題はない。

 

ただ、ララや美柑の洗濯物を俺が洗ってもいいのかと不安が残るのだが。

 

「えっ、でも・・・・・・」

 

「大丈夫だって。 俺に任せて寝ときな」

 

「うん・・・・・・」

 

本当は熱を下げることくらい出来ないことはないんだが、この世界はキチンとした薬があるのでそっちの方がいいだろう。

 

『魔法』に頼った治療をしてしまうと何が起こるかわからない。

 

そんなことを考えながらリビングに戻って来た俺はとりあえず風呂掃除からすることにした。

 

「さて、久しぶりにするか。 ちなみにララ。 手伝うのはいいが余計なものはいれるなよ?」

 

「えっ!? わ、わかってるよ、大丈夫!」

 

洗面所にある洗濯機の前に居たララに釘を刺した俺は風呂掃除にとりかかった。

 

「まぁ、こんなもんだろ」

 

とりあえず綺麗になった風呂場に納得した俺は洗面所にいるララの様子を見に行く。

 

しかし洗面所にはララの姿はなく、正常に動いている洗濯機の音だけが聴こえていた。

 

「ん? ララはどこにいった?」

 

一人でそんなことを呟きながら俺はララを探しにリビングへ戻る。

 

「あっ、トシアキ! お風呂掃除終わった?」

 

「・・・・・・」

 

リビングで俺を迎えたのは裸にエプロンを付けてお玉を持った姿のララであった。

 

「トシアキ?」

 

「お前、いい加減に服を着ることを覚えようぜ?」

 

「えっ? でも、男の子ってこういう格好が好きなんでしょ?」

 

ララは俺になんでそんなことを言われたのか全く分かっていない様子だった。

 

しかも、男が全員その姿が好きなのだと勘違いもしている。

 

確かに俺は嫌いではないが、時と場合を考えるべきだろうと思う。

 

ちなみに俺は嫌いではないと二回目も言っておく。

 

「誰だよ、そんなこと言った奴」

 

学校で猿山とか雉島とかのどうでもいい会話を聞いていたのだろうか。

 

もしそうだったとしたら次に会ったときに拳で語り合う必要がありそうだ。

 

「リサとミオが教えてくれたんだよ」

 

「あいつら・・・・・・」

 

ロクなことを教えない二人組みだが、流石に拳で語るわけにはいかなくなった。

 

なので、今度会った時に厳しく注意することにした。

 

「頑張って美味しいご飯、作ろうね」

 

「その前にいつもの服に着替えろ」

 

ララの服を着替えさせている間に俺は手早く美柑に食べさせる料理を作る。

 

もっとも、病人なので栄養のあるスープとかになるだろう。

 

「着替えてきたよ!」

 

「俺は美柑の部屋にコレを持ってくから」

 

ララが戻って来たのと入れ替わるようにして、栄養あるスープを持って美柑の部屋に行く。

 

「美柑、起きてるか?」

 

「トシ兄ぃ? うん、起きてるよ」

 

ノックと同時に小さい声で確認したところどうやら美柑は起きていたようで俺はそのまま部屋に入る。

 

「飯、というかスープだけど食えるか?」

 

「うん、大丈夫」

 

どうやら食べる元気はあったようで、ベッドから身体を起こした美柑。

 

俺は持っていたスプーンでスープを掬い、美柑の口元まで運んでやる。

 

「ほら、熱いから気をつけろよ」

 

「ふぇっ!? い、いいよ。 自分で食べられるから!!」

 

驚いた顔をした後、なにやら顔を赤くし始めた美柑。

 

もしかして、まだ熱が下がってなくて無理をしているんじゃないだろうか。

 

「そんなに顔を赤くして何いってんだよ。 ほら、口開けろ」

 

「うぅ・・・・・・トシ兄ぃのバカ」

 

何故か俺が怒られたが、大人しくなった美柑にスープを最後まで飲ませることに成功した。

 

一緒に持ってきた風邪薬も飲まして再び美柑をベッドに横になるように言う。

 

ちなみにララも何やら薬を持っていたが、危なそうなので俺が没収しておいた。

 

「あとは大人しく寝てろよ?」

 

「う、うん、わかった・・・・・・」

 

美柑が眠るのに邪魔をしてはいけないと思い、空になった器を持って部屋を出ようとする。

 

「ねぇ、トシ兄ぃ」

 

「ん?」

 

そんな俺を美柑が布団を被りながら呼びとめてきた。

 

「その・・・・・・眠るまで傍に居てもらってもいい、かな?」

 

布団を被っているので表情は隠れていたが、目元だけはコチラからも見える。

 

不安そうで寂しそうな瞳で俺を見つめてくる美柑。

 

「・・・・・・わかったよ、一緒に居てやる」

 

「うん!」

 

それから美柑が眠るまで傍に居てやり、俺は眠ったのを確認してからソッと部屋から出て行った。

 

翌日には薬のおかげか、美柑も元気になっており美味しい朝食を作ってくれた。

 

俺には負けていられないとか言っていたが、元気になったので良しとする。

 

 

 

***

 

 

 

ある日の午後、俺は美柑に言われて風呂にお湯をためるために風呂場へと向かっていた。

 

リビングに美柑もララも居たので他には誰もいないはずなのだが、何故か風呂場の電気が点いている。

 

「ん? 誰か入ってんのか? いや、皆リビングに居たしな」

 

近づいてみるとどうやら風呂場に二人の人間がいるようだった。

 

気配がわかっていても性別や体格までは俺にはわからない。

 

とりあえず不審者だったら困るので、俺自身の気配を消して扉を開いた。

 

「「「・・・・・・」」」

 

そこに居たのはどこかで見たことのある二人の美少女であった。

 

風呂場に居た、というか、風呂に入っていたので勿論、二人とも何も着ていない状態である。

 

「間違えました」

 

「覗き魔だ!!」

 

俺が開いた扉を閉めると同時くらいにそんな声が聴こえ、扉に何かがぶつかる音がした。

 

「そうか、あいつらは確かララの妹」

 

今更ながらに思い出した俺はリビングにいるララのもとへこのことを伝えに戻るのであった。

 

ちなみに風呂に入っていた二人の姿はしっかり脳裏に残ってしまったのは余談である。

 

「ナナ! モモ! 急にどうしたの?」

 

「やっほー、姉上」

 

しばらくして風呂から出てきたララの妹二人、ナナとモモがリビングへやって来た。

 

勿論、今度はちゃんと服は着ている状態である。

 

「そう言えば姉上、コイツと結婚なんて絶対にやめた方がいいよ」

 

「えっ? トシアキと?」

 

姉妹水入らずで会話をしている中で俺の名前が出てきたので耳を傾ける。

 

ちなみに俺も義兄妹水入らずで美柑の隣に座って髪を梳いていたりする。

 

「だってお風呂を覗くような奴だもん。 姉上には合わないと思うんだけど」

 

「人の家の風呂に入っていたお前らが悪・・・・・・痛っ!?」

 

隣に座る美柑に太股を抓られてしまったので結局最後まで言うことが出来なかった。

 

というか、なんで俺が抓られなくちゃならないんだよ。

 

「あら、私はそうは思いませんよ」

 

「モモ?」

 

「庭のセリーヌちゃんも言ってました。 トシアキさんは優しくて強い親切な人だって」

 

俺はナナの発言に少し引っ掛かりを覚えたので聞いてみることにした。

 

「セリーヌが言ってたって、お前も話が出来るのか?」

 

「あ、お姉様から聞いていなかったんですね。 私は植物と、ナナは動物と心を通わせることが出来るんです」

 

なるほど、俺のように『精霊』を通しての会話ではなく、直接植物と話が出来るということか。

 

「ところで先ほど私も話が出来るとお聞きしていましたが、もしかしてトシアキさんも・・・・・・」

 

「ナナ様! モモ様!!」

 

「ザスティン!?」

 

モモの言葉を遮って聴こえて来たのはデビルーク星の親衛隊長のザスティンの大きな声であった。

 

というか、なんで庭に繋がる窓から入って来るんだ、玄関を使え玄関を。

 

「先ほどデビルーク王より直々の通信がありました。 お二人が勉強が嫌で家出したと!」

 

「「は?」」

 

俺と美柑はザスティンの言葉を聞いて、揃って素っ頓狂な声を出してしまった。

 

二人が地球に来たのはララを訪ねて遊びに来たのではなく、勉強が嫌で家出して来たという理由だったからだ。

 

「そうだったの?」

 

「だって・・・・・・・」

 

「面倒なんだもん。 宇宙の歴史とか、王族のたしなみとか」

 

確かに王族になるための知識とか礼儀作法とかは面倒なことが多い。

 

そういう気持ちは分からなくもないが、他の星に家出するのはどうだろうか。

 

「――ですから! あれ?」

 

「二人とも玄関から出て行ったよ?」

 

ザスティンが力説し、俺が色々と考えている間に二人は家から逃げ出したらしい。

 

美柑から聞いて慌てたザスティンとその部下二人も家から飛び出していった。

 

「困った二人だね、家出なんて」

 

「いや、お前が言うなよ」

 

ララにツッコミを入れつつ、俺は出かける準備をする。

 

「あれ? トシ兄ぃ、どこかに行くの?」

 

「ちょっと、散歩」

 

美柑に答えつつ、俺は玄関からキチンと靴を履いてゆっくりと出て行く。

 

今、思い出したんだが、ザスティンとその部下二人は土足で家に入って来たような気が。

 

「まぁ、いいか」

 

外に出て俺はギドから貰っているテレビ電話の小型版を取り出す。

 

『結城トシアキか、何か用か?』

 

「要件はわかってるだろ? お前の娘たちのことだ」

 

画面の向こうでは相変わらず小さい姿で、しかし態度が大きなギドが映し出されている。

 

『・・・・・・』

 

「どうしたらいい? 連れ返して欲しいなら協力するけど?」

 

俺としてはどちらでも構わないのだが、ギドにとっては大切な娘だ。

 

しかも、離れた星に三人とも居る状態は好ましくないだろう。

 

『いや、結城トシアキ。 お前が面倒をみてくれるなら別に構わん』

 

「・・・・・・いいのかよ? お前の大切な後継者なんだろ?」

 

予想外の答えに一瞬詰まってしまったが、伝えたいことは言えたので良しとする。

 

『ケケケ、俺様はお前の強さを信用している。 任せても問題ないと思えるほどにな』

 

「そりゃ、どうも」

 

あの二人が地球にいるつもりならこっちの常識とかも教えないといけない。

 

いくら勉強が嫌いだからってそれくらいは学んでくれるだろう。

 

「言うこと聞かなかったら多少、手荒にしても問題ないよな?」

 

『・・・・・・まぁ、良いだろ』

 

その答えを聞いて満足した俺はそのまま通信を切り、あの二人が向かったであろう場所を探すために空へ飛び立つ。

 

「風よ」

 

まずは宇宙人だということを出来るだけ知られないようにすることを伝えるかな。

 

そう考えながら、何やら騒がしい河川敷へと俺は向かうのであった。

 

 

 

~おまけ~

 

 

「ギガ・イノシシのギーちゃん!」

 

「シバリ杉さんもお願いしますね」

 

あたしたち二人に掛れば親衛隊長のザスティンも簡単には手出しできないだろう。

 

「いけぇ! やっちゃえぇ! ギーちゃん!」

 

あたしは姉上から貰ったデダイヤルで呼び出したギーちゃんを応援していた。

 

ギーちゃんも親衛隊を追いかけまわしていたけど、急に怯えたように身体を震わしながら止まってしまった。

 

「ギーちゃん?」

 

「ブ、ブヒィィ・・・・・・」

 

「暴れ過ぎだ。 お友達とやらを殺されたくなかったらさっさと戻せ」

 

ギーちゃんが怯えていたのは宙に浮いている姉上の婚約者、結城トシアキだった。

 

隣を見るとモモが呼んだシバリ杉も怯えたように蔓を縮こまらせている。

 

「ナナ」

 

「うん・・・・・・」

 

モモと視線を合わせて、デダイヤルでギーちゃんとシバリ杉を戻す。

 

「今、ギドと連絡を取ってお前たちの面倒を俺がみることになった」

 

「ち、父上と!?」

 

「お父様が!?」

 

父上のことを呼び捨てに出来る奴なんて今までいたのは敵だけだった。

 

それにあたしたちの面倒をみるって一体どういうことなんだろう。

 

「とりあえず、この星では宇宙人であることを隠しとけ」

 

「「は、はいっ!!」」

 

目の前に降りてきた結城トシアキから父上が怒ったときのような怒気を感じたので思わず返事をしてしまった。

 

声が揃ったということはモモも同じように感じたんだろう。

 

「俺に手間をあんまり掛けさせるなよ。 俺が面倒みる間は地球にいていいらしいから」

 

そう言って、結城トシアキはそのまま歩いて帰って行った。

 

今回は助かったみたいだけど、これからはアイツを怒らせないようにしようとあたしは心に決めた。

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