魔法使いのToLOVEる   作:T&G

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第二十七話

俺は今、街で行われている花火大会に来ている。

 

街で行われているだけあって、商店街から神社のあたりまで出店が立ち並んでいるからなかなか大掛かりのようだ。

 

「どうどう? トシアキ。 似合う?」

 

「あぁ、いいんじゃないか?」

 

浴衣を着たララが俺の隣を歩きながら笑顔でそう尋ねてくる。

 

俺自身は祭りも花火もあまり興味がなかったが、地球の文化を知るためにララが行きたいと言ったのが始まりだった。

 

「そう言えば、お前の妹の二人はどうしたんだ? 一緒に来るって言ってただろ?」

 

「あの子たちは地球のお祭りに感激しちゃって、そのまま二人でまわって来るって」

 

二人だけでまわって来ると言っても、あの二人はデビルークのお姫様だ。

 

地球人にはわからないが、他の宇宙人から見たら絶好の獲物になるんじゃないだろうか。

 

「あとで探しに行くか。 ギドからも面倒をみる様に言われてるし」

 

「あ、でも、花火が始まる頃には合流するって言ってたよ?」

 

探しに行こうと思っていたが、ララの言葉を聞いて捜索するのはやめにする。

 

そう簡単にデビルークのお姫様を狙った刺客なんかが来るものでもないだろう。

 

単に探しに行くのが面倒だというのも理由の一つなんだが。

 

「あっ、ヤミさん。 こっちこっち!」

 

離れた位置でキョロキョロと辺りを見渡していた美柑が目的の人物を見つけ、大きく手を振っている。

 

「遅くなりました。 この浴衣という着物は面倒ですね」

 

美柑の傍までやってきたヤミはそう言いながら自分の姿を確認している。

 

恐らく、戦闘になった時の動ける範囲などを確認しているのだろう。

 

「まぁ、そう言うなよ。 なかなか似合ってるぞ、ヤミ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

少し照れた様子でそう言ったヤミはいつもと違い可愛く見えたのは秘密だ。

 

「・・・・・・これで全員だな? そろそろ行こうぜ」

 

自分の考えを誤魔化すようにして俺はそう言って歩き出す。

 

途中の出店にあった金魚すくいでヤミと美柑が楽しそうに遊んでいる。

 

「難しいものですね」

 

「力みすぎなんだよ、ヤミさんは」

 

そんな二人を後ろからララと一緒に見守っていたのだが。

 

「・・・・・・お前、いつの間にそんな物を」

 

「ほへ?」

 

俺の隣から移動していなかったはずなのに頭にはお面、右手には綿菓子、左手にはフランクフルトとまさかの重装備状態だった。

 

「そんなに持ってても食べられないだろ」

 

「あぅ・・・・・・」

 

そう言って俺はララからフランクフルトを没収し、口に含む。

 

ちなみに全部食べる気もなかったので残りは美柑に手渡し、先に進むことにした。

 

「これは?」

 

「これは輪投げって言って・・・・・・」

 

次の場所でヤミは輪投げに挑戦しようとしていた。

 

美柑がフランクフルトを片手にヤミに輪投げの説明をしている。

 

「あっ! トシアキさん、皆さん! 見つけました!!」

 

そこへ、浴衣を着たお静がコチラへ向かって駆けてきた。

 

お静も昔の人間だったためか、着物というか浴衣がもの凄く似合っている。

 

「よぅ、お静も来たのか。 御門先生は?」

 

「御門先生はお仕事です! あの、トシアキさん。 ご一緒してもいいですか?」

 

コチラを見上げてそう尋ねてくるお静。

 

確かに人数が多い方が楽しいだろうから別に構わないだろう。

 

「あぁ、いいz・・・」

 

「ありがとうございます!」

 

俺が最後まで言い終わるまえに満面の笑みを浮かべながら腕に飛び付いてきた。

 

彼女は彼女でスキンシップが激し過ぎるような気がするのは俺だけだろうか。

 

「本当にトシ兄ぃって女の子の知り合い多いよね」

 

「・・・・・・学校の友達だ」

 

美柑の鋭くなった視線を流しながら、俺たちは五人で再び歩き出す。

 

そうして到着したのは神社に行く前に建っている民間ビルの屋上である。

 

「ここは穴場なんだよ。 人もいないし、花火もよく見えるの」

 

「よくこんなところ知ってたね、美柑」

 

「昔、トシ兄ぃと二人で来た時に見つけたんだ」

 

そう言ってくれている美柑だが、あいにく俺にはその時の記憶がない。

 

俺の中での昔は傭兵団を結成して、管理局や次元犯罪者たちと戦っていたのだ。

 

「・・・・・・そういや、あいつらどうしてるかな」

 

「トシアキさん、どうかしましたか?」

 

俺の呟きに反応したお静が首を傾げて視線を俺へ向けてくる。

 

「いや、なんでもない。 皆の飲み物でも買ってくる」

 

どうやら俺の呟きを聞き取ったわけではないようなので、安心した俺はそう言ってビルからコンビニへ向かう。

 

「ありがとうございました!」

 

コンビニ店員の元気な声を聞きながらお茶やジュースなどの飲み物を手に入れた俺。

 

出店が出ている商店街から少し離れたこのコンビニの近くに人はいない。

 

「っ!?」

 

のんびり歩いていると後ろから殺気を感じたので咄嗟に振り返り、コチラへ接近してきた白い何かを屈んで避ける。

 

『ほぉ、俺の糸が見えるのか。 それとも偶然か』

 

「また面倒なパターンかよ」

 

恐らく、ララの婚約者候補とやらの残りがまだ居たのだろう。

 

既に後継者として有力な俺の名前が聞こえていてもおかしくないのだが、まだ知らない者もいるらしい。

 

「にしても、糸使いか。 まさか、アキじゃないよな?」

 

傭兵団のメンバーでもあり、実の妹でもある敷島アキの姿を一瞬、思い浮かべてしまった。

 

もっとも、あいつの場合は俺の命を狙うことなんて絶対ないはずなのだが。

 

『残念ながら私はアキという名ではない。 私はランジュラという』

 

「ランジュラ・・・・・・」

 

全く聞いたことのない名前だったので、俺は思わず安心してしまった。

 

逆に傭兵団のメンバーの名前が出てきたら俺は全力で逃げていたと思う。

 

執務官兼提督とか妖狐とか暗天の書のプログラムとか猫姉妹とかは勘弁してほしい。

 

『ご存知だったとは光栄だな』

 

「いや、別に知ってたわけじゃないんだけど・・・・・・」

 

小さくそう呟きながら俺は思考をこの戦いに切り替える。

 

いつまでも昔のことを考えているわけにはいかないのだ。

 

「まぁ、いい。 このままだと一般人に迷惑がかかるだろうから・・・・・・」

 

俺はそのまま走りだして、ヤミと戦った神社の裏手にある雑木林へと向かった。

 

『私の糸は何処までも追っていくぞ!』

 

飛んで行ければ楽なのだが、人目があるためそれは出来ない。

 

仕方なく走りながら時々襲ってくる糸を避け、躱し、撃退しながら進む。

 

「ん? あれは・・・・・・」

 

途中、走っている前に見知った姿が見えたので、とりあえず声をかけておく。

 

「トシアキさん?」

 

「あっ、ホントだ」

 

「モモ、ナナ。 集合場所はあのビルの上な。 もう、皆居るから、それじゃ」

 

二人のポカンとした顔を尻目に伝えることだけ伝えて俺はすぐさま走り去る。

 

雑木林に到着した俺は大きな樹に身体を預けながら呼吸を落ち着ける。

 

『おや? もう鬼ごっこはおしまいかな?』

 

ここなら多少、音を出しても花火の音で聞こえないだろうし、人目にもつかない。

 

つまり、俺の得意分野の『魔法』を使っても大丈夫だということだ。

 

「一瞬で殺ってやるよ」

 

自然の中での戦いは俺にとって有利な状況である。

 

さっさと決着を付けて、皆の所へ戻って一緒に花火でも見ることにしよう。

 

 

 

***

 

 

 

「やっと会えたんだもん! ララたん!!」

 

「ラコスポ!?」

 

俺がランジュラを撃退し、ギドを通してデビルークの奴らに後片付けを任せてビルの屋上に戻ると、どこかで見た小さい奴が鎧を着たカエルの上に乗っていた。

 

「結城トシアキは今頃、新しく雇った殺し屋に始末されている頃だもん!」

 

「う、嘘!?」

 

「そ、そんな・・・・・・」

 

ララと美柑はその言葉に目を大きく見開いて驚きを露わにしている。

 

ちなみに屋上には戻ってきたが、まだ姿を見せていないので二人は俺が始末されたと勘違いしているようだ。

 

「本当なんだもん! 前に雇った金色の闇は失敗したけど、今度の殺し屋は間違いなく強いんだもん!!」

 

ラコスポの言葉にララも美柑もお静も、静かに佇むヤミへと視線を向ける。

 

「どういうわけか、金色の闇はヤツの味方をしてるみたいだけど、ここにいていいのかな?」

 

「・・・・・・彼は私より強い。 それに結城トシアキならここに居て皆を守れと命令するはずですから」

 

流石は俺の守護者ヤミ。

 

俺が一番して欲しいことを理解してくれているようで嬉しい。

 

けど最近、依頼料を払えてなかったりもするのだが、大丈夫なのだろうか。

 

「まぁ、そんなことはいいもん。 それいけ、ガマたん!」

 

カエルの口から吐き出される粘液は確か、服だけを溶かす変態能力だったはずだ。

 

「きゃっ!? はれ?」

 

粘液を正面から浴びてしまったお静の浴衣が溶けてしまい、そこから白い肌が覗く。

 

「お静ちゃん!?」

 

「女の敵は排除します」

 

ララがお静に駆け寄って心配している横で、ヤミがラコスポとカエルに向かって切り掛る。

 

「お前の攻撃はガマたんには効かないもん」

 

「くっ!」

 

前回と同じく、粘液の纏わりついた長い舌によって邪魔をされ、ヤミは攻めきれないようだった。

 

「前回はあの男に殴られたけど、この鎧で完全防備になってるから安心だもん」

 

なるほど、カエルの鎧は俺からの攻撃を防ぐために着けたものだったのか。

 

そんなことを考えている間にもカエルの攻撃が続き、美柑やお静があちこちへ逃げ回っている。

 

「ラコスポ! いい加減にしなさい!!」

 

「止めたければ僕たんと結婚するしかないもん」

 

やはりララの婚約者の座を諦めていなかったようだ。

 

理由を聞けたのでそろそろ止めに入ろうかと思っていると反対側から大きな気配がすることに気付いた。

 

「そんな奴の言うこと聞く必要なんかないぜ、姉上」

 

「ナナ!?」

 

ララの妹であるナナがビルの下から徐々に姿を現しながらあがって来る。

 

「珍獣イロガーマか、珍しいの飼ってるじゃん、お前」

 

「ん? お前は確かララたんの妹の・・・・・・」

 

「あたしのペットになれよ。 いいだろ、ガマたん」

 

そう言いながら現れたナナは大きなコブラの上に乗っており、不敵に微笑んでいた。

 

先ほど俺が感じた大きな気配はこのコブラだったようだ。

 

「そ、それはイロガーマの天敵! ジロ・スネーク!?」

 

「まぁ、そういうわけみたいだから帰ってくれるか?」

 

ナナの友達のコブラを見て驚いているラコスポの横まで歩いて行った俺。

 

ソッと肩に手を置いて満面の笑みで語りかけてやる。

 

「なっ!? ゆ、結城トシアキ!? な、なんでお前がここに居るんだもん」

 

「そんなの俺が勝ってきたからに決まってるだろ」

 

「ちょ、ちょっと待つんだもん!」

 

何か言っているラコスポをそのまま俺は引っ張って行き、皆の見えないところでしっかりと制裁を行った。

 

そして、再びギドに頼んでデビルークに事後処理をしてもらった。

 

「まったく、次から次へと・・・・・・」

 

「お疲れ様、トシ兄ぃ」

 

静かにため息を吐いている俺を心配してくれているのか、美柑が駆けよって来てそう声をかけてくれた。

 

「ごめんな、すぐに助けてやれなくて」

 

「う、ううん。 大丈夫だよ、ララさんやヤミさんもいてくれたし」

 

とりあえずこの疲れた気持ちを癒すために義妹の頭を撫でて気持ちを落ち着けることにする。

 

「あ~ぁ、花火終わっちゃったね」

 

「本当ですね、また次の時はゆっくり見たいですね」

 

「全部アイツの所為だぜ、父上に言って懲らしめて貰おう」

 

そんな風に話しながら残念そうな表情をしているララ達姉妹。

 

その時の三人の表情が印象に残ってしまい、心に引っ掛かりを覚えた一日だった。

 

 

 

~おまけ~

 

 

「それはそうとナナ」

 

「な、何だよ」

 

俺の普段とは違う声色に驚いたのか、ビクリと身体を震わせたナナがコチラに視線を向ける。

 

「ここは宇宙とは違うんだ。 そんな簡単に友達なんかを呼ぶんじゃない」

 

あんな巨大なコブラが街中に出現したら地球人は誰でも驚いてしまうだろう。

 

今回はたまたま花火が上がっている方とは反対側で、なおかつ夜だったから目立たなかったが。

 

「ふん! そんなのあたしの勝手だろ!」

 

「・・・・・・ギドに言ってお前だけデビルークに送り返すぞ?」

 

既に巨大なコブラはデダイヤルで戻しているようだが、言っておかないとまた同じことをするだろう。

 

そのためにはやはり注意をしておくことにこしたことはない。

 

「わ、わかったよ。 今度から気を付ける」

 

そう言ってナナはそのまま俺の前から立ち去ってしまった。

 

ちなみにララにもむやみやたらに発明品を出すなとは言ってある。

 

後はもう一人の妹、モモにも言っておかなければならない。

 

「なんで俺がここまでしなくちゃいけないんだよ・・・・・・」

 

そんな感じで宇宙のお姫様たちの面倒をみるのに苦労をする俺だった。

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